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第7話
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温室が私の管理下になってからというもの、時間を見つけては温室に来ている。
もともとあった、少ししなびてしまっていた草花は、私の魔法ですっかり元気になった。
少しずつ新しく苗を購入して、花の種類を増やしている。
「エレン様、本日仕入れた花の苗はこちらに準備してあります。これらはどこに植えるのでしょうか?」
庭師見習いのトーマスが温室の担当になって、一緒に管理してくれるようになった。
まだ若いけれど、植物が好きな所はとても気が合うの。
「そうねぇ。この花は薄紫の小さな可愛らしい花なのよね。あちらの角の辺りにしましょうか。」
「はい!たくさん咲いたら薄紫の絨毯みたいになりますかね!楽しみです!」
トーマスとメイドのアンと一緒に新しい苗を植えたり、雑草を抜いて他の花のお手入れをしていると、あっという間に時間が過ぎていく。
作業が一段落したところで、温室の中に作った休憩スペースでお茶休憩をすることにした。
「そういえば。」
「アン、どうしたの?」
「ここのお花を分けて頂いて部屋に置くようになってから、すごく体調が良いような感じがするんです。」
「あら、そうなの?植物は空気を綺麗にする作用があるみたいだから、そのせいかしら。」
「僕も同じ事を感じていました!僕の場合は以前から部屋には多めに植物を置いていたので、エレン様が育てた花のおかげだと思います!」
「ふふふ。トーマスもアンもありがとう。二人ともそう感じているのなら、もしかしたら、そうなのかもしれないわね。いつも、『この花を見た人が少しでも元気になりますように』って祈りながら育てているのよ。だから、そんな風に言ってもらえると嬉しいわ。」
ここの植物には、いつも私の魔力を注いで栄養剤代わりにしているの。
もともとは、緑魔法は植物の成長を促進させるのだけれど、そうすると枯れるのも早くなってしまうのよね。
だから、私は成長を促進するのでは無くて、栄養を与えてより健やかに育つようにする魔法を研究したの。
こっそりね。
なんとか成功して、私が魔力を使って育てた植物は、他の植物よりも色鮮やかだったり、力強い感じがするのよ。
でも、これは植物を好きな人がよ~く見ないと分からない程度のこと。
何か世の中の役に立つようなことではないから、ただの自己満足でしかないけれど。
こうやって喜んでくれる人がいるのはとても嬉しい。
「もっとたくさんの花が咲いたら、邸の中にも飾らせてもらおうかしら。」
「それはいいですね!きっと邸中の皆が元気になると思います!」
相変わらず夫のアーネスト様にはお会いしていないし、侯爵夫人としての勉強は大変だけれど。
この二人と一緒に植物の世話をしていると、すごく心が落ち着くの。
実家にいたころとは大違いね。
いつ出て行く事になるか分からない身だけれど、ここに居られる間はこうやって心穏やかに過ごしたい。
できるだけ長くここに居られたらいいのにな、なんて考えてしまいそうになる。
だめよ。私はアリス様が目覚めるまでの代役でしかないのだから。
ここが私の居場所だなんて勘違いしないように気をつけないと。
もともとあった、少ししなびてしまっていた草花は、私の魔法ですっかり元気になった。
少しずつ新しく苗を購入して、花の種類を増やしている。
「エレン様、本日仕入れた花の苗はこちらに準備してあります。これらはどこに植えるのでしょうか?」
庭師見習いのトーマスが温室の担当になって、一緒に管理してくれるようになった。
まだ若いけれど、植物が好きな所はとても気が合うの。
「そうねぇ。この花は薄紫の小さな可愛らしい花なのよね。あちらの角の辺りにしましょうか。」
「はい!たくさん咲いたら薄紫の絨毯みたいになりますかね!楽しみです!」
トーマスとメイドのアンと一緒に新しい苗を植えたり、雑草を抜いて他の花のお手入れをしていると、あっという間に時間が過ぎていく。
作業が一段落したところで、温室の中に作った休憩スペースでお茶休憩をすることにした。
「そういえば。」
「アン、どうしたの?」
「ここのお花を分けて頂いて部屋に置くようになってから、すごく体調が良いような感じがするんです。」
「あら、そうなの?植物は空気を綺麗にする作用があるみたいだから、そのせいかしら。」
「僕も同じ事を感じていました!僕の場合は以前から部屋には多めに植物を置いていたので、エレン様が育てた花のおかげだと思います!」
「ふふふ。トーマスもアンもありがとう。二人ともそう感じているのなら、もしかしたら、そうなのかもしれないわね。いつも、『この花を見た人が少しでも元気になりますように』って祈りながら育てているのよ。だから、そんな風に言ってもらえると嬉しいわ。」
ここの植物には、いつも私の魔力を注いで栄養剤代わりにしているの。
もともとは、緑魔法は植物の成長を促進させるのだけれど、そうすると枯れるのも早くなってしまうのよね。
だから、私は成長を促進するのでは無くて、栄養を与えてより健やかに育つようにする魔法を研究したの。
こっそりね。
なんとか成功して、私が魔力を使って育てた植物は、他の植物よりも色鮮やかだったり、力強い感じがするのよ。
でも、これは植物を好きな人がよ~く見ないと分からない程度のこと。
何か世の中の役に立つようなことではないから、ただの自己満足でしかないけれど。
こうやって喜んでくれる人がいるのはとても嬉しい。
「もっとたくさんの花が咲いたら、邸の中にも飾らせてもらおうかしら。」
「それはいいですね!きっと邸中の皆が元気になると思います!」
相変わらず夫のアーネスト様にはお会いしていないし、侯爵夫人としての勉強は大変だけれど。
この二人と一緒に植物の世話をしていると、すごく心が落ち着くの。
実家にいたころとは大違いね。
いつ出て行く事になるか分からない身だけれど、ここに居られる間はこうやって心穏やかに過ごしたい。
できるだけ長くここに居られたらいいのにな、なんて考えてしまいそうになる。
だめよ。私はアリス様が目覚めるまでの代役でしかないのだから。
ここが私の居場所だなんて勘違いしないように気をつけないと。
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