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17.赤飯とか炊きます?
赤飯とか炊きます?②
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「シャワー、浴びてくる。このまま抱いてしまいそうだから。そういうのもいいけど、今日は違うだろ?」
「わ……かった」
「そんな顔すんな。俺だってすぐしたいけど、今日はバタバタしてて汗だくなんだよ。美冬初めてだろ? 汗だくでは抱きたくない」
「ん……」
こくん、と美冬は頷いた。
槙野は身体を起こしてベッドから離れる。ジャケットを脱いでクローゼットに掛け丁寧にネクタイを外し、カフスを外す。
すべての仕草をぼうっとしながら見てしまう美冬だ。
「あのなぁ……なんでそんな見るんだ? それなら、一緒に入るか?」
美冬はハッとする。
つい、つい見とれてしまったのだ。
「ご、ごめん」
苦笑した槙野が襟元の緩んだ状態で歩いてきてベッドの横に腰掛ける。
「ん? そんな目で見られるのは全くもって嬉しいけどな? なんで、見てるんだ?」
そう言って美冬の頬を撫でる。そんな仕草にも美冬は触れられた頬が熱くなってしまうのを感じた。
「それは……素敵だもん。つい見ちゃうよ。そのジャケット、オーダーでしょ? シルクだよね」
「スーツかよ……」
「それだけじゃなくて、脱いでる仕草がすごく……すごくドキドキしたのよ」
「ふぅん?」
すりすりと指で美冬の頬を撫でていた槙野だけれど、その美冬の回答を聞いて、にっこり笑った。
「もっと、煽られろよ。ドキドキして、俺にされちゃうって考えて、それだけで頭いっぱいになれよ」
あ……あたま爆発しそうっ!なにその色気っ!
ゆるっと美冬の唇に指で触れて、にやっと笑うと槙野は立ってバスルームに向かった。
美冬は枕にうつ伏せる。
──し……死ぬ。ドキドキして。されちゃう……なんて考えたら、心臓爆発して死ぬ。
少し前の杉村との会話を美冬は思い出していた。
それはあの槙野のご立派に触れて、泣いてしまった後のことだ。
「男の人のって……あんなになるものなのね」
「ナニの話ですか? ついにされたんですね。おめでとうございます。赤飯とか炊きます?」
杉村は相変わらず表情も変えずに淡々と、そんなことを言った。
「要らないわよっ。結局しなかったんだし」
「しな……かった? 槙野さんのソレがそうなってるところを確認されてるんですよね?」
あんなになる、とは屹立しているところを見た、ということなのではないだろうか。
「うん……」
美冬は手の平をじっと見るのをやめてほしい。その大きさを反芻しているのが分かるから。
ということは確実に固く大きくなっている状態を確認した、ということだろう。
「まさか、しな……かったんですか?」
「だって、入らないよ。あんなの……」
絶対入んない……とかごにょごにょ美冬は言っている。おそらくは完全なる臨戦状態だったのだろうに美冬のことだから、無理とかなんとか大騒ぎしたのではないだろうか。
そう思うと、杉村は槙野が気の毒になってきた。それでも無理強いはせずに引いたところに好感が持てる。
「美冬さん、しようって思ったんですよね?」
「そうよっ! いいところまでいったのよ」
ますます槙野がかわいそうだ。
「入ります」
キリッと杉村は言った。
「え?」
「わ……かった」
「そんな顔すんな。俺だってすぐしたいけど、今日はバタバタしてて汗だくなんだよ。美冬初めてだろ? 汗だくでは抱きたくない」
「ん……」
こくん、と美冬は頷いた。
槙野は身体を起こしてベッドから離れる。ジャケットを脱いでクローゼットに掛け丁寧にネクタイを外し、カフスを外す。
すべての仕草をぼうっとしながら見てしまう美冬だ。
「あのなぁ……なんでそんな見るんだ? それなら、一緒に入るか?」
美冬はハッとする。
つい、つい見とれてしまったのだ。
「ご、ごめん」
苦笑した槙野が襟元の緩んだ状態で歩いてきてベッドの横に腰掛ける。
「ん? そんな目で見られるのは全くもって嬉しいけどな? なんで、見てるんだ?」
そう言って美冬の頬を撫でる。そんな仕草にも美冬は触れられた頬が熱くなってしまうのを感じた。
「それは……素敵だもん。つい見ちゃうよ。そのジャケット、オーダーでしょ? シルクだよね」
「スーツかよ……」
「それだけじゃなくて、脱いでる仕草がすごく……すごくドキドキしたのよ」
「ふぅん?」
すりすりと指で美冬の頬を撫でていた槙野だけれど、その美冬の回答を聞いて、にっこり笑った。
「もっと、煽られろよ。ドキドキして、俺にされちゃうって考えて、それだけで頭いっぱいになれよ」
あ……あたま爆発しそうっ!なにその色気っ!
ゆるっと美冬の唇に指で触れて、にやっと笑うと槙野は立ってバスルームに向かった。
美冬は枕にうつ伏せる。
──し……死ぬ。ドキドキして。されちゃう……なんて考えたら、心臓爆発して死ぬ。
少し前の杉村との会話を美冬は思い出していた。
それはあの槙野のご立派に触れて、泣いてしまった後のことだ。
「男の人のって……あんなになるものなのね」
「ナニの話ですか? ついにされたんですね。おめでとうございます。赤飯とか炊きます?」
杉村は相変わらず表情も変えずに淡々と、そんなことを言った。
「要らないわよっ。結局しなかったんだし」
「しな……かった? 槙野さんのソレがそうなってるところを確認されてるんですよね?」
あんなになる、とは屹立しているところを見た、ということなのではないだろうか。
「うん……」
美冬は手の平をじっと見るのをやめてほしい。その大きさを反芻しているのが分かるから。
ということは確実に固く大きくなっている状態を確認した、ということだろう。
「まさか、しな……かったんですか?」
「だって、入らないよ。あんなの……」
絶対入んない……とかごにょごにょ美冬は言っている。おそらくは完全なる臨戦状態だったのだろうに美冬のことだから、無理とかなんとか大騒ぎしたのではないだろうか。
そう思うと、杉村は槙野が気の毒になってきた。それでも無理強いはせずに引いたところに好感が持てる。
「美冬さん、しようって思ったんですよね?」
「そうよっ! いいところまでいったのよ」
ますます槙野がかわいそうだ。
「入ります」
キリッと杉村は言った。
「え?」
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