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本編・第二部
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智さんにお姫様抱っこされお風呂に行き、軽く身体を清めて、ふたりでゆっくりと眠りについた、翌朝。
ソファに座り込み、キャラメルのような甘さと、舌に絡みつくような口当たりのあるコーヒーを口に含んで。硝子天板のテーブルに置かれたチョコレートの山を見つめた。
「……昨日、一体何人から貰ったの?」
キッチンにいた智さんが、バツが悪そうに私から視線を逸らしながら言葉を紡いだ。
「初めてこんなに多く貰った。総務から3人、経理とシステムから2人。3課から4人と、池野課長。だから、12個。……全部が全部、女性からじゃないぞ?」
モテモテか。
でも、まぁ、それはそうだ。智さんは次期幹部にほぼ内定している状態だから、義理だとしても、イベントに乗っかりチョコレートを渡して顔を覚えてもらおうとする人はいるだろう。きっと…それこそ、男女問わず。
「今朝のコーヒーのアテにしようと思って持って帰ってきたんだ」
「……うん。少しだけ開けて、コーヒーのアテにしよう。朝からチョコ取ると頭の回転早くなるっていうから」
脳が働くために必要な栄養素である糖分を朝から取ると仕事のパフォーマンスが変わる、ということを聞いた事がある。だから、ここは素直に食べておこう、と結論付けた。
智さんが自分のマグカップを持って、リビングに戻り、私の横に沈み込んでくる。
「知香。持って帰ってきたの、怒ってる、か?」
私の顔を不安そうに覗き込みながら、智さんがダークブラウンの瞳を揺らした。……その顔、反則。なんというか、母性本能をくすぐられるような、そんな表情で。赤くなる自分の顔を自覚して、視線を逸らしながら苦笑し、智さんに向き直った。
「義理チョコ、貰ってくるだろうなと思ってたけど。まさかこんなに沢山とは思ってなかったから、ちょっとびっくりしてるだけだよ?」
そう。智さんは恋人フィルターがかかっている私の目からでなくても、ワイルドでかっこいい部類の人だから。きっと、義理チョコは貰ってくるとは思っていた。
「……ごめんって」
「別に怒ってないってば。全部、義理っぽいし?」
そう。智さんに怒っているわけじゃない。ちょっとだけ…ほんの少しだけ、ヤキモチは妬いてるけど。でもこの気持ちをなんと形容したらいいのかわからない。モヤっとしたまま智さんに向き直った。
……ちょっとだけ、意地悪をしたい気持ちになって。
「もしかして告白とかされちゃった?」
ふっと笑って智さんに向き直ると、智さんがぴしりと音を立てて固まった。
「……え。うそ、図星?」
いつも意地悪をされる側だから。ちょっとだけ意地悪をし返してやろう、という、本当にちょっとした悪戯心だったから。思わぬ反応に目を瞬かせた。
「結婚前提で付き合ってる人がいるって断った。その人からはチョコも受け取ってねぇよ」
少しだけ不満気に智さんが声を上げた。その声に、その言葉に。頬がにやけていく。
「そっか。……ありがと」
しっかり断ってくれた、ということが、とてつもなく嬉しい。そして、それを隠さずに話してくれた、ということも。私たちの関係が、ゆっくりと。深く、深く繋がっていくような気がして。
「今淹れたコーヒーは、メキシコのチェリン農園。キャラメルみたいな甘さがあるから、ビター系のチョコ合わせたらいいと思う」
そんな私の表情に安堵したのか、智さんが手に持ったコーヒーに口付けながら言葉を紡いだ。
「ん~。どれがビター系かわかんないよね、綺麗にラッピングしてあるから」
テーブルの上のチョコレートの山に視線を向ける。赤い包装紙だったり、ストライプの入った青い包装紙だったり。ぱっと見ではどれが何のチョコレートなのか、わからない。
「そうだな……とりあえずラッピング全部開けるか」
「うん、そうだね。開けて味の種類ごとにわけちゃおう。とりあえず、出勤前に包装紙とかもまとめてゴミ出し行きたいから。あと15分でぱぱっとやろ?」
そう口にして、ふたりで手分けして包装紙を開けていく。いくつか開けていくと、チクリ、と、指に刺さるものがあった。
「いっ…たぁ」
「知香? どうした?」
