205 / 273
本編・第三部
224
しおりを挟む
小さく息を吸うと、首筋の骨が軋むような感覚があった。こんな穏やかなマスターの前で何を緊張しているのか。目の前に片桐さんがいるわけでもあるまいし。心の中で小さく頭を振って、先ほど吸った息を吐き出すように肺と喉を動かした。
「………その。私の場合、人生相談というわけではないのですが。マスターにお尋ねしたいことが何点かあって」
「んん?俺?」
視線を手元に落として、挽いたコーヒー豆をペーパーフィルターに移し替えているマスターが驚いたようにゆっくりと視線を私に向けた。琥珀色の瞳がこぼれ落ちそうなほどまん丸になっている。自分に何かを尋ねられるということは想定外だったのだろう。膝の上に置いた鞄をぎゅっと握り直し、じっと彼の顔を見据えた。
「まずは……池野さんのことで」
私がその言葉を紡いだ瞬間。マスターが驚いたような表情を心底楽しそうな表情に切り替えて、私を制止するように右の手のひらを私に見せた。
「ストップ。知香ちゃん、俺も『池野』だぞ?」
「………あっ」
揶揄うような口調でマスターが声を発した。その言葉に彼らの関係性を思い出して我に返り、僅かな羞恥心から顔が赤らんでいく。
すみません、と小さく頭を下げると、マスターは気にも留めていないような様子で、ケトルからコーヒーポットに沸いたお湯を移し替えていく。
「えっと、……加奈子、さんのことで」
池野加奈子さん。それが、彼女の本名。私にとって彼女は取引先の人だからこそ、これまで『池野さん』としか口にしたことがなかった。下のお名前で呼ぶのは何だか擽ったい。擽ったいけれど……聞かなければいけないから。
ふたたび意を決するように小さく息を吸って、コーヒーポットからくるくると円を描くように蒸らしのためのお湯を投下しているマスターに視線を向けた。
「加奈子さん。日本を発つ……とメールが届いていました。どちらに行かれたんですか?」
私の言葉に、マスターは動揺の色を見せない。きっと、私がマスターに尋ねたいことがあると口した時点で、この質問は予見していたのだろう。
彼がドリッパーにお湯を細く注いでいくのをじっと眺める。すると、マスターは小さく息を吐いた。
「悪いな、知香ちゃん。その質問には、答えられない」
「え」
予想外の回答にぴしりと身体が固まった。何を言われているのか、理解が及ばなかった。
「……加奈子の居場所は、教えられない」
マスターはコーヒーポットを置いて、同じ意味を孕んだ違う言葉を紡いだ。顎に手を当て白髪混じりの髭を撫でながら、そっと私を見遣る。
「加奈子は……俺の妹でもあるが、この店の顧客でもある。俺は、そういった顧客に関することを聞かれた時に、それらは喋らないと決めている」
絶望的なまでの、無慈悲な回答。穏やかで、智のこれまでの人生に寄り添ってきた優しいマスターだったら教えてくれるだろう、という想定がいとも簡単にひっくり返されて、ずきり、と。心が収縮した。
私の絶望的な表情を読み取ったのだろう。マスターが困ったように目尻を下げて頬を掻いた。
「言ったろう?人生相談所を長年やってねぇって。その経験から、リスクヘッジの意味合いも込めて、な」
そうして、マスターは一度置いたコーヒーポットを手に取ってゆっくりとお湯を注いでいく。
「俺の中での線引きがある。この話はした方が双方のためになる、というような場合のみ、喋る。俺がマサのお母さんの葬儀の時に、マサの身内事情を知香ちゃんに話したのはそういうこと」
とてもじれったいような速度で、コーヒーポットの細い注ぎ口からお湯が落ちていく。時折、コーヒーポットを傾けて、注いでいくお湯を止めているマスターの手の動きを眺めながら、紡がれた言葉の意味を飲み込んでいく。
確かに。長年人に関わる仕事をしてきたマスターだからこそ、彼の中の線引きがあるのだろう。過去と未来の境界が、他人と自分の境界が、曖昧にならないように。それは相談にきたお客さんの心の中に土足で踏み入らないようにしている……マスターの工夫のひとつ、なのかもしれない。
「ま、それ以前に……さとっちゃんに近い知香ちゃんには教えられねぇ。さとっちゃんのことだ、妹の居場所がわかれば文字通りその場所まですっ飛んでいって三井商社へ連れ戻しを諮るだろう?」
「あ……」
紡がれた言葉に、思わず小さく息を飲む。でも、そこには不思議と驚きはない。苦笑したような声色でマスターから受け取った言葉だけれど、私はそれをとっくの昔から知っているように感じたし、マスターが口にした風景が―――智が飛行機に飛び乗って、加奈子さんを日本に連れ戻そうとする映像が克明に想像できた。
マスターは視線を下に向けたままお湯を注ぎながらも、優しく。まるで、この場にいない智に言い聞かせるように穏やかに言葉を続けていく。
「俺から言えるのは、妹は貿易営業っつう仕事が嫌になったわけじゃぁない。周りの人間関係が嫌になったわけでもない。さとっちゃんが憎くて苦境に落とそうと企んでいたわけでもない。だけど、妹には夢があった。それを叶えるには今が一番都合がいいタイミングだったんだ」
マスターがコーヒーポットをふたたび置いて、サーバーからコーヒーカップに淹れたてのコーヒーを移し替えていく。そうして、ゆっくりと琥珀色の瞳が、私に向けられる。
「日本を発つ瞬間まで、これから重圧がのし掛かるさとっちゃんのことをずうっと案じていた。それだけは変わらない事実だ」
コトリ、と小さな音を立てて。そっと……目の前に白いコーヒーカップが置かれた。爽やかで上品な香りが鼻腔をくすぐっていく。そうして、マスターはふたたび困ったように目尻を下げた。
「妹は、今回のことを5年前から計画していたんだ。それを俺は邪魔してやりたくない。……すまねぇな、知香ちゃん」
「い、いえ……」
その言葉に小さく首を振りつつ、心の中だけで肩を落とす。
5年前から……加奈子さんが、計画していた、ということ。私と彼女が、あの路地で。税関に行く道中に迷い込んだ、あの路地で、彼女に偶然出会う前から。彼女は……夢を叶えるために、用意周到に準備していたのだ。
先ほど説明された言葉を噛み砕いていけば、ほかの顧客の情報は、どう足掻いたってマスターは私に話してくれることはないだろう。逆に、私がここで話すことを違う誰かに話すことはない、という確約めいた話でもあるけれど。
(片桐さんの目の変化のことも……きっと、喋ってくれない…よね…)
私が相談したい、ということを、マスターは私の目で気が付いた。ならば、小林くんさえも気がついた片桐さんの目の変化をマスターは感じ取っているはず。可能であれば片桐さんが直近でいつ来訪したか、その時に彼の目に違和感を抱いたかどうかを訊ねたかった。けれど、きっとマスターはこれについては絶対に教えてくれない。確証はないけれど、なんとなくそう理解した。
「えっと……なんだか、すみませんでした」
マスターは、マスター自身が納得し引き受けられる範囲でお客さんの相談に乗っているのだ。根本的なそれを無視してごねるようにこの話しを引き伸ばすのは筋が違う。ぺこりと頭を下げてマスターに謝罪の言葉を述べた。
私のその様子に、マスターが困ったように吐息を漏らしていく。
「いや、いいんだ。俺が勝手に掲げている信条を押し付ける形になってしまって、逆に申し訳ねぇと思ってるよ」
「と、とんでもないです」
その言葉に慌てて声をあげて、身体の前で手を横に振った。
目の前に置かれたコーヒーカップを手に取って口つける。口に含んだ暖かい液体。喉を滑り落ちていくそれは、フローラルな甘酸っぱい香りが鼻を通り抜けていき、程よい苦味が口の中に広がっていく。
ストレートの豆では味わえない、その複雑な味。独特のその香りや舌触りに酔いしれるように、美味しい、と小さく呟くと、マスターが満足げに微笑んだ。
一口含んだコーヒーカップをカウンターに置いた。カチャカチャと音を立てながら流しで道具を洗っていくマスターの顔をじっと見つめ、もうひとつの質問をマスターにぶつける。
「その。もうひとつは……片桐さんのことで」
「マサ?」
ふたたびマスターが驚いたように顔を上げる。先ほどから私の質問は全て彼の想定外のようだ。
「はい。……えっと…その。彼が、私を…」
