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本編・第三部
233 小さく、呟いた。(下)
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「黒川。今、どうやって過ごしているか知ってる?」
「…………………は?」
片桐の口から飛び出してきた、想定外の名前。そうして、想定外の質問。日本語のはずなのに、一瞬、理解が及ばなかった。
てっきり。知香に関する何かを引き出そうとしている、と考えていた。予想の斜め上をいく展開に、ぽかん、と口が開く。
無言の空間が広がる。片桐の呼吸の音すら、聞こえない。
俺の唖然とした表情に、くすり、と。片桐が嘲笑うような笑みを浮かべ、ゆるく腕を組んだ。長袖のワイシャツが擦れる衣擦れの音が、俺と片桐だけのこの空間に響いて消えていく。
「別に知らなければいいんだ。だけど、昇進して役員に近い立ち位置にいるお前なら。……きっと知ってるはずだよね~ぇ?」
いつもの飄々とした口調。先ほどのビジネス口調とは全く異なる、一見機嫌がよく愉しそうに弾んだ声色。けれど、本心は全く違うのだ、と。俺はこれまでの片桐と交わした会話からそれを知り尽くしている。
ヘーゼル色の瞳が、真っ直ぐに向けられる。これまでも、こんな―――鮮やかに歪められた瞳は何度も目にしてきた。……けれど。
(………な、んだ?この、感覚…)
これまでとは違う、片桐の瞳。
俺を搦め取るような何かを宿していたはずの、瞳。今はそういった感情は読み取れず、まるで何かを探っているような視線だ。表現しようのない違和感。
「……お前は、それを知ってどうするつもりだ」
その違和感を心の中で頭を振って払いのけ、何かを探るようなその瞳から視線を外した。腕を伸ばし、ローテーブルに広げられた資料に手を伸ばしてそれらを纏めていく。俺のその様子に、片桐が『知れたことを聞くな』とでも言うように鼻で嗤うような声を上げる。
「決まってる。黒川は俺を新人だと思い込んで俺のことを下に見ていた。…………お前も俺と同族ならわかるでしょ?」
投げかけられたその言葉。思わず、資料を纏める手がぴくりと跳ねた。片桐の弾んだような声が、くるり、と。一瞬で低いそれに切り替わる。
「舐められたままなのは気に食わない。お礼参りにでも行ってやろうかと思って、さ」
「………」
地を這うような、片桐の声。恨み、憎しみ、怨嗟。それらが滲む声色。ともすれば気圧されるような迫力で紡がれる、憎悪を孕んだ言葉たち。
お礼参り。神社仏閣に願を掛け、その願いが成就した時に、お礼として礼拝や布施を行うことだ。しかし、この場合はどう考えても、それを転じた意味合いだろう。
(………自分を不正な取引に巻き込もうとした事への報復…というところか)
先ほど感じた、違和感のある瞳。探るような視線。それらの意図を察し、腑に落ちる感覚があった。
「……教えても良いが、知香はそういうことを嫌うぞ」
そう口にしながら、視線を落としたまま手を動かして資料を纏める作業を再開する。
復讐はなにも生まない。けれど、それは平和な日本を生きてきた俺故の価値観で。生も死も曖昧で、手を伸ばせばそこには死があるような、そんな日常を生きてきた片桐には、きっと、届かない。
片桐のことは嫌いだ。一生涯赦せやしない。先ほど小林と交わしたような、そんな穏やかな会話を交わせる瞬間が訪れるわけもないと理解している。
けれど。片桐に、幸せになって欲しいと思っているこの感情は本物だ。
黒川の情報を渡すことで負の感情を増幅させ、それが憎しみの連鎖に繋がるとわかっていて、素直に教えたくはない。
何より。
『私の知らないところで、幸せになってくれたら』
知香は、そう言った。憎むのではなく、恨むのではなく。自分から見えない場所で、幸せであってくれたら、と。
知香の隣に立つならば。俺も、片桐や黒川に対しても……そういう感情を持っていたい。喩えそれが、どんなに相容れない人間だとしても。
とんとん、と、資料を纏める音がこの空間に響く。ゆっくりと視線を上げ、眼前に現れたヘーゼル色の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「……ふぅん。なるほどね」
片桐は、俺の言葉に面白そうに笑いながら声を上げた。けれど、その表情は不愉快極まりないということを俺にダイレクトに伝えてくる。片桐の明るい髪色と同じ色の眉が、一瞬跳ね上げられたのが何よりの証拠だ。
