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本編・第三部
232 小さく、呟いた。(中)
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名刺交換を終え、商談の前に池野課長から突然の担当変更となったことへの謝罪を口にする。俺のその言葉に、水野さんが苦笑したような表情でつり目の瞳を俺に向けた。
「ビジネスの場でこの話をするのはそぐわないかもしれません。しかし、池野さんは昔からそういう方でしたからね。外野の私から見ればあの人らしいと笑えましたが、……大変でしたね、邨上さんも」
「………弊社の事情までご配慮頂き大変恐縮です」
頭を下げつつ、ほっと胸を撫で下ろす。今週、後任の挨拶回りに行ったどの会社でも同じように言われた。あの人らしい、大変でしたね、と。その言葉だけで、池野課長がどれだけ取引先の人間に愛されていたのかを改めて痛感した。彼女が非常に自由人であることも彼女の魅力のひとつだったらしい。俺は彼女のように心からの自由人ではいられないだろうが、三井商社の顔として、俺は俺のやり方で信頼を勝ち取って行かなければ。
(まずは……通関依頼料の交渉、だな…)
手始めに、企画開発部として今後新規で依頼する予定の項目を纏めた資料を目の前の三人に手渡し、説明を進めていく。これは纏まった大口の取引を依頼する旨を提示し、通関依頼料の値下げを引き出す狙いがある。
疑問点や通関料についての交渉が進められていく。知香もそれらに時折加わり、滞りなく商談が進んでいった。
知香は自宅に仕事を持ち帰らない。だからこそ、知香が普段どういう風に会社で仕事に取り組んでいるのか、どういう風に商談をしているのか、全く知らなかった。
自宅では決して見られない真剣な表情。池野課長を彷彿とさせるような凛としたその姿。彼女に憧れていた、というのは耳に胼胝ができるほど聞かされている。それを逆手に取ったモデリングの技術……これも心理学の応用に値するが、それを伝えていたことが功を奏しているのを目の当たりにする。
声や話し方は優しく、時折西浦さんが口にする行き過ぎた値下げには遠回しにストップをかけていく。内容は濃くストレートに、それでいて嫌味がない。そうして何より、男だらけのこの商談の場で非常に存在感がある。気高い、とも表現できるような知香のその姿に、俺も知らず知らずのうちに背筋が伸びていった。
そのまま気を張って商談を進めていく。目標にしていた金額までの値下げは引き出せなかったが、ある程度はこちらの思惑通りに近いレベルまで、依頼料の値下げを取り付けられた。その事実に、心の中で安堵のため息をこぼす。
商談も纏まり、話題は軽い雑談に流れていく。西浦さんが冒頭で交換した名刺を持ち上げて、その名刺を眺めながら興味深そうに声をあげた。
「それにしても、屯に大里の『邨上』さんなんてとても珍しい苗字ですね。木偏に寸の『村上』さんはよくお目にかかりますが。このお名前、一度では読んでもらえないのでは?」
………来た。これは初対面の人間に必ず言われる話だ。
「仰る通りです。10年近く営業をやっておりますが、ほとんどの方に一度では読んでいただけません。けれどその分インパクトがありますから、一度で覚えていただけるのが私の強みでもあります」
川を下っていく水が重力に従って滝壷に流れ落ちていくように、すらすらと言葉を返す。この話題は俺の1番の強みだ。珍しい苗字だからこそ、これから話す余話が第一印象に強烈に残るのだ。これは公私問わず俺の鉄板のネタである。
「幕末の松下村塾がありますよね?あの『村』は、本来は私の苗字の『邨』が正式な表記となるそうです。ちなみにこの『邨』という漢字は、山奥にあるとても小さな集落を指すのだそうですよ」
資料を纏めつつ、苦笑したように眉を下げながら西浦さんに視線を合わせて言葉を続けていく。この表情を作ることも随分と慣れたものだ。