彼が私に言い寄っている、ということを口にしたくなくて―――智から奪い取ろうとしている、という、そんな現実から少しでも顔を背けたくて。マスターから視線を外しながら言い淀む。
「さとっちゃんから横恋慕しようとしてる、ってことだろう」
「う…」
改めて言われると、やはりなんだか居心地が悪い。思わず椅子の上で縮こまる。
マスターが面白そうに言葉を紡いだのち、視線を落として洗い物をする作業を再開していく。
「あれはマサが悪い。確かに、恋愛なんっつうのは言ったもん勝ち、やったもん勝ち、押したもん勝ちだ。けど、相手が嫌がっているのに自分の気持ちを押し付けるのは間違っている。俺は少なくともそう思ってるよ」
流しの水音に紛れながらも、マスターの強い意思を孕んだ言葉が耳に届く。マスターは洗い物を終えたのか、腕を震わせて黒いエプロンの裾で手を拭いた。
ふい、と。柔和な微笑みに浮かぶ琥珀色の瞳が、ひどく優しく。私を見つめている。
「だから知香ちゃんは堂々とさとっちゃんの隣に立っててくれ。この先、なにがあっても」
「……はい……」
穏やかに笑うマスター。でも、その瞳には少しだけ翳りがあった。哀愁……ともいうような、そんな瞳。
(……?)
けれど一瞬の違和感はすぐに消え去った。マスターが私から視線を外し、流しのわきの書類に書き込みを始めたから。
「で?マサのことで聞きたいこと?さっきも言ったが、他の顧客に関することは俺は話さねぇ主義だ。だから、話せる範囲なら、な」
マスターが手に持っている書類は、きっと帳面のようなものなのだろう。売上を管理するような、そんな書類。私がこの店に訪れた時に触っていたそれに「ブレンド」という文字と数のカウントと思われる正の字を書き込んでいる。その文字の上には「モカ」の文字の横に正の字の一が書き込んである。やはり、私がこの店に来る直前に先客がいて、私はその人と入れ違いになっている、という確信めいたものが胸の中に生まれた。
「………お尋ねしたいのは、片桐さん本人のことではないので」
そう。聞きたいのは、片桐さん本人のことではない。だからきっと―――マスターから、私が求めている答えが出てくるはず。目の前に置かれたコーヒーカップを持ち上げることなく、きゅっと握り締めた。
「先週?かな……加奈子さんが、片桐さんに…シェイクスピアの、『十二夜』に出てくるセリフを投げかけていたんです。それから片桐さんの様子が、なんだかおかしく思えて」
「うん?……加奈子が?マサに?」
やっぱり私の質問はマスターの想定外なのだろう。訝しげに書類から視線を外し顔をあげたマスターの表情を眺めつつ、小さく「はい」と肯定の言葉を投げかける。そうして、琥珀色の瞳を見つめながらつっかえつつも言葉を続けていく。
「どうして……あのセリフを、加奈子さんが片桐さんに投げかけたのか、その意図が分からなくて」
マスターの瞳を見つめていると―――あの日。悪戯っぽい笑みを浮かべて、私の腕を強く引っ張っていった加奈子さんの瞳が目の前にあるようだ。マスターと加奈子さんが兄妹ということは智から聞いただけの話。彼らが隣り合って同じ場所にいる場面を見たことがなかったからか、まったく実感が無かったけれども。こうして見つめていると……やはり彼らは兄弟なのだなと、改めて実感する。
「……ちなみに。それはどんなセリフか覚えているか?」
マスターは先ほどから怪訝な表情を崩さない。眉間に皺を寄せたまま、琥珀色の瞳を細めて私を見つめている。
「えっと。『賢いから阿呆の真似が出来る。それは特殊な才能』というような」
「…………」
そこまで思考を巡らせ、はたと思い出す。
「あ、それから。その後、流暢な英語で何かを片桐さんに話されてました。けど、私には聞き取れなくて。でも、片桐さんは聞き取れたみたいで……驚いていたみたいでした。私がこのお店で、ゼロから始められると言った時みたいに」
私の言葉を受けて、しばらく茫然としていたようなマスター。重いとも言えない、けれど軽いとも言えない。澱む、というのも違うけれど。ただただ、長い沈黙が続いた。
そうして、マスターは。何かに思い当たったような表情を浮かべて、口の端をゆっくりと吊り上げた。
「っ、くくく」
