契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

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11.私がやりました……

私がやりました……②

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「ど、どうしたの?」
「さすがです! 自社のドレスを着るってキッパリ言って下さるなんて。だからついていこうって思うんですよ」

 そうか……自社のドレスを着る社長がいいと思ってもらえるんだ。美冬自身はミルヴェイユが好きだから当然と思っていたけれど、それが社員の助けになるならむしろ宣伝として使ってもらっても構わないと考える。

「ちょっとごめん、みんないい?」
 開店準備中のところ、美冬はスタッフをそっと呼び出す。美冬の声にスタッフは作業していた顔を上げて、美冬の周りに集まった。

「今、林さんから聞かれて皆も聞かれるかもしれないから一応言っておくね。婚約しました」

 わあっとミルヴェイユのスペースから明るい声があがってしまう。美冬はしー、と人差し指を口元にあてた。

「みんな静かに。婚約したことは言っていいしニュースリリースがあると思いますと言っていいわよ」

 皆が口々におめでとうございますとか、素敵な指輪ですよね、気になっていたんです!と盛り上がっている中、美冬は杉村と石丸のじっとりとした視線を感じていた。

──あとで説明しますって~……。

 開場と同時に来てくださったお客様と少しお話をしたところで美冬は杉村と石丸に首根っこを掴まれた。

「社長、説明していただきますから」
「僕だって何も聞いてないんだけど!」
 引っ張りこむように控室に連れていかれる。

 それは販売用の会場とは別に用意してもらっている宴会場で飲み物なども用意されているのだ。

 端の方のテーブルに連れていかれた美冬は飲み物を取りに行こうと席を立つと、テーブルの上を杉村にぺしぺしされる。

「社長はここにお掛けください」
「はい……」
 腰を上げかけた美冬は、席に座り直した。
 石丸が美冬に向かってにっこりと笑うけれど、笑顔の奥の目が怒っていて怖い。

 美冬の代わりに席を立った石丸が飲み物を持ってくる。
 トン、と美冬の目の前にアイスティーが置かれた。
「お砂糖入りだから」

 さすがに長い付き合いだけのことはある。石丸は美冬のことをよく分かっていた。
「で? どういうこと?」
と二人に迫られる。

「だから結婚します……て」
「そんな相手いなかったじゃん」
「どこにいるんです⁉︎」

──二人して何なの。

 しかし不審に思っても不思議はないくらい美冬には恋人の気配というものがなかったのだ。

「まあ、何か様子がおかしいとは思っていましたけどね」
 ため息まじりにそう言うのは杉村だ。

「コンペの後くらいから少しおかしかったですよね。まさかそんなことになっているなんて思いませんでしたけど」
 杉村は美冬は企画書の再作成に集中しているだけかと思っていたのだ。

「いつから? どこの誰?」
「えーと……」
「吐け」
 杉村がずいっと美冬に迫る。

「ごめんなさーい、私がやりましたぁ」
「いいから、ふざけてないで教えて」
「槙野さん……知ってる、よね?」
「槙野……?」
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