5 / 44
第5話 sideアーネスト
しおりを挟む
私はアーネスト・トルコーダ。トルコーダ侯爵家の嫡男だ。
そして今日、初めて顔を合わせた10歳以上も年下の令嬢と結婚し、トルコーダ侯爵となった。
本来ならばこれから新妻と初夜を迎えるところだが、私は今馬車に乗っている。
心から愛する女性、アリスに会うために。
グレイバック公爵家に到着すると、出迎えた公爵様に驚かれた。
「アーネスト、まさか今日ここへ来るなんて・・・。それはいくら何でも夫人に失礼なのではないかい?」
「・・・。彼女には結婚前に話してありますから。それよりもアリスに会いたくてたまらないのです。本来なら・・・挙式で私の隣に立つのはアリスなのです。神の前でともに夫婦の誓いをたてるのは、アリスなのです。そう思ってしまって、一時もアリスのことが頭から離れませんでした。どうか一目だけでも会わせてください。」
「・・・・・・アーネスト・・・・・・。」
痛ましそうな顔をしながら公爵様はアリスの部屋へ通すように執事に命じた。
アリスの部屋に入り、寝台に横たわるアリスの頬にそっと触れる。
「アリス・・・。会いたかった。私が愛しているのは君だけだ。心から愛しているよ、アリス。」
どれだけ見つめても、愛を囁いても、今日もアリスは目を開かない。
○○○
アリス・グレイバック。グレイバック公爵家の長女。
母親同士が友人であったため、同じ年のアリスとは幼い頃から会っていた。
いつも明るく笑顔が絶えない彼女が、次第に美しい女性へと成長し気付けば私は彼女に恋をしていた。
幸運なことに、彼女も私に好意を寄せてくれた。
15歳で公爵家へ婚約を申し込み、すぐに了承してもらいアリスは婚約者となった。
ともに魔法学園で学び、学業に励みながらも順調に愛を育んでいた。
何もかも順調で、学園を卒業したらすぐに婚姻する予定で二人は幸せに過ごしていた。
あの日までは。
18歳となり、卒業を3ヶ月後に控えていたあの日。
突如として学園内に出現した魔物によって、私たちの幸せは奪われてしまったのだ。
当時、この王国は魔物の脅威にさらされていた。
それまでは王都から離れたところで魔物との攻防戦を行っていたが、突如として魔法学園に魔物が姿を現した。
最高学年の主席であった私は、アリスを含む他の成績上位の生徒達と教師達とともに魔物の討伐にあたった。
何とか魔物と拮抗しながら他の生徒を学外へ避難させ、もうすぐ王国騎士団が到着するというそのとき。
魔物が私に攻撃を放った。
他の魔物に気を取られて気付いていなかった私をかばい、アリスが攻撃を受けてしまった。
私はすぐさま魔物を攻撃し抹殺したが、アリスは意識を失いその場に倒れた。
魔物の攻撃を受けたアリスは、不思議なことに傷一つついていなかった。
そして命に別状はないにも関わらず、アリスの意識が戻ることは二度と無かった。
その後、魔物がわき出る淀みが森の奥地に発見され、そこを浄化することで魔物の脅威は解消された。
それでもアリスは目覚めなかった。
私や公爵様は、様々な手を尽くしてアリスの回復を試みた。
回復魔法、浄化魔法を使用しても、ありとあらゆる方法を試してもアリスが目覚めることはなかった。
○○○
あれから15年経った今も、私はアリスが目覚める日を待ち続けている。
婚約は一旦解消されているが、私はアリス以外と結婚するつもりなどなかった。
しかしこの国では、未婚では爵位を継承することができない。
私は候爵位よりもアリスが大切だが、私に兄弟はなく両親は私に候爵位を継がせたいと願っていた。
そのため、しかたなく他の女性と結婚することにした。
だが私が愛するのはアリスだけ。だからあの契約書を作った。
まさか、あの条件をのんでくれる相手がすんなり見つかるとは思ってもみなかった。
彼女にも事情があるのかもしれない。
それとも金銭が目的か。
どちらにしてもアリスが目覚めてくれれば彼女との縁は切れる。
私は今もこれからもアリスだけを愛している。
頼むから、目を覚ましてくれ。アリス。
そして今日、初めて顔を合わせた10歳以上も年下の令嬢と結婚し、トルコーダ侯爵となった。
本来ならばこれから新妻と初夜を迎えるところだが、私は今馬車に乗っている。
心から愛する女性、アリスに会うために。
