契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

文字の大きさ
上 下
95 / 109
21.守られていること

守られていること①

しおりを挟む
 美冬は槙野の膝の中でタブレットを見ていた。

 槙野は先程から美冬の髪を触ったり、後ろからきゅっと抱きしめたり、胸に触ってぺしっ!と美冬に、はたかれたりしている。

 マンションの中で休日を過ごす二人はリビングのソファの上でぴったりとくっつきながら結婚式をあげる場所について、検討していたのである。

 ぴったりと……と言うよりも槙野が美冬を足の間に置いて、美冬は槙野を背もたれ代わりにしているような状況なのだけれど。

「ホテルのチャペルとかかなー」
「まあ、それがいちばんいいだろうな?」
「祐輔の都合のいい所があるんじゃないの? 取引先とか?」

 槙野は少し考えるような様子を見せた。
「取引先はあるが、決めるなら明確に理由があった方がいいな。むしろ、彼女がここがいいといったので……くらいの」

 確かにいくつもある取引先の中からここ、と決めるのであれば、きっちりとした理由付けが必要になるのかも知れなかった。

「ふーん……会場見に行ってみる?」
「確かに。そうだな」

 それで、ブライダルフェアとかそんな時に見に行くのかと思えば、槙野はさっさと秘書に電話して、見学の手配をしてしまったのだ。

「美冬、今日の午後からすぐ見に来ていいと言ってる。支度するか」

──早っ!

 祐輔のあまりの早さに戸惑うけれど、美冬は最近はそんなのにも慣れてきたように思う。

(この人こういう人だもの)

 いいと思えば即座に身体が動く。身体を動かして判断するから会社では部下からの信頼も厚い。
 もちろん美冬もなのだけれど、なんとなくそれは分かるような気がしたのだった。

 抜かりのない祐輔の秘書が、美冬がタブレットからメールで送ったホテルを何ヵ所か手配してくれていた。

 それを二人で見学して、最後のホテルのラウンジでアフタヌーンティーセットをいただきながら、どこがいいかを検討してゆく。

「ここ……かな?」
「二番目のところ、美冬すごく気に入っていただろう?」

 それは本当だ。
 ホテルの敷地内に素敵なチャペルがあり、迎賓館と呼ばれる建物があって、そこで披露宴ができるということだった。正直、とっても惹かれた。

「でも、建物同士が遠すぎるわ。お客さまの中にはお年を召した方も多いし、移動は少ない方がいい。ここは建物の横にチャペルがあるし格式もあるもの」

 ほっそりとした美冬の手を取った槙野は人目も憚らずにその手に唇をつける。
「うちのお嫁さんマジで出来すぎ。そういうことなら、そうしよう。その優しさに惚れなおす」

 こっちはその甘々に戸惑うんですけど。


 結婚式の準備は会場、ドレスも含めて順調に進んでいた。

 また、コラボ企画の方もSNSなどと連動させながらキャンペーンも順調に進んでいると報告を受けていた。

 デパートの店頭でも、企画についてお客様から尋ねられたりすることがあるようで、やはり年齢層が若い方が興味を持っているようだったという話も聞いている。

 美冬も『ケイエム』で取り扱うコラボ商品をいくつか見せてもらったが、今までのミルヴェイユと少し違ったデザインも取り入れられていて、面白いなと感じた。

 新しいデザインでありながら、それでいてコンサバティブなミルヴェイユの雰囲気は残っていたりする。

 これならば、お客様にも楽しんで頂けるかも、と美冬は商品の発売を楽しみにしていたのだ。
 商品サンプルの何点かは持ち帰って美冬も自分で着てみたりしている。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。

海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。 総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。 日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。

【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました

水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。 そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。 最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。 そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。 上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。 貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。 実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、 上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。 そこで知ったルーカスの秘密。 彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。 元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。 戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。 シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。 所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。 そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。 心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。 けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。 シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか―― ※他サイトでも公開しています

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

処理中です...