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本編

第四話

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相変わらずダニーにはなかなかお会いする事ができない日々を送っています。
ダニーへの恋しさは募り、ついに今日は!メイドのメアリーを連れてダニーの尾行をしています!

なんでも、兄によるとダニーがここのところ良く街にお忍びでおりているというのです。
どうしても気になってしまった私は、メアリーに頼み込んでダニーのあとをつけてみる事にしたのです。
最近読んだ、探偵ものの小説に影響されているのかもしれません。

「あ!メアリー!ダニーが立ち止まったわ!・・・あれは何かしら?」

「あれは・・・昔から街で愛されている生花店ですね。ポラストリ伯爵家でもあちらの生花はよく仕入れていますよ。」

「そうなのね。王太子様のお使いかしら・・・。もう少し近づいてみましょう。」

そうしてダニーが訪れている生花店に近づいてみると・・・

○○○

!!
ダニーが・・・ダニーがとても優しい顔でほほえんでいます。
・・・あんな表情、私には見せてくれたことはありません。いえ、幼い頃は見たことがあります。
しかし少なくとも学院生になってからは見たことがありません。

どうして・・・
おそるおそるダニーの視線の先をみてみると・・・

!!!
とても綺麗な女性がそこにはいました。茶色い髪にダニーより少し明るい碧の瞳。
とても綺麗な笑顔で楽しそうにダニーと話し込んでいます。

どうして・・・
婚約者である私には決して見せない優しい顔。たまに会えても私の話に相づちをうつばかりなのに・・・。
彼女にはよくお話になるのですね・・・。

呆然と立ち尽くし、私はただその様子を見つめることしかできません。しばらく固まっていると

「っ!!!!」
ダニーが頬を赤らめています・・・。もう、もう限界でした。
私はその場を駆け出しました。

「どうしてっ!!どうしてなのっ!!」

○○○

あれからは記憶がありません。気がついたら自室で泣いていました。
メアリーがなんとか連れ帰ってくれたようです。
涙は次々に溢れてとまりません。

そう、私は知ってしまったのです。

私が恋い慕い、いつのまにか愛しているあの方は。
あの方にとっては、私の事など家の決めた婚約者でしか無く。
あの方が本当に恋い慕い、愛しているのは。
あの美しい女性なのです。
あぁ。どうして尾行なんてしてしまったのか。
きっと時間が出来るたびに足繁くあの方の元へ通われているのでしょう。

知らなければ良かった。
あの方は婚約者としてのつとめは果たしてくれていたのです。
そっけない態度ではありましたが、ひどい事はされず私のつまらない話も静かに聞いてくれていました。
真実を知らなければ・・・私は幸せな婚約者でいられたのに・・・

もう知らなかった頃には戻れません。
私の心に一つの大きなヒビが入るのが分かりました。
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