マスターが、唐突に笑い出した。お腹を抱えて、腰を曲げて。やられた、とでもいうように、深いグリーンのベレー帽を押さえながら、顔を伏せている。
「……え、ええ?………マスター?」
何故、突然。マスターが笑いだしたのか。さっぱり理解できない。カウンターの内側で肩を震わせているマスターをぽかんと口を開けたまま見つめる。
しばらくの間。店内にマスターの堪え切れない笑いが響いた。私は呆気に取られたまま、小刻みに身体を揺らすマスターの様子を眺める。
「ったく、世話が焼けるなぁ、俺の家族どもは。どいつもこいつも俺の予想の斜め前に向かって身勝手に動き回りやがって」
文句をつけるようなその口調とは裏腹に、彼はこの上なく楽しそうに。くくく、と、堪え切れない笑いをこぼしていく。
笑わされたおかげで酸素が足りない、と言わんばかりに口を大きく開けながら、眦に浮かんだ涙を指先で拭って。マスターがふたたび口を開いた。
「あぁ、知香ちゃんの質問だけどな?加奈子が何を思ってマサにそんな言葉かけたかは……俺にはさっぱりだ」
けどな?と。マスターが続けて。琥珀色の瞳をやわらかく、細めながら。柔和に微笑んだ。
「さとっちゃんと知香ちゃんからしてみれば、マサはちょっかいをかけてくる一方的な悪人だろう。だが、マサは俺の家族だ。この店で繋がった、大切な家族のひとりなんだな。だから俺はマサの肩も持ちたい。あいつは口を割らねぇだろうが、俺が代弁するなら、マサは歩きだした」
そうして、マスターはカウンターの内側から腕を伸ばして。混乱したままの私の頭を、ぽんぽん、と。優しくたたいていく。
「そうだなぁ。……錆びて固まっていた時計の針が動きだした。だから、大丈夫。マサも、知香ちゃんも…さとっちゃんも」
マスターは私の頭に置いた手をゆっくりと動かして。私の髪をくしゃりと撫でた。
視線が絡み合っている、琥珀色の瞳には。ついさっき―――出来の悪い弟の話しをした時と、同じような。あたたかい光が灯されている。
さっきから、さっぱり……わからない。マスターに疑問を投げかけたら何かひとつでも解決するのでは、と思っていたのに。さらに混乱が深まっただけだった。
「俺が言えるのは、ここまでだ」
穏やかな声が、これでこの話は終わり、と。私に告げた。マスターの大きな手のひらが、私の頭から離れていく。その代わりに私の手の中に戻されたモノは、漠然としていて―――輪郭すらあやふや、で。
マスターが優しげに笑っている。その笑顔を見つめていると……全てを赦し洗い流していく、優しくあたたかい雨が。樹々の間からパラパラと落ちていくような。そんなひどく優しい空間の中に引き込まれてしまったように感じた。
「ほら、コーヒーも冷えるぞ?さとっちゃんも家で待ってんだろう。冷めねぇうちに飲んで、さとっちゃんのそばにいてやりな」
そんな……揺蕩うような、曖昧な境界線の狭間で。
優しげなマスターの笑い声の名残だけが、耳に残った。
「………その。私の場合、人生相談というわけではないのですが。マスターにお尋ねしたいことが何点かあって」
「んん?俺?」
視線を手元に落として、挽いたコーヒー豆をペーパーフィルターに移し替えているマスターが驚いたようにゆっくりと視線を私に向けた。琥珀色の瞳がこぼれ落ちそうなほどまん丸になっている。自分に何かを尋ねられるということは想定外だったのだろう。膝の上に置いた鞄をぎゅっと握り直し、じっと彼の顔を見据えた。
「まずは……池野さんのことで」
私がその言葉を紡いだ瞬間。マスターが驚いたような表情を心底楽しそうな表情に切り替えて、私を制止するように右の手のひらを私に見せた。
「ストップ。知香ちゃん、俺も『池野』だぞ?」
「………あっ」
揶揄うような口調でマスターが声を発した。その言葉に彼らの関係性を思い出して我に返り、僅かな羞恥心から顔が赤らんでいく。
すみません、と小さく頭を下げると、マスターは気にも留めていないような様子で、ケトルからコーヒーポットに沸いたお湯を移し替えていく。
「えっと、……加奈子、さんのことで」
池野加奈子さん。それが、彼女の本名。私にとって彼女は取引先の人だからこそ、これまで『池野さん』としか口にしたことがなかった。下のお名前で呼ぶのは何だか擽ったい。擽ったいけれど……聞かなければいけないから。
