契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

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20.免許皆伝、でしょーか?

免許皆伝、でしょーか?④

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 デザインの打ち合わせのためのリーガルパットを手にして石丸は何やらメモをとっていた。その打ち合わせ用のメモを参照しながらデザインをしてゆくらしい。

 ──溺愛……。
 それは否定しきれない。

「諒……あの、男の人ってあんなに、その……するものなの?」
 ここ数日の激しさについては、美冬にはよく分からなくて、同じ男性である諒に聞いた方が分かるかもしれないと思ったのだ。
 それでつい口からそんな言葉がこぼれてしまった美冬である。

「ああ、槙野さん、絶倫なんだ。まあ、激しそうだもんね」
「っ絶……」

 美冬は思わず言葉を失ってしまう。
 そうかも、そうかもしれないけどっ!何だか身も蓋もないわ……。

「溺愛されてて、毎晩愛されててー、か。槙野さんは本当に美冬のこと大好きで溺愛だからな」

 ソファに座っていた石丸はその長い足を組み変えて、デスクで作業しながら話をしている美冬にペン先を向けた。

「結婚式と言ってもお互い仕事絡みのようなものだから、好きにできることくらいは好きにやらせてやってくれって、槙野さんからは言われてる」

 そんなことを言ってくれていたなんて、知らなかった。けれど槙野ならありそうなことだ。
 こういうところが美冬が槙野を尊敬しつつ、大好きだなあ……と思ってしまうところだ。

「好きにしていいなんて言われることはないからね、しかも糸目は付けないなんてデザイナーとしては嬉しすぎる案件だな。どんな高いマテリアルでもいいんだよな。愛されてるよ。自信持っていいんじゃない? それにちょっとくらいは付き合ってあげたら?」

 ──ちょっとくらい?あれってちょっとくらいなのかしら?

 一方の石丸はフランス製のレースとかいいよなぁとなんだか嬉しそうだ。
 デザインするドレスのお金に糸目を付けなくていい、というのがよほど楽しいことらしい。

「うん、一日しか着ないからね?」
「せっかくなんでいいやつ作ろうな!」
 人の話聞いてる?

 せっかくの機会なので、美冬は石丸に聞いてみることにした。
「ねえ? 諒は今はいいなあって思う人はいないの?」
 いつものように石丸はそういう質問をすると、すん……とした顔になる。

「美冬さあ、ちょっと前までそういうの言われるのすごく嫌がっていたじゃない? 自分が結婚するとなったらそういう質問も平気なわけ?」

「そういう訳ではないんだけど」
「他人に余計なお世話してないで、自分のこと考えなよ」

 石丸はため息をついた。そうして、来客用のソファから立ち上がる。
「今日は気分が乗らない。デザイン室に戻る。美冬も後でおいでよ。コラボ商品が届いているから」

 デザイナーの繊細な神経を逆撫でしてしまったのかもしれない。
「うん。ごめんね」

「美冬、僕は美冬のことがすごく好きだ」
「え?」
 美冬はどきんとした。まさに槙野に指摘されたところだったからだ。

「誤解しないでね。それは恋愛感情ではなくて、そうだな……妹のようにも兄のようにも思う」
 あ、あに⁉︎そこは姉であって欲しいんだけど!

「美冬の気風の良いところは姉ってより兄貴を感じることがあるんだよね。美冬がずっと恋愛できなかったのもそれだと思うよ。本当はそれには気づいてた。美冬より男前な男性なんてあまりいないよ」
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