23 / 54
第23話 事務所設立
しおりを挟む
「……ほぉ」
久しぶりに見た銀行の預金。
スーツやら時計やらと必要経費と割り切って色々買ったため爺から貰った金は半分以下になっていた。
だが、それがどうだろうか。
「40万円増えているな」
ここ最近の出費を考えると微々たる金額だ。
だが、この世界で初めて自分で稼いだ金だと考えると中々感傷深いものがある。
さて、何を買おうか。
読みたい漫画は大体電子書籍で購入済みだ。
ありがたいことに漫画というのは基本的に安い。
大体500円前後だ。つまり大よそ800冊買える計算だ。
食費やらホテル代なんかもあるため全部漫画に突っ込むことは出来ないが、十分な収入だ。
「フフフフ」
焼けた伸びるチーズを堪能しながらまた一つピザを頬張る。
思わず笑みがこぼれる。やはりピザは至高の料理。
マルゲリータもお気に入りだが、このソーセージピザも捨てがたい。
本当にこのサイゼリヤのピザはうまい。
値段も安く味も馬鹿に出来ない。道を歩いていて気になり思わず入った店だが正解だったようだ。
それにこの店はピザ以外も結構美味い。
今後通おうかな。
「――あの、お待たせしてすみません!」
「お待たせ、礼土君」
目の前に二人の女性と一人の男性が来た。
山城利奈と山城栞。
先日、宿命の敵とも言える田嶋との依頼をこなした後にこの二人から連絡があったのだ。
「やあ、礼土君。先日はありがとう。彰のやつ随分君の事をほめていたよ」
山城和人。
背信業を生業としている商会のトップ。
油断してはならない、正直何をやっているのかさっぱり分からないが、敵に回すわけには行かないだろう。
何、俺なら出来る。
かつてあの性悪合理主義聖女に仕返しするためだけに、神聖騎士団をまとめて全員ボコボコにしてやったじゃないか。
何かあっても俺の力があればッ!
いやだめだ。
この世界で不当な暴力は捕まってしまう。
やはり仲良くなる方向で行くとしよう。
「いえいえ、何やらお話があると聞いていましたからね。それよりすみません、俺だけ飯を食べていて」
「気にしないでくれ。というか、せっかくだから本格イタリアンピザを出す店とか紹介しようか?」
「それはありがたい。ぜひお願いします」
個人的には今食べている安価なピザも好きだが、そういう窯で焼くピザも実にうまい。
同じ料理であるはずが、提供する店によって随分味が違うのは興味深いが、それも飽きなくて実にいいと思う。
「それで話とは?」
マジで何の話だ。
まさか俺を背信させる気なのか?
あいにくと信じる神なんていない。
かつての世界でさえ、創造神なんて信じていなかった。
実在しない偶像の類だと思っていた。いや、実際にはいてただの糞爺だったんだが……
「ああ。多分礼土君には良い話だと思うんだけどね。どうだろうか、――君の事務所を作らないか?」
「……事務所?」
何か事務仕事をする場所という事か?
イマイチわからんな。
「簡単に言えばだ。礼土君が所長の心霊事務所を立ち上げないか?」
「事務所ですか……」
「そうです。正直目に見えないものは信じない僕ですが、貴方は本物だと断言できる。それゆえ、今後仕事が立て込む事を考えると事務所が必要になると思ったんです」
「ふむ、それはなぜでしょうか?」
正直インチキ感満載なのだが、一応今のところ対処に問題はないようだ。
ならば、これで今後金銭を稼ぐ手段としては使えるだろう。
だが、そのために事務所というものが必要という理由がわからんな。
「確定申告面倒ですよ?」
「……確かに」
そうだ。この国のルールとして所得を得た分だけそういった申請をしなければならないのだった。
はっきりって細かい事は全然分からないのだが、やらないとまずいらしい。
「税理士を雇ったり色々段取りがあるんですが、正直に聞きましょう。その辺り分かりますか?」
「さっぱりですね」
「ええ、馬鹿にしているわけではなく本当に面倒な手続きが多いですからね。だから僕が準備しましょう。必要な場所も人も書類なんかもすべてです。どうでしょう、一緒にやりませんか?」
なるほど、どうしたもんか。
はっきり言って和人の意図が読めん。
ただの親切心?