「別にこれは知香ちゃんのためじゃない。俺のためだ。ま、嫌われる=無関心ではないということだから。俺はそれさえもお前から彼女を奪い取る材料にしてみせるよ?」
「……っ、」
確かに、俺も。知香と正式に交際が始まる前の、駆け引きの場面では。知香の意識が俺に向くように。知香の視線は、俺を追うように。囲い込んでいくような、そんな言動をしていた。
片桐は、俺と同じ。囲い込みを得意とするタイプの人間だ。それすらも材料にしてみせる、という言葉は、冗談でもなんでもない、と。同族であるからこそ、一瞬で理解できた。
片桐が心底愉しそうに笑みを浮かべ、「というかさ」と。腕を組んだままニヤリと口を動かしていく。
「さっきも言ったけど。お前、俺に借りがあるの、忘れてな~い?」
「………」
借り。盾となるような言葉を突きつけられて、思わず唇を噛んだ。テーブルの上で纏め終えた資料をそっと握り締めて、遠回しに拒否の言葉を発していく。
「諜報機関とやらに在籍していたお前が、この程度のことを把握していないとは思えないが?」
こいつは、マスターの店で偶然出会った俺のことを調べられるくらいだ。黒川の現在を調べるなど造作もないことのはず。
じっと。俺は無言のまま、片桐の貼り付けたような笑みを睨みつける。片桐はニヤリとした笑みを崩さぬまま、ゆっくりと声を発した。
「あはは、確かにねぇ。これは一本取られた。じゃ、質問の仕方を変えよう」
するり、と。片桐が組んだ足を崩して、上下を入れ替えて長い足を組み直した。そうして、すっと。片桐の声が低くなる。
「黒川は。社長に援助されて、無為徒食の日々を送っている」
「……」
黒川は、懲戒解雇となった後も。それでもなお社長に援助して貰いながら、定職につくこともなく生活しているらしい、ということは知香にも伝えた通りだ。正直、そこまで尻拭いをしなくても、と、社長に対しても腹に据えかねている部分はあるが、あくまでもこれはプライベートのこと。俺が踏み込んで関与するつもりはないから、なるべくこの件については考えないようにしている。
沈黙は、即ち肯定だ。しかし、俺は黒川と社長に向ける憤懣やるかたない思いから、何も言葉を発することが出来なかった。
「………BINGO、だね」
片桐が、はぁ、と。大きく肩を落としながら、つまらなさそうにヘーゼル色の瞳を俺から外した。そうして、組んでいた足と腕を崩し、ローテーブルに広げられていた手帳をパタリと閉じた。
「それさえわかれば今の俺には十分。ありがと、智くん」
片桐はそう口にして、するり、と。沈み込んでいたソファから立ち上がる。そうして、腰を曲げて閉じた手帳を手に持って、ゆっくりと応接室の扉に向かっていく。それはまるで、この話はこれで終わりだ、と。そう言いたげな動作だ。
「部長に昇進したお前と同じように、俺も課長代理に昇進したからねぇ。この後も予定詰まってるから」
少しばかり、面倒だ、というような空気を纏った声色で紡がれたその言葉。片桐は出世に対してそう欲がないということが窺える。
トス、トス、と。片桐が足を動かすたびに、カーペットに吸収される音が響く。片桐は長袖を纏った腕を伸ばし、応接室の扉をカチャリと開いた。
「さ、邨上さん。今後ともどうぞよろしくお願いしますね」
片桐は飄々とした雰囲気を封印し、へにゃりとした人懐っこい笑みを浮かべたまま。丁寧なビジネス口調で、ソファに沈み込んでいる俺にヘーゼル色の瞳を向けていた。
片桐との商談を終え、三井商社に戻る。歩きながらスラックスのポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを起動した。知香とのやりとりの画面を開くも、先ほど送信したメッセージには既読が付いていない。
今日は金曜日。土日は税関が閉まるから通関依頼も立て込んでいて忙しいのだろう、と、自分を納得させる。するりとスマホをスラックスのポケットに滑り込ませた。
(……お礼、参り…)
片桐は狡猾な男だ。きっと、あの夜のように法で裁けるような証拠は残さずに黒川に報復する気でいる。
俺の革靴の底が、アスファルトを叩く音がする。胸の中に生まれた言いようのない感情がぐるぐると渦巻いている。
俺と片桐は、背中合わせの同族のはず。多くの人間と触れ合いその人物の本質を見抜くあのマスターでさえも、そう認めている。だというのに。
(何を……企んで、いる?)
