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憎しみの悪役令嬢(R15)残酷な表現を含みます
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「サラ、やっと君を僕の婚約者にすることができたね!この日をずっと待っていたんだよ?」
今日、私は王太子殿下であるデイヴィッド様の婚約者となった。
「デイヴィッド様、ふつつか者ではありますが、よろしくお願いします。」
私の父は公爵にして宰相であり、母は陛下の妹だから殿下と私はいとこに当たる。
だから幼い頃から会っていた、幼なじみでもあるのだ。
血が近いから、私が王太子殿下の婚約者になることには反対意見もあった。
けれど、殿下の希望があって私との婚約が決まったのだ。
「本当に長かったよ。僕が君を手に入れるのが、どれだけ大変だったか・・・」
それからデイヴィッド様は私への想いを語ってくれた。
私はきっとこの日を一生忘れないと思う。
~~~~
私達は同じ学園に通っている。
この学園には16歳になる年に入学して、3年間過ごし18歳になる年に卒業する。
私達は今年3年生となり、あと一年で卒業して結婚することになっている。
そんな学生として最後の年に異変が起こった。
3年生となった初めの日、転入生がやってきたのだ。
最近男爵家に入った婚外子の女性。
ピンク色の髪に、淡い水色の目。
とても愛らしくて華奢だけど豊満な胸を持つ、男性が庇護欲をかき立てられるような女性。
貴族となって日が浅いためか、平民のような話し方をする。
デイヴィッド様に対しても同じ態度で接していた。
「だって、王子様でも学園では同級生でしょう?」
そう言って、彼女はデイヴィッド様の隣に立っている。
「それはそうですが、私達は来年には大人として社交界へ出るのです。今のうちに貴族としての振る舞いに慣れた方がよろしいのでは?」
私はデイヴィッド様の婚約者として、彼女を諫めようとした。
「サラ、そんな堅いことは止めにしよう?彼女はまだ貴族になったばかりなのだから。」
そう言って、デイヴィッド様は彼女の味方をする。
これでは私が悪者のようだ。
「ですが・・・」
再度、苦言を呈そうとしてデイヴィッド様に止められる。
「わかったよ。サラの言い分は後でゆっくり聞いてあげるから。」
そう言って、デイヴィッド様は彼女の腰に手をまわして二人寄り添いながら去って行く。
そっと振り返った彼女の勝ち誇ったような笑みが印象に残る。
そう、デイヴィッド様はすっかりあの女性を気に入ってしまった。
あんなに私の事を婚約者に望んでいたのに。
人の心とは、こんなにもうつろいやすい物だったのか。
彼女が転入してきてから、半年が経った。
今では、デイヴィッド様と彼女の関係は誰もが知るところとなっている。
そしてある日、デイヴィッド様が私にこう言った。
「サラ、私の妃となるのは君しかいない。私とサラが結婚するのは決定事項だよ。でも、彼女の事は愛妾にしようと思っているんだ。もちろん彼女との間に子どもは作らないから、安心してね?」
まさか結婚前に愛妾が決まっているなんて、私は絶句した。
それでも彼は、そんな私の様子を気にも止めずに上機嫌で去って行った。
私は心に決めた。
絶対に許さないと。
それから私は、幼い頃から私についている、最も信頼できるメイドに頼んで毒を手に入れた。
これをあのピンク頭の彼女に使う事にした。
卒業パーティーの日。
彼女はデイヴィッド様から贈られたドレスを着て参加していた。
もちろん私もデイヴィッド様から贈られたドレスを着て、彼にエスコートされている。
デイヴィッド様とファーストダンスを踊ったあと、すぐに彼女はやってきた。
そしてデイヴィッド様と彼女はダンスへ。
戻ってきた二人に飲み物を手渡す。
彼女に渡す方の飲み物には、もちろん毒が入っている。
彼女が飲み物に口を付けて、飲み込んだ。
思わず私は笑みを浮かべた。
次の瞬間、彼女は血を吐いた。
「な、なに!?く、苦しい!!苦しいよ、助けて、デイヴィッ・・・」
そこまで言って彼女は気を失って倒れた。
「キャーーーーーッッッ!!!」
近くにいた令嬢が叫んだ。