ふたたび意を決するように小さく息を吸って、コーヒーポットからくるくると円を描くように蒸らしのためのお湯を投下しているマスターに視線を向けた。
「加奈子さん。日本を発つ……とメールが届いていました。どちらに行かれたんですか?」
私の言葉に、マスターは動揺の色を見せない。きっと、私がマスターに尋ねたいことがあると口した時点で、この質問は予見していたのだろう。
彼がドリッパーにお湯を細く注いでいくのをじっと眺める。すると、マスターは小さく息を吐いた。
「悪いな、知香ちゃん。その質問には、答えられない」
「え」
予想外の回答にぴしりと身体が固まった。何を言われているのか、理解が及ばなかった。
「……加奈子の居場所は、教えられない」
マスターはコーヒーポットを置いて、同じ意味を孕んだ違う言葉を紡いだ。顎に手を当て白髪混じりの髭を撫でながら、そっと私を見遣る。
「加奈子は……俺の妹でもあるが、この店の顧客でもある。俺は、そういった顧客に関することを聞かれた時に、それらは喋らないと決めている」
絶望的なまでの、無慈悲な回答。穏やかで、智のこれまでの人生に寄り添ってきた優しいマスターだったら教えてくれるだろう、という想定がいとも簡単にひっくり返されて、ずきり、と。心が収縮した。
私の絶望的な表情を読み取ったのだろう。マスターが困ったように目尻を下げて頬を掻いた。
「言ったろう?人生相談所を長年やってねぇって。その経験から、リスクヘッジの意味合いも込めて、な」
そうして、マスターは一度置いたコーヒーポットを手に取ってゆっくりとお湯を注いでいく。
「俺の中での線引きがある。この話はした方が双方のためになる、というような場合のみ、喋る。俺がマサのお母さんの葬儀の時に、マサの身内事情を知香ちゃんに話したのはそういうこと」
とてもじれったいような速度で、コーヒーポットの細い注ぎ口からお湯が落ちていく。時折、コーヒーポットを傾けて、注いでいくお湯を止めているマスターの手の動きを眺めながら、紡がれた言葉の意味を飲み込んでいく。
確かに。長年人に関わる仕事をしてきたマスターだからこそ、彼の中の線引きがあるのだろう。過去と未来の境界が、他人と自分の境界が、曖昧にならないように。それは相談にきたお客さんの心の中に土足で踏み入らないようにしている……マスターの工夫のひとつ、なのかもしれない。
「ま、それ以前に……さとっちゃんに近い知香ちゃんには教えられねぇ。さとっちゃんのことだ、妹の居場所がわかれば文字通りその場所まですっ飛んでいって三井商社へ連れ戻しを諮るだろう?」
「あ……」
紡がれた言葉に、思わず小さく息を飲む。でも、そこには不思議と驚きはない。苦笑したような声色でマスターから受け取った言葉だけれど、私はそれをとっくの昔から知っているように感じたし、マスターが口にした風景が―――智が飛行機に飛び乗って、加奈子さんを日本に連れ戻そうとする映像が克明に想像できた。
マスターは視線を下に向けたままお湯を注ぎながらも、優しく。まるで、この場にいない智に言い聞かせるように穏やかに言葉を続けていく。
「俺から言えるのは、妹は貿易営業っつう仕事が嫌になったわけじゃぁない。周りの人間関係が嫌になったわけでもない。さとっちゃんが憎くて苦境に落とそうと企んでいたわけでもない。だけど、妹には夢があった。それを叶えるには今が一番都合がいいタイミングだったんだ」
マスターがコーヒーポットをふたたび置いて、サーバーからコーヒーカップに淹れたてのコーヒーを移し替えていく。そうして、ゆっくりと琥珀色の瞳が、私に向けられる。
「日本を発つ瞬間まで、これから重圧がのし掛かるさとっちゃんのことをずうっと案じていた。それだけは変わらない事実だ」
コトリ、と小さな音を立てて。そっと……目の前に白いコーヒーカップが置かれた。爽やかで上品な香りが鼻腔をくすぐっていく。そうして、マスターはふたたび困ったように目尻を下げた。
「妹は、今回のことを5年前から計画していたんだ。それを俺は邪魔してやりたくない。……すまねぇな、知香ちゃん」