あいつが何を企んでいるのか。さっぱり読めない。あの件が解決して2ヶ月が経過した今頃になって、なぜ急に黒川に報復しようと考えているのか。
(………)
口元に手を当てながら、三井商社が入っているオフィスビルまで戻る道中、それをずっと考えていたが。
―――結局。何ひとつ、心当たりすらも思い浮かばなかった。
三井商社に辿り着いた頃には、昼休みに入っていた。自分のデスクの上で弁当をつつきつつ、午前中の商談内容を整理していく。
が、時間は待ってくれない。バタつきながらも、システムに入力後の電子承認や営業課から上がってくる報告に耳を傾けて指示を飛ばす。企画開発部にかかる業務も取りこぼしのないように進めていく。
そうこうしているうちに、あっという間に終業時間が訪れる。すると、コンコン、と、ドアがノックされた。
「邨上、入るぞ」
「ん」
廊下から浅田の声が響いた。このシチュエーションに既視感を抱いたが、今朝もこんな光景で浅田がフォローに回ってくれていたなと思い返して、朝と同様に手元の書類から視線を上げずに短く返答する。
「邨上。おら、帰るぞ」
「は?」
浅田から訳の分からない言葉が飛んでくる。素っ頓狂な声を上げながら、手元の資料から視線を上げてぱちりとした二重の瞳を見つめた。
トントン、と。浅田が開いた扉から歩いて、俺のデスクまで近づいてくる。そうして、俺の手元から資料を取り上げて、憮然たる面持ちで言葉を続ける。
「お前、病み上がりだろう。今週も残業続きだったんだ、今日くらいはもうそれくらいで切り上げろ。ぶっ倒れられても敵わん」
「………」
昨日には全快したが、それまで時折咳き込んでいたのを見られていたのか。呆気に取られたままでいると、浅田が厳しめの表情を和らげふっと口の端をつり上げた。
「営業課は一部納得行っていない人間もいるが、大半の人間はお前を神輿として担ぐことに不満はない。……頼りにされてるんですよ、部長は。その期待に応えるのも部長の役目だと思いますが?」
そうして、浅田は。心底面白そうに笑みを浮かべ、俺のビジネスバッグを手に持ち、俺の腕を掴んで俺の身体を半ば強引に引っ張っていった。
半ば強引に仕事を切り上げさせられたが、浅田が口にした言葉を自分の中でゆっくりと噛み砕くと、思わず涙が溢れそうなほどの感情が込み上げてきた。それを必死に堪えながら、浅田と同じ電車に乗って帰路についた。
「じゃ、月曜日な。家でも仕事して無理するなよ」
そう口にして、浅田は降りたばかりの車両に背を向け、ヒラヒラと手を振った。その姿に右手を挙げて無言の答えを返していく。
プシュ、という音が響き、ドアが閉まる。独特の感覚があり車体が揺れ、再度進行方向へと動き出した。
「……」
本当に。俺は周りの人間に恵まれている。一般的に、十分な引き継ぎもなく担当が変われば憤慨する企業の方が多いはずなのに、この1週間、後任の挨拶に回った企業からは罵声を浴びせられたりするなど、そんな事はひとつもなかった。浅田のように自分からサポートに回ってくれる人間もいる。周りの協力あってこその『俺』ということを嫌という程思い知らされた。
そっと、浅田に返答するために挙げた右の手のひらを見つめる。
俺のこの手には、沢山の人間の想いが託されている。その期待に応えられるように、俺はこれからも全力で業務に取り組まなければ。
そう心の中で呟くと、自宅の最寄り駅に到着した。今日は金曜日。知香は恐らく残業で少し遅めの帰宅になるだろうから、先にスーパーに寄って夕食の買い物を済ませたい。電車を降りて、駅に直結しているスーパーに立ち寄り食材を買い込む。購入した食材をサッカー台で詰めていると、カサカサ、と。紙が擦れるような不思議な音が聞こえてくる。
(……?)
音が生まれていると感じた方向に視線を向けた。眼前に飛び込んできたのは、青々とした笹に、金紙、銀紙、色とりどりの紙で作られた飾り。そうして。
『大好きな人と、いつまでも
穏やかな日常を過ごせますように』
………と。見慣れた知香の文字で記された、オフホワイトの短冊。
「……ふっ、」
短冊に記された、小さな願い。思わず、笑みが漏れた。
よく考えれば今日は七夕だ。この笹が飾られるのも今日まで。ふい、と、サッカー台に視線を落とし、詰めたレジ袋をサッカー台に一度置く。笹の下に置いてある短冊の中から俺が好きな赤い色の短冊を探し出し、備え付けられているペンを手に取った。
『ずっと、知香のそばに』
それだけを短く書いて、オフホワイトの短冊の真横に吊るした。隣り合う紅白の短冊を満足げに眺めて、俺は自宅へゆっくりと足を向けた。
カチャリと音を立てて玄関を開くと、足元に知香のヒールが綺麗に揃えて置いてあった。
「ただいま、知香」
残業だと思っていたが、もう帰ってきていたのか。何気なくそう考えるも、瞬時に違和感を抱いた。
三井商社は始業8時半、終業17時半。
対して、極東商社は始業9時、終業18時。
仮に定時で上がったとしても、同じ駅を使って下の最寄り駅まで俺と同じように電車で通勤しているのだから、俺より早く帰宅しているということは有り得るはずがない。
それこそ―――早退でも、していなければ。
午前中の、商談の際。知香の顔が普段よりも赤らんでいたことを思い出し、一気に背筋が冷えた。
「知香っ……!?」
どさり、と。大きな音を立てて手に下げていたレジ袋が足元に落ちる。それすら構わず、革靴を急いで脱いで廊下を滑るように走った。
ガタンと音を立てながらリビングに繋がるドアを開く。リビングを通り過ぎ寝室に視線を向けるも、ベッドの中に知香の姿はない。ベッドサイドに薬の袋と水が入ったグラスが置いてあるのが目についた。
トイレにでも行ったのか、いや、それでも俺が声を上げたから俺が帰ってきたことには気づいているだろうし、何かしらの返答がないこの状況はおかしい、と、玄関に逆戻りすると、先ほどは気がつけなかったが脱衣所に繋がる扉が開きっぱなしになっていた。
蝶番を軋ませながら脱衣所に身体を滑り込ませると。視界に飛び込んできたのは、洗面台に上半身を預けたまま、ぐったりしている知香の姿。
「っ……!!」
その姿にざぁっと音を立てて血の気が引いた。咄嗟に駆け寄り知香の身体に触れると、燃えるように熱い。乱れた呼吸とじっとりと汗ばんだ顔。汗で濡れた短い髪がピタリと頬に貼り付いている。
測らなくてもわかる。かなりの高熱だ。
不意に、酸味を帯びた何かの匂いが鼻についた。恐らく嘔吐し口をゆすいでいる時に意識を失ったのだろうと推測する。この匂いがまだ仄かに残っていることから、倒れてからそう時間は経っていないはず。
(……鼻が利く体質で助かった…)
嗅覚が鋭敏だからこその悩みもあった。スクランブル交差点のような人混みに紛れてしまうと、行き交う人々の香水の香りや体臭が混ざり合い、具合が悪くなる。だからあまり人が集まる場所には寄り付きたくない。知香とのデートも、もっぱら人が少ない場所を選んでいる。人出が多かったとしてもその環境に厭わずに足を運べるのは、初詣くらいだ。
人よりも利く嗅覚をこんな形で役立てられるとは思わなかった。慌てて知香の身体を抱き上げ、ベッドに寝かせる。
汗ばんだ身体をタオルで拭きあげ、じっとりと湿った寝間着を替える。知香を抱く度に俺がデコルテや背中に付けていた所有痕すらも薄く見えてしまうほど、全身が熱で赤らんでいる。
俺が先週寝込んだ際に知香が購入してきてくれた冷却シートを額に貼り、これも知香が先週購入していた清涼飲料水を飲ませようとするが、中々上手くいかない。
これだけ汗をかいているのだ。水分を取らせないと脱水症状を起こし、さらに苦しい思いをさせるだけ。最終手段として、口移しで飲ませることにした。
燃えるように熱い知香の身体。時折、苦しそうなうめき声が薄い唇から漏れ出ていく。
俺が無茶をしたばかりに引いた風邪をこうして知香に移してしまったことは明白。自責の念に駆られながら、帰宅後の自分の着替えなども放り出して必死に看病をする。
夜がゆっくりと更けていく。温くなった氷枕を変え、知香の頭を持ち上げてその下に冷えた氷枕を滑り込ませる。
「……ん…」
知香が小さく身動ぎをして、声を上げた。意識を取り戻したか、と少しばかり安堵して知香の表情を観察するも、知香は目覚めることなくそのまま眉をぎゅっと寄せていく。
(…………冷たさに対する反射反応、か)
意識を失ってどれくらいが経つのだろう。ふい、とベッドサイドの時計に視線を向けると、今は日付が変わる直前の時間だ。俺が帰宅したのが18時半頃だったから少なくとも6時間以上は意識がない。
ベッドサイドに置いてある薬の袋を手に取ると、知香に処方された薬の中には高熱が出た時用の頓服薬まで処方されていた。
(……頓服を飲ませるか…)
これを飲ませても熱が下がらなければ、明日の朝に休日診療所に連れて行こう。そう心に決めて、薬剤情報提供文書に『夜』と記載されている薬を選び出す。ベッドサイドに置いてある水が入ったグラスを手に取り、頓服薬と選び出した薬を口移しで飲ませる。
(……俺の、せいだ…)
俺が体調管理を怠ったばかりに。知香をこうして苦しませてしまっている。
