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18.煽り運転注意です!
煽り運転注意です!③
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「大丈夫……か?」
「ん……」
美冬はちらりと槙野を見る。
こんな風になってしまったら、その滴るような男性らしい色気にくらくらするくらいだ。
「あのね……引かないでほしいんだけど、思ったよりその……気持ちよかった」
「へえ?」
ん?
「俺も1回じゃ収まりつかねーかもって思ってたからちょうどよかった」
槙野がにっと笑い、美冬の胸元にキスを落とす。
「え? いや、そういうんじゃなく……て、祐輔っ!? だめっ! やぁん……っ」
散々に貪られるようにしてされた美冬はその日、半分意識をなくすように眠りについたのだった。
──確かに優しかったし、すっごく良かったし、またしてもいいかなってちょっと思ったよ!?けども、あんな……あんな朝方近くまでするものなの!?
ふわりと意識が遠のきかけた時、美冬の目に入った時計は二時を軽く越えていたのだ。
レセプションパーティでは槙野と綾奈のちょっとした騒ぎがあったけれど、ミルヴェイユとケイエムのコラボ企画については、順調に話が進んでいた。
ミルヴェイユではデザインを扱ってもらうことやデザインを卸すことで、収益を確保し、ケイエムはミルヴェイユの名前を使用することで、ブランドの底上げをはかる。
お互いの収益についても話し合いがあり、企画がスタートし、この日は打ち合わせのために先方のデザイナー室の室長が来る、ということだった。
「椿さんっ! あ、今は槙野さんだったかしら?」
そんな風に言って笑顔で会議室の入口で手を振っていたのは木崎綾奈だった。
「綾奈さん? ご無沙汰しています。いえ、業務中は椿で大丈夫です」
──綾奈さん、デザイナーさんだったんだぁ!
あの時もセンスのいい人だとは思ったけれど、こうして見てもやはりそのスタイルは際立っている。
体型的には少しふくよかな方なのだが、自社のブランドの服をとても粋に着こなしていた。
高級ブランドに身を包む母親とはまた考え方も違うようだ。
「そちらは綾奈さんのデザインですか?」
「私がデザインしたわけじゃなくて、うちのスタッフがデザインしたものなんです。サンプルなんだけど」
「とても素敵です」
「本当? 嬉しいわ。さっそくうちのスタッフにも伝えます」
自社ブランドを愛している気持ちがとても伝わってくる。
それを聞いて美冬は綾奈と仕事することになって良かったと思ったのだ。
ミーティングについてはミルヴェイユのデザイナーでもある石丸に後を任せて、美冬は社長室に戻って自分の仕事をこなしてゆく。
仕事に集中していると、ノックの音がした。
「はい?」
「社長、恐れ入ります、木崎様がお話されたいそうなのですが」
秘書が顔を覗かせた。
木崎、とは綾奈のことだろう。
「どうぞ、入ってもらって」
しばらくして入ってきたのはやはり綾奈である。何やら社長室の入り口でもじもじしていた。
「綾奈さん! どうぞどうぞ」
美冬は目の前のソファセットを勧める。
「失礼します」
そう言って、綾奈はソファに座った。キョロキョロとしている。
「ミルヴェイユはとても素敵なブランドだと思っていましたけれど、やはり歴史のあるしっかりとした会社なんですねえ」
社屋が古いんだよなぁ……。
「建物も古くて……。一応一階の店舗は何度かリニューアルして綺麗にしているんですけど」
「いえ! そういう意味ではなくて!」
「ん……」
美冬はちらりと槙野を見る。
こんな風になってしまったら、その滴るような男性らしい色気にくらくらするくらいだ。
「あのね……引かないでほしいんだけど、思ったよりその……気持ちよかった」
「へえ?」
ん?
「俺も1回じゃ収まりつかねーかもって思ってたからちょうどよかった」
槙野がにっと笑い、美冬の胸元にキスを落とす。
「え? いや、そういうんじゃなく……て、祐輔っ!? だめっ! やぁん……っ」
散々に貪られるようにしてされた美冬はその日、半分意識をなくすように眠りについたのだった。
──確かに優しかったし、すっごく良かったし、またしてもいいかなってちょっと思ったよ!?けども、あんな……あんな朝方近くまでするものなの!?
ふわりと意識が遠のきかけた時、美冬の目に入った時計は二時を軽く越えていたのだ。
レセプションパーティでは槙野と綾奈のちょっとした騒ぎがあったけれど、ミルヴェイユとケイエムのコラボ企画については、順調に話が進んでいた。
ミルヴェイユではデザインを扱ってもらうことやデザインを卸すことで、収益を確保し、ケイエムはミルヴェイユの名前を使用することで、ブランドの底上げをはかる。
お互いの収益についても話し合いがあり、企画がスタートし、この日は打ち合わせのために先方のデザイナー室の室長が来る、ということだった。
「椿さんっ! あ、今は槙野さんだったかしら?」
そんな風に言って笑顔で会議室の入口で手を振っていたのは木崎綾奈だった。
「綾奈さん? ご無沙汰しています。いえ、業務中は椿で大丈夫です」
──綾奈さん、デザイナーさんだったんだぁ!
あの時もセンスのいい人だとは思ったけれど、こうして見てもやはりそのスタイルは際立っている。
体型的には少しふくよかな方なのだが、自社のブランドの服をとても粋に着こなしていた。
高級ブランドに身を包む母親とはまた考え方も違うようだ。
「そちらは綾奈さんのデザインですか?」
「私がデザインしたわけじゃなくて、うちのスタッフがデザインしたものなんです。サンプルなんだけど」
「とても素敵です」
「本当? 嬉しいわ。さっそくうちのスタッフにも伝えます」
自社ブランドを愛している気持ちがとても伝わってくる。
それを聞いて美冬は綾奈と仕事することになって良かったと思ったのだ。
ミーティングについてはミルヴェイユのデザイナーでもある石丸に後を任せて、美冬は社長室に戻って自分の仕事をこなしてゆく。
仕事に集中していると、ノックの音がした。
「はい?」
「社長、恐れ入ります、木崎様がお話されたいそうなのですが」
秘書が顔を覗かせた。
木崎、とは綾奈のことだろう。
「どうぞ、入ってもらって」
しばらくして入ってきたのはやはり綾奈である。何やら社長室の入り口でもじもじしていた。
「綾奈さん! どうぞどうぞ」
美冬は目の前のソファセットを勧める。
「失礼します」
そう言って、綾奈はソファに座った。キョロキョロとしている。
「ミルヴェイユはとても素敵なブランドだと思っていましたけれど、やはり歴史のあるしっかりとした会社なんですねえ」
社屋が古いんだよなぁ……。
「建物も古くて……。一応一階の店舗は何度かリニューアルして綺麗にしているんですけど」
「いえ! そういう意味ではなくて!」
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