俺様エリートは独占欲全開で愛と快楽に溺れさせる

春宮ともみ

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本編・第三部

126 *

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 智の言葉に、どくんっと心臓が大きく跳ねた。

 2週間振りの……セックス。1週間離れて過ごして、それからも待ちわびていた……智との、繋がり。

 ……だけど。

「ちょちょちょっ……待って…!!わたしっ、お風呂、まだっ……」

 そう。夕食を取って、洗濯物を畳んで、食後のコーヒーを淹れたけれど。肝心の、お風呂がまだなのだ。食器を洗っている間に、智を先にお風呂に促したけれど、私は洗濯物を畳んだり軽く掃除を済ませてからにしようと思っていたから。
 せめて今日1日の疲れを落としてからにしてほしい。そう考えて押し倒された状態から身体を起こそうとすると。

「だ~め。もう待てねぇ」

 私の腰に…智の寝間着代わりのスエット越しに、智の昂ぶりを押し当てられる。

「…っ…」

 それが何か理解して、思わず息を飲んだ。私を見つめるダークブラウンの瞳に…獰猛な獣の光が宿っていることを認識して。身体の奥が、ぎゅうっと疼いていく。
 智がふたたび口の端をゆっくり釣り上げて。

「2週間振りだし?……た~~っぷり…啼かせてやる」

 その言葉を紡いで、顔を落とし私の左耳に唇を這わせた。チリチリと、耳の下に小さな痛みが刺していく。小さな痛みが刺す合間にも、智の熱い舌が私の首筋に這わされ、ぞわり、と、なにかが背筋を這い上がってくる感覚に身悶える。

「……っ、んぅっ、ちょっ…と、…ほ、んとに…待って……」

 息も絶え絶えに智に懇願する。智は鼻と舌が鋭敏だと知っているからこそ、は私が特に気にする部分なのであって。

「だから待てねぇって」

 少し掠れたような声が左耳元で響いた。その声の甘さに、とろりと蜜が溢れたのを自覚し、羞恥心が込み上げて顔が赤くなっていく。

「ほら。……知香だって、感じてんじゃん」

 そんな私の様子に、ふっと。智が小さく息を漏らして、私に視線を合わせる。

「そ、そんなこと、ないっ……」

 本心を見抜かれている恥ずかしさも相まって、目の前のダークブラウンの瞳を精一杯睨み上げながら、力の入らない腕を動かして智の鍛えられた胸を押して抵抗する。

「……あのな、知香。目ぇウルウルさせて言ったって説得力ねぇぞ?」

 くすくすと笑いながら、必死の抵抗虚しく顎を取られて、また口付けられていく。
 舌が差し込まれて、智の舌が、私の前歯をなぞり、這わせ、私の舌を捕らえた。逆に吸い込まれて、智の口の中に絡めとられていく。

「んっ…ふ……ぅ、んっ…んん……」

 顎を固定している智の手を掴もうと右手を動かすも、逆に智の空いた反対の手に捕らえられて、シーツに縫い止められてしまった。左手もするりと捕らえられて、智は器用に私の両手首を左手だけで纏めあげ、私の頭上に縫い止めていく。

 口付けられたまま、空いた手でカットソーが上にずり上げられる。ブラジャーの上からふくらみをやわやわと揉まれ、全身がびくりと震えた。
 じゅ、と淫らな音を立てて唇が離される。切れ長の瞳が私をまっすぐに貫いて、その瞳がゆっくり歪んでいった。

「ん~、相変わらず…反応」

 ブラジャーの上から立ち上がってきた蕾を引っ掻くように刺激され、甘い嬌声が上がる。

「やっぱ、胸も左の方が感度いいよなぁ……」

 そう呟いて、低く、甘い声が響いた。

「………1週間、俺がいなくて寂しかった?」

「っ…」

 寂しかったに決まっている。ずっとずっと、会いたかった。声が聞きたかった。
 ベッドの空白に慣れなくて毎日なかなか寝付けなかったし、寂しくて涙が堪えられない時だってあった。

 でも。だからといってこうやってお風呂に入っていない状態で襲われるのは勘弁してほしい。この状況に流されそうな自分も悔しくて。

「……そんなこと…ないもんっ……っ」

 思わず智から視線を外しながら、偽りの言葉を吐いた。
 私のその様子に、智がふっと小さく息を漏らした。

 ……きっと、私のこの言葉が強がりだって、智には、バレているのだろう。

「俺は寂しかった」

 智がそう呟いて、左耳に舌が這わされていく。ぞわり、ぞわりとなにかが迫ってくる感覚。2週間振りに味わうその幸福な感覚に、自分でも気がつかないうちに酔いしれていく。

 耳たぶを甘噛みされ、ふたたびチリチリと痛みが刺す。ゆっくりと、ベッドに縫い止められて固定されていた手首が解放され、その智の手が背中に回りブラジャーのホックが外される。するりとブラジャーが取り去られて、ふたつの丘がやわやわと揉みしだかれていく。

「……下着、新調したんだな」

 つぅ、と、智が脱がせたばかりのブラジャーに視線を向ける。

 智がイタリアに発つ前に指摘された…私の身体の変化。智の出張中に下着を一新した。些細なことだけれど、それに気が付かれたことに嬉しさが込み上げると同時に。
 ……毎日のように智に抱かれていたからこそ、今回のように痛い出費に繋がったという歯痒さもあって。