普段から身体の丈夫さには自信を持っていた。寝込むような風邪を引いたのは小学生以来ではなかったか。そんな俺でさえもキツかったこの風邪は、基礎体力が違う知香に取っては耐えられぬほどの苦しみだろう。
熱で魘されている知香には届かない、とわかっていても。俺にはただ、謝るしか、出来ない。
「ごめん……ごめんな…」
目を瞑り、苦しそうに眉間に皺を寄せたままの知香の頬の輪郭をなぞって。
小さく。小さく、呟いた。
「…………………は?」
片桐の口から飛び出してきた、想定外の名前。そうして、想定外の質問。日本語のはずなのに、一瞬、理解が及ばなかった。
てっきり。知香に関する何かを引き出そうとしている、と考えていた。予想の斜め上をいく展開に、ぽかん、と口が開く。
無言の空間が広がる。片桐の呼吸の音すら、聞こえない。
俺の唖然とした表情に、くすり、と。片桐が嘲笑うような笑みを浮かべ、ゆるく腕を組んだ。長袖のワイシャツが擦れる衣擦れの音が、俺と片桐だけのこの空間に響いて消えていく。
「別に知らなければいいんだ。だけど、昇進して役員に近い立ち位置にいるお前なら。……きっと知ってるはずだよね~ぇ?」
いつもの飄々とした口調。先ほどのビジネス口調とは全く異なる、一見機嫌がよく愉しそうに弾んだ声色。けれど、本心は全く違うのだ、と。俺はこれまでの片桐と交わした会話からそれを知り尽くしている。
ヘーゼル色の瞳が、真っ直ぐに向けられる。これまでも、こんな―――鮮やかに歪められた瞳は何度も目にしてきた。……けれど。
(………な、んだ?この、感覚…)
これまでとは違う、片桐の瞳。
俺を搦め取るような何かを宿していたはずの、瞳。今はそういった感情は読み取れず、まるで何かを探っているような視線だ。表現しようのない違和感。
「……お前は、それを知ってどうするつもりだ」
その違和感を心の中で頭を振って払いのけ、何かを探るようなその瞳から視線を外した。腕を伸ばし、ローテーブルに広げられた資料に手を伸ばしてそれらを纏めていく。俺のその様子に、片桐が『知れたことを聞くな』とでも言うように鼻で嗤うような声を上げる。
「決まってる。黒川は俺を新人だと思い込んで俺のことを下に見ていた。…………お前も俺と同族ならわかるでしょ?」
投げかけられたその言葉。思わず、資料を纏める手がぴくりと跳ねた。片桐の弾んだような声が、くるり、と。一瞬で低いそれに切り替わる。
「舐められたままなのは気に食わない。お礼参りにでも行ってやろうかと思って、さ」
「………」
地を這うような、片桐の声。恨み、憎しみ、怨嗟。それらが滲む声色。ともすれば気圧されるような迫力で紡がれる、憎悪を孕んだ言葉たち。
お礼参り。神社仏閣に願を掛け、その願いが成就した時に、お礼として礼拝や布施を行うことだ。しかし、この場合はどう考えても、それを転じた意味合いだろう。
(………自分を不正な取引に巻き込もうとした事への報復…というところか)
先ほど感じた、違和感のある瞳。探るような視線。それらの意図を察し、腑に落ちる感覚があった。
「……教えても良いが、知香はそういうことを嫌うぞ」
そう口にしながら、視線を落としたまま手を動かして資料を纏める作業を再開する。
復讐はなにも生まない。けれど、それは平和な日本を生きてきた俺故の価値観で。生も死も曖昧で、手を伸ばせばそこには死があるような、そんな日常を生きてきた片桐には、きっと、届かない。
片桐のことは嫌いだ。一生涯赦せやしない。先ほど小林と交わしたような、そんな穏やかな会話を交わせる瞬間が訪れるわけもないと理解している。
けれど。片桐に、幸せになって欲しいと思っているこの感情は本物だ。
黒川の情報を渡すことで負の感情を増幅させ、それが憎しみの連鎖に繋がるとわかっていて、素直に教えたくはない。
何より。
『私の知らないところで、幸せになってくれたら』
知香は、そう言った。憎むのではなく、恨むのではなく。自分から見えない場所で、幸せであってくれたら、と。
知香の隣に立つならば。俺も、片桐や黒川に対しても……そういう感情を持っていたい。喩えそれが、どんなに相容れない人間だとしても。
とんとん、と、資料を纏める音がこの空間に響く。ゆっくりと視線を上げ、眼前に現れたヘーゼル色の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「……ふぅん。なるほどね」