水野さんが俺の手元に視線を落としたことを、西浦さんを見つめたままの視界の端で捉える。そのまま水野さんが締めの言葉を口にし、俺も同様に締めの言葉を返していく。
「……これから下の階の応接室にて農産販売部さんとの商談ですので、私はこれにて失礼させて頂きますね」
席から立ち上がりながらこれからの予定を口にすると、知香の身体が僅かに強張るのを感じた。その姿に、内心で苦笑いが漏れ出ていく。
(…………大丈夫だ、知香。片桐とふたりきりになるわけじゃない)
万が一にもふたりきりだとしても。俺はもう、以前の俺じゃない。片桐の挑発になど、乗ってやる気は到底ないのだ。
スラックスを捌きながら、応接室を退出していく。そうして、「今後ともよろしくお願いいたします」と声を上げ、頭を下げて応接室の扉を閉めた。
エレベーターホールでエレベーターを待つ間、スラックスのポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを起動した。知香とのやりとりの画面を開き、パタパタと文字を打ち込んでいく。
『さっき、顔、赤かったぞ。大丈夫か?』
メッセージアプリにそう書き込んで、送信ボタンをタップする。既読がすぐ付かないことを見ると、手元にスマホを持っていないのかもしれない。体調は心配だが、俺はこの後も商談だ。知香も仕事に戻るだろう。あとで返信が来ているはず、と結論付け、するりとスマホをスラックスに滑り込ませると、背後から妙な視線が俺に突き刺さっているのを感じた。
「……?」
疑問符を浮かべながら後ろを振り返ると、黒曜石のような澄んだ黒い瞳と視線が交差する。
「………お世話になっております、小林さん。先週ぶりですね」
にこり、と。いつもの営業スマイルを貼りつけて声をかけた。ここは極東商社の中。プライベートではなく、あくまでもビジネスの場だ。敢えて丁寧な口調で仔犬に声をかけていく。
「………こちらこそ。お世話になります、邨上さん」
仔犬はそう口にして、右手に握り締めていたビジネスバッグを持ち直しながら小さく頭を下げた。そうして、そっと俺の隣に立っていく。
「浅田さんから伺っております。……随分とお忙しそうですね」
仔犬の口から唐突に浅田の名前が飛び出し一瞬思考回路が停止するも、今朝回ってきていた売上伝票の一部が脳裏に蘇る。それに添付されていた外部証憑である注文書のFAXに、『小林』と記された印鑑が捺印されていたことを思い出した。1課に所属する浅田が商売している極東商社の畜産販売部の担当がこいつだったはず。
役員選任の挨拶状が極東商社宛に発送されていることも池野課長の引き継ぎ書に記載があった。畜産販売部には後任の挨拶に行っていないが、仔犬が事情を把握していてもおかしくはないという推測に辿り着き、小さく頭を下げていく。
「畜産販売部さまにはまだご挨拶に伺えておらず申し訳なく思っております。来週にでもアポを取らせていただきます。これから先に農産販売部さまにご挨拶に行って参りますがどうかご容赦を」
俺の言葉に仔犬が驚いたように一重の瞳を瞬かせた。そうして、俺の左側にある白い扉を指差して言葉を紡いでいく。
「農産販売部に行かれるなら、日中はエレベーター使うよりもそちらの階段を使う方が早いですよ。社外の方も使えますから」
仔犬の言葉に目を見張り、指差す方向に視線を向けた。あれは有事の際に使用する非常階段とばかり思っていた。フロアは一階しか違わないのにエレベーターしか使えないのは不便だろうなと部外者ながらに考えていたが、そうではないと知り拍子抜けした。
「ありがとうございます。今日はそちらを使わせていただきますね。……それでは」
ぺこり、と頭を下げると、仔犬も小さく頭を下げた。その動作を視界の端で捉えつつ、教えられた白い扉に手をかけていく。
ギィ、と、蝶番が軋む音を聴きながら、視線を動かす。扉を開いた先は螺旋階段になっているようだった。手すりに手をかけながら、ひとつ下の階の農産販売部を目指して、螺旋階段を降りていく。
(……まさかこんな風に普通に会話出来る日が来るとはな…)
そう心の中で独りごちながら、知香と出会ったあの合コンの場を思い返す。
あの時、仔犬も同じ合コンに出席していた。ヤツの視線は確かに知香を追ってはいたが、あの時はまだ自分が抱く知香への恋心を認識していなかったように思える。俺と知香が接近していることを知り、己の恋心を認識して俺に宣戦布告をしに来た。
あの瞬間。こいつとは絶対に相容れないと考えていた。今も、相容れないとは思っている。それはヤツから見た視点でもそうだろう。
………しかし、時を経て。まさかこんな関係に。ビジネスでも、プライベートでも。穏やかに会話を交わせるような、そんな関係に落ち着くとは思ってもみなかった。
―――いつか、片桐とも。穏やかに言葉を交わせる日が、来るだろうか。
ふわり、と、脳内に浮かんだ突拍子もない考え。
(……………いや、一生無理だな)
それを頭を打ち振るって消し去る。さらさらと自分の髪が揺れ動いた。蛇のような不気味さを湛えたヘーゼル色の瞳が眼前に現れたような気がして。階段を降りていく足が止まる。
どう足掻いても無理なものは無理だ。俺は片桐を赦すことは出来ない。
愛した人間を失くした哀しみを、俺は本当の意味で理解はしてやれない。それでも俺は、片桐に幸せになって欲しいと思う。
けれども。知香の心に汚い手で触れようとしたことなど。ましてや。………知香を俺から奪おうとしていることなど。
「絶対に。赦せるわけが、ねぇんだ…」
小さく呟いた声が、螺旋階段に響いて消えていく。ふたたび足を動かし、階段を降りきって目の前に現れた白い扉に手をかけた。エレベーターホールを通り抜け、まるで雪が降りしきるような静かな廊下を歩いていく。
農産販売部の受付ブースで記帳を済ませ呼び出しのベルを鳴らすと、カチャリ、と、近くの扉が開く音がした。その扉の奥からひとりの女性が出てくる。
「お世話になっております、三井商社の邨上です。中川さま、片桐さまとお約束をさせて頂いておりました」
落ち着いた色に染められた髪を揺らしながら出てきた女性に、にこりと笑みを向ける。事務服の胸元の名札を見ると『木村』と記載されていた。通関部の農産チームである知香は、農産販売部の木村という一般職の女性と仲が良いという話しは聞いていた。この人のことか、とぼんやり考える。
「邨上さまですね。お世話になります。中川と片桐を呼んでまいりますのでこちらで少々お待ちください」
「ありがとうございます」
通されたスペースに設置してある椅子に腰掛け、先ほどの通関部との商談内容を手早く手帳に書き込んでいく。
しばらくすると、カチャリ、と扉を開く音がして、シトラスの香りが鼻腔をくすぐった。……覚悟はしていたが、身体が僅かばかり竦む。
「こんにちは、邨上さん」
へにゃり、と。片桐がいつもの人懐っこい笑みを俺に向けた。扉から出てきたのは、片桐ひとり。一対一の対面だというのに、あの飄々とした雰囲気を封印した片桐の姿が目の前にある。片桐にとっても……今はあくまでもビジネスの時間である、ということだ。
「……お世話になります」
腰をおろしていた椅子から立ち上がり、強張る喉を叱咤して頭を小さく下げる。
片桐が優雅な動作で扉を閉めた。7月に入ったというのに長袖を身に纏っているその姿は一見奇怪に映るが、その優雅な立ち振る舞いがその奇怪さを相殺させているようだった。さすが紳士の国帰りの人間、というべきか。映画で目にする上流階級の人間が見せるようなその所作の美しさは思わず恋敵ながら感服してしまうほどだ。
閉じられた扉を見つめ、中川さんはまだ出てこないのか、と内心首を捻っていると、片桐が俺の横を通って廊下の反対側に設置されている応接室の扉をゆっくりと開いた。
「大変申し訳ございません。中川は都合が悪くなりまして。本日は私ひとりのみですが」