「い、いえ……」
その言葉に小さく首を振りつつ、心の中だけで肩を落とす。
5年前から……加奈子さんが、計画していた、ということ。私と彼女が、あの路地で。税関に行く道中に迷い込んだ、あの路地で、彼女に偶然出会う前から。彼女は……夢を叶えるために、用意周到に準備していたのだ。
先ほど説明された言葉を噛み砕いていけば、ほかの顧客の情報は、どう足掻いたってマスターは私に話してくれることはないだろう。逆に、私がここで話すことを違う誰かに話すことはない、という確約めいた話でもあるけれど。
(片桐さんの目の変化のことも……きっと、喋ってくれない…よね…)
私が相談したい、ということを、マスターは私の目で気が付いた。ならば、小林くんさえも気がついた片桐さんの目の変化をマスターは感じ取っているはず。可能であれば片桐さんが直近でいつ来訪したか、その時に彼の目に違和感を抱いたかどうかを訊ねたかった。けれど、きっとマスターはこれについては絶対に教えてくれない。確証はないけれど、なんとなくそう理解した。
「えっと……なんだか、すみませんでした」
マスターは、マスター自身が納得し引き受けられる範囲でお客さんの相談に乗っているのだ。根本的なそれを無視してごねるようにこの話しを引き伸ばすのは筋が違う。ぺこりと頭を下げてマスターに謝罪の言葉を述べた。
私のその様子に、マスターが困ったように吐息を漏らしていく。
「いや、いいんだ。俺が勝手に掲げている信条を押し付ける形になってしまって、逆に申し訳ねぇと思ってるよ」
「と、とんでもないです」
その言葉に慌てて声をあげて、身体の前で手を横に振った。
目の前に置かれたコーヒーカップを手に取って口つける。口に含んだ暖かい液体。喉を滑り落ちていくそれは、フローラルな甘酸っぱい香りが鼻を通り抜けていき、程よい苦味が口の中に広がっていく。
ストレートの豆では味わえない、その複雑な味。独特のその香りや舌触りに酔いしれるように、美味しい、と小さく呟くと、マスターが満足げに微笑んだ。
一口含んだコーヒーカップをカウンターに置いた。カチャカチャと音を立てながら流しで道具を洗っていくマスターの顔をじっと見つめ、もうひとつの質問をマスターにぶつける。
「その。もうひとつは……片桐さんのことで」
「マサ?」
ふたたびマスターが驚いたように顔を上げる。先ほどから私の質問は全て彼の想定外のようだ。
「はい。……えっと…その。彼が、私を…」
彼が私に言い寄っている、ということを口にしたくなくて―――智から奪い取ろうとしている、という、そんな現実から少しでも顔を背けたくて。マスターから視線を外しながら言い淀む。
「さとっちゃんから横恋慕しようとしてる、ってことだろう」
「う…」
改めて言われると、やはりなんだか居心地が悪い。思わず椅子の上で縮こまる。
マスターが面白そうに言葉を紡いだのち、視線を落として洗い物をする作業を再開していく。
「あれはマサが悪い。確かに、恋愛なんっつうのは言ったもん勝ち、やったもん勝ち、押したもん勝ちだ。けど、相手が嫌がっているのに自分の気持ちを押し付けるのは間違っている。俺は少なくともそう思ってるよ」
流しの水音に紛れながらも、マスターの強い意思を孕んだ言葉が耳に届く。マスターは洗い物を終えたのか、腕を震わせて黒いエプロンの裾で手を拭いた。
ふい、と。柔和な微笑みに浮かぶ琥珀色の瞳が、ひどく優しく。私を見つめている。
「だから知香ちゃんは堂々とさとっちゃんの隣に立っててくれ。この先、なにがあっても」
「……はい……」
穏やかに笑うマスター。でも、その瞳には少しだけ翳りがあった。哀愁……ともいうような、そんな瞳。
(……?)
けれど一瞬の違和感はすぐに消え去った。マスターが私から視線を外し、流しのわきの書類に書き込みを始めたから。
「で?マサのことで聞きたいこと?さっきも言ったが、他の顧客に関することは俺は話さねぇ主義だ。だから、話せる範囲なら、な」
