116 / 273
本編・第三部
【幕間】浅ましい願いの果てに 〜 side 達樹
しおりを挟む
イライラする。本当にイライラする。
「俺、三木さんが好きなんです。で、いろいろと三木さんの好みをリサーチしていて。先週まで通関部にいたあなたならなにかご存じでないですか?」
それもこれも、この南里という男のせいだ。
「……俺も知らないですね」
ふい、と。わざとらしく視線を外す。くりくりとした目が特徴的な、純情な少年のような可愛らしい見た目。
でも。その、くりくりとした可愛らしい瞳の奥に。俺に対する―――明らかな敵意の光が宿っていることに。気が付かない、わけもない。
(……バレてンな…)
俺と、三木さんの関係が。この、南里という男に、気が付かれている。
この一週間、片桐に勘付かれてからは、社員食堂を利用せず、少ない休み時間だとしてもわざわざこうやって1階のカフェに足を運んだりして接触を避け、細心の注意を払っていたのに。
(………さっきの、三木さんの反応で気付かれたんだろうか)
ふっと。肩のあたりで切り揃えられた、三木さんの明るい髪が脳裏をよぎった。
極東商社は、社内恋愛に寛容だ。俺と三木さんの関係が公になったところで、誰に咎められるわけでもない。
それでも、今、この関係を公にする、という選択を選ぶことは、俺には―――難しかった。
(……まだ、俺の噂が燻っているんだ)
大口株主である九十銀行頭取の甥。ゆくゆくはその後釜におさまる、次期頭取……という、噂。
噂が駆け巡ったのが、ちょうど一ヶ月前。
それ自体は事実であるから、反論も弁明もする気はない。やっかいなのは、それに連なる悪意の塊たち。今、俺の隣に座っている一瀬さんが、その悪意の大半を振り払ってくれたものの。
……哀しいかな、人間の性なのか。まだまだ悪意に塗れた噂自体は蔓延っている。
全員が全員、一瀬さんのように……他人を機能価値で、肩書きで見ない、そんな"人間"じゃない。
腰かけ、だの、お高くとまってる、だの。イロイロと言いたい奴には言わせておけばいい。
ここから先、俺に向けられるやっかみは、俺自身が畜産販売部で営業成績を出して振り払えばいい。そう、感じているけれど。
(今……公にしてしまえば、三木さんが色眼鏡でみられてしまう)
そう。今、この関係を、俺が公に認めてしまえば。三木さんが……『肩書きに惹かれた女』と、薄汚いゴシップの的になってしまうことは、火を見るより明らかだった。
ただでさえ、俺のことが面白可笑しく噂されているのだ。……そこに、余計な火種は追加したくない。
俺を色眼鏡で見なかった三木さんだからこそ。あの夜、片桐の手から俺を護ろうと、俺にしか分からないように煙草の箱を使ってまで動いてくれた三木さんだからこそ。
今度は俺が―――三木さんを護るべきで。
「どんな人がタイプとかでもいいので、知ってることがあったら教えてください」
「えぇ~……そうねぇ…」
南里が三木さんの好みを、先ほどまで視線を合わせていた俺ではなく、隣に座っている一瀬さんにわざとらしく訊ねた。南里のその言動にも、イライラする。
この一週間。初日はほとんどお遣いばかりだったけれど、それ以降は前任者の引継ぎで、今日のようにゆっくりと昼食を取る時間もなく。残業続きで、三木さんとしっかり話せる機会も時間もなかった。
(三木さん、俺にそういうこと言わないし)
その事実にも、イライラしている。
偽りの関係に、傷の舐め合いの関係に、終止符を打ったあの日。きちんと、連絡先を交換した。用があれば裏紙に書き込んでデスクに突っ込む関係だったから、ぎこちない遣り取りしかできていないけれど。
順序が混ぜこぜになった俺たち。だからこそ、あれから三木さんに、自分から触れることもしていない。三木さんに一瀬さんを重ねて、三木さんを傷つけてきた、俺なりの償いのつもりだった。
(頼りねぇって思われてんだろうな……)
心の中で大きくため息をつく。
