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第6話
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「おはようございます、エレン様」
「おはよう、アン。」
公爵家に嫁いでから1ヶ月が経った。あれから私は、お義母さまに侯爵夫人としての仕事を教わりながら過ごしている。
アーネスト様とはお会いしてない。
結婚してから知ったのだが、アーネスト様は忙しい仕事の合間に時間を見つけては、グレイバック公爵家へ赴きアリス様の側に寄り添われている。
そのため邸にはほとんど寝に帰ってきているだけという状態だ。
「アーネスト様は今日ももう出発されたのかしら?」
「はい。」
朝早くから仕事というわけではない。
アリス様の元へ行かれて、しばらく側で過ごされてから仕事へ向かわれるのだ。
「私の今日の予定は?」
「本日は、朝食の後は大奥様より家計についての講義を受けて頂きます。午後は大奥様がお茶会へお出かけになりますので、エレン様は自由にお過ごし頂いて良いそうです。」
「そう。それならば午後は何をしようかしらね・・・」
結婚する前は、少しでも何かを身につけたくてずっと勉強していた。
けれど、嫁いでからは何だか気が抜けてしまって。自由にして良いと言われると、どうしたらいいのか分からなくなる。
「エレン様はお花がお好きなようですので、温室の方へ行かれてみてはいかがですか?」
「そういえば、大きな温室があると伺ったわね。私が勝手に行ってもいいのかしら?」
「もちろんです。エレン様の邸でもあるのですから。」
一時的にではあるけれどね。まあ温室くらいなら咎められないわよね?
「それなら、午後は温室へ行ってみるわ。」
「かしこまりました。」
○○○
本当に大きな温室だわ。こんなに立派な温室をお持ちだなんて。さすが侯爵家ね。
だけど・・・あまり植物は育っていないわね。皆様はあまり興味がないのかしら?
なんだかしおれてしまっている植物が多くて悲しい。
あまり手入れが行き届いていない温室に寂しい気持ちになってしまって、つい魔法を使った。
「!!!エレン様!?これはいったい・・・」
同行していたアンが驚いている。
「私、緑魔法を使えるのよ。植物の成長を促進するしか使い道は無いのだけどね。」
「緑魔法ですか、なるほど。しかし、これほどまでに一瞬にして多くの植物が元気になるなんて・・・」
私は植物が大好きなのもあって、緑魔法をこどもの頃からよく使っていた。
学園でもこっそり学園中の植物に使って元気にさせていた。
そんなことをしていたら、無駄に魔力が強まってしまったようなのだ。
大した使い道も無いのに。
「これからは、この温室を私の自由にさせてもらえないか、お義母さまに聞いてみようかしら。」
「そうしましょう!なんだか・・・ここに居ると私も元気になるような気がします。」
「ふふふ。アンて可愛い人ね。私の魔法に喜んでくれる人なんて初めてだわ。アンのおかげで私も元気が出たわ。ありがとう。」
そう言うと、アンは真っ赤になって俯いてしまった。
その日のうちにお義母さまの了承を頂いて、温室は私の所有となった。
「おはよう、アン。」
公爵家に嫁いでから1ヶ月が経った。あれから私は、お義母さまに侯爵夫人としての仕事を教わりながら過ごしている。
アーネスト様とはお会いしてない。
結婚してから知ったのだが、アーネスト様は忙しい仕事の合間に時間を見つけては、グレイバック公爵家へ赴きアリス様の側に寄り添われている。
そのため邸にはほとんど寝に帰ってきているだけという状態だ。
「アーネスト様は今日ももう出発されたのかしら?」
「はい。」
朝早くから仕事というわけではない。
アリス様の元へ行かれて、しばらく側で過ごされてから仕事へ向かわれるのだ。
「私の今日の予定は?」
「本日は、朝食の後は大奥様より家計についての講義を受けて頂きます。午後は大奥様がお茶会へお出かけになりますので、エレン様は自由にお過ごし頂いて良いそうです。」
「そう。それならば午後は何をしようかしらね・・・」
結婚する前は、少しでも何かを身につけたくてずっと勉強していた。
けれど、嫁いでからは何だか気が抜けてしまって。自由にして良いと言われると、どうしたらいいのか分からなくなる。
「エレン様はお花がお好きなようですので、温室の方へ行かれてみてはいかがですか?」
「そういえば、大きな温室があると伺ったわね。私が勝手に行ってもいいのかしら?」
「もちろんです。エレン様の邸でもあるのですから。」
一時的にではあるけれどね。まあ温室くらいなら咎められないわよね?
「それなら、午後は温室へ行ってみるわ。」
「かしこまりました。」
○○○
本当に大きな温室だわ。こんなに立派な温室をお持ちだなんて。さすが侯爵家ね。
だけど・・・あまり植物は育っていないわね。皆様はあまり興味がないのかしら?
なんだかしおれてしまっている植物が多くて悲しい。
あまり手入れが行き届いていない温室に寂しい気持ちになってしまって、つい魔法を使った。
「!!!エレン様!?これはいったい・・・」
同行していたアンが驚いている。
「私、緑魔法を使えるのよ。植物の成長を促進するしか使い道は無いのだけどね。」
「緑魔法ですか、なるほど。しかし、これほどまでに一瞬にして多くの植物が元気になるなんて・・・」
私は植物が大好きなのもあって、緑魔法をこどもの頃からよく使っていた。
学園でもこっそり学園中の植物に使って元気にさせていた。
そんなことをしていたら、無駄に魔力が強まってしまったようなのだ。
大した使い道も無いのに。
「これからは、この温室を私の自由にさせてもらえないか、お義母さまに聞いてみようかしら。」
「そうしましょう!なんだか・・・ここに居ると私も元気になるような気がします。」
「ふふふ。アンて可愛い人ね。私の魔法に喜んでくれる人なんて初めてだわ。アンのおかげで私も元気が出たわ。ありがとう。」
そう言うと、アンは真っ赤になって俯いてしまった。
その日のうちにお義母さまの了承を頂いて、温室は私の所有となった。
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