片桐は、俺の言葉に面白そうに笑いながら声を上げた。けれど、その表情は不愉快極まりないということを俺にダイレクトに伝えてくる。片桐の明るい髪色と同じ色の眉が、一瞬跳ね上げられたのが何よりの証拠だ。
「別にこれは知香ちゃんのためじゃない。俺のためだ。ま、嫌われる=無関心ではないということだから。俺はそれさえもお前から彼女を奪い取る材料にしてみせるよ?」
「……っ、」
確かに、俺も。知香と正式に交際が始まる前の、駆け引きの場面では。知香の意識が俺に向くように。知香の視線は、俺を追うように。囲い込んでいくような、そんな言動をしていた。
片桐は、俺と同じ。囲い込みを得意とするタイプの人間だ。それすらも材料にしてみせる、という言葉は、冗談でもなんでもない、と。同族であるからこそ、一瞬で理解できた。
片桐が心底愉しそうに笑みを浮かべ、「というかさ」と。腕を組んだままニヤリと口を動かしていく。
「さっきも言ったけど。お前、俺に借りがあるの、忘れてな~い?」
「………」
借り。盾となるような言葉を突きつけられて、思わず唇を噛んだ。テーブルの上で纏め終えた資料をそっと握り締めて、遠回しに拒否の言葉を発していく。
「諜報機関とやらに在籍していたお前が、この程度のことを把握していないとは思えないが?」
こいつは、マスターの店で偶然出会った俺のことを調べられるくらいだ。黒川の現在を調べるなど造作もないことのはず。
じっと。俺は無言のまま、片桐の貼り付けたような笑みを睨みつける。片桐はニヤリとした笑みを崩さぬまま、ゆっくりと声を発した。
「あはは、確かにねぇ。これは一本取られた。じゃ、質問の仕方を変えよう」
するり、と。片桐が組んだ足を崩して、上下を入れ替えて長い足を組み直した。そうして、すっと。片桐の声が低くなる。
「黒川は。社長に援助されて、無為徒食の日々を送っている」
「……」
黒川は、懲戒解雇となった後も。それでもなお社長に援助して貰いながら、定職につくこともなく生活しているらしい、ということは知香にも伝えた通りだ。正直、そこまで尻拭いをしなくても、と、社長に対しても腹に据えかねている部分はあるが、あくまでもこれはプライベートのこと。俺が踏み込んで関与するつもりはないから、なるべくこの件については考えないようにしている。
沈黙は、即ち肯定だ。しかし、俺は黒川と社長に向ける憤懣やるかたない思いから、何も言葉を発することが出来なかった。
「………BINGO、だね」
片桐が、はぁ、と。大きく肩を落としながら、つまらなさそうにヘーゼル色の瞳を俺から外した。そうして、組んでいた足と腕を崩し、ローテーブルに広げられていた手帳をパタリと閉じた。
「それさえわかれば今の俺には十分。ありがと、智くん」
片桐はそう口にして、するり、と。沈み込んでいたソファから立ち上がる。そうして、腰を曲げて閉じた手帳を手に持って、ゆっくりと応接室の扉に向かっていく。それはまるで、この話はこれで終わりだ、と。そう言いたげな動作だ。
「部長に昇進したお前と同じように、俺も課長代理に昇進したからねぇ。この後も予定詰まってるから」
少しばかり、面倒だ、というような空気を纏った声色で紡がれたその言葉。片桐は出世に対してそう欲がないということが窺える。
トス、トス、と。片桐が足を動かすたびに、カーペットに吸収される音が響く。片桐は長袖を纏った腕を伸ばし、応接室の扉をカチャリと開いた。
「さ、邨上さん。今後ともどうぞよろしくお願いしますね」
片桐は飄々とした雰囲気を封印し、へにゃりとした人懐っこい笑みを浮かべたまま。丁寧なビジネス口調で、ソファに沈み込んでいる俺にヘーゼル色の瞳を向けていた。
片桐との商談を終え、三井商社に戻る。歩きながらスラックスのポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを起動した。知香とのやりとりの画面を開くも、先ほど送信したメッセージには既読が付いていない。
今日は金曜日。土日は税関が閉まるから通関依頼も立て込んでいて忙しいのだろう、と、自分を納得させる。するりとスマホをスラックスのポケットに滑り込ませた。
(……お礼、参り…)
片桐は狡猾な男だ。きっと、あの夜のように法で裁けるような証拠は残さずに黒川に報復する気でいる。
俺の革靴の底が、アスファルトを叩く音がする。胸の中に生まれた言いようのない感情がぐるぐると渦巻いている。
俺と片桐は、背中合わせの同族のはず。多くの人間と触れ合いその人物の本質を見抜くあのマスターでさえも、そう認めている。だというのに。
(何を……企んで、いる?)