片桐はそう口にして、人懐っこい笑みを浮かべたまま応接室の扉を開けて俺が入室するのを待っている。
「……そうでしたか」
まさか一対一の商談になるとは。ぐっと拳を握りしめ、腰をおろしていた椅子の隣に置いていたビジネスバッグを手に持って開かれた応接室に足を踏み入れる。そのままゆっくりと奥まで歩き、ソファにビジネスバッグをおろした。
「先日メールにてご連絡しました件。進捗の方はいかがでしょうか」
片桐が開いたままの扉を閉め、そう口にしながら手に持っていた手帳を応接室のローテーブルに置いてソファに沈み込んだ。
ふたりきりの応対だというのに。しかも、応接室という密室、だというのに。
あの掴みどころのない、飄々とした雰囲気は微塵も感じさせない。予想外とも言えるその姿に、一瞬虚を突かれた。
片桐はへにゃりとした人懐っこい笑みを浮かべたまま、ソファの脇で立ち竦んでいる俺にヘーゼル色の瞳を向けている。
「……こちらに伺う直前に、委託を依頼している工場に立ち寄ってきました。進捗は上々です」
あくまでも、この場はビジネス。自分に強く言い聞かせながら、身体の奥底から湧き上がってくる複雑な感情を押し殺して淡々と声を発し、片桐の正面に沈み込んだ。
しばらくの間、食用花についての商談が粛々と進められていく。時折資料を捲りながらの淡々とした会話だが、片桐との会話では豊富な知識と豊かな知性に裏付けられる確かな営業力を感じる。
(………営業マンとしての腕は恐ろしいほどにあるな)
10年近く食品商社の営業一本で仕事をしてきたが、こんな優秀な逸材には出会ったことがない。片桐は4月1日付けで通関部から異動したはず。3ヶ月程度の経験しかないにもかかわらず、双方に利益があがる公平な取引の流れを生み出し、物怖じせずそれを持ち掛けていくその態度には正直畏敬の念を抱いた。
俺が入社して3ヶ月の頃はひとりで商談になど出られもしなかった。諜報機関に在籍していた経歴を持つ中途採用の片桐と、大学を卒業したばかりの新卒採用の俺ではそもそもの土台が違うだろうが、それでも目の前の片桐は、食を担うバイヤーとしての極めて優秀な資質を醸し出していた。
―――知香のことが無ければ。俺と片桐は、良いビジネスパートナーになれただろうか。
そんなことを思考の片隅で考えつつ、商談を纏め上げていく。感情の読めないヘーゼル色の瞳を見つめて声を発した。
「では。こちらの条件にて、商談成立、ということで」
俺のその声が、ふたりだけの空間に響いた瞬間。ヘーゼル色の瞳が僅かに細められて、片桐の口元が鮮やかに歪んだ。
「………さて。智くん。ちょ~っと聞きたいことがあるんだ。お前、俺に借りがあるから、俺が聞きたいことに答えてくれるよね~ぇ?」
片桐が、こてん、と。小首を傾げながら、仕事用の穏やかな口調からいつもの飄々とした口調に切り替えて俺に問いかけた。明るい色の髪がさらりと揺れる。
この応接室に漂う空気が、ぴんと張り詰めた気がした。
こいつは、今、この瞬間から。この応接室に居ながらも、ビジネスとしてではなくプライベートとして会話をするつもりだ、と察する。その意図を汲んで、先ほど交わしていたような丁寧なビジネス口調を崩し低い声で返答する。
「……なにが聞きたい」
借り。それは紛れもなく、黒川の不正事件を暴くための証拠を投げ渡されたことだろう。
知香に関わる情報を渡せ、という話であれば聞くに値しない。そんな情報、渡せるわけがない。
嘲るように細められたヘーゼル色の瞳を睨めつけ、張り詰めた空気に息を潜めた。対して片桐は、沈み込んでいるソファの背もたれに身体を預け、優雅な動作で足を組んでいく。
そうして、投げかけられた想定外すぎる質問に。俺は言葉を失った。
「ビジネスの場でこの話をするのはそぐわないかもしれません。しかし、池野さんは昔からそういう方でしたからね。外野の私から見ればあの人らしいと笑えましたが、……大変でしたね、邨上さんも」
「………弊社の事情までご配慮頂き大変恐縮です」