いや、そんな玉じゃないだろう。
仮にも人の上に立っている人間なのだ。
そうも都合の良い話なんてあるはずがないだろう。
「……ははは。さすがにいきなり返事は期待していません。出来ればよく考えてほしいですけどね」
「理由を聞いてもいいですか? 和人さんにメリットはないと思うんですけど」
「――沙織はね。霊能力があるって話をした事があるでしょ?」
沙織。一度だけ会った事がある和人の妻か。
確かに妙な力を纏っていたのは感じたが……
それと何か関係あるのか?
「沙織の実家はそれなりに有名な名家でね。正直そっち系のトラブルが多いんだ。事件に巻き込まれる事も結構多い。――だから、正直君とそれなりに関係を強くしたいというのが本音だ」
いつもヘラヘラ笑っている印象の和人だが、その目は非常に真剣な様子だ。
それにしてもなるほどね……。
手で口を覆いながら考える振りをする。
正直な話、面倒な事が押し付けられるので断る理由はない。
それになにより……
おもしろそうだな。
「――わかりました。色々面倒を掛けますがよろしくお願いします」
「そうですか! では、さっそく段取りをとりますね。礼土君、どうぞよろしく」
そういって和人は身を乗り出し、右手を差し出してきた。
それを見て、俺はすぐに手を伸ばし応えた。
「ええ、こちらこそ」
数週間後、都内某所。
「お久しぶりですね、礼土さん」
「……ええ。お久しぶりです。田嶋さん」
なぜ貴様がここにいる?
いや、わかってる。この事務所は田嶋不動産から紹介された物件なのだ。
だが、なぜ不動産の近くの家なんだ?
くそ、なんの嫌がらせや。
「礼土さん。とりあえずこちらを」
「おや、これは……?」
「コーヒー豆です。後引っ越し祝いにコーヒーメーカーも用意しましたよ」
血が出るほど拳を握ってしまう。
たじまぁぁ
お前はやはり俺の敵なのか?
なぁにが悲しくてそんな苦い液体を飲まねばならんのだ。
「ありがとうございます。うれしいですよ……えぇ、本当に」
そんな敵襲を受けながらもここに【勇実心霊相談所】が立ち上がった。
久しぶりに見た銀行の預金。
スーツやら時計やらと必要経費と割り切って色々買ったため爺から貰った金は半分以下になっていた。
だが、それがどうだろうか。
「40万円増えているな」
ここ最近の出費を考えると微々たる金額だ。
だが、この世界で初めて自分で稼いだ金だと考えると中々感傷深いものがある。
さて、何を買おうか。
読みたい漫画は大体電子書籍で購入済みだ。
ありがたいことに漫画というのは基本的に安い。
大体500円前後だ。つまり大よそ800冊買える計算だ。
食費やらホテル代なんかもあるため全部漫画に突っ込むことは出来ないが、十分な収入だ。
「フフフフ」
焼けた伸びるチーズを堪能しながらまた一つピザを頬張る。
思わず笑みがこぼれる。やはりピザは至高の料理。
マルゲリータもお気に入りだが、このソーセージピザも捨てがたい。
本当にこのサイゼリヤのピザはうまい。
値段も安く味も馬鹿に出来ない。道を歩いていて気になり思わず入った店だが正解だったようだ。
それにこの店はピザ以外も結構美味い。
今後通おうかな。
「――あの、お待たせしてすみません!」
「お待たせ、礼土君」
目の前に二人の女性と一人の男性が来た。
山城利奈と山城栞。
先日、宿命の敵とも言える田嶋との依頼をこなした後にこの二人から連絡があったのだ。
「やあ、礼土君。先日はありがとう。彰のやつ随分君の事をほめていたよ」
山城和人。
背信業を生業としている商会のトップ。
油断してはならない、正直何をやっているのかさっぱり分からないが、敵に回すわけには行かないだろう。
何、俺なら出来る。
かつてあの性悪合理主義聖女に仕返しするためだけに、神聖騎士団をまとめて全員ボコボコにしてやったじゃないか。
何かあっても俺の力があればッ!
