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本編・第三部

127 *

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 嘘をついた、罰。その言葉に、目の前にあるダークブラウンの瞳に、強く射竦められる。智の強い視線に、触れられてもいないナカがひくりと蠢いた。

「っ……」

 こんな、中途半端に放置されて。我慢、できるわけもない。
 ……いつだって、恥ずかしさに負けてしまって…素直になれない、私。素直になれないから…こうやってお預けされるのなら。

 智のスエットを握りしめたままの手にぎゅっと力を入れて。

「……さ、みしかった…」

 顔が赤くなるのも構わず、智がイタリア出張中に感じていた気持ちを、素直に口にする。
 私の言葉を受けて、ふっと、智が口の端を吊り上げて。

「ん。知ってた」

 出張に出る日からずうっと。そう、智の唇が、ゆっくり動いた。そうして。

「……俺は、素直な知香も好きだ。だから…俺の前くらいは素直になってくれねぇ?」

 こてん、と。智が首を傾げつつ小さく囁いた。その言葉に、どくんっ、と。ふたたび身体の奥が震える。

 素直な、私が好き。そんな風に言われてしまえば…意地なんて張れるわけもなくて。その言葉に、私は熱に浮かされたようにこくこくと頷いた。

 私の様子に、智の切れ長の瞳が意地悪に歪んで、不敵に笑う。

「…ま。感じてんのに感じてないって言い張って、それでも抗えずに堕ちてく知香も可愛くて好きだけどな?」

「……っ、もぉっ!ばかぁっ!!」

 紡がれた言葉の恥ずかしさで、ぱちん、と智の胸を力の入らない手で軽くはたいた。
 私のその腕を智が軽く掴んで、ふたたびシーツに縫い止めていく。

「怒んなよ。……俺はどんな知香でも…全部、愛してんの」

 そう言って、智が掴んだ私の腕をゆっくり離して、左手を取って…薬指に、口付けた。

「……やっと。消毒できた」

「しょ、う…どく…?」

 智の言葉の意味を飲み込みかねていると、智がふっと笑って。

「……知香。今は、お互いに仕事のことがあるから、無理かもしれねぇけど。ここは俺が予約してっから。それだけは、絶対に…忘れねぇでくれ、な?」

「…っ……」

 遠回しの…プロポーズの言葉。その意味をゆっくり噛み砕いて、胸の奥がぎゅうと熱くなった。智の長い指が、私の頬の輪郭をすっと撫でて。

「あん時…暗示を振り払ってくれて、ありがとう、な……」
 
 そう、智が口にして。優しく、口付けられていく。軽いリップ音が響いて、唇がゆっくり離れていく。

「……私も、智のこと、愛してるから…だから、片桐さんなんかに、負けないもん…」

 目の前にある、ダークブラウンの瞳をじっと見つめた。そうして、くすくすと笑い合って。

「……も、我慢出来ねぇ。いい、だろ?」

 智の低く響く声に、こくりと頷いた。








 じっとりと蜜が染みて、もう意味をなしていないショーツの上から、ゆっくりと秘裂をなぞられていく。

「ああっ、あんっ……くぅ……んぅっ……」

 肌の表面を駆け上がるようなざわりとした感覚に、背中がくんっと反り返った。ショーツの上からでもはっきりわかるくらいにぷっくりと膨らんだ秘芽を、何度も擦り上げられて。

「ぁ、ひぅっ……ああっ、だめっ、っ、―――っ!!」

 ふたたび、ばちりと視界が白く弾けた。ガクガクと痙攣する身体を智が絶妙な力加減で抱きしめて。

「ほ~んと、知香って感じやすいよなぁ?あいつ不感症だなんてどんな思考回路してたら言えるんだ?」

 くすくすと笑いながら、そう言葉を紡いで、あっという間にスカートもショーツも脱がされていく。脱がされたショーツが、つぅ、と、蜜が糸を引いたことを自覚して、身体がさらに火照っていく。
 ついでに、智も黒いスエットを自ら脱いだ。鍛えられた身体が露わになっていく。くっきりと浮かび上がる筋肉質な胸板に、力の入らない腕を必死に動かして、ゆっくりと指を這わせる。

「どうした?……もしかして、もう我慢出来ないかられてって誘ってんの?」

 ニヤリと。智が、ひどく意地悪な笑みを浮かべた。その表情に、かっと顔が赤くなっていく。

「…っ、もう、ほんとっ…意地悪っ…」

 ぎゅっと目の前にある切れ長の瞳を睨みあげた。私のその仕草に、ふっと、智が息を漏らして笑う。

「俺だって今すぐにでも知香のナカに入りてぇけどさ?…2週間振りだからな、ちゃんと解しとかねぇと……知香がキツいだけだぞ?」

 そう呟いて、智の角ばった指が夥しく濡れそぼって蕩けてしまった秘裂に這わされて…つぷん、と、埋め込まれた。

「ひゃっ……あ、ぅ……」

 数度絶頂を迎えたソコは脈を打つようにうねっていて、智の指を簡単に受け入れていく。

「……っ、相変わらずキッツいな…」

 そうして、ゆっくりと…絶妙な力加減で、私が特に弱い、入口の上の壁を押されていく。時にぎゅう、と、時に…トントンと、リズミカルに。

「やあっ…あああっ……あぅっ」

 堪えきれない感覚に、襲いくる大きな快楽の波に呆気なく連れていかれて。声にならない声で絶頂を迎え、額に、首筋に汗がじっとりと滲んだ。
 いつの間にか智の指が増えて、今度は最奥を揺らされていく。