頭を下げつつ、ほっと胸を撫で下ろす。今週、後任の挨拶回りに行ったどの会社でも同じように言われた。あの人らしい、大変でしたね、と。その言葉だけで、池野課長がどれだけ取引先の人間に愛されていたのかを改めて痛感した。彼女が非常に自由人であることも彼女の魅力のひとつだったらしい。俺は彼女のように心からの自由人ではいられないだろうが、三井商社の顔として、俺は俺のやり方で信頼を勝ち取って行かなければ。
(まずは……通関依頼料の交渉、だな…)
手始めに、企画開発部として今後新規で依頼する予定の項目を纏めた資料を目の前の三人に手渡し、説明を進めていく。これは纏まった大口の取引を依頼する旨を提示し、通関依頼料の値下げを引き出す狙いがある。
疑問点や通関料についての交渉が進められていく。知香もそれらに時折加わり、滞りなく商談が進んでいった。
知香は自宅に仕事を持ち帰らない。だからこそ、知香が普段どういう風に会社で仕事に取り組んでいるのか、どういう風に商談をしているのか、全く知らなかった。
自宅では決して見られない真剣な表情。池野課長を彷彿とさせるような凛としたその姿。彼女に憧れていた、というのは耳に胼胝ができるほど聞かされている。それを逆手に取ったモデリングの技術……これも心理学の応用に値するが、それを伝えていたことが功を奏しているのを目の当たりにする。
声や話し方は優しく、時折西浦さんが口にする行き過ぎた値下げには遠回しにストップをかけていく。内容は濃くストレートに、それでいて嫌味がない。そうして何より、男だらけのこの商談の場で非常に存在感がある。気高い、とも表現できるような知香のその姿に、俺も知らず知らずのうちに背筋が伸びていった。
そのまま気を張って商談を進めていく。目標にしていた金額までの値下げは引き出せなかったが、ある程度はこちらの思惑通りに近いレベルまで、依頼料の値下げを取り付けられた。その事実に、心の中で安堵のため息をこぼす。
商談も纏まり、話題は軽い雑談に流れていく。西浦さんが冒頭で交換した名刺を持ち上げて、その名刺を眺めながら興味深そうに声をあげた。
「それにしても、屯に大里の『邨上』さんなんてとても珍しい苗字ですね。木偏に寸の『村上』さんはよくお目にかかりますが。このお名前、一度では読んでもらえないのでは?」
………来た。これは初対面の人間に必ず言われる話だ。
「仰る通りです。10年近く営業をやっておりますが、ほとんどの方に一度では読んでいただけません。けれどその分インパクトがありますから、一度で覚えていただけるのが私の強みでもあります」
川を下っていく水が重力に従って滝壷に流れ落ちていくように、すらすらと言葉を返す。この話題は俺の1番の強みだ。珍しい苗字だからこそ、これから話す余話が第一印象に強烈に残るのだ。これは公私問わず俺の鉄板のネタである。
「幕末の松下村塾がありますよね?あの『村』は、本来は私の苗字の『邨』が正式な表記となるそうです。ちなみにこの『邨』という漢字は、山奥にあるとても小さな集落を指すのだそうですよ」
資料を纏めつつ、苦笑したように眉を下げながら西浦さんに視線を合わせて言葉を続けていく。この表情を作ることも随分と慣れたものだ。
水野さんが俺の手元に視線を落としたことを、西浦さんを見つめたままの視界の端で捉える。そのまま水野さんが締めの言葉を口にし、俺も同様に締めの言葉を返していく。
「……これから下の階の応接室にて農産販売部さんとの商談ですので、私はこれにて失礼させて頂きますね」
席から立ち上がりながらこれからの予定を口にすると、知香の身体が僅かに強張るのを感じた。その姿に、内心で苦笑いが漏れ出ていく。
(…………大丈夫だ、知香。片桐とふたりきりになるわけじゃない)
万が一にもふたりきりだとしても。俺はもう、以前の俺じゃない。片桐の挑発になど、乗ってやる気は到底ないのだ。