あいつが何を企んでいるのか。さっぱり読めない。あの件が解決して2ヶ月が経過した今頃になって、なぜ急に黒川に報復しようと考えているのか。
(………)
口元に手を当てながら、三井商社が入っているオフィスビルまで戻る道中、それをずっと考えていたが。
―――結局。何ひとつ、心当たりすらも思い浮かばなかった。
三井商社に辿り着いた頃には、昼休みに入っていた。自分のデスクの上で弁当をつつきつつ、午前中の商談内容を整理していく。
が、時間は待ってくれない。バタつきながらも、システムに入力後の電子承認や営業課から上がってくる報告に耳を傾けて指示を飛ばす。企画開発部にかかる業務も取りこぼしのないように進めていく。
そうこうしているうちに、あっという間に終業時間が訪れる。すると、コンコン、と、ドアがノックされた。
「邨上、入るぞ」
「ん」
廊下から浅田の声が響いた。このシチュエーションに既視感を抱いたが、今朝もこんな光景で浅田がフォローに回ってくれていたなと思い返して、朝と同様に手元の書類から視線を上げずに短く返答する。
「邨上。おら、帰るぞ」
「は?」
浅田から訳の分からない言葉が飛んでくる。素っ頓狂な声を上げながら、手元の資料から視線を上げてぱちりとした二重の瞳を見つめた。
トントン、と。浅田が開いた扉から歩いて、俺のデスクまで近づいてくる。そうして、俺の手元から資料を取り上げて、憮然たる面持ちで言葉を続ける。
「お前、病み上がりだろう。今週も残業続きだったんだ、今日くらいはもうそれくらいで切り上げろ。ぶっ倒れられても敵わん」
「………」
昨日には全快したが、それまで時折咳き込んでいたのを見られていたのか。呆気に取られたままでいると、浅田が厳しめの表情を和らげふっと口の端をつり上げた。
「営業課は一部納得行っていない人間もいるが、大半の人間はお前を神輿として担ぐことに不満はない。……頼りにされてるんですよ、部長は。その期待に応えるのも部長の役目だと思いますが?」
そうして、浅田は。心底面白そうに笑みを浮かべ、俺のビジネスバッグを手に持ち、俺の腕を掴んで俺の身体を半ば強引に引っ張っていった。
半ば強引に仕事を切り上げさせられたが、浅田が口にした言葉を自分の中でゆっくりと噛み砕くと、思わず涙が溢れそうなほどの感情が込み上げてきた。それを必死に堪えながら、浅田と同じ電車に乗って帰路についた。
「じゃ、月曜日な。家でも仕事して無理するなよ」
そう口にして、浅田は降りたばかりの車両に背を向け、ヒラヒラと手を振った。その姿に右手を挙げて無言の答えを返していく。
プシュ、という音が響き、ドアが閉まる。独特の感覚があり車体が揺れ、再度進行方向へと動き出した。
「……」
本当に。俺は周りの人間に恵まれている。一般的に、十分な引き継ぎもなく担当が変われば憤慨する企業の方が多いはずなのに、この1週間、後任の挨拶に回った企業からは罵声を浴びせられたりするなど、そんな事はひとつもなかった。浅田のように自分からサポートに回ってくれる人間もいる。周りの協力あってこその『俺』ということを嫌という程思い知らされた。
そっと、浅田に返答するために挙げた右の手のひらを見つめる。
俺のこの手には、沢山の人間の想いが託されている。その期待に応えられるように、俺はこれからも全力で業務に取り組まなければ。
そう心の中で呟くと、自宅の最寄り駅に到着した。今日は金曜日。知香は恐らく残業で少し遅めの帰宅になるだろうから、先にスーパーに寄って夕食の買い物を済ませたい。電車を降りて、駅に直結しているスーパーに立ち寄り食材を買い込む。購入した食材をサッカー台で詰めていると、カサカサ、と。紙が擦れるような不思議な音が聞こえてくる。
(……?)
音が生まれていると感じた方向に視線を向けた。眼前に飛び込んできたのは、青々とした笹に、金紙、銀紙、色とりどりの紙で作られた飾り。そうして。
『大好きな人と、いつまでも
穏やかな日常を過ごせますように』
………と。見慣れた知香の文字で記された、オフホワイトの短冊。
「……ふっ、」
短冊に記された、小さな願い。思わず、笑みが漏れた。
よく考えれば今日は七夕だ。この笹が飾られるのも今日まで。ふい、と、サッカー台に視線を落とし、詰めたレジ袋をサッカー台に一度置く。笹の下に置いてある短冊の中から俺が好きな赤い色の短冊を探し出し、備え付けられているペンを手に取った。
『ずっと、知香のそばに』
それだけを短く書いて、オフホワイトの短冊の真横に吊るした。隣り合う紅白の短冊を満足げに眺めて、俺は自宅へゆっくりと足を向けた。
カチャリと音を立てて玄関を開くと、足元に知香のヒールが綺麗に揃えて置いてあった。
「ただいま、知香」
残業だと思っていたが、もう帰ってきていたのか。何気なくそう考えるも、瞬時に違和感を抱いた。
三井商社は始業8時半、終業17時半。
