契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

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17.赤飯とか炊きます?

赤飯とか炊きます?①

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 それでも今日空いている部屋でいちばんいい部屋を準備してもらった二人だ。

 槙野が言うようにその部屋は夜景も綺麗で、部屋の雰囲気もとてもよかった。
 かなりの高層階だったので窓の外にキラキラと光る夜景が広がっているのが見える。

「わー! 綺麗ねぇ」
「うちから見えるのとそんなに変わらなくないか?」

──まあ……そうですけども。
 槙野のマンションの部屋自体が高層階なので、確かに大幅には変わらないかもしれないが。

「美冬」
「はいっ」
 ただ緊張してるのだ。少しでも時間を稼ぎたいこの気持ちを察してほしい。
 しかも、なんなのっ!その甘い声の名前の呼び方っ!

「一緒に浴びるか?」
 くっとバスルームの方を指さされて、美冬はひょえっとなる。

「ご、ごご、ごめんっ! それは無理っ! 祐輔先に行ってきて」 
 ふむ……と少しだけ考えた仕草をした槙野は美冬を抱き上げた。
「ひゃんっ……」

「今日は勘弁してやるけど、一緒に浴びるのもいいものだぞ」
「ど……ういう意味?」
「エッチで楽しいこといっぱいしような、って意味」

「祐輔っ!」
「おい!暴れるな落とすぞ」
 美冬を抱き上げてベッドルームに向かった槙野は入口で足を止める。

 ベッドにはハート型にバラの花びらが散らされていたからだ。
「マジか……」

「あら、綺麗。すごいわね」
 その上に美冬をそっと下ろす。

「なあ? 俺は契約婚なんて、もうどうでもいいぞ。それくらいには美冬のこときちんと好きだからな」
「うん……」

 契約なんだと思っていた。その優しさも、美冬への気持ちも、契約なんかじゃないと分かった。
 愛されることなんてないと思ったのに、ずっと気持ちはちゃんとあったのだ。

「私も、好き」
 美冬がぎゅっと抱きつくと、槙野は抱き返してくれる。

 きゅっと抱き合うとお互いの体温がとても伝わって、美冬は高くなる自分の鼓動の音が聞こえる。
 とても緊張するけれど、槙野のことを信じている。

 美冬が顔を上げると槙野は真剣な顔で美冬のことを見ていた。
 そっと顔が近づく。
 柔らかく唇が触れ合った。

 緩く舌を絡ませていると、美冬は背中にベッドがあたったのを感じる。
 いつの間にか押し倒されていたようだ。

 槙野が何度も何度も角度を変えて美冬の口の中をくまなくその舌で探る。
 背中を強く抱かれて、貪るように、まるで全てを自分のものにしてしまいたいと主張するようなキスだ。

「ふっ……んっ、待っ……て」
 ほとんど経験のない美冬には激しすぎるキスだ。むしろキスがこんなに官能的で激しいものだなんて思わなかった。

 舌の先端も付け根も、喉の手前も顎の下も舌で撫でられるだけで、背筋からお腹にかけてきゅん、とする。
 お互い気付いたら夢中になっていた。

 そっと唇を離すと槙野の唇が濡れている。唇だけではない。目も呼吸も吐息すら濡れている。
 きっと、自分も。

「……んっ、あ」
 少し惜しげな顔になってしまったかもしれない。
 だって美冬はもっとキスしたかったから。

「気に入った?」
「ん……」
 せがむようにすると、槙野が美冬の唇に軽く自分の唇を重ねた。
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