「だっ、誰のせいでっ…ぁっ……ぜ、全部っ…入れ替えなきゃいけなくなったとっ……ぅ、んっ」

 数着ずつは半年スパンで買い替えていたけれど、今回のように所持していた全てを入れ替えなければならなくなるなんて。身体が大きく変化する成長期の年代でもあるまいし、何となく歯痒い気持ちになっていた。
 私が紡いだ言葉に、智が心底愉しそうに笑い声を上げる。

「新調したのも、俺のせい、だもんな…?」

 これ以上はないほど張り詰め、凝ってしまっている先端を、指の腹できつく摘まれ、弾かれていく。

「やっ、んんっ…っ、……ぁ、……」

 漏れでる声に、吐き出す吐息にのせて迫り上がってくる快感を逃す。
 でも。智のその角ばった長い指が、執拗に強弱を付けて、腫れ上がった先端を転がし擦り上げ、私を快感から逃がさせない。

「ずっと……知香を抱きたくて仕方なかった」

 そう小さく呟いて、ねっとりとデコルテに舌を這わされていく。チリチリと、軽い痛みが走って。

「……ほとんど消えちまってんな…」

 全部、付け直すから。そう宣言され、甘く歯噛みされ、痛みが走り、舌を這わせられる。その間にもふにふにと膨らみを揉みしだかれ、蕾を嬲られて。
 消えてしまっていた所有痕を上書きされていく悦びに、この這い上がってくる快感に溺れてしまいそうで、シーツを強く握りしめる。

 私の脳内はもうぐずぐずになってしまっていた。お風呂に入りたい、なんて気持ちは、思考の片隅にすら存在しなかった。

 ただただ―――智に……壊されたい、と。2週間分、愛して欲しい、と。蕩けきった思考の端でもうひとりの私が叫ぶ。

「こうして……知香を抱くのを夢に見ちまうくらい…ずっと向こうで…我慢してた。……なぁ、知香は?」

「えっ…?んっ、あ、っ…ああっ……」

 唐突に訊ねられて、思考が混乱する。

「俺の夢……見た?」

 ふっと。智が帰国する前の日に見た夢を思い出した。

「…っ、うんっ…ぁ、ああっ」

「……どんな夢?」

 そう問いかけながらも、智の手は休むことを知らない。硬い蕾を指の腹でくるくると優しく刺激されて。

「っ、やあっ……」

「俺に言えねぇような…夢?」

 くすくすと笑いながら、智が執拗に……左の蕾だけを、追い詰めていく。

「違っ…あっ……あ、んっ」

 優しかった指の動きが変わり、強く蕾を摘み上げられ、左の蕾をぱくりと口に含まれる。甘噛みされ、ぞわりと迫るアノ感覚。それに耐えきれず、私は、シーツを力いっぱい握りしめて。

「ふ、ぁ、あああああっ!!!」

 ばちん、と、まぶたの裏が白く弾けた。きつく閉じたまぶたから涙が滲む。くすくすと笑う声が聞こえる。呼吸が乱れて、ゆっくり目を開くと、目の前に智の顔があって。

「な、知香。教えて?………どんな夢だった?」

 荒い呼吸を繰り返しながら、情欲に染まったダークブラウンの瞳を、涙が滲んだ目もそのままに見つめ返す。

「いつも………み、たいに…………ひゃぁっ!!」

 答えたいのに、答えさせてくれない。いつの間にか、つぅ、と、智の長い指が私の秘部に這わされていた。ショーツ越しにぷっくりと主張する秘芽を擦り上げられていく。

「いつもみたいに?」

「んぅっ、……っ、ぁあああっ!」

 達したばかりの身体には強すぎる刺激で、奥歯を噛み締めて堪えるも、呆気なく再びばちりと視界が弾けた。喉の奥が震えて、ひゅうひゅうと音を立てる。

「いつもと同じセックスだった……ってこと?」

 そう言葉を紡いで、智が首筋に軽いリップ音を鳴らしながら、ふたたび所有痕をつけるようにチリチリと吸いあげられていく。

「ちがっ……ぁっ…やめっ………」

 だからどうしてすぐそっちに持っていくかなぁ……!

 そう口にしたかったけれど、私の口から上がるのは耳を塞ぎたくなるような甘い嬌声だけ。既に思考も身体も……智から与えられる愛と快楽に溺れきっていて。

 そんな私の様子に、智が愉しそうに笑って。

「久しぶりだから?……さすがに、イくペース早すぎねぇ?」

 だから、ちょっと…お預け。そう口にしながら、智の手が、身体が、私から離れていく。

「あっ……やあっ…そんなっ………」

 智の手で絶頂を迎えさせられて、身体の奥がひどく疼いているままで。智が…私をこんな淫らな身体にしたのに。
 とろとろと際限なく蜜が溢れて、ショーツに広がっていっているままで……お預けなんて、耐えられる訳もなくて。

 握りしめていたシーツから手を離し、離れていく智の黒いスエットをぱしりと掴んだ。切れ長の瞳と、視線が交差する。




「寂しくなかったって嘘付いた罰。……俺相手に隠し事なんて出来ると思うなよ?」




 そう言葉を紡いだ切れ長の瞳が鈍く光り、その甘い声が、一層低く………私の左の耳元で、響いた。
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