スラックスを捌きながら、応接室を退出していく。そうして、「今後ともよろしくお願いいたします」と声を上げ、頭を下げて応接室の扉を閉めた。
エレベーターホールでエレベーターを待つ間、スラックスのポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを起動した。知香とのやりとりの画面を開き、パタパタと文字を打ち込んでいく。
『さっき、顔、赤かったぞ。大丈夫か?』
メッセージアプリにそう書き込んで、送信ボタンをタップする。既読がすぐ付かないことを見ると、手元にスマホを持っていないのかもしれない。体調は心配だが、俺はこの後も商談だ。知香も仕事に戻るだろう。あとで返信が来ているはず、と結論付け、するりとスマホをスラックスに滑り込ませると、背後から妙な視線が俺に突き刺さっているのを感じた。
「……?」
疑問符を浮かべながら後ろを振り返ると、黒曜石のような澄んだ黒い瞳と視線が交差する。
「………お世話になっております、小林さん。先週ぶりですね」
にこり、と。いつもの営業スマイルを貼りつけて声をかけた。ここは極東商社の中。プライベートではなく、あくまでもビジネスの場だ。敢えて丁寧な口調で仔犬に声をかけていく。
「………こちらこそ。お世話になります、邨上さん」
仔犬はそう口にして、右手に握り締めていたビジネスバッグを持ち直しながら小さく頭を下げた。そうして、そっと俺の隣に立っていく。
「浅田さんから伺っております。……随分とお忙しそうですね」
仔犬の口から唐突に浅田の名前が飛び出し一瞬思考回路が停止するも、今朝回ってきていた売上伝票の一部が脳裏に蘇る。それに添付されていた外部証憑である注文書のFAXに、『小林』と記された印鑑が捺印されていたことを思い出した。1課に所属する浅田が商売している極東商社の畜産販売部の担当がこいつだったはず。
役員選任の挨拶状が極東商社宛に発送されていることも池野課長の引き継ぎ書に記載があった。畜産販売部には後任の挨拶に行っていないが、仔犬が事情を把握していてもおかしくはないという推測に辿り着き、小さく頭を下げていく。
「畜産販売部さまにはまだご挨拶に伺えておらず申し訳なく思っております。来週にでもアポを取らせていただきます。これから先に農産販売部さまにご挨拶に行って参りますがどうかご容赦を」
俺の言葉に仔犬が驚いたように一重の瞳を瞬かせた。そうして、俺の左側にある白い扉を指差して言葉を紡いでいく。
「農産販売部に行かれるなら、日中はエレベーター使うよりもそちらの階段を使う方が早いですよ。社外の方も使えますから」
仔犬の言葉に目を見張り、指差す方向に視線を向けた。あれは有事の際に使用する非常階段とばかり思っていた。フロアは一階しか違わないのにエレベーターしか使えないのは不便だろうなと部外者ながらに考えていたが、そうではないと知り拍子抜けした。
「ありがとうございます。今日はそちらを使わせていただきますね。……それでは」
ぺこり、と頭を下げると、仔犬も小さく頭を下げた。その動作を視界の端で捉えつつ、教えられた白い扉に手をかけていく。
ギィ、と、蝶番が軋む音を聴きながら、視線を動かす。扉を開いた先は螺旋階段になっているようだった。手すりに手をかけながら、ひとつ下の階の農産販売部を目指して、螺旋階段を降りていく。
(……まさかこんな風に普通に会話出来る日が来るとはな…)
そう心の中で独りごちながら、知香と出会ったあの合コンの場を思い返す。
あの時、仔犬も同じ合コンに出席していた。ヤツの視線は確かに知香を追ってはいたが、あの時はまだ自分が抱く知香への恋心を認識していなかったように思える。俺と知香が接近していることを知り、己の恋心を認識して俺に宣戦布告をしに来た。
あの瞬間。こいつとは絶対に相容れないと考えていた。今も、相容れないとは思っている。それはヤツから見た視点でもそうだろう。
………しかし、時を経て。まさかこんな関係に。ビジネスでも、プライベートでも。穏やかに会話を交わせるような、そんな関係に落ち着くとは思ってもみなかった。