俺は一度、間違った選択肢を選び取った。自分の気持ちに気が付かないフリをして、スタートラインすら違えた。そんな俺が、三木さんに頼られるはずもない。
だから。三木さんは俺に、南里にちょっかいをかけられている、と。一言も告げないのだろう。
やりきれない気持ちを吐き出すかのように。小さくため息をついて、手に持ったサンドイッチを、強く握りしめた。
南里が配属された初日。片桐に『猫』という形で忠告を受けなければ、きっと、俺もこの南里の動きに気が付かなかっただろう。
通関部と畜産販売部は同じ階のフロアだからこそ、会社にいる時は、お互いに過剰なほど接触を避けるようにしている。
その上、三木さんは南里のことを一言も俺に言わない。
……こんな状況で、気がつけるわけもない。
あれは片桐がなにかに苛ついて、俺に当たり散らかしにきたついでだったということもわかっている。
あいつは性格がひどく歪んでいるけれど、俺への償いと口にした。その言葉は、あの瞳は、きっと、真実だろうから。
……だから、南里がどのように三木さんにちょっかいをかけているのか。この目で確かめたくて。この席に座る選択をした。
(……まぁ、俺も。片桐ほどではないけれど。だいぶん、性格は悪いな)
いい機会だ、と、心の中で小さく呟いて。
わざと。南里ではなく、一瀬さんの焦げ茶色の瞳を見つめて、棘のある言い方をした。
「……片桐係長のような人ではない人がいいんじゃないですか。三木さん、えらく片桐係長のこと嫌ってましたから」
「あはは……それは言えてるかも」
一瀬さんが乾いた笑いを俺に向けた。片桐が一瀬さんに休憩中に堂々と迫っていたように、南里が三木さんに堂々と迫っていることの肯定だろう。
腸が煮えくり返っている。沸々と滾る感情を、一瀬さんの乾いた笑顔を眺めながら必死で抑えた。
一瀬さんへの想いが完全に途切れたわけじゃない。でも、俺の中の、ひとつの思い出として。あの夜に、俺の中の宝箱に仕舞って、鍵をかけた。
自分のための人生を生きるために。前に進むために。
俺の生命が尽きる瞬間に、後悔しないために。
これはきっと、俺が一生抱えて生きていくはずの、ひどく優しい感情、なのだろう、と……思う。
困ったように笑う一瀬さんの耳元で、ダイヤモンドのイヤリングが煌めいて。その煌めきに、三木さんに贈った、雪の結晶のネックレスを思い出した。
三木さんは、雪のようなひとだ。冷たいくせに、ひどくあたたかくて、優しい。
そんなひとが、『自分の大切なひと』なのだ、と。
『このひとは自分のものなのだ』と、自分の心に刻みつけるように。あのネックレスを、選んだ。
浅ましいとは思っている。他の人への想いを断ち切ることも出来ず、後生大事に宝箱に仕舞いこんで、それでもなお、目の前の人が欲しいと願ってしまう。
途方もなく、俺は、浅ましい。
(……遠い、な)
幼い頃からの呪縛に雁字搦めになって、必死に足掻いていた俺に、自分のための人生を生きなさい、と。勝気な瞳に真っ直ぐな光を宿し、俺を叱ってくれた、彼女。
一瀬さんへの想いを押し殺して、一瀬さんへの執着心から、身勝手な劣情から、自分勝手に着火剤になってやると息巻いて、邨上に宣戦布告をして。辛酸を舐め続けることに耐えられなくなって、彼女に一瀬さんを重ね。それを盾に片桐に嵌められて、血反吐を吐いてボロボロになっていた、そんなみっともない俺を。
彼女自身の想いも感情も、全部全部、あの白い背中に押し込めて。いつだって俺を護ってくれた、あの白い背中に。
浅ましい劣情を抱えた俺とは正反対の、強く、美しい、彼女に追いつきたいと、願っているのに。
空に浮かぶ雲には届かないとわかっていても。
こんなにも浅ましい俺が届くはずはないと、わかっていても。
この手を、必死に伸ばしているのに。
(……隣に、立ちてぇのにな……)
あの白い背中は。こんなにも……遠い。
そうして、はっと気が付く。
俺は、今。この、南里という男に。