「チッ」
デイヴィッド様が舌打ちをする。
「早く、彼女を医務室へ!」
デイヴィッド様の指示で彼女は医務室へ運ばれていく。
「わ、私見ましたわ!!サラ様が彼女に飲み物を渡す所を!!きっと、あの飲み物に毒が入っていたんだわ!!」
近くにいた令嬢が声を上げた。
「チッ」
またデイヴィッド様が舌打ちをした。
「えぇ、わたくしが彼女に飲み物を渡しました。」
私の言葉にざわつく場内。
「サラ、落ち着いて?君が渡した飲み物に本当に毒が入っていたのか分からないだろう?それに、もし入っていたとしても、君が入れるはずがないよね?」
デイヴィッド様が周囲に聞こえるように私に声をかける。
「いいえ、私が彼女の飲み物に毒を入れました。」
さらにざわつく場内。
「サラ。一旦落ち着こう?話は向こうで、ゆっくり聞くから。」
そんなデイヴィッド様に、私は小さな小瓶を見せる。
「これが毒です。調べてもらえれば、すぐに分かりますよ?」
「サラ!やめるんだ!!」
そう言っているうちに、陛下が近くまでいらしていた。
「それはどういうことかな、サラ?」
陛下の声に、デイヴィッド様はついに頭を抱えてしまった。
「今申したとおりです。私はデイヴィッド殿下の寵愛を受ける彼女が憎かった。だから、彼女にこの毒を飲ませました。」
「サラ、どうして優秀な君がこんなマネを?」
陛下が哀しそうに私を見る。
「あの女が憎かったのです。」
しばしの沈黙のあと、陛下は私を捕らえさせた。
~~~~~~
私はあれから、牢に入れられている。
「サラ、彼女は一命を取り留めたよ。医者の話では、致死量ではなかったとのことだった。君はどうして、あんな事をしたの?」
デイヴィッド様がやって来た。
彼女が死なないことくらい分かっている。
あえて致死量に満たないように毒を盛ったのだから。
「・・・。」
私は何も答えない。
「サラ、このままでは君は死罪になるよ?」
それでも私は何も答えない。
そんな私にしびれを切らして、彼は去って行った。
それから数日後、私の死罪が決まった。
あぁ、これでやっと、あなたの元へ行けます。レオン様。
~~~~~~
私には、幼い頃からの婚約者がいた。
この国の第一王子にして王太子でもあったレオン様だ。
レオン様とデイヴィッド様は双子だった。
私と二人の王子は、いとこで幼なじみだった。
よく3人で遊んでいたけれど、気がついた時には私はレオン様が好きだった。
そしてレオン様も私を好きだった。
レオン様の希望で、彼と私は6歳で婚約した。
私達はお互いに想い合っていて、とても幸せな日々だった。
だけど、レオン様は10歳頃から体調を崩しがちになった。
色々と調べてみても原因が分からなかった。
そして徐々に弱っていき、彼は14歳で帰らぬ人となった。
私はショックで、しばらくまともに食事を摂ることも出来なかった。
デイヴィッド様はそんな私のもとへ足繁く通ってくれて、彼の面影が強く残るデイヴィッド様と過ごすことで私は徐々に回復していった。
そして、デイヴィッド様の強い希望で私は彼の婚約者となった。
王家としても、既に妃教育を半分以上終えている私を手放すのは、もったいなかったのだろう。
そうしてデイヴィッド様の婚約者となった時、彼は私にこう言ったのだ。
「本当に長かったよ。僕が君を手に入れるのが、どれだけ大変だったか。知ってる?兄さんは未知の病で死んだんじゃないんだよ?僕が殺したの。」
私は、彼が何を言っているのか分からなかった。
「ビックリした?だってさー。ほんの数分早く生まれたから、あいつが兄で王太子になったんだよ?ずるくない?しかもサラの事まで婚約者にしちゃってさー。むかつくでしょ。だからね、誰にもバレないように、ちょっとずつちょっとずつ、毒を飲ませたんだよ?」
あまりの言い分に、私は何も言葉が出ない。
「サラが婚約者になった時から始めて、やっと効果が出始めたのが4年後だよ?長かったー!しかも、それから死ぬまでに、さらに4年もかかっちゃった。案外しぶとくて参っちゃったよー。」
これは、誰?こんなむごい事ができるなんて・・・人間じゃない、悪魔だわ・・・
「そんなに青い顔しちゃって。ほんとにサラってば可愛いね。」
悪魔が私の頬をそっと撫でた。思わず震えてしまう。
「ははは!そんなに怯えないでよー。大丈夫、サラにはひどいことなんてしないよ?僕はサラを愛しているからね!」
その後、家に帰ってからも私は震えていた。
あの悪魔への恐怖、それと怒り、憎しみ。
だんだんと怒りと憎しみが勝ってくる。
許せない。レオン様を殺したアイツが憎い。
だけど、復讐しようにも、あんな悪魔に自分が出来ることなんてあるのか。
そう悩んでいたときに、あのピンクの彼女が現れた。
レオン様を殺してまで私を婚約者にしたのに、あっけなく他の女性に心を移した。
それなら、それなら何故レオン様を殺す必要があったの・・・。
私の憎しみは増していく一方だった。
そして、悪魔はそんな私にこう言った。
「サラ、僕が愛しているのはサラだけだよ。でもね、僕にはどうしても譲れない性癖があるんだ。だけど君を傷つけたくはない。だから、傷つけても良い存在が必要なんだよ。それには、あの子はピッタリなんだよ。それだけだから、安心してね?」
そんなことを笑顔でいう姿に、私は吐き気がした。
そして、悪魔への復讐を思いついた。
私が死ねば良いのだ。
私を愛している、傷つけたくないと言うのだから、私が死ぬことが一番のダメージになるはず。
しかも、悪魔の目の前で死にたい。
だけど服毒自殺ではインパクトにかける。体に傷を付けたい。
でも悪魔の目の前に刃物を持ち込むのは難しい。
だから、死罪となって斬首刑を受けることにした。
彼女の事は、巻き込んで悪かったと思っている。
でも、これで彼女もあの悪魔から逃れる事ができるはず。
そして、今日、ついに刑が執行される。
悪魔はギリギリまで私の刑をやめさせようとしていたみたい。
だけど、さすがにそれは出来なかった。
私は斬首台へ上がり、ひざまずく。
正面の壇上には両陛下と、悪魔がいる。
あの悪魔の顔。ざまあみろだわ。
「最後に言い残す事はあるか」
最期に言いたい事は決まっている。
「レオン様、愛しています!今、あなたの元へ参ります!!」
ガシャンッ
~~~~~
数日後、自室で亡くなっている王太子デイヴィッドが発見された。
残された遺書には、こう書かれていた。
『二人が結ばれるなんて、絶対に許さない。』
今日、私は王太子殿下であるデイヴィッド様の婚約者となった。
「デイヴィッド様、ふつつか者ではありますが、よろしくお願いします。」
私の父は公爵にして宰相であり、母は陛下の妹だから殿下と私はいとこに当たる。
だから幼い頃から会っていた、幼なじみでもあるのだ。
血が近いから、私が王太子殿下の婚約者になることには反対意見もあった。
けれど、殿下の希望があって私との婚約が決まったのだ。
「本当に長かったよ。僕が君を手に入れるのが、どれだけ大変だったか・・・」
それからデイヴィッド様は私への想いを語ってくれた。
私はきっとこの日を一生忘れないと思う。
~~~~
私達は同じ学園に通っている。
この学園には16歳になる年に入学して、3年間過ごし18歳になる年に卒業する。
私達は今年3年生となり、あと一年で卒業して結婚することになっている。
そんな学生として最後の年に異変が起こった。
3年生となった初めの日、転入生がやってきたのだ。
最近男爵家に入った婚外子の女性。
ピンク色の髪に、淡い水色の目。
とても愛らしくて華奢だけど豊満な胸を持つ、男性が庇護欲をかき立てられるような女性。
貴族となって日が浅いためか、平民のような話し方をする。
デイヴィッド様に対しても同じ態度で接していた。
「だって、王子様でも学園では同級生でしょう?」
そう言って、彼女はデイヴィッド様の隣に立っている。
「それはそうですが、私達は来年には大人として社交界へ出るのです。今のうちに貴族としての振る舞いに慣れた方がよろしいのでは?」
私はデイヴィッド様の婚約者として、彼女を諫めようとした。
「サラ、そんな堅いことは止めにしよう?彼女はまだ貴族になったばかりなのだから。」
そう言って、デイヴィッド様は彼女の味方をする。
これでは私が悪者のようだ。
「ですが・・・」
再度、苦言を呈そうとしてデイヴィッド様に止められる。
「わかったよ。サラの言い分は後でゆっくり聞いてあげるから。」
そう言って、デイヴィッド様は彼女の腰に手をまわして二人寄り添いながら去って行く。
そっと振り返った彼女の勝ち誇ったような笑みが印象に残る。
そう、デイヴィッド様はすっかりあの女性を気に入ってしまった。
あんなに私の事を婚約者に望んでいたのに。
人の心とは、こんなにもうつろいやすい物だったのか。
彼女が転入してきてから、半年が経った。
今では、デイヴィッド様と彼女の関係は誰もが知るところとなっている。
そしてある日、デイヴィッド様が私にこう言った。
「サラ、私の妃となるのは君しかいない。私とサラが結婚するのは決定事項だよ。でも、彼女の事は愛妾にしようと思っているんだ。もちろん彼女との間に子どもは作らないから、安心してね?」
まさか結婚前に愛妾が決まっているなんて、私は絶句した。
それでも彼は、そんな私の様子を気にも止めずに上機嫌で去って行った。
私は心に決めた。
絶対に許さないと。
それから私は、幼い頃から私についている、最も信頼できるメイドに頼んで毒を手に入れた。
これをあのピンク頭の彼女に使う事にした。
卒業パーティーの日。
彼女はデイヴィッド様から贈られたドレスを着て参加していた。
もちろん私もデイヴィッド様から贈られたドレスを着て、彼にエスコートされている。
デイヴィッド様とファーストダンスを踊ったあと、すぐに彼女はやってきた。
そしてデイヴィッド様と彼女はダンスへ。
戻ってきた二人に飲み物を手渡す。
彼女に渡す方の飲み物には、もちろん毒が入っている。
彼女が飲み物に口を付けて、飲み込んだ。
思わず私は笑みを浮かべた。
次の瞬間、彼女は血を吐いた。
「な、なに!?く、苦しい!!苦しいよ、助けて、デイヴィッ・・・」
そこまで言って彼女は気を失って倒れた。
「キャーーーーーッッッ!!!」
近くにいた令嬢が叫んだ。
「チッ」
デイヴィッド様が舌打ちをする。
「早く、彼女を医務室へ!」
デイヴィッド様の指示で彼女は医務室へ運ばれていく。
「わ、私見ましたわ!!サラ様が彼女に飲み物を渡す所を!!きっと、あの飲み物に毒が入っていたんだわ!!」
近くにいた令嬢が声を上げた。
「チッ」
またデイヴィッド様が舌打ちをした。
「えぇ、わたくしが彼女に飲み物を渡しました。」
私の言葉にざわつく場内。
「サラ、落ち着いて?君が渡した飲み物に本当に毒が入っていたのか分からないだろう?それに、もし入っていたとしても、君が入れるはずがないよね?」
デイヴィッド様が周囲に聞こえるように私に声をかける。
「いいえ、私が彼女の飲み物に毒を入れました。」
さらにざわつく場内。
「サラ。一旦落ち着こう?話は向こうで、ゆっくり聞くから。」
そんなデイヴィッド様に、私は小さな小瓶を見せる。
「これが毒です。調べてもらえれば、すぐに分かりますよ?」
「サラ!やめるんだ!!」
そう言っているうちに、陛下が近くまでいらしていた。
「それはどういうことかな、サラ?」
陛下の声に、デイヴィッド様はついに頭を抱えてしまった。
「今申したとおりです。私はデイヴィッド殿下の寵愛を受ける彼女が憎かった。だから、彼女にこの毒を飲ませました。」
「サラ、どうして優秀な君がこんなマネを?」
陛下が哀しそうに私を見る。
「あの女が憎かったのです。」
しばしの沈黙のあと、陛下は私を捕らえさせた。
~~~~~~
私はあれから、牢に入れられている。
「サラ、彼女は一命を取り留めたよ。医者の話では、致死量ではなかったとのことだった。君はどうして、あんな事をしたの?」
デイヴィッド様がやって来た。
彼女が死なないことくらい分かっている。
あえて致死量に満たないように毒を盛ったのだから。
「・・・。」
私は何も答えない。
「サラ、このままでは君は死罪になるよ?」
それでも私は何も答えない。
そんな私にしびれを切らして、彼は去って行った。
それから数日後、私の死罪が決まった。
あぁ、これでやっと、あなたの元へ行けます。レオン様。
~~~~~~
私には、幼い頃からの婚約者がいた。
この国の第一王子にして王太子でもあったレオン様だ。
レオン様とデイヴィッド様は双子だった。
私と二人の王子は、いとこで幼なじみだった。
よく3人で遊んでいたけれど、気がついた時には私はレオン様が好きだった。
そしてレオン様も私を好きだった。
レオン様の希望で、彼と私は6歳で婚約した。
私達はお互いに想い合っていて、とても幸せな日々だった。
だけど、レオン様は10歳頃から体調を崩しがちになった。
色々と調べてみても原因が分からなかった。
そして徐々に弱っていき、彼は14歳で帰らぬ人となった。
私はショックで、しばらくまともに食事を摂ることも出来なかった。
デイヴィッド様はそんな私のもとへ足繁く通ってくれて、彼の面影が強く残るデイヴィッド様と過ごすことで私は徐々に回復していった。
そして、デイヴィッド様の強い希望で私は彼の婚約者となった。
王家としても、既に妃教育を半分以上終えている私を手放すのは、もったいなかったのだろう。
そうしてデイヴィッド様の婚約者となった時、彼は私にこう言ったのだ。
「本当に長かったよ。僕が君を手に入れるのが、どれだけ大変だったか。知ってる?兄さんは未知の病で死んだんじゃないんだよ?僕が殺したの。」
私は、彼が何を言っているのか分からなかった。
「ビックリした?だってさー。ほんの数分早く生まれたから、あいつが兄で王太子になったんだよ?ずるくない?しかもサラの事まで婚約者にしちゃってさー。むかつくでしょ。だからね、誰にもバレないように、ちょっとずつちょっとずつ、毒を飲ませたんだよ?」
あまりの言い分に、私は何も言葉が出ない。
「サラが婚約者になった時から始めて、やっと効果が出始めたのが4年後だよ?長かったー!しかも、それから死ぬまでに、さらに4年もかかっちゃった。案外しぶとくて参っちゃったよー。」
これは、誰?こんなむごい事ができるなんて・・・人間じゃない、悪魔だわ・・・
「そんなに青い顔しちゃって。ほんとにサラってば可愛いね。」
悪魔が私の頬をそっと撫でた。思わず震えてしまう。
「ははは!そんなに怯えないでよー。大丈夫、サラにはひどいことなんてしないよ?僕はサラを愛しているからね!」
その後、家に帰ってからも私は震えていた。
あの悪魔への恐怖、それと怒り、憎しみ。
だんだんと怒りと憎しみが勝ってくる。
許せない。レオン様を殺したアイツが憎い。
だけど、復讐しようにも、あんな悪魔に自分が出来ることなんてあるのか。
そう悩んでいたときに、あのピンクの彼女が現れた。
レオン様を殺してまで私を婚約者にしたのに、あっけなく他の女性に心を移した。
それなら、それなら何故レオン様を殺す必要があったの・・・。
私の憎しみは増していく一方だった。
そして、悪魔はそんな私にこう言った。
「サラ、僕が愛しているのはサラだけだよ。でもね、僕にはどうしても譲れない性癖があるんだ。だけど君を傷つけたくはない。だから、傷つけても良い存在が必要なんだよ。それには、あの子はピッタリなんだよ。それだけだから、安心してね?」
そんなことを笑顔でいう姿に、私は吐き気がした。
そして、悪魔への復讐を思いついた。
私が死ねば良いのだ。
私を愛している、傷つけたくないと言うのだから、私が死ぬことが一番のダメージになるはず。
しかも、悪魔の目の前で死にたい。
だけど服毒自殺ではインパクトにかける。体に傷を付けたい。
でも悪魔の目の前に刃物を持ち込むのは難しい。
だから、死罪となって斬首刑を受けることにした。
彼女の事は、巻き込んで悪かったと思っている。
でも、これで彼女もあの悪魔から逃れる事ができるはず。
そして、今日、ついに刑が執行される。
悪魔はギリギリまで私の刑をやめさせようとしていたみたい。
だけど、さすがにそれは出来なかった。
私は斬首台へ上がり、ひざまずく。
正面の壇上には両陛下と、悪魔がいる。
あの悪魔の顔。ざまあみろだわ。
「最後に言い残す事はあるか」
最期に言いたい事は決まっている。
「レオン様、愛しています!今、あなたの元へ参ります!!」
ガシャンッ
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数日後、自室で亡くなっている王太子デイヴィッドが発見された。
残された遺書には、こう書かれていた。
『二人が結ばれるなんて、絶対に許さない。』
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