「あああっ、それっ、やだっ、ぅ、んんっ!!」

「ん?これ、……知香、好き、だろ?」

 智の指の抽挿に合わせて、知らず知らずのうちに腰が揺らめいて、それがさらに深い快感を呼び起こして。ぽろぽろと涙が零れ落ちていく。

「んっ、やぁッ、きらいっ……」

「腰揺らすくれぇ好きだってば。……ほんっと、セックスになると強情だよな、知香って」

 くすくすと智が笑い声を上げる。シーツをめいっぱい握りしめ、肩を大きく上下させ、荒くなった息を深呼吸をしてやり過ごしていると、智の指がするりと抜けて、熱い昂りが押し付けられた。

 ゆっくりと、私の蜜壷に押し進められていく。

「あっ……っう……」

 久しぶりに味わう、内側から押し広げられるような感覚に、胎内を熱い楔がゆっくりと進んでいく感覚に……ぞくぞくと背筋が痺れる感覚に、恍惚と酔いしれた。

「……っ、痛く、は…なさそう、だな?」

 智が確信が持てないというような…不安そうな光を宿した瞳で、奥歯を噛み締めている私を見ている。智の言葉にこくこくと首を縦に振る。

「だい、じょぶ……」

 痛い訳じゃない。けど、初めての時みたいに、苦しい。圧倒的な質量に、苦しさと…心の底からふつふつと湧きあがる恋慕の、感情。
 シーツを握りしめていた手の力を抜いて、するりと智の首の後ろに回して。

「……ずっと…こうして、ほしかった」

 ダークブランの瞳を見つめながら、そう呟く。ふっと、智が息を漏らして。

「…俺も。ずっと…こうしたかった」

 そうして。小さく、啄むような、軽いキスが繰り返されて…ゆるやかな律動が始まって。
 ギリギリまで引き抜かれ、最奥まで貫かれる。ゆっくりと、優しく、何度も何度も突き上げられていく。

「あっ、ああっ、んっ、ぅっ、あっっ」

 ぐちゅり、ぐちゅりと淫らな水音が大きく響いて、その水音に、最奥を貫かれていく途方もない快感に、脳が溶かされていく。

「知香……腕、俺の背中に回せるか?」

 チカチカと、目の奥に小さな光がちらついている。その感覚を必死に堪えながら、紡がれた言葉に従い、智の背中に腕を回す。
 智が私の腰に腕を回して身体を軽々と抱き上げ、するりと私の膝の裏に手のひらを当てて。

 くるん、と、智が私の身体を裏返した、瞬間。胎内の熱い楔がグリンと回転した刺激が加わり。

「んっ、ぁあああっ!!」

 初めて味わう感覚に、背筋を震わせた。視界が白く染まるけれど、それがしがみついた枕の白さなのか、絶頂を迎えた白さなのか、判別できなかった。

「い~声で啼くなぁ。体位変えただけで軽くイった?」

 くすくすと、智が背中で笑う。智の熱い手のひらが私の腰に添えられて、ゆっくりと持ち上げられ……まるで、猫がぐっと前へ伸びをするような体勢へ変えられて。

「ひ、ぅ……」

 ゾクゾクと全身が総毛立つ。熱い楔の先端の位置が、いつもと違う。
 所謂……後背位バック。獣の交わりのような、四つん這いの体勢。思わず自分の今の状況を客観的に想像して、その想像に呼応するようにナカに挿し込まれた熱い楔をぎゅうっと締め付けていた。

「う、くっ…知、香………」

 智の余裕のない声が響いて。その声を合図に、容赦なく腰を打ち付けられていく。

「っ、あぅっ、やぁっ、」

 最奥に届く粘膜が、コリッとした部分を突き上げて。思わず悲鳴じみた声があがる。

「ひ、あぁっ!あぁっ、やぁっ、そこっ、やだっ」

「…っ、………ここ?」

 智が私の耳元で囁いて、執拗にそこだけを揺らしていく。子宮からぶわりと快感が登りあがって、頭が真っ白になって、ぎゅう、と、目の前にある枕を握りしめた。その握りしめた手に智の熱い手のひらが重ねられる。じっとりと全身に汗が滲んで。

「…ちょ……締め、すぎ…」

 智の掠れた呻き声と自分の嬌声に思考が溶かされて。達してひくついたままのナカを容赦なく灼熱の楔が動き回り、大きな水音をさせながら攪拌されていく。

「っ、ああっ、もう、むりぃっ、んぅっ、あああっ」

「知、香……愛…してる…」

 智の声が遠くに聞こえて、ぼろぼろと涙が溢れて枕に吸い込まれていく。喉の奥が再び痙攣しだして。

「……っ、くぅっ、……っ!」

「もっ、だめっ、っーーー!!!」

 私が再び押し上げられるのと同時に、熱い楔が大きく弾けた。枕を握りしめる私の手に重ねられた智の手に、ぐっと力が入ったことを感じて。

「わ、たしも、…あい、して、る……」

 熱い楔が私のナカで痙攣している感覚に酔いしれながら、掠れた声で、呟いた。
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