対して、極東商社は始業9時、終業18時。
仮に定時で上がったとしても、同じ駅を使って下の最寄り駅まで俺と同じように電車で通勤しているのだから、俺より早く帰宅しているということは有り得るはずがない。
それこそ―――早退でも、していなければ。
午前中の、商談の際。知香の顔が普段よりも赤らんでいたことを思い出し、一気に背筋が冷えた。
「知香っ……!?」
どさり、と。大きな音を立てて手に下げていたレジ袋が足元に落ちる。それすら構わず、革靴を急いで脱いで廊下を滑るように走った。
ガタンと音を立てながらリビングに繋がるドアを開く。リビングを通り過ぎ寝室に視線を向けるも、ベッドの中に知香の姿はない。ベッドサイドに薬の袋と水が入ったグラスが置いてあるのが目についた。
トイレにでも行ったのか、いや、それでも俺が声を上げたから俺が帰ってきたことには気づいているだろうし、何かしらの返答がないこの状況はおかしい、と、玄関に逆戻りすると、先ほどは気がつけなかったが脱衣所に繋がる扉が開きっぱなしになっていた。
蝶番を軋ませながら脱衣所に身体を滑り込ませると。視界に飛び込んできたのは、洗面台に上半身を預けたまま、ぐったりしている知香の姿。
「っ……!!」
その姿にざぁっと音を立てて血の気が引いた。咄嗟に駆け寄り知香の身体に触れると、燃えるように熱い。乱れた呼吸とじっとりと汗ばんだ顔。汗で濡れた短い髪がピタリと頬に貼り付いている。
測らなくてもわかる。かなりの高熱だ。
不意に、酸味を帯びた何かの匂いが鼻についた。恐らく嘔吐し口をゆすいでいる時に意識を失ったのだろうと推測する。この匂いがまだ仄かに残っていることから、倒れてからそう時間は経っていないはず。
(……鼻が利く体質で助かった…)
嗅覚が鋭敏だからこその悩みもあった。スクランブル交差点のような人混みに紛れてしまうと、行き交う人々の香水の香りや体臭が混ざり合い、具合が悪くなる。だからあまり人が集まる場所には寄り付きたくない。知香とのデートも、もっぱら人が少ない場所を選んでいる。人出が多かったとしてもその環境に厭わずに足を運べるのは、初詣くらいだ。
人よりも利く嗅覚をこんな形で役立てられるとは思わなかった。慌てて知香の身体を抱き上げ、ベッドに寝かせる。
汗ばんだ身体をタオルで拭きあげ、じっとりと湿った寝間着を替える。知香を抱く度に俺がデコルテや背中に付けていた所有痕すらも薄く見えてしまうほど、全身が熱で赤らんでいる。
俺が先週寝込んだ際に知香が購入してきてくれた冷却シートを額に貼り、これも知香が先週購入していた清涼飲料水を飲ませようとするが、中々上手くいかない。
これだけ汗をかいているのだ。水分を取らせないと脱水症状を起こし、さらに苦しい思いをさせるだけ。最終手段として、口移しで飲ませることにした。
燃えるように熱い知香の身体。時折、苦しそうなうめき声が薄い唇から漏れ出ていく。
俺が無茶をしたばかりに引いた風邪をこうして知香に移してしまったことは明白。自責の念に駆られながら、帰宅後の自分の着替えなども放り出して必死に看病をする。
夜がゆっくりと更けていく。温くなった氷枕を変え、知香の頭を持ち上げてその下に冷えた氷枕を滑り込ませる。
「……ん…」
知香が小さく身動ぎをして、声を上げた。意識を取り戻したか、と少しばかり安堵して知香の表情を観察するも、知香は目覚めることなくそのまま眉をぎゅっと寄せていく。
(…………冷たさに対する反射反応、か)
意識を失ってどれくらいが経つのだろう。ふい、とベッドサイドの時計に視線を向けると、今は日付が変わる直前の時間だ。俺が帰宅したのが18時半頃だったから少なくとも6時間以上は意識がない。
ベッドサイドに置いてある薬の袋を手に取ると、知香に処方された薬の中には高熱が出た時用の頓服薬まで処方されていた。
(……頓服を飲ませるか…)
これを飲ませても熱が下がらなければ、明日の朝に休日診療所に連れて行こう。そう心に決めて、薬剤情報提供文書に『夜』と記載されている薬を選び出す。ベッドサイドに置いてある水が入ったグラスを手に取り、頓服薬と選び出した薬を口移しで飲ませる。
(……俺の、せいだ…)
俺が体調管理を怠ったばかりに。知香をこうして苦しませてしまっている。
普段から身体の丈夫さには自信を持っていた。寝込むような風邪を引いたのは小学生以来ではなかったか。そんな俺でさえもキツかったこの風邪は、基礎体力が違う知香に取っては耐えられぬほどの苦しみだろう。
熱で魘されている知香には届かない、とわかっていても。俺にはただ、謝るしか、出来ない。
「ごめん……ごめんな…」
目を瞑り、苦しそうに眉間に皺を寄せたままの知香の頬の輪郭をなぞって。
小さく。小さく、呟いた。
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