グレイバック公爵家に到着すると、出迎えた公爵様に驚かれた。
「アーネスト、まさか今日ここへ来るなんて・・・。それはいくら何でも夫人に失礼なのではないかい?」
「・・・。彼女には結婚前に話してありますから。それよりもアリスに会いたくてたまらないのです。本来なら・・・挙式で私の隣に立つのはアリスなのです。神の前でともに夫婦の誓いをたてるのは、アリスなのです。そう思ってしまって、一時もアリスのことが頭から離れませんでした。どうか一目だけでも会わせてください。」
「・・・・・・アーネスト・・・・・・。」
痛ましそうな顔をしながら公爵様はアリスの部屋へ通すように執事に命じた。
アリスの部屋に入り、寝台に横たわるアリスの頬にそっと触れる。
「アリス・・・。会いたかった。私が愛しているのは君だけだ。心から愛しているよ、アリス。」
どれだけ見つめても、愛を囁いても、今日もアリスは目を開かない。
○○○
アリス・グレイバック。グレイバック公爵家の長女。
母親同士が友人であったため、同じ年のアリスとは幼い頃から会っていた。
いつも明るく笑顔が絶えない彼女が、次第に美しい女性へと成長し気付けば私は彼女に恋をしていた。
幸運なことに、彼女も私に好意を寄せてくれた。
15歳で公爵家へ婚約を申し込み、すぐに了承してもらいアリスは婚約者となった。
ともに魔法学園で学び、学業に励みながらも順調に愛を育んでいた。
何もかも順調で、学園を卒業したらすぐに婚姻する予定で二人は幸せに過ごしていた。
あの日までは。
18歳となり、卒業を3ヶ月後に控えていたあの日。
突如として学園内に出現した魔物によって、私たちの幸せは奪われてしまったのだ。
当時、この王国は魔物の脅威にさらされていた。
それまでは王都から離れたところで魔物との攻防戦を行っていたが、突如として魔法学園に魔物が姿を現した。
最高学年の主席であった私は、アリスを含む他の成績上位の生徒達と教師達とともに魔物の討伐にあたった。
何とか魔物と拮抗しながら他の生徒を学外へ避難させ、もうすぐ王国騎士団が到着するというそのとき。
魔物が私に攻撃を放った。
他の魔物に気を取られて気付いていなかった私をかばい、アリスが攻撃を受けてしまった。
私はすぐさま魔物を攻撃し抹殺したが、アリスは意識を失いその場に倒れた。
魔物の攻撃を受けたアリスは、不思議なことに傷一つついていなかった。
そして命に別状はないにも関わらず、アリスの意識が戻ることは二度と無かった。
その後、魔物がわき出る淀みが森の奥地に発見され、そこを浄化することで魔物の脅威は解消された。
それでもアリスは目覚めなかった。
私や公爵様は、様々な手を尽くしてアリスの回復を試みた。
回復魔法、浄化魔法を使用しても、ありとあらゆる方法を試してもアリスが目覚めることはなかった。
○○○
あれから15年経った今も、私はアリスが目覚める日を待ち続けている。
婚約は一旦解消されているが、私はアリス以外と結婚するつもりなどなかった。
しかしこの国では、未婚では爵位を継承することができない。
私は候爵位よりもアリスが大切だが、私に兄弟はなく両親は私に候爵位を継がせたいと願っていた。
そのため、しかたなく他の女性と結婚することにした。
だが私が愛するのはアリスだけ。だからあの契約書を作った。
まさか、あの条件をのんでくれる相手がすんなり見つかるとは思ってもみなかった。
彼女にも事情があるのかもしれない。
それとも金銭が目的か。
どちらにしてもアリスが目覚めてくれれば彼女との縁は切れる。
私は今もこれからもアリスだけを愛している。
頼むから、目を覚ましてくれ。アリス。
27
お気に入りに追加
4,270
あなたにおすすめの小説
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

婚約して三日で白紙撤回されました。
Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。
それが貴族社会の風習なのだから。
そして望まない婚約から三日目。
先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる