契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

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15.ま、まさか加齢sy……

ま、まさか加齢sy……④

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「察しがつくんじゃないかと思うだろう? けど、美冬さんはお前じゃない。お前の気持ちなんて分からないと思え。伝えた方がいい」
「え?」

「押しのけられた理由を聞いて自分の気持ちを伝えるんだな。いろいろ変わると思う」
 変わると言われても槙野には分からなかった。

 ただ一つ分かっているのは、片倉が周りに政略結婚だと言われても自分の気持ちを押し通して、今は浅緋ととても幸せだということだ。

 槙野は片倉を見る。
「ま、頑張れよ」
「他人のことなら分かるのに、な」
「そういうもんだ」

 14時の約束は宝飾店だった。注文した指輪が出来てきたと連絡があったのだ。槙野は直接取りに行くつもりにしていた。

 数日後にはレセプションパーティがある。
 槙野はその時に美冬に指輪を渡して、自分の気持ちをきちんと伝えようと思ったのだ。



 こんな時に限って、と槙野はイライラしていた。

 急ぐために乗った高速で事故が発生していたのだ。レセプションのスタート前に美冬を迎えに行く予定だったのに、行けなくなってしまったのである。

 レセプションパーティの会場にはとても素敵なガーデンが併設していることを槙野は知っている。

 早めに行って、そのガーデンで改めて気持ちを伝えて、指輪を付け替えてもらおうと思っていたのに。

 美冬は会社で準備を済ませて、タクシーで会場に向かっているとメールが入る。
『本当にごめん!』
 槙野は即座に返信を送った。美冬からも即返信が来る。

『交通事情だもの仕方ないよ。会場には片倉さんも奥様もいるし、待ってるね。大丈夫だから、気をつけて来て』

 大丈夫とかではない。一刻も早く会いたくて、伝えたいことがあるのに。

 じりじりともどかしい気持ちを抱える槙野だ。断るのが困難なアポが入っていて、そこに行ってからレセプションパーティに向かっても十分間に合うはずだった。

 なのに、話好きの社長に捕まってしまった。お世話になっている人なだけに無下にもできない。

 それでも間に合う時間には先方の会社を出たはずだったのに、まさか事故とは。やむないことだし、誰かを責めることもできない。

「副社長、渋滞抜けそうです」
「慌てず可能な限り急いでくれ」
 運転している秘書はくすりと笑う。
「承知致しました」



 パールホワイトのワンピースとジャケットがとても似合っていた。
 美冬が見ているのは片倉浅緋だ。

 浅緋は片倉に寄り添って、一緒にご挨拶をして回っている。その慣れた様子にも見蕩れそうだ。

 ほとんどは片倉が対応するのだが、時折浅緋もお客様に話しかけられている。そんな時も品よく笑顔を向けて、話しているのが見えた。

 捕まりすぎじゃない?と思うと片倉が自然にそっと肩を抱いて抱き寄せて、浅緋を庇うようにしている。
 本当にお似合いのとても仲の良い夫婦なのだ。
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