契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

文字の大きさ
上 下
102 / 109
22.狼の番(つがい)とは

狼の番(つがい)とは④

しおりを挟む
 引き摺られるように玄関の中に入った瞬間だ。
 強く抱き締められて、貪るようにキスをされた。

 唇を重ねるなんてものじゃない。
 まるで食べられてしまうかのように深く舌が絡み合うようなキスだ。

「……っん、祐輔……っ、ここ、玄関……」
「ああ。大きい声、出すなよ?」
 そこ!?絶対違う!!

「こんな綺麗な美冬の姿を見せられて、何も出来ずにお預けされていたんだからな」
「お預け……って……ぁんっ」
 軽く鎖骨に歯を当てられた。

 背中のファスナーが半分程下ろされてそこから入った手が胸元を探り当てる。

「なあ? その綺麗な姿を見て、俺が何を考えていたか分かるか?」
 な……なにっ?

 感じるところを甘くひっかくようにされたり、きゅっと軽く摘まれたりして、頭なんて働いていない。

「考え……て? んっ……」
「このドレスのまま犯したいって思ってたよ」
 やはり飼い慣らせるような狼なんかじゃなかった。その言葉は美冬の胸を高鳴らせる。

 乱暴なはずなのに、そうされたくもなってしまうのは、強引な槙野が瞳をキラキラとさせているのが抵抗できないくらいに魅力的だからだ。

「んっ……あ、そんなこと……言っちゃ、や」
「本当に? 興奮しない? 確認するぞ」

 射抜くような熱のこもった瞳で見つめられて、肌に触れられたら、蕩けそうだ。
 するりとスカートの中に入った手が美冬の足の間に触れる。

「濡れてる……」
「あ、や……」

「たまらない。すぐに入れたい」
「待っ……て、まだ……」
「まだ、何だ?準備できてない?」
 ぴっ……と下肢から聞こえるストッキングを破る音。

「本当に?」
 できてないなんて、言えない。
 それはウソだ。

 食事の時に手を繋いでいた時から、タクシーの中で指を絡められていた時から、玄関ここで息もつかせないほどのキスをされていた時から、抱かれたかった。

 ふるふるっと美冬は首を横に振って槙野の身体に抱きついた。

「して……っ、準備なんてきっとできてる。して、ほしいっ」
「本っ当に美冬って煽るよな。入れてやる。痛かったら、言えよ?」

 ほら……無理矢理のようでいて、無理矢理ではない。最後のところはちゃんと優しいのだ。


 槙野が自分のもので、美冬の入口を軽く擦る。擦られて、そこはくちゅくちゅと音を立てていた。

「傷つける心配はなさそうだな」
 入ってくる熱い楔が、いつもよりも大きく感じる。

「美冬……キツい。大丈夫か?」
「祐輔、は? 気持ち良く……ない?」
「すげえいい。押し込むぞ」
「んっ……あ、あぁん……っ」

 まだ慣れていないその場所に強引に入れられて、嫌でもおかしくないのに、むしろその強引さに胸がぎゅうっとした。

 それほどまでに欲しがられているのが、素直に嬉しい。

 もっと、欲しがられたいと思うのは美冬の欲張りだろうか。
 もっと欲しがって、離さないで欲しい、なんて思うのは。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。

海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。 総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。 日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

処理中です...