人差し指から、ぷっくりと。血が丸く湧き出ている。
「え? ……えぇ?」
包装紙で切った、というわけではなさそう。だって、紙で切った痛みではない。なんというか、針で指を刺したような、そんな、痛み。
「っ、知香!」
智さんが慌ててテーブルの上のティッシュを取り出し、指先にあててくれる。
広げた包装紙の中に視線を落とすと。そこに、細く輝く銀の光を湛えた、まち針があった。
ティッシュを離すと指先に再び膨れ上がる、紅い珠。ゆっくりと艶を帯びていくその紅さを呆然と見ていた。
他人に明確に悪意を突きつけられるのは、人生で3度目。凌牙に社員食堂で詰め寄られたときと…お正月に首を絞められたとき、以来だ。あの時の冷えた心の感覚が蘇り、その得体の知れない恐怖感に指先が冷えていく。
「……この包装紙…見覚えねぇぞ……」
ぽつり、と。救急箱を持ってきた智さんが呟く。
「え?」
智さんが、左手を唇に当てて考え込んでいる。唐突に、箱の数を数えだした。数え終えて、大きく舌打ちをして。智さんが、深いため息を吐いた。
「智、さん?」
「……貰ったチョコをデスク横に置いていたんだ。それに紛れ込まされたんだな。12個しか手渡しされてねぇはずなのに、13個ある」
智さんが紡いだ言葉の意味をゆっくり噛み砕いた。
紛れ込まされた、ということは、このチョコレートは嫌がらせである、ということ。その事実に行きついて、ざぁっと血の気が引いていく。
「……まち針は確信犯ってこと?」
ゆっくりと、確かめるように、智さんに視線を合わせた。細く切れ長の瞳が、怒りで揺れている。
「恐らく、な。……急に、幹部候補まで登りつめたから、俺が疎ましい連中もいるんだよ。ウチも、一枚岩じゃねぇから」
智さんが私の指に消毒液をかけた。ピリ、と傷口が痛む。その痛みに顔を顰めると、智さんがはぁ、と大きなため息をついて。呆れたように呟いた。
「狙いがどうあれ、こんなことする暇があんなら真正面から勝負しに来いよ……」
狙いはなんなのか。差出人の正体も、わからない。
……ぐいぐいと新規顧客を獲得して営業成績をあげていく小林くんと、弱冠30歳で新部門のリーダーに抜擢された智さん。私の中で、なんとなく、ふたりが被った。
もし。もしも、これの差出人が、智さんの出世を妬んでのことだったとしたら。
(なんとなくだけど。気持ちはわかる、かも)
片桐さんに指摘されなければ、私もきっと。こんな風に、小林くんを攻撃するような形に転じていたかも、しれないから。
「巻き込んで、すまないな。義理で貰ったのを持って帰らないのも、知香に隠し事するみてぇで嫌だったから全部持って帰って来たんだ。けど、そうするべきじゃなかったな」
申し訳なさそうに智さんが私に視線を合わせた。その言葉を受け止めて、私はゆるゆると首を横に振った。ゆっくりと、息を吸って、吐き出していく。
「……コレを準備した人の気持ち…なんとなく、わかるよ」
「ん?」
ソファに沈み込んだ身体が重たい。自分の汚い部分を晒すのはいつだっていやなものだ。だけど、智さんには私の全部を見てほしい。呆れられて、叱られるかもしれないけれど。そう考えて、昨日、チョコレートを選びながら、智さんにちゃんと話そう、と思っていたことを口にする。
「一昨日、かなり遅くなったでしょ? あれね、私がすごいミスやらかしちゃって、上司にこってり絞られて遅くなったの。昨日はそれをみんなで手伝ってくれたんだ」
ダークブラウンの瞳が、驚きで見開かれる。
「そうだったのか」
「うん。私……ずっと残業続きだったじゃない? 無意識に……仕事を抱え込んでたの」
ぎゅ、と、私の指に絆創膏を巻いてくれた。その仕草に、目線だけでありがとうと伝える。智さんが、テーブルの上の救急箱の蓋をおろして私に向き直った。
「小林くんがね? 新規顧客を獲得してきたの。私は小林くんより先輩なのに、そういうのが全くできてなくて。だから、私、小林くんに嫉妬してたみたい。それを、片桐さんに指摘されて」
「……片桐に、か」
一気に智さんの声が低くなった。智さんが拳をぎゅっと握ったのを認めて、私は申し訳なさでいっぱいになる。思わず智さんから視線を外した。
「うん……なんか、ごめん。智さんが不快に思うのもわかってる。だけど、隠してても、嫌でしょう? 私は……もう、あの時みたいなすれ違いなんて、したくないから」
もう、一か月になるのか。あの、すれ違いから。お互いに、お互いの言葉が信じられなくなっていた。あんな思いは……もう、二度と、したくない。
「……俺も、だからこそ、ちゃんと知香に……告白されたって言いたかった」
智さんの声が、少し震えている。今、お互いに。きっとあの時のことを思い出しているんだと思う。固く握られた智さんの拳に、私は自分の手のひらを重ねて、外した視線を智さんに向けた。
……ダークブラウンの瞳に、困惑と、後悔が滲んでいる。
「私は結局、仕事を抱え込んで、自爆したの。バカでしょう? でも、そうやって指摘されなかったら、私はこの嫉妬の気持ちに気が付けなくて……もしかしたら、こんな手段を取っていたかもしれない」
そう言葉を紡いで、包装紙に目を向けた。
「知香に限ってそれはないだろう」
智さんが焦ったように声を上げる。そう信じてくれるのは嬉しいけれど。
「わかんないよ? 私、嫉妬深いし。負けん気も強いから。捨てられた女で終わりたくないって思ったからこそ、総合職に転換したんだし」
ふふ、と、笑って、再び智さんに視線を合わせた。
「だから、もう……私ひとりで仕事抱え込むのは止めて、周りにちゃんと振ることにする。それが、巡り巡って会社のためになるんだから」
片桐さんに言われたこと噛み砕いて、出した私の結論。
きちんと、周りを頼る、という事。自分だけで仕事を回しているわけじゃないからこそ、周りを頼ることで、会社の利益になる、という、なんとも当たり前のことを改めて痛感した。
「だから、たぶんだけど。定時で上がってこれる日が増えると思う。もちろん来月は年度末だから忙しくなるだろうけど」
視線が合わさったままの切れ長の瞳が複雑そうに揺れた。
「……そうか…片桐に、気が付かされたわけだな。ムカつくけど…感謝は、しないとな…」
はぁ、と、智さんが軽く息を吐く。
……きっと、私がこれから話す言葉は…智さんを嫌な気分にさせるだろう。そう考えると、居た堪れなくなって視線を手元に落とした。
けれど……自分で自分を幸せにして、智さんとともに歩いて行くならば。自分の中の『恐れ』とも向き合わなければいけないと思うから。
そして。智さんを信じると決めたから。
―――ここからが、私の、本題。
「それで……片桐さんにも、今回のお礼でチョコを渡そうかなって思ってて」
ぎゅ、と。智さんの拳に乗せた手のひらに力をこめる。すると、智さんの拳が解かれて、恋人繋ぎにされた。智さんの思わぬ行動に、弾かれたように顔を上げる。
「……うん。まぁ………知香なら、そういう気持ちになるだろうなとは思ってた」
くすり、と。智さんが苦笑いをした。その表情に、さらに居た堪れなくなった。
「……けど。チョコを渡すのは、義理だとしても、俺は嫌だ。………お礼するなら、片桐にだけは、他のものにしてくれねぇか?」
さらり、と。智さんの黒髪が揺れる。もちろん、智さんがそういうなら。通関部メンバーに渡そうと思って買ってきたチョコは、今日は全て持っていかないことにした。また改めて、何かを準備しよう。
「その、なんか、ごめん。けど、片桐さんに叱ってもらわなかったら、私はきっと……今後もそのミスを繰り返してたと思う」
ぽつり、と呟いた。恋人繋ぎにされた手のひらから、智さんのゆっくりした鼓動が伝わってくる。
「わ~ってるよ。知香の気持ちは俺にしかないって知ってるから、な? だから大丈夫」
ふわり、と。智さんが嬉しそうに微笑んだ。
「……話すのが遅くなってごめん」
「俺こそ、こんな風に巻き込んですまない」
ふるふると首を振った。大したことじゃない。まち針で指を刺しただけだ。すぐ治るものだし。
私よりも、智さんの気持ちが心配だ。ごめんね、と、改めて呟くと。ニヤリ、と、智さんの口の端が上がっていく。
「気にすんなって。知香は……俺のもんだって。昨日も、その身体に、ココで。教え込んだろ?」
「っ……」
そうだ。昨日は、このソファの上で……抱かれたんだった。チョコレートにまみれながら抱かれたことを思い出して、全身がかあっと熱くなる。
「……も、もうっ! 人が真剣に話してたのにっ」
パチン、と、智さんの胸を軽く叩くと、智さんがくすくすと笑い声を上げた。
リビングの壁掛け時計に目をやると、そろそろ、出勤しなければならない時間だ。その流れで、テーブルに広げられた嫌がらせのチョコレートを見つめる。
「これの中身は……」
「棄てる。何が仕込まれてるかわかったもんじゃない。俺がやるから」
吐き捨てるように智さんが呟いた。その言葉に私は、お願いします、と、頷いて。そのまま、ふたりで身支度を始めた。
---
お昼休みに、社員食堂で三木ちゃんと一緒にお弁当を摘まんでいると。困った顔で三木ちゃんが呟いた。
「東翔会の使用期限が来月までなのですけど、どうしましょう?」
「あぁ~……もうそんな時期だっけ…ううん、どうしようか」
東翔会とは、極東商社の福利厚生のひとつで、互助会のようなもの。極東商社に入社すると、会社とは別組織の組合である東翔会に入会する事になり、組合費として毎月の給与から社員の立場に合わせて、自動的に一定の金額が天引きされる。社員から徴収した金額と同額が会社からも東翔会に納入され、各部署で行われる歓迎会や送別会、慶弔見舞金などもここから出金することができ、この場合は会社の経費として計上しなくてもよいということになっている。
ちなみに。東翔会の由来は、極東商社の東と商から来ている、ということを、入社後の一斉研修で教わった。
東翔会予算は各部署に割り充てられている金額があり、会費を社員から天引きしているという組合の性質上、その金額を1年で使い切ってしまうことが推奨されている。
三木ちゃんの話によると、先月の片桐さんの歓迎会兼新年会も通関部に充てられた東翔会の予算を使ったが、それでも残額が残ってしまっているようだった。
「ううん……いつもだったら社員旅行とかに使ってるけど、来月末までに計画するのは難しいものね」
三木ちゃんがその綺麗に整えられた眉を寄せながら、手元に印刷した資料と睨めっこしている。
「ううう~~…やっぱり飲み会に使うしかありませんよね……」
がくっと三木ちゃんが机に上半身を寝そべらせるように伸ばした。あと1ヶ月半で社員旅行を計画するのは難しい。年度末でもあるから、慰労会のような形での飲み会が妥当だと思う。
「そうねぇ…期末慰労会、みたいな感じで計画してみたらどうかしら? 1課の徳永さんと連携して、田邉部長にも相談してみて」
「はい、そうしますぅ~…」
ぐったりと机に寝そべったまま、三木ちゃんが返答してくれる。
……一昨日のミスも、昨日にはなんとか挽回できた。三木ちゃんが銀行回りで協力してくれたから、午前中にはカタが付いた。本当に、ほっとしたし、三木ちゃんには感謝してもし足りないくらいだ。今度の金曜日……お礼も兼ねて三木ちゃんと食事にでもどうだろうか。
「三木ちゃん、昨日はいろいろ手伝ってくれてありがとう。お礼にお食事に行きたいんだけど、金曜日、予定空いてる?」
私の言葉にびくりと大きく反応した三木ちゃん。のろのろと身体を起こして、私に視線が合わせられた、けれど。その勝気な瞳が少し翳ったような気がした。そして少しだけ気落ちしたような声で。
「……先約が、あって……すみません」
一瞬、何かの違和感を抱いた。数度目を瞬かせて三木ちゃんの顔を見つめ直した時には、その違和感はなくなっていた。
(……何だろ、今の)
ブラックのアイライナーに彩られた、いつもの勝気な三木ちゃんの瞳がそこにあって。
(……ううん…なんか、悩みごと、とか…かしら…)
悩みごと、なら。私に力になれることがあれば、力になりたい。三木ちゃんには、いつも助けられてばかりだから。そう心に決めて、私は三木ちゃんに向き直った。
「そっか……お約束があるなら、仕方ないね。じゃぁ、来週のどこかで行きましょ?」
来週、一緒にご飯に行って。もし、なにかそこで相談に乗れることがあれば、乗ってあげたい。そんな思いで私は三木ちゃんに笑いかけた。
「はい! 予定、空けときますから」
キラキラとした彼女の笑顔は、いつも通り眩しかった。元気で溌剌とした三木ちゃんに通関部メンバーが助けられているのは周知の事実で。これも、凌牙の采配だ。彼には…感謝しなければ。
ほう、とため息をつく。ブラジルで、一からやり直す、とメッセージを残してくれた凌牙。きっと、向こうでも……あの負けん気とプライドの高さで人一倍頑張ってるに違いない。
だからこそ、私も。初歩的なミスに落ち込んでなんかいられない。抱え込んでいた仕事も、ちゃんと片桐さんや小林くんに託して、私も頑張らなければ。
