51 / 109
12.ナニしに来たの?
ナニしに来たの?①
しおりを挟む
四人で会場に戻り、片倉と浅緋は会場内を散策してくると離れて、美冬と槙野はその場に残る。
美冬がちらりと見ると、槙野は頷いてくれた。
そうして杉村と石丸に歩み寄っていく。二人は槙野を見て緩く頭を下げた。
「杉村さん、石丸さんお久しぶりです。驚かせてしまってすみません」
槙野は笑みを浮かべて二人に挨拶をする。
「槙野さんお久しぶりです。驚きました」
杉村は相変わらず表情は変わらないけれど、怯まずに驚いたと槙野に伝えているところが、彼女らしい。
石丸は口は開かなかったけれど、腕を組んで静かに槙野と美冬を見ていた。
「急だったんですね」
「はい。一目惚れでしたから」
結婚や二人の関係について、どこででも槙野はそうやってキッパリ言ってくれる。
けれど槙野にだけそう言わせるのは美冬は違うのではないかとつい口を挟んでしまう。誤解はされたくない。
「それだけじゃないわよ、私もそれでいいって思ったの。槙野さんは私のこともきちんと考えてくれるし、おじいちゃんにも気に入られているようだし」
「会長が……」
ミルヴェイユの中での祖父の存在感は大きい。それを聞いて杉村も石丸も口をつぐんでしまった。
会長が認めているのであれば二人に言うことはない。しかもすでにそこにまで挨拶を終えているとは思わなかった。
石丸はそれにも衝撃をおぼえたようだ。槙野にそっと歩み寄る。表情は硬いままだった。
「会長にまでご挨拶されているのなら僕らに言うことはありませんよ。でも、美冬さんのことは社員みんなとても大事に思っているんだ。そこはご理解ください」
槙野はそれにも笑顔で答える。
ビジネスマンとしては槙野の方が明らかに分があるのは間違いのないところだった。
「もちろんだ。俺だって大事に思っている。それに結婚式ではそちらに負担をかけることになるしな」
「負担?」
槙野のその発言に石丸が首を傾げる。
「美冬がこちらのデザインのウエディングドレスが着たいと言っている。俺も立場があるのでニュースリリースを弊社でもする予定にはしている」
「あら、そっちでもするの?」
それを聞いて驚く美冬だ。
「ニュースリリースはする予定だ。会見まではしなくてもいいと考えている。ミルヴェイユだけという訳にはいかないだろう」
ミルヴェイユにしてみたら、それだけだってとんでもない宣伝効果だ。
「時期については打ち合わせさせて頂いてもいいですか?」
即座に杉村が反応する。
「では秘書から連絡させましょう」
槙野はそう言って杉村に笑顔を向けた。
杉村と石丸の二人が納得していようがしていまいが話を進めていくことには変わりはない。槙野は美冬の陰になり日向になり助けてくれている。
ミルヴェイユが話題になることは美冬の助けになることでもあるのだ。
──助けられてばかりで本当に悔しいわ。
「美冬」
ひそっと石丸に声を掛けられて美冬は彼に近づく。
「なに?」
「本当に結婚するの?」
「するわよ。みんな喜んでくれてるじゃない。諒は喜んでくれないの?」
「本当なら喜ばなきゃいけないんだろうけど、急すぎる」
美冬がちらりと見ると、槙野は頷いてくれた。
そうして杉村と石丸に歩み寄っていく。二人は槙野を見て緩く頭を下げた。
「杉村さん、石丸さんお久しぶりです。驚かせてしまってすみません」
槙野は笑みを浮かべて二人に挨拶をする。
「槙野さんお久しぶりです。驚きました」
杉村は相変わらず表情は変わらないけれど、怯まずに驚いたと槙野に伝えているところが、彼女らしい。
石丸は口は開かなかったけれど、腕を組んで静かに槙野と美冬を見ていた。
「急だったんですね」
「はい。一目惚れでしたから」
結婚や二人の関係について、どこででも槙野はそうやってキッパリ言ってくれる。
けれど槙野にだけそう言わせるのは美冬は違うのではないかとつい口を挟んでしまう。誤解はされたくない。
「それだけじゃないわよ、私もそれでいいって思ったの。槙野さんは私のこともきちんと考えてくれるし、おじいちゃんにも気に入られているようだし」
「会長が……」
ミルヴェイユの中での祖父の存在感は大きい。それを聞いて杉村も石丸も口をつぐんでしまった。
会長が認めているのであれば二人に言うことはない。しかもすでにそこにまで挨拶を終えているとは思わなかった。
石丸はそれにも衝撃をおぼえたようだ。槙野にそっと歩み寄る。表情は硬いままだった。
「会長にまでご挨拶されているのなら僕らに言うことはありませんよ。でも、美冬さんのことは社員みんなとても大事に思っているんだ。そこはご理解ください」
槙野はそれにも笑顔で答える。
ビジネスマンとしては槙野の方が明らかに分があるのは間違いのないところだった。
「もちろんだ。俺だって大事に思っている。それに結婚式ではそちらに負担をかけることになるしな」
「負担?」
槙野のその発言に石丸が首を傾げる。
「美冬がこちらのデザインのウエディングドレスが着たいと言っている。俺も立場があるのでニュースリリースを弊社でもする予定にはしている」
「あら、そっちでもするの?」
それを聞いて驚く美冬だ。
「ニュースリリースはする予定だ。会見まではしなくてもいいと考えている。ミルヴェイユだけという訳にはいかないだろう」
ミルヴェイユにしてみたら、それだけだってとんでもない宣伝効果だ。
「時期については打ち合わせさせて頂いてもいいですか?」
即座に杉村が反応する。
「では秘書から連絡させましょう」
槙野はそう言って杉村に笑顔を向けた。
杉村と石丸の二人が納得していようがしていまいが話を進めていくことには変わりはない。槙野は美冬の陰になり日向になり助けてくれている。
ミルヴェイユが話題になることは美冬の助けになることでもあるのだ。
──助けられてばかりで本当に悔しいわ。
「美冬」
ひそっと石丸に声を掛けられて美冬は彼に近づく。
「なに?」
「本当に結婚するの?」
「するわよ。みんな喜んでくれてるじゃない。諒は喜んでくれないの?」
「本当なら喜ばなきゃいけないんだろうけど、急すぎる」
2
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説

【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。
そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。
最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。
そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。
上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。
貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。
実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、
上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。
そこで知ったルーカスの秘密。
彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。
元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。
戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。
シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。
所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。
そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。
心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。
けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。
シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか――
※他サイトでも公開しています

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。
総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。
日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる