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本編

第九話

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私はなんとか三人に挨拶をして、どうにか新しい自室にたどり着いたようです。
取り乱さずにすんで良かった・・・

「お嬢様・・・」

伯爵家から付いてきてくれたメアリーが声をかけてくれていますが、私はそれどころではありません。

マリア様にお会いすることになるのは覚悟していました。
でもまさか、こんなに早くお会いするなんて・・・
しかも・・・あのお子様は・・・

ダニエル様とマリア様とエド様。優しい顔で寄り添う3人の姿は・・・あれこそが家族の姿でした・・・
私はなんて愚かなのでしょうか。結婚式で「まるで私を愛しているかのよう」だなんて。
そんな訳がないのに・・・
きっと私自身ではなく、マリア様の姿に重ねてみていらっしゃったに違いありません。

○○○

「お嬢様・・・。そろそろドレスを脱ぎませんと・・・。湯浴みをして夜着に着替えましょう?」

いつの間にか時間が経っていたようです。メアリーの言うとおりドレスをそろそろ脱がなければ・・・
ダニエル様がいらっしゃるかもしれません・・・

・・・初夜はどうなるのでしょうか

やはり白い結婚ということになるのでしょうか。

実は、平民の愛人のこどもでも侯爵家の籍に入れる方法が一つだけあるのです。
それは、他に跡取りがいないと見なされた場合。

つまり、3年間夫婦の間に子どもが出来なかった場合や一人しかいない子どもが亡くなって、他の子どもを授かることが難しい場合です。

3年間ダニエル様と私の間にこどもが出来なければ、エド様が侯爵家を継ぐことが可能となるのです。

でも、もしかしたらダニエル様は伯爵家に気を遣って私との間にこどもを持つおつもりかもしれません。

そうしたら・・・

その子は爵位は継げても、きっと父からの愛情はもらえずに苦しむ事になるでしょう。
どんなに隠してもわかってしまうと思うのです。愛する人とのこどもと、そうでない人とのこどもに向ける視線の違いに。
私はこどもにそんな思いはさせたくない。

「メアリー。」

「はい、お嬢様。」

「頼んでおいた薬は準備してある?」

「!・・・はい、準備してあります。本当によろしいのですか?」

「ええ。愛する人に愛されないのは、私だけで十分よ。」

私はダニエル様に隠れて避妊薬を飲むことに決めた。これであの家族の幸せを守ることができる。
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