マスターが手に持っている書類は、きっと帳面のようなものなのだろう。売上を管理するような、そんな書類。私がこの店に訪れた時に触っていたそれに「ブレンド」という文字と数のカウントと思われる正の字を書き込んでいる。その文字の上には「モカ」の文字の横に正の字の一が書き込んである。やはり、私がこの店に来る直前に先客がいて、私はその人と入れ違いになっている、という確信めいたものが胸の中に生まれた。
「………お尋ねしたいのは、片桐さん本人のことではないので」
そう。聞きたいのは、片桐さん本人のことではない。だからきっと―――マスターから、私が求めている答えが出てくるはず。目の前に置かれたコーヒーカップを持ち上げることなく、きゅっと握り締めた。
「先週?かな……加奈子さんが、片桐さんに…シェイクスピアの、『十二夜』に出てくるセリフを投げかけていたんです。それから片桐さんの様子が、なんだかおかしく思えて」
「うん?……加奈子が?マサに?」
やっぱり私の質問はマスターの想定外なのだろう。訝しげに書類から視線を外し顔をあげたマスターの表情を眺めつつ、小さく「はい」と肯定の言葉を投げかける。そうして、琥珀色の瞳を見つめながらつっかえつつも言葉を続けていく。
「どうして……あのセリフを、加奈子さんが片桐さんに投げかけたのか、その意図が分からなくて」
マスターの瞳を見つめていると―――あの日。悪戯っぽい笑みを浮かべて、私の腕を強く引っ張っていった加奈子さんの瞳が目の前にあるようだ。マスターと加奈子さんが兄妹ということは智から聞いただけの話。彼らが隣り合って同じ場所にいる場面を見たことがなかったからか、まったく実感が無かったけれども。こうして見つめていると……やはり彼らは兄弟なのだなと、改めて実感する。
「……ちなみに。それはどんなセリフか覚えているか?」
マスターは先ほどから怪訝な表情を崩さない。眉間に皺を寄せたまま、琥珀色の瞳を細めて私を見つめている。
「えっと。『賢いから阿呆の真似が出来る。それは特殊な才能』というような」
「…………」
そこまで思考を巡らせ、はたと思い出す。
「あ、それから。その後、流暢な英語で何かを片桐さんに話されてました。けど、私には聞き取れなくて。でも、片桐さんは聞き取れたみたいで……驚いていたみたいでした。私がこのお店で、ゼロから始められると言った時みたいに」
私の言葉を受けて、しばらく茫然としていたようなマスター。重いとも言えない、けれど軽いとも言えない。澱む、というのも違うけれど。ただただ、長い沈黙が続いた。
そうして、マスターは。何かに思い当たったような表情を浮かべて、口の端をゆっくりと吊り上げた。
「っ、くくく」
マスターが、唐突に笑い出した。お腹を抱えて、腰を曲げて。やられた、とでもいうように、深いグリーンのベレー帽を押さえながら、顔を伏せている。
「……え、ええ?………マスター?」
何故、突然。マスターが笑いだしたのか。さっぱり理解できない。カウンターの内側で肩を震わせているマスターをぽかんと口を開けたまま見つめる。
しばらくの間。店内にマスターの堪え切れない笑いが響いた。私は呆気に取られたまま、小刻みに身体を揺らすマスターの様子を眺める。
「ったく、世話が焼けるなぁ、俺の家族どもは。どいつもこいつも俺の予想の斜め前に向かって身勝手に動き回りやがって」
文句をつけるようなその口調とは裏腹に、彼はこの上なく楽しそうに。くくく、と、堪え切れない笑いをこぼしていく。
笑わされたおかげで酸素が足りない、と言わんばかりに口を大きく開けながら、眦に浮かんだ涙を指先で拭って。マスターがふたたび口を開いた。
「あぁ、知香ちゃんの質問だけどな?加奈子が何を思ってマサにそんな言葉かけたかは……俺にはさっぱりだ」
けどな?と。マスターが続けて。琥珀色の瞳をやわらかく、細めながら。柔和に微笑んだ。
「さとっちゃんと知香ちゃんからしてみれば、マサはちょっかいをかけてくる一方的な悪人だろう。だが、マサは俺の家族だ。この店で繋がった、大切な家族のひとりなんだな。だから俺はマサの肩も持ちたい。あいつは口を割らねぇだろうが、俺が代弁するなら、マサは歩きだした」
そうして、マスターはカウンターの内側から腕を伸ばして。混乱したままの私の頭を、ぽんぽん、と。優しくたたいていく。