―――いつか、片桐とも。穏やかに言葉を交わせる日が、来るだろうか。
ふわり、と、脳内に浮かんだ突拍子もない考え。
(……………いや、一生無理だな)
それを頭を打ち振るって消し去る。さらさらと自分の髪が揺れ動いた。蛇のような不気味さを湛えたヘーゼル色の瞳が眼前に現れたような気がして。階段を降りていく足が止まる。
どう足掻いても無理なものは無理だ。俺は片桐を赦すことは出来ない。
愛した人間を失くした哀しみを、俺は本当の意味で理解はしてやれない。それでも俺は、片桐に幸せになって欲しいと思う。
けれども。知香の心に汚い手で触れようとしたことなど。ましてや。………知香を俺から奪おうとしていることなど。
「絶対に。赦せるわけが、ねぇんだ…」
小さく呟いた声が、螺旋階段に響いて消えていく。ふたたび足を動かし、階段を降りきって目の前に現れた白い扉に手をかけた。エレベーターホールを通り抜け、まるで雪が降りしきるような静かな廊下を歩いていく。
農産販売部の受付ブースで記帳を済ませ呼び出しのベルを鳴らすと、カチャリ、と、近くの扉が開く音がした。その扉の奥からひとりの女性が出てくる。
「お世話になっております、三井商社の邨上です。中川さま、片桐さまとお約束をさせて頂いておりました」
落ち着いた色に染められた髪を揺らしながら出てきた女性に、にこりと笑みを向ける。事務服の胸元の名札を見ると『木村』と記載されていた。通関部の農産チームである知香は、農産販売部の木村という一般職の女性と仲が良いという話しは聞いていた。この人のことか、とぼんやり考える。
「邨上さまですね。お世話になります。中川と片桐を呼んでまいりますのでこちらで少々お待ちください」
「ありがとうございます」
通されたスペースに設置してある椅子に腰掛け、先ほどの通関部との商談内容を手早く手帳に書き込んでいく。
しばらくすると、カチャリ、と扉を開く音がして、シトラスの香りが鼻腔をくすぐった。……覚悟はしていたが、身体が僅かばかり竦む。
「こんにちは、邨上さん」
へにゃり、と。片桐がいつもの人懐っこい笑みを俺に向けた。扉から出てきたのは、片桐ひとり。一対一の対面だというのに、あの飄々とした雰囲気を封印した片桐の姿が目の前にある。片桐にとっても……今はあくまでもビジネスの時間である、ということだ。
「……お世話になります」
腰をおろしていた椅子から立ち上がり、強張る喉を叱咤して頭を小さく下げる。
片桐が優雅な動作で扉を閉めた。7月に入ったというのに長袖を身に纏っているその姿は一見奇怪に映るが、その優雅な立ち振る舞いがその奇怪さを相殺させているようだった。さすが紳士の国帰りの人間、というべきか。映画で目にする上流階級の人間が見せるようなその所作の美しさは思わず恋敵ながら感服してしまうほどだ。
閉じられた扉を見つめ、中川さんはまだ出てこないのか、と内心首を捻っていると、片桐が俺の横を通って廊下の反対側に設置されている応接室の扉をゆっくりと開いた。
「大変申し訳ございません。中川は都合が悪くなりまして。本日は私ひとりのみですが」
片桐はそう口にして、人懐っこい笑みを浮かべたまま応接室の扉を開けて俺が入室するのを待っている。
「……そうでしたか」
まさか一対一の商談になるとは。ぐっと拳を握りしめ、腰をおろしていた椅子の隣に置いていたビジネスバッグを手に持って開かれた応接室に足を踏み入れる。そのままゆっくりと奥まで歩き、ソファにビジネスバッグをおろした。
「先日メールにてご連絡しました件。進捗の方はいかがでしょうか」
片桐が開いたままの扉を閉め、そう口にしながら手に持っていた手帳を応接室のローテーブルに置いてソファに沈み込んだ。
ふたりきりの応対だというのに。しかも、応接室という密室、だというのに。
あの掴みどころのない、飄々とした雰囲気は微塵も感じさせない。予想外とも言えるその姿に、一瞬虚を突かれた。
片桐はへにゃりとした人懐っこい笑みを浮かべたまま、ソファの脇で立ち竦んでいる俺にヘーゼル色の瞳を向けている。
「……こちらに伺う直前に、委託を依頼している工場に立ち寄ってきました。進捗は上々です」
あくまでも、この場はビジネス。自分に強く言い聞かせながら、身体の奥底から湧き上がってくる複雑な感情を押し殺して淡々と声を発し、片桐の正面に沈み込んだ。
しばらくの間、食用花についての商談が粛々と進められていく。時折資料を捲りながらの淡々とした会話だが、片桐との会話では豊富な知識と豊かな知性に裏付けられる確かな営業力を感じる。
(………営業マンとしての腕は恐ろしいほどにあるな)
10年近く食品商社の営業一本で仕事をしてきたが、こんな優秀な逸材には出会ったことがない。片桐は4月1日付けで通関部から異動したはず。3ヶ月程度の経験しかないにもかかわらず、双方に利益があがる公平な取引の流れを生み出し、物怖じせずそれを持ち掛けていくその態度には正直畏敬の念を抱いた。
俺が入社して3ヶ月の頃はひとりで商談になど出られもしなかった。諜報機関に在籍していた経歴を持つ中途採用の片桐と、大学を卒業したばかりの新卒採用の俺ではそもそもの土台が違うだろうが、それでも目の前の片桐は、食を担うバイヤーとしての極めて優秀な資質を醸し出していた。
―――知香のことが無ければ。俺と片桐は、良いビジネスパートナーになれただろうか。
そんなことを思考の片隅で考えつつ、商談を纏め上げていく。感情の読めないヘーゼル色の瞳を見つめて声を発した。
「では。こちらの条件にて、商談成立、ということで」
俺のその声が、ふたりだけの空間に響いた瞬間。ヘーゼル色の瞳が僅かに細められて、片桐の口元が鮮やかに歪んだ。
「………さて。智くん。ちょ~っと聞きたいことがあるんだ。お前、俺に借りがあるから、俺が聞きたいことに答えてくれるよね~ぇ?」
片桐が、こてん、と。小首を傾げながら、仕事用の穏やかな口調からいつもの飄々とした口調に切り替えて俺に問いかけた。明るい色の髪がさらりと揺れる。
この応接室に漂う空気が、ぴんと張り詰めた気がした。
こいつは、今、この瞬間から。この応接室に居ながらも、ビジネスとしてではなくプライベートとして会話をするつもりだ、と察する。その意図を汲んで、先ほど交わしていたような丁寧なビジネス口調を崩し低い声で返答する。
「……なにが聞きたい」
借り。それは紛れもなく、黒川の不正事件を暴くための証拠を投げ渡されたことだろう。
知香に関わる情報を渡せ、という話であれば聞くに値しない。そんな情報、渡せるわけがない。
嘲るように細められたヘーゼル色の瞳を睨めつけ、張り詰めた空気に息を潜めた。対して片桐は、沈み込んでいるソファの背もたれに身体を預け、優雅な動作で足を組んでいく。
そうして、投げかけられた想定外すぎる質問に。俺は言葉を失った。
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【(ナイトランタン様)AllNight HALLOWEEN 2021】参加作品です。
◇サブテーマ:魔女/マスク/ショッピングモール◇
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◎全4話
◎作中に出てくる企業名、施設・地域名、登場人物が持つ知識等は創作上のフィクションです
※既存作品「【R18】窓辺に揺れる」のヒロインが一瞬登場しますが、こちら単体のみでもお楽しみいただけます
※作者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ三人称一元視点習作です
※表紙はpixabay様よりお借りし、SS表紙メーカー様にて加工しております
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