(宣戦布告されている……っつうワケか)
ゆるゆると、視線を南里に合わせる。
くりっとした瞳と、視線がかち合う。
少年のような可愛らしい顔立ちに浮かぶ、敵意の焔に。貫かれていく。
(…………)
俺が宣戦布告をした、あの時。邨上は、俺に、こう言った。
『そん時は……俺が、また奪い返してやる』
己の心に嘘をつかず、それでいて、強気で、自信家で。不敵に、余裕ぶった、スカした笑みを浮かべるあのダークブラウンの瞳を。
俺に、自分の人生を生きろと叱って、俺を痛みから救い上げようとしてくれたあの勝気な瞳を、脳裏に浮かべて。
(ふたりに、届かなくても、いい)
もう、次は。気が付かないフリも、しない。間違った選択肢を、選び取らない。
彼女を護るための、一歩を。この足で、踏み出して。
―――正しいスタートラインに、立ってやる。
ゆっくりと、席を立って。目の前に座ったままの、南里に視線を合わせて。
自分の視線に、強い意思を込めて。強く、南里の瞳を見つめた。
(奪えるものなら、奪ってみろ。奪い返してやる)
お前が俺に宣戦布告をしたのならば。その勝負……受けて立とう。
お前に、真梨さんをくれてやる気なんて、やっと気づけた自分の気持ちを、やっと手にした俺の人生の光を、お前にくれてやる気なんて。
お前の宣戦布告に、気が付かないフリをするつもりなんて。
―――さらさら、ねぇんだ。
相手が俺でなくても。彼女が幸せになってくれればそれでいい、と。物分かりの良いことを宣う、そんな気持ちは。
(ひと欠けらも持ち合わせてねぇんだよ、今の俺は)
じっと、睨み合いが続く。
「席、ありがとうございました。では」
一瀬さんに、ぺこりと頭を下げながら。
南里にしか、分からないように。一瀬さんに気づかれないように。首を傾げながら、自らの瞳を、細く歪ませて。
邨上が俺にむけたように。
『奪えるものなら、奪ってみろ』
ゆっくりと。口を動かした。
「俺、三木さんが好きなんです。で、いろいろと三木さんの好みをリサーチしていて。先週まで通関部にいたあなたならなにかご存じでないですか?」
それもこれも、この南里という男のせいだ。
「……俺も知らないですね」
ふい、と。わざとらしく視線を外す。くりくりとした目が特徴的な、純情な少年のような可愛らしい見た目。
でも。その、くりくりとした可愛らしい瞳の奥に。俺に対する―――明らかな敵意の光が宿っていることに。気が付かない、わけもない。
(……バレてンな…)
俺と、三木さんの関係が。この、南里という男に、気が付かれている。
この一週間、片桐に勘付かれてからは、社員食堂を利用せず、少ない休み時間だとしてもわざわざこうやって1階のカフェに足を運んだりして接触を避け、細心の注意を払っていたのに。
(………さっきの、三木さんの反応で気付かれたんだろうか)
ふっと。肩のあたりで切り揃えられた、三木さんの明るい髪が脳裏をよぎった。
極東商社は、社内恋愛に寛容だ。俺と三木さんの関係が公になったところで、誰に咎められるわけでもない。
それでも、今、この関係を公にする、という選択を選ぶことは、俺には―――難しかった。
(……まだ、俺の噂が燻っているんだ)
大口株主である九十銀行頭取の甥。ゆくゆくはその後釜におさまる、次期頭取……という、噂。
噂が駆け巡ったのが、ちょうど一ヶ月前。
それ自体は事実であるから、反論も弁明もする気はない。やっかいなのは、それに連なる悪意の塊たち。今、俺の隣に座っている一瀬さんが、その悪意の大半を振り払ってくれたものの。
……哀しいかな、人間の性なのか。まだまだ悪意に塗れた噂自体は蔓延っている。
全員が全員、一瀬さんのように……他人を機能価値で、肩書きで見ない、そんな"人間"じゃない。
腰かけ、だの、お高くとまってる、だの。イロイロと言いたい奴には言わせておけばいい。
ここから先、俺に向けられるやっかみは、俺自身が畜産販売部で営業成績を出して振り払えばいい。そう、感じているけれど。
