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学園とこの世界について
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教師だからだろうか。私が『プラチナ』だと知っているのは。そして、私は教室に足を踏み入れた。日本の学校で言えば、大学の講義室のような部屋だった。階段状に席が作られ、20名ほどの生徒と思われる人間たちが座っている。彼らはほとんど私と教師らしき女性に注目していた。こんな目立つ行動は私はしたことがない。恥ずかしくて穴があったら埋もれたいくらいだった。
「さすがプラチナさんは重役出勤ねえ。入学したばかりで遅刻だなんて」
嫌味を言う教師らしき女性に、若干の苛立ちを覚えるけれど、反論できる余地なんてない。事実私は入学式をサボり、教室に遅刻したのだから。とはいえ、不親切な校舎の造りに文句がないわけではない。そんなふうに嫌味を言われるのは心外だ。
「……すみませんでした」
不本意ながら、私は謝った。ここは大人の対応をするべきところだろう。でも、私の声の具合や顔つき辺りが気に入らなかったのだろうか。教師らしき女性は言い放った。
「そう。じゃあ、魔法を披露してもらいましょうか。私に勝ったら許してあげるわ」
とんでもないことを言うものだ。素質はプラチナだとは言え、私はまだ魔法を使ったこともない、初心者なのに、教師と勝負? 普通に考えて、勝てるわけがない。恐らく、教師としての威厳を知らしめたいのだろう。私をダシにして。「許してあげる」ということは、「許さなかったら」どうするというのだろう。ここは何としても勝ちたいところだ。勝てるわけがなくても。
私はゲームの知識があるとはいえ、どうやって魔法を使うのかはわかっていない。『桐亜』の記憶では、魔法を使った経験はないのだから。
「どう勝負するって言うんですか?」
「そうねえ……この火を消してご覧なさい」
と言うと、教師は私の目の前に小さな炎を発現させた。息を吹きかければ消えそうな、その紫色の火は、床に落ちると、あっという間に大きくなった。
「ちょ……こんなの、消せるわけが……」
「5分以内に消せたら貴女の勝ち。まあ、消せなかったらこの教室のみんなが焼け死ぬだけだけど」
みるみるうちに大きくなる炎から熱波が襲ってきて、私はパニックになりそうになった。けれど、我慢した。パニックになって、何もできずにいるなんてできない。いきなり教室のみんなの命を人質にとられて、呆けている場合ではない。でも、どうしたらいいのか、さっぱりわからない!!
「さすがプラチナさんは重役出勤ねえ。入学したばかりで遅刻だなんて」
嫌味を言う教師らしき女性に、若干の苛立ちを覚えるけれど、反論できる余地なんてない。事実私は入学式をサボり、教室に遅刻したのだから。とはいえ、不親切な校舎の造りに文句がないわけではない。そんなふうに嫌味を言われるのは心外だ。
「……すみませんでした」
不本意ながら、私は謝った。ここは大人の対応をするべきところだろう。でも、私の声の具合や顔つき辺りが気に入らなかったのだろうか。教師らしき女性は言い放った。
「そう。じゃあ、魔法を披露してもらいましょうか。私に勝ったら許してあげるわ」
とんでもないことを言うものだ。素質はプラチナだとは言え、私はまだ魔法を使ったこともない、初心者なのに、教師と勝負? 普通に考えて、勝てるわけがない。恐らく、教師としての威厳を知らしめたいのだろう。私をダシにして。「許してあげる」ということは、「許さなかったら」どうするというのだろう。ここは何としても勝ちたいところだ。勝てるわけがなくても。
私はゲームの知識があるとはいえ、どうやって魔法を使うのかはわかっていない。『桐亜』の記憶では、魔法を使った経験はないのだから。
「どう勝負するって言うんですか?」
「そうねえ……この火を消してご覧なさい」
と言うと、教師は私の目の前に小さな炎を発現させた。息を吹きかければ消えそうな、その紫色の火は、床に落ちると、あっという間に大きくなった。
「ちょ……こんなの、消せるわけが……」
「5分以内に消せたら貴女の勝ち。まあ、消せなかったらこの教室のみんなが焼け死ぬだけだけど」
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