乙女ゲームの主人公に転生したのに攻略対象がデレてくれません!! 

桜水城

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予測不能の攻略対象との出会い

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「そんなところで新入生が何をしている?」
 
 後ろから声をかけられて、振り向くと、私の人生で見たことがないほどの美貌の男子生徒がそこにいた。実際に目にすると、こんな姿なんだ……!! 見た瞬間わかった。この人が『柊季しゅうき』だ。パーフェクトヒューマン生徒会長! 私の一番推し!! わあああああ!! なんだこれ、なんだこの胸のドキドキは……!! さっき蘭那らんなにびっくりさせられたときよりもずっと胸が苦しい!! 
 
「早く教室に行ったらどうだ? クラスがわからないのか?」
 
 私が返事をしない間に、更に柊季が畳みかけるように話しかけてきた。え、ヤバい。私、話しかけられてる!! 柊季と知り合うチャンス!! ゲームではこんな序盤で知り合うことなんてできなかった。イベントが……予測不能? 
 
「柊季くん……!! あ、あの、その……」
 
 返事をしようと口を開いたところで、彼の端正な美しい顔が歪んだ。
 
「……は? くんづけ? 新入生のくせに」
 
 し、しまったぁぁぁぁぁー!! 今の私は新入生で、彼の下級生に当たるわけだから、『くんづけ』はまずかったのか……。で、でも……!! 
 
「え、でもジャ〇ーズだったら年上でもくんづけで呼びますよ?」
「ジャニー〇ってなんだ? そんなものは知らん!」
 
 苦し紛れの言い訳は、一刀両断された。そりゃそうか。ここは現代日本ではないのだし、ジャ〇ーズなんて存在しない。むむむ……。今、好感度メーターは見られないけれど、見なくてもわかるくらいに私の印象は最悪だ。
 
「お前……講堂にいなかっただろ?」
 
 私の顔をまじまじと見つめて、柊季が言った。ただでさえドキドキしている胸が、大きくドクンと鳴った。
 
「え……? そんなことわかるんですか?」
 
 柊季は生徒会長だから、入学式の壇上で挨拶もしたのかもしれない。けれど、新入生は100人単位のはずだ。一人ひとり顔を認識できるわけがない。
 
「お前の顔は見覚えがない。その瞳の色……そんな特徴があればいやでもわかる」
 
 確かに私はこの世界でも珍しい、オッドアイだ。乙女ゲームの主人公でも珍しいそんな特徴的な目という設定で、6人……いや、7人の攻略対象に一目で覚えられ、恋に落ちるのだ。ちなみに、目の色が違うからといって、両目の見え方に差はない。どっちが視力が悪いということもなく、眼鏡なしで遠くが見えるのだ。
 
「いやでも……生徒会長の挨拶の場でだとしたって、私に見覚えがないって言いきれるなんて……」
「さっきから何なんだ? お前」
 
 私の言葉をさえぎり、柊季が詰め寄る。え、私なんか変なこと言った……? 
 
「なんで新入生のお前が、しかも入学式も出てないのに、僕の名前と生徒会長だということを知っている?」
 
 し、しまったぁぁぁぁぁー!! またしても私は墓穴を掘っていたのか……。墓穴掘りすぎて地球の裏側までいっちゃうんじゃない!? いや、そんなことはないか。そもそも、この世界、地球上にあるのだろうか? いや、ないかもしれない。
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