(今……公にしてしまえば、三木さんが色眼鏡でみられてしまう)
そう。今、この関係を、俺が公に認めてしまえば。三木さんが……『肩書きに惹かれた女』と、薄汚いゴシップの的になってしまうことは、火を見るより明らかだった。
ただでさえ、俺のことが面白可笑しく噂されているのだ。……そこに、余計な火種は追加したくない。
俺を色眼鏡で見なかった三木さんだからこそ。あの夜、片桐の手から俺を護ろうと、俺にしか分からないように煙草の箱を使ってまで動いてくれた三木さんだからこそ。
今度は俺が―――三木さんを護るべきで。
「どんな人がタイプとかでもいいので、知ってることがあったら教えてください」
「えぇ~……そうねぇ…」
南里が三木さんの好みを、先ほどまで視線を合わせていた俺ではなく、隣に座っている一瀬さんにわざとらしく訊ねた。南里のその言動にも、イライラする。
この一週間。初日はほとんどお遣いばかりだったけれど、それ以降は前任者の引継ぎで、今日のようにゆっくりと昼食を取る時間もなく。残業続きで、三木さんとしっかり話せる機会も時間もなかった。
(三木さん、俺にそういうこと言わないし)
その事実にも、イライラしている。
偽りの関係に、傷の舐め合いの関係に、終止符を打ったあの日。きちんと、連絡先を交換した。用があれば裏紙に書き込んでデスクに突っ込む関係だったから、ぎこちない遣り取りしかできていないけれど。
順序が混ぜこぜになった俺たち。だからこそ、あれから三木さんに、自分から触れることもしていない。三木さんに一瀬さんを重ねて、三木さんを傷つけてきた、俺なりの償いのつもりだった。
(頼りねぇって思われてんだろうな……)
心の中で大きくため息をつく。
俺は一度、間違った選択肢を選び取った。自分の気持ちに気が付かないフリをして、スタートラインすら違えた。そんな俺が、三木さんに頼られるはずもない。
だから。三木さんは俺に、南里にちょっかいをかけられている、と。一言も告げないのだろう。
やりきれない気持ちを吐き出すかのように。小さくため息をついて、手に持ったサンドイッチを、強く握りしめた。
南里が配属された初日。片桐に『猫』という形で忠告を受けなければ、きっと、俺もこの南里の動きに気が付かなかっただろう。
通関部と畜産販売部は同じ階のフロアだからこそ、会社にいる時は、お互いに過剰なほど接触を避けるようにしている。
その上、三木さんは南里のことを一言も俺に言わない。
……こんな状況で、気がつけるわけもない。
あれは片桐がなにかに苛ついて、俺に当たり散らかしにきたついでだったということもわかっている。
あいつは性格がひどく歪んでいるけれど、俺への償いと口にした。その言葉は、あの瞳は、きっと、真実だろうから。
……だから、南里がどのように三木さんにちょっかいをかけているのか。この目で確かめたくて。この席に座る選択をした。
(……まぁ、俺も。片桐ほどではないけれど。だいぶん、性格は悪いな)
いい機会だ、と、心の中で小さく呟いて。
わざと。南里ではなく、一瀬さんの焦げ茶色の瞳を見つめて、棘のある言い方をした。
「……片桐係長のような人ではない人がいいんじゃないですか。三木さん、えらく片桐係長のこと嫌ってましたから」
「あはは……それは言えてるかも」
一瀬さんが乾いた笑いを俺に向けた。片桐が一瀬さんに休憩中に堂々と迫っていたように、南里が三木さんに堂々と迫っていることの肯定だろう。
腸が煮えくり返っている。沸々と滾る感情を、一瀬さんの乾いた笑顔を眺めながら必死で抑えた。
一瀬さんへの想いが完全に途切れたわけじゃない。でも、俺の中の、ひとつの思い出として。あの夜に、俺の中の宝箱に仕舞って、鍵をかけた。
自分のための人生を生きるために。前に進むために。
俺の生命が尽きる瞬間に、後悔しないために。
これはきっと、俺が一生抱えて生きていくはずの、ひどく優しい感情、なのだろう、と……思う。