いやだめだ。
この世界で不当な暴力は捕まってしまう。
やはり仲良くなる方向で行くとしよう。
「いえいえ、何やらお話があると聞いていましたからね。それよりすみません、俺だけ飯を食べていて」
「気にしないでくれ。というか、せっかくだから本格イタリアンピザを出す店とか紹介しようか?」
「それはありがたい。ぜひお願いします」
個人的には今食べている安価なピザも好きだが、そういう窯で焼くピザも実にうまい。
同じ料理であるはずが、提供する店によって随分味が違うのは興味深いが、それも飽きなくて実にいいと思う。
「それで話とは?」
マジで何の話だ。
まさか俺を背信させる気なのか?
あいにくと信じる神なんていない。
かつての世界でさえ、創造神なんて信じていなかった。
実在しない偶像の類だと思っていた。いや、実際にはいてただの糞爺だったんだが……
「ああ。多分礼土君には良い話だと思うんだけどね。どうだろうか、――君の事務所を作らないか?」
「……事務所?」
何か事務仕事をする場所という事か?
イマイチわからんな。
「簡単に言えばだ。礼土君が所長の心霊事務所を立ち上げないか?」
「事務所ですか……」
「そうです。正直目に見えないものは信じない僕ですが、貴方は本物だと断言できる。それゆえ、今後仕事が立て込む事を考えると事務所が必要になると思ったんです」
「ふむ、それはなぜでしょうか?」
正直インチキ感満載なのだが、一応今のところ対処に問題はないようだ。
ならば、これで今後金銭を稼ぐ手段としては使えるだろう。
だが、そのために事務所というものが必要という理由がわからんな。
「確定申告面倒ですよ?」
「……確かに」
そうだ。この国のルールとして所得を得た分だけそういった申請をしなければならないのだった。
はっきりって細かい事は全然分からないのだが、やらないとまずいらしい。
「税理士を雇ったり色々段取りがあるんですが、正直に聞きましょう。その辺り分かりますか?」
「さっぱりですね」
「ええ、馬鹿にしているわけではなく本当に面倒な手続きが多いですからね。だから僕が準備しましょう。必要な場所も人も書類なんかもすべてです。どうでしょう、一緒にやりませんか?」
なるほど、どうしたもんか。
はっきり言って和人の意図が読めん。
ただの親切心?
いや、そんな玉じゃないだろう。
仮にも人の上に立っている人間なのだ。
そうも都合の良い話なんてあるはずがないだろう。
「……ははは。さすがにいきなり返事は期待していません。出来ればよく考えてほしいですけどね」
「理由を聞いてもいいですか? 和人さんにメリットはないと思うんですけど」
「――沙織はね。霊能力があるって話をした事があるでしょ?」
沙織。一度だけ会った事がある和人の妻か。
確かに妙な力を纏っていたのは感じたが……
それと何か関係あるのか?
「沙織の実家はそれなりに有名な名家でね。正直そっち系のトラブルが多いんだ。事件に巻き込まれる事も結構多い。――だから、正直君とそれなりに関係を強くしたいというのが本音だ」
いつもヘラヘラ笑っている印象の和人だが、その目は非常に真剣な様子だ。
それにしてもなるほどね……。
手で口を覆いながら考える振りをする。
正直な話、面倒な事が押し付けられるので断る理由はない。
それになにより……
おもしろそうだな。
「――わかりました。色々面倒を掛けますがよろしくお願いします」
「そうですか! では、さっそく段取りをとりますね。礼土君、どうぞよろしく」
そういって和人は身を乗り出し、右手を差し出してきた。
それを見て、俺はすぐに手を伸ばし応えた。
「ええ、こちらこそ」
数週間後、都内某所。
「お久しぶりですね、礼土さん」
「……ええ。お久しぶりです。田嶋さん」
なぜ貴様がここにいる?
いや、わかってる。この事務所は田嶋不動産から紹介された物件なのだ。
だが、なぜ不動産の近くの家なんだ?
くそ、なんの嫌がらせや。
「礼土さん。とりあえずこちらを」
「おや、これは……?」
「コーヒー豆です。後引っ越し祝いにコーヒーメーカーも用意しましたよ」
血が出るほど拳を握ってしまう。
たじまぁぁ
お前はやはり俺の敵なのか?
なぁにが悲しくてそんな苦い液体を飲まねばならんのだ。
「ありがとうございます。うれしいですよ……えぇ、本当に」
そんな敵襲を受けながらもここに【勇実心霊相談所】が立ち上がった。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる