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番外編 sideエドワード
義母と義息子
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この家には、お義母さまとメイドのメアリーしかいないらしい。
メアリーに見つかってしまった僕は、別宅の応接間でお義母さまとお茶をしている。
まさか、あの人形がお義母さまだったなんて。
お義母さまは、僕と会ってから全くと言っていいほど表情が変わらない。
相変わらず人形のような目をしているし、何を考えているのかサッパリ分からない。
でも、話してみると全然怖くないし、なんだか一緒にいると落ち着くような気もする。
僕は一方的にアレコレと話しているけど、お義母さまはずっと穏やかに聞いている。
それが嬉しくて話すのに夢中になっていたら、外が暗くなりはじめていた。
さすがにまずいので、今日はこれで帰ることにした。
帰りがけにメアリーから、ここへ来たことは内緒にするように言われた。
だから、秘密にする代わりにまた遊びに来る事にしたんだ。
○○○
そうして、義母との穏やかな逢瀬を重ねながら俺は成長した。
全く感情を表に出すことの無い不思議な義母だが、幼い頃に実母を亡くした俺にとっては、とても大切な存在になっていた。
何故、義母は感情を表に出さないのか。
義母は、本当は俺の事が憎いのかもしれない。
だからそれを隠すために、感情を表に出さないようにしているのかもしれない。
貴族学院で、義母の兄の息子、義従兄弟から言われた事がある。
「お前とお前の母親のせいで、伯母上は体を崩されて外に出られなくなったというのに。お前は、のうのうと侯爵家の養子になりやがって。」
俺だって、薄々そうじゃないかと思っていた。
俺は義父によく似ている。もしかしたら、義父ではなく実父なのではないかと。
そのせいで義母は引きこもってしまったのではないかと。
世間でも、そう思われているらしい。
それでも、侯爵が認めない限りは表立っては誰も口にしない。
俺だってそうだ。誰にも聞けない。
だから、認めないことにしていた。
義母が嫌がらない限りは、義母にも会いに行く。
義母が本気で嫌がれば、メアリーが会わせないようにするはずだから。
俺は随分と、ずうずうしい性格をしているらしい。
○○○
俺は成人してからも、結婚してからも時間が出来るとコッソリ別宅に行っては、他の人には出来ない話を義母に聞いてもらっている。
相変わらず義母は、俺の話を穏やかに聞くばかりで、たとえ俺が落ち込んでいようと慰めもしない。
だけど、何故かそれが俺には心地いいんだ。義母といると安心できる。暖かい人だと思う。
本宅の人には義母との逢瀬がバレる事なく、気付くと侯爵位を継承する日を迎えていた。
そして手続きを全て終え、侯爵となった日の夜。
義父から衝撃の事実を告げられた。
長い間予想していた事とは違い、斜め上な方向からやって来た、まさかの事実に俺は開いた口が塞がらなかった。
○○○
ショックのあまり数日打ちひしがれていたが、ふと思った。
義母はこの事実を知っているのだろうか?
もちろん知ってるよな。侯爵夫人なのだから。
それなら、その秘密のせいであんな風になったのか?
そう思ったが、何故かとても気にかかる。
そして念のため義父に確認したら、義父はとんでもないヘタレ野郎だという事が判明した。
メアリーに見つかってしまった僕は、別宅の応接間でお義母さまとお茶をしている。
まさか、あの人形がお義母さまだったなんて。
お義母さまは、僕と会ってから全くと言っていいほど表情が変わらない。
相変わらず人形のような目をしているし、何を考えているのかサッパリ分からない。
でも、話してみると全然怖くないし、なんだか一緒にいると落ち着くような気もする。
僕は一方的にアレコレと話しているけど、お義母さまはずっと穏やかに聞いている。
それが嬉しくて話すのに夢中になっていたら、外が暗くなりはじめていた。
さすがにまずいので、今日はこれで帰ることにした。
帰りがけにメアリーから、ここへ来たことは内緒にするように言われた。
だから、秘密にする代わりにまた遊びに来る事にしたんだ。
○○○
そうして、義母との穏やかな逢瀬を重ねながら俺は成長した。
全く感情を表に出すことの無い不思議な義母だが、幼い頃に実母を亡くした俺にとっては、とても大切な存在になっていた。
何故、義母は感情を表に出さないのか。
義母は、本当は俺の事が憎いのかもしれない。
だからそれを隠すために、感情を表に出さないようにしているのかもしれない。
貴族学院で、義母の兄の息子、義従兄弟から言われた事がある。
「お前とお前の母親のせいで、伯母上は体を崩されて外に出られなくなったというのに。お前は、のうのうと侯爵家の養子になりやがって。」
俺だって、薄々そうじゃないかと思っていた。
俺は義父によく似ている。もしかしたら、義父ではなく実父なのではないかと。
そのせいで義母は引きこもってしまったのではないかと。
世間でも、そう思われているらしい。
それでも、侯爵が認めない限りは表立っては誰も口にしない。
俺だってそうだ。誰にも聞けない。
だから、認めないことにしていた。
義母が嫌がらない限りは、義母にも会いに行く。
義母が本気で嫌がれば、メアリーが会わせないようにするはずだから。
俺は随分と、ずうずうしい性格をしているらしい。
○○○
俺は成人してからも、結婚してからも時間が出来るとコッソリ別宅に行っては、他の人には出来ない話を義母に聞いてもらっている。
相変わらず義母は、俺の話を穏やかに聞くばかりで、たとえ俺が落ち込んでいようと慰めもしない。
だけど、何故かそれが俺には心地いいんだ。義母といると安心できる。暖かい人だと思う。
本宅の人には義母との逢瀬がバレる事なく、気付くと侯爵位を継承する日を迎えていた。
そして手続きを全て終え、侯爵となった日の夜。
義父から衝撃の事実を告げられた。
長い間予想していた事とは違い、斜め上な方向からやって来た、まさかの事実に俺は開いた口が塞がらなかった。
○○○
ショックのあまり数日打ちひしがれていたが、ふと思った。
義母はこの事実を知っているのだろうか?
もちろん知ってるよな。侯爵夫人なのだから。
それなら、その秘密のせいであんな風になったのか?
そう思ったが、何故かとても気にかかる。
そして念のため義父に確認したら、義父はとんでもないヘタレ野郎だという事が判明した。
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