私と三木ちゃんは、ふたたび他愛のない会話を交わしながら、ゆっくりと社員食堂を後にした。
ソファに座り込み、キャラメルのような甘さと、舌に絡みつくような口当たりのあるコーヒーを口に含んで。硝子天板のテーブルに置かれたチョコレートの山を見つめた。
「……昨日、一体何人から貰ったの?」
キッチンにいた智さんが、バツが悪そうに私から視線を逸らしながら言葉を紡いだ。
「初めてこんなに多く貰った。総務から3人、経理とシステムから2人。3課から4人と、池野課長。だから、12個。……全部が全部、女性からじゃないぞ?」
モテモテか。
でも、まぁ、それはそうだ。智さんは次期幹部にほぼ内定している状態だから、義理だとしても、イベントに乗っかりチョコレートを渡して顔を覚えてもらおうとする人はいるだろう。きっと…それこそ、男女問わず。
「今朝のコーヒーのアテにしようと思って持って帰ってきたんだ」
「……うん。少しだけ開けて、コーヒーのアテにしよう。朝からチョコ取ると頭の回転早くなるっていうから」
脳が働くために必要な栄養素である糖分を朝から取ると仕事のパフォーマンスが変わる、ということを聞いた事がある。だから、ここは素直に食べておこう、と結論付けた。
智さんが自分のマグカップを持って、リビングに戻り、私の横に沈み込んでくる。
「知香。持って帰ってきたの、怒ってる、か?」
私の顔を不安そうに覗き込みながら、智さんがダークブラウンの瞳を揺らした。……その顔、反則。なんというか、母性本能をくすぐられるような、そんな表情で。赤くなる自分の顔を自覚して、視線を逸らしながら苦笑し、智さんに向き直った。
「義理チョコ、貰ってくるだろうなと思ってたけど。まさかこんなに沢山とは思ってなかったから、ちょっとびっくりしてるだけだよ?」
そう。智さんは恋人フィルターがかかっている私の目からでなくても、ワイルドでかっこいい部類の人だから。きっと、義理チョコは貰ってくるとは思っていた。
「……ごめんって」
「別に怒ってないってば。全部、義理っぽいし?」
そう。智さんに怒っているわけじゃない。ちょっとだけ…ほんの少しだけ、ヤキモチは妬いてるけど。でもこの気持ちをなんと形容したらいいのかわからない。モヤっとしたまま智さんに向き直った。
……ちょっとだけ、意地悪をしたい気持ちになって。
「もしかして告白とかされちゃった?」
ふっと笑って智さんに向き直ると、智さんがぴしりと音を立てて固まった。
「……え。うそ、図星?」
いつも意地悪をされる側だから。ちょっとだけ意地悪をし返してやろう、という、本当にちょっとした悪戯心だったから。思わぬ反応に目を瞬かせた。
「結婚前提で付き合ってる人がいるって断った。その人からはチョコも受け取ってねぇよ」
少しだけ不満気に智さんが声を上げた。その声に、その言葉に。頬がにやけていく。
「そっか。……ありがと」
しっかり断ってくれた、ということが、とてつもなく嬉しい。そして、それを隠さずに話してくれた、ということも。私たちの関係が、ゆっくりと。深く、深く繋がっていくような気がして。
「今淹れたコーヒーは、メキシコのチェリン農園。キャラメルみたいな甘さがあるから、ビター系のチョコ合わせたらいいと思う」
そんな私の表情に安堵したのか、智さんが手に持ったコーヒーに口付けながら言葉を紡いだ。
「ん~。どれがビター系かわかんないよね、綺麗にラッピングしてあるから」
テーブルの上のチョコレートの山に視線を向ける。赤い包装紙だったり、ストライプの入った青い包装紙だったり。ぱっと見ではどれが何のチョコレートなのか、わからない。
「そうだな……とりあえずラッピング全部開けるか」
「うん、そうだね。開けて味の種類ごとにわけちゃおう。とりあえず、出勤前に包装紙とかもまとめてゴミ出し行きたいから。あと15分でぱぱっとやろ?」
そう口にして、ふたりで手分けして包装紙を開けていく。いくつか開けていくと、チクリ、と、指に刺さるものがあった。
「いっ…たぁ」
「知香? どうした?」
人差し指から、ぷっくりと。血が丸く湧き出ている。
「え? ……えぇ?」
包装紙で切った、というわけではなさそう。だって、紙で切った痛みではない。なんというか、針で指を刺したような、そんな、痛み。
「っ、知香!」
智さんが慌ててテーブルの上のティッシュを取り出し、指先にあててくれる。