困ったように笑う一瀬さんの耳元で、ダイヤモンドのイヤリングが煌めいて。その煌めきに、三木さんに贈った、雪の結晶のネックレスを思い出した。
三木さんは、雪のようなひとだ。冷たいくせに、ひどくあたたかくて、優しい。
そんなひとが、『自分の大切なひと』なのだ、と。
『このひとは自分のものなのだ』と、自分の心に刻みつけるように。あのネックレスを、選んだ。
浅ましいとは思っている。他の人への想いを断ち切ることも出来ず、後生大事に宝箱に仕舞いこんで、それでもなお、目の前の人が欲しいと願ってしまう。
途方もなく、俺は、浅ましい。
(……遠い、な)
幼い頃からの呪縛に雁字搦めになって、必死に足掻いていた俺に、自分のための人生を生きなさい、と。勝気な瞳に真っ直ぐな光を宿し、俺を叱ってくれた、彼女。
一瀬さんへの想いを押し殺して、一瀬さんへの執着心から、身勝手な劣情から、自分勝手に着火剤になってやると息巻いて、邨上に宣戦布告をして。辛酸を舐め続けることに耐えられなくなって、彼女に一瀬さんを重ね。それを盾に片桐に嵌められて、血反吐を吐いてボロボロになっていた、そんなみっともない俺を。
彼女自身の想いも感情も、全部全部、あの白い背中に押し込めて。いつだって俺を護ってくれた、あの白い背中に。
浅ましい劣情を抱えた俺とは正反対の、強く、美しい、彼女に追いつきたいと、願っているのに。
空に浮かぶ雲には届かないとわかっていても。
こんなにも浅ましい俺が届くはずはないと、わかっていても。
この手を、必死に伸ばしているのに。
(……隣に、立ちてぇのにな……)
あの白い背中は。こんなにも……遠い。
そうして、はっと気が付く。
俺は、今。この、南里という男に。
(宣戦布告されている……っつうワケか)
ゆるゆると、視線を南里に合わせる。
くりっとした瞳と、視線がかち合う。
少年のような可愛らしい顔立ちに浮かぶ、敵意の焔に。貫かれていく。
(…………)
俺が宣戦布告をした、あの時。邨上は、俺に、こう言った。
『そん時は……俺が、また奪い返してやる』
己の心に嘘をつかず、それでいて、強気で、自信家で。不敵に、余裕ぶった、スカした笑みを浮かべるあのダークブラウンの瞳を。
俺に、自分の人生を生きろと叱って、俺を痛みから救い上げようとしてくれたあの勝気な瞳を、脳裏に浮かべて。
(ふたりに、届かなくても、いい)
もう、次は。気が付かないフリも、しない。間違った選択肢を、選び取らない。
彼女を護るための、一歩を。この足で、踏み出して。
―――正しいスタートラインに、立ってやる。
ゆっくりと、席を立って。目の前に座ったままの、南里に視線を合わせて。
自分の視線に、強い意思を込めて。強く、南里の瞳を見つめた。
(奪えるものなら、奪ってみろ。奪い返してやる)
お前が俺に宣戦布告をしたのならば。その勝負……受けて立とう。
お前に、真梨さんをくれてやる気なんて、やっと気づけた自分の気持ちを、やっと手にした俺の人生の光を、お前にくれてやる気なんて。
お前の宣戦布告に、気が付かないフリをするつもりなんて。
―――さらさら、ねぇんだ。
相手が俺でなくても。彼女が幸せになってくれればそれでいい、と。物分かりの良いことを宣う、そんな気持ちは。
(ひと欠けらも持ち合わせてねぇんだよ、今の俺は)
じっと、睨み合いが続く。
「席、ありがとうございました。では」
一瀬さんに、ぺこりと頭を下げながら。
南里にしか、分からないように。一瀬さんに気づかれないように。首を傾げながら、自らの瞳を、細く歪ませて。
邨上が俺にむけたように。
『奪えるものなら、奪ってみろ』
ゆっくりと。口を動かした。
0
よろしければ感想などお気軽にお寄せください♪
メッセージフォーム
お気に入りに追加
1,542
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。