「そうだなぁ。……錆びて固まっていた時計の針が動きだした。だから、大丈夫。マサも、知香ちゃんも…さとっちゃんも」
マスターは私の頭に置いた手をゆっくりと動かして。私の髪をくしゃりと撫でた。
視線が絡み合っている、琥珀色の瞳には。ついさっき―――出来の悪い弟の話しをした時と、同じような。あたたかい光が灯されている。
さっきから、さっぱり……わからない。マスターに疑問を投げかけたら何かひとつでも解決するのでは、と思っていたのに。さらに混乱が深まっただけだった。
「俺が言えるのは、ここまでだ」
穏やかな声が、これでこの話は終わり、と。私に告げた。マスターの大きな手のひらが、私の頭から離れていく。その代わりに私の手の中に戻されたモノは、漠然としていて―――輪郭すらあやふや、で。
マスターが優しげに笑っている。その笑顔を見つめていると……全てを赦し洗い流していく、優しくあたたかい雨が。樹々の間からパラパラと落ちていくような。そんなひどく優しい空間の中に引き込まれてしまったように感じた。
「ほら、コーヒーも冷えるぞ?さとっちゃんも家で待ってんだろう。冷めねぇうちに飲んで、さとっちゃんのそばにいてやりな」
そんな……揺蕩うような、曖昧な境界線の狭間で。
優しげなマスターの笑い声の名残だけが、耳に残った。
0
お気に入りに追加
1,544
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました
紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話
平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。
サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。
恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで……
元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる?
社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。
「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」
ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。
仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。
ざまぁ相手は紘人の元カノです。
あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。
汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。
書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
―――――――――――――――――――
ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。
傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。
―――なのに!
その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!?
恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆
「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」
*・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・*
▶Attention
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。