広げた包装紙の中に視線を落とすと。そこに、細く輝く銀の光を湛えた、まち針があった。
ティッシュを離すと指先に再び膨れ上がる、紅い珠。ゆっくりと艶を帯びていくその紅さを呆然と見ていた。
他人に明確に悪意を突きつけられるのは、人生で3度目。凌牙に社員食堂で詰め寄られたときと…お正月に首を絞められたとき、以来だ。あの時の冷えた心の感覚が蘇り、その得体の知れない恐怖感に指先が冷えていく。
「……この包装紙…見覚えねぇぞ……」
ぽつり、と。救急箱を持ってきた智さんが呟く。
「え?」
智さんが、左手を唇に当てて考え込んでいる。唐突に、箱の数を数えだした。数え終えて、大きく舌打ちをして。智さんが、深いため息を吐いた。
「智、さん?」
「……貰ったチョコをデスク横に置いていたんだ。それに紛れ込まされたんだな。12個しか手渡しされてねぇはずなのに、13個ある」
智さんが紡いだ言葉の意味をゆっくり噛み砕いた。
紛れ込まされた、ということは、このチョコレートは嫌がらせである、ということ。その事実に行きついて、ざぁっと血の気が引いていく。
「……まち針は確信犯ってこと?」
ゆっくりと、確かめるように、智さんに視線を合わせた。細く切れ長の瞳が、怒りで揺れている。
「恐らく、な。……急に、幹部候補まで登りつめたから、俺が疎ましい連中もいるんだよ。ウチも、一枚岩じゃねぇから」
智さんが私の指に消毒液をかけた。ピリ、と傷口が痛む。その痛みに顔を顰めると、智さんがはぁ、と大きなため息をついて。呆れたように呟いた。
「狙いがどうあれ、こんなことする暇があんなら真正面から勝負しに来いよ……」
狙いはなんなのか。差出人の正体も、わからない。
……ぐいぐいと新規顧客を獲得して営業成績をあげていく小林くんと、弱冠30歳で新部門のリーダーに抜擢された智さん。私の中で、なんとなく、ふたりが被った。
もし。もしも、これの差出人が、智さんの出世を妬んでのことだったとしたら。
(なんとなくだけど。気持ちはわかる、かも)
片桐さんに指摘されなければ、私もきっと。こんな風に、小林くんを攻撃するような形に転じていたかも、しれないから。
「巻き込んで、すまないな。義理で貰ったのを持って帰らないのも、知香に隠し事するみてぇで嫌だったから全部持って帰って来たんだ。けど、そうするべきじゃなかったな」
申し訳なさそうに智さんが私に視線を合わせた。その言葉を受け止めて、私はゆるゆると首を横に振った。ゆっくりと、息を吸って、吐き出していく。
「……コレを準備した人の気持ち…なんとなく、わかるよ」
「ん?」
ソファに沈み込んだ身体が重たい。自分の汚い部分を晒すのはいつだっていやなものだ。だけど、智さんには私の全部を見てほしい。呆れられて、叱られるかもしれないけれど。そう考えて、昨日、チョコレートを選びながら、智さんにちゃんと話そう、と思っていたことを口にする。
「一昨日、かなり遅くなったでしょ? あれね、私がすごいミスやらかしちゃって、上司にこってり絞られて遅くなったの。昨日はそれをみんなで手伝ってくれたんだ」
ダークブラウンの瞳が、驚きで見開かれる。
「そうだったのか」
「うん。私……ずっと残業続きだったじゃない? 無意識に……仕事を抱え込んでたの」
ぎゅ、と、私の指に絆創膏を巻いてくれた。その仕草に、目線だけでありがとうと伝える。智さんが、テーブルの上の救急箱の蓋をおろして私に向き直った。
「小林くんがね? 新規顧客を獲得してきたの。私は小林くんより先輩なのに、そういうのが全くできてなくて。だから、私、小林くんに嫉妬してたみたい。それを、片桐さんに指摘されて」
「……片桐に、か」
一気に智さんの声が低くなった。智さんが拳をぎゅっと握ったのを認めて、私は申し訳なさでいっぱいになる。思わず智さんから視線を外した。
「うん……なんか、ごめん。智さんが不快に思うのもわかってる。だけど、隠してても、嫌でしょう? 私は……もう、あの時みたいなすれ違いなんて、したくないから」
もう、一か月になるのか。あの、すれ違いから。お互いに、お互いの言葉が信じられなくなっていた。あんな思いは……もう、二度と、したくない。
「……俺も、だからこそ、ちゃんと知香に……告白されたって言いたかった」
智さんの声が、少し震えている。今、お互いに。きっとあの時のことを思い出しているんだと思う。固く握られた智さんの拳に、私は自分の手のひらを重ねて、外した視線を智さんに向けた。
……ダークブラウンの瞳に、困惑と、後悔が滲んでいる。
「私は結局、仕事を抱え込んで、自爆したの。バカでしょう? でも、そうやって指摘されなかったら、私はこの嫉妬の気持ちに気が付けなくて……もしかしたら、こんな手段を取っていたかもしれない」
そう言葉を紡いで、包装紙に目を向けた。
「知香に限ってそれはないだろう」
智さんが焦ったように声を上げる。そう信じてくれるのは嬉しいけれど。
「わかんないよ? 私、嫉妬深いし。負けん気も強いから。捨てられた女で終わりたくないって思ったからこそ、総合職に転換したんだし」
ふふ、と、笑って、再び智さんに視線を合わせた。
「だから、もう……私ひとりで仕事抱え込むのは止めて、周りにちゃんと振ることにする。それが、巡り巡って会社のためになるんだから」
片桐さんに言われたこと噛み砕いて、出した私の結論。
きちんと、周りを頼る、という事。自分だけで仕事を回しているわけじゃないからこそ、周りを頼ることで、会社の利益になる、という、なんとも当たり前のことを改めて痛感した。
「だから、たぶんだけど。定時で上がってこれる日が増えると思う。もちろん来月は年度末だから忙しくなるだろうけど」
視線が合わさったままの切れ長の瞳が複雑そうに揺れた。
「……そうか…片桐に、気が付かされたわけだな。ムカつくけど…感謝は、しないとな…」
はぁ、と、智さんが軽く息を吐く。
……きっと、私がこれから話す言葉は…智さんを嫌な気分にさせるだろう。そう考えると、居た堪れなくなって視線を手元に落とした。
けれど……自分で自分を幸せにして、智さんとともに歩いて行くならば。自分の中の『恐れ』とも向き合わなければいけないと思うから。
そして。智さんを信じると決めたから。
―――ここからが、私の、本題。
「それで……片桐さんにも、今回のお礼でチョコを渡そうかなって思ってて」
ぎゅ、と。智さんの拳に乗せた手のひらに力をこめる。すると、智さんの拳が解かれて、恋人繋ぎにされた。智さんの思わぬ行動に、弾かれたように顔を上げる。
「……うん。まぁ………知香なら、そういう気持ちになるだろうなとは思ってた」
くすり、と。智さんが苦笑いをした。その表情に、さらに居た堪れなくなった。
「……けど。チョコを渡すのは、義理だとしても、俺は嫌だ。………お礼するなら、片桐にだけは、他のものにしてくれねぇか?」
さらり、と。智さんの黒髪が揺れる。もちろん、智さんがそういうなら。通関部メンバーに渡そうと思って買ってきたチョコは、今日は全て持っていかないことにした。また改めて、何かを準備しよう。
「その、なんか、ごめん。けど、片桐さんに叱ってもらわなかったら、私はきっと……今後もそのミスを繰り返してたと思う」
ぽつり、と呟いた。恋人繋ぎにされた手のひらから、智さんのゆっくりした鼓動が伝わってくる。
「わ~ってるよ。知香の気持ちは俺にしかないって知ってるから、な? だから大丈夫」
ふわり、と。智さんが嬉しそうに微笑んだ。
「……話すのが遅くなってごめん」
「俺こそ、こんな風に巻き込んですまない」
ふるふると首を振った。大したことじゃない。まち針で指を刺しただけだ。すぐ治るものだし。
私よりも、智さんの気持ちが心配だ。ごめんね、と、改めて呟くと。ニヤリ、と、智さんの口の端が上がっていく。
「気にすんなって。知香は……俺のもんだって。昨日も、その身体に、ココで。教え込んだろ?」
「っ……」
そうだ。昨日は、このソファの上で……抱かれたんだった。チョコレートにまみれながら抱かれたことを思い出して、全身がかあっと熱くなる。
「……も、もうっ! 人が真剣に話してたのにっ」
パチン、と、智さんの胸を軽く叩くと、智さんがくすくすと笑い声を上げた。
リビングの壁掛け時計に目をやると、そろそろ、出勤しなければならない時間だ。その流れで、テーブルに広げられた嫌がらせのチョコレートを見つめる。
「これの中身は……」
「棄てる。何が仕込まれてるかわかったもんじゃない。俺がやるから」
吐き捨てるように智さんが呟いた。その言葉に私は、お願いします、と、頷いて。そのまま、ふたりで身支度を始めた。
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お昼休みに、社員食堂で三木ちゃんと一緒にお弁当を摘まんでいると。困った顔で三木ちゃんが呟いた。
「東翔会の使用期限が来月までなのですけど、どうしましょう?」
「あぁ~……もうそんな時期だっけ…ううん、どうしようか」
東翔会とは、極東商社の福利厚生のひとつで、互助会のようなもの。極東商社に入社すると、会社とは別組織の組合である東翔会に入会する事になり、組合費として毎月の給与から社員の立場に合わせて、自動的に一定の金額が天引きされる。社員から徴収した金額と同額が会社からも東翔会に納入され、各部署で行われる歓迎会や送別会、慶弔見舞金などもここから出金することができ、この場合は会社の経費として計上しなくてもよいということになっている。
ちなみに。東翔会の由来は、極東商社の東と商から来ている、ということを、入社後の一斉研修で教わった。
東翔会予算は各部署に割り充てられている金額があり、会費を社員から天引きしているという組合の性質上、その金額を1年で使い切ってしまうことが推奨されている。
三木ちゃんの話によると、先月の片桐さんの歓迎会兼新年会も通関部に充てられた東翔会の予算を使ったが、それでも残額が残ってしまっているようだった。
「ううん……いつもだったら社員旅行とかに使ってるけど、来月末までに計画するのは難しいものね」
三木ちゃんがその綺麗に整えられた眉を寄せながら、手元に印刷した資料と睨めっこしている。
「ううう~~…やっぱり飲み会に使うしかありませんよね……」
がくっと三木ちゃんが机に上半身を寝そべらせるように伸ばした。あと1ヶ月半で社員旅行を計画するのは難しい。年度末でもあるから、慰労会のような形での飲み会が妥当だと思う。
「そうねぇ…期末慰労会、みたいな感じで計画してみたらどうかしら? 1課の徳永さんと連携して、田邉部長にも相談してみて」
「はい、そうしますぅ~…」
ぐったりと机に寝そべったまま、三木ちゃんが返答してくれる。
……一昨日のミスも、昨日にはなんとか挽回できた。三木ちゃんが銀行回りで協力してくれたから、午前中にはカタが付いた。本当に、ほっとしたし、三木ちゃんには感謝してもし足りないくらいだ。今度の金曜日……お礼も兼ねて三木ちゃんと食事にでもどうだろうか。
「三木ちゃん、昨日はいろいろ手伝ってくれてありがとう。お礼にお食事に行きたいんだけど、金曜日、予定空いてる?」
私の言葉にびくりと大きく反応した三木ちゃん。のろのろと身体を起こして、私に視線が合わせられた、けれど。その勝気な瞳が少し翳ったような気がした。そして少しだけ気落ちしたような声で。
「……先約が、あって……すみません」
一瞬、何かの違和感を抱いた。数度目を瞬かせて三木ちゃんの顔を見つめ直した時には、その違和感はなくなっていた。
(……何だろ、今の)
ブラックのアイライナーに彩られた、いつもの勝気な三木ちゃんの瞳がそこにあって。
(……ううん…なんか、悩みごと、とか…かしら…)
悩みごと、なら。私に力になれることがあれば、力になりたい。三木ちゃんには、いつも助けられてばかりだから。そう心に決めて、私は三木ちゃんに向き直った。
「そっか……お約束があるなら、仕方ないね。じゃぁ、来週のどこかで行きましょ?」
来週、一緒にご飯に行って。もし、なにかそこで相談に乗れることがあれば、乗ってあげたい。そんな思いで私は三木ちゃんに笑いかけた。
「はい! 予定、空けときますから」
キラキラとした彼女の笑顔は、いつも通り眩しかった。元気で溌剌とした三木ちゃんに通関部メンバーが助けられているのは周知の事実で。これも、凌牙の采配だ。彼には…感謝しなければ。
ほう、とため息をつく。ブラジルで、一からやり直す、とメッセージを残してくれた凌牙。きっと、向こうでも……あの負けん気とプライドの高さで人一倍頑張ってるに違いない。
だからこそ、私も。初歩的なミスに落ち込んでなんかいられない。抱え込んでいた仕事も、ちゃんと片桐さんや小林くんに託して、私も頑張らなければ。
私と三木ちゃんは、ふたたび他愛のない会話を交わしながら、ゆっくりと社員食堂を後にした。
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