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8.契約書に『アレ』の記載は?
契約書に『アレ』の記載は?④
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ずきっとしたのが、胸だったのか、身体の中心だったのか、美冬には分からない。
けれど、その仕草にさらに頬がカッと熱くなってしまったのは間違いはなかった。
──煽るな、なんて。……煽られているのは私の方なのに。
槙野はベストを脱いでベッドの下に落とし、シュルっと音をさせてネクタイを首から外す。
そのままシャツの手首のボタンを外して、襟元を緩めた。
そんな仕草の一つ一つが野性的なのにエレガントで慣れない美冬はくらくらしてしまう。
すごく、慣れてない?
妖艶で男性的で、野性的な美しさがあって……。
(これは絶対モテるひとだ!!)
「なんだ? なに考えてる?」
「いや、祐輔ってモテそうだなーって……」
くすっと余裕のような表情で笑われて顎を指でくすぐられる。
「モテてももうお前だけだろ。そういう契約じゃないのか」
お前だけなんて言われてきゅんとしたけど、確かにそれは契約だった。
「そうね」
「美冬もだぞ。もう、俺だけしか美冬に触れることは許さない」
──契約……だから。
分かっていた。分かっていて署名したのだ。それでいいと思ったし、その方がいいと思ったから。
なのに今、何だか棘のように心になにか引っかかっているような気がするのはどうしてだろう。
契約なんて言われて美冬も割り切ってしまえばいいのに、チクリと痛むなにかがあるのは。
──契約でも可愛いとか、滾るとか言ったり、優しくするとか良くするとか言うんだ。俺だけとか……。
唇が重なると胸がドキドキする。
気持ちよくてきゅんとするのだ。
ベッドの上で重ねてくれている手も、情熱的に美冬の口の中をまさぐるその舌も、柔らかく美冬を傷つけないように触れる手も美冬は全てに翻弄されてしまうのに。
脱げかけた服の隙間から見えている槙野の肌に、美冬の鼓動の音はさらに大きくなる。綺麗に筋肉が薄らとついていて、引き締まった腹筋がシャツの隙間からちらりと見えていて美冬はどうしたらいいのか分からなくなった。
──男の人、なんだ……。
急に恥ずかしくなってつい、美冬は自分の身体を隠したくなってしまった。
「ん?どうした?」
隠したその手を握られて腕を開かれる。
手首から、肘の裏、二の腕までキスをされて服を着れば見えないところは強く吸われた。
「……んっ、あ……跡ついてる」
「うん。キスマーク。美冬の肌はすごく白いから赤い跡がすごく映える。興奮する」
「興奮するの?」
「すげー、する。美冬は綺麗だし、スタイルもいい。着痩せするんだな」
「それ、服を脱いだら実際はもっと太ってる……とか」
「ばぁか、違うよ。思ったより胸が大っきいなってこと」
くすくす笑って槙野は美冬の胸元にもキスをして、その痕跡をつけてゆく。
エッチするのってこんなに生々しくて、いやらしいというか、隠微な雰囲気になるものなのだろうか?
美冬には経験がなさすぎて、戸惑うばかりだ。
「ね、恥ずかしい……よ」
「まだなんもしてないのに、感じすぎ」
「してるよ、いっぱい触ってるじゃない。そっ……それに、跡までつけてる」
けれど、その仕草にさらに頬がカッと熱くなってしまったのは間違いはなかった。
──煽るな、なんて。……煽られているのは私の方なのに。
槙野はベストを脱いでベッドの下に落とし、シュルっと音をさせてネクタイを首から外す。
そのままシャツの手首のボタンを外して、襟元を緩めた。
そんな仕草の一つ一つが野性的なのにエレガントで慣れない美冬はくらくらしてしまう。
すごく、慣れてない?
妖艶で男性的で、野性的な美しさがあって……。
(これは絶対モテるひとだ!!)
「なんだ? なに考えてる?」
「いや、祐輔ってモテそうだなーって……」
くすっと余裕のような表情で笑われて顎を指でくすぐられる。
「モテてももうお前だけだろ。そういう契約じゃないのか」
お前だけなんて言われてきゅんとしたけど、確かにそれは契約だった。
「そうね」
「美冬もだぞ。もう、俺だけしか美冬に触れることは許さない」
──契約……だから。
分かっていた。分かっていて署名したのだ。それでいいと思ったし、その方がいいと思ったから。
なのに今、何だか棘のように心になにか引っかかっているような気がするのはどうしてだろう。
契約なんて言われて美冬も割り切ってしまえばいいのに、チクリと痛むなにかがあるのは。
──契約でも可愛いとか、滾るとか言ったり、優しくするとか良くするとか言うんだ。俺だけとか……。
唇が重なると胸がドキドキする。
気持ちよくてきゅんとするのだ。
ベッドの上で重ねてくれている手も、情熱的に美冬の口の中をまさぐるその舌も、柔らかく美冬を傷つけないように触れる手も美冬は全てに翻弄されてしまうのに。
脱げかけた服の隙間から見えている槙野の肌に、美冬の鼓動の音はさらに大きくなる。綺麗に筋肉が薄らとついていて、引き締まった腹筋がシャツの隙間からちらりと見えていて美冬はどうしたらいいのか分からなくなった。
──男の人、なんだ……。
急に恥ずかしくなってつい、美冬は自分の身体を隠したくなってしまった。
「ん?どうした?」
隠したその手を握られて腕を開かれる。
手首から、肘の裏、二の腕までキスをされて服を着れば見えないところは強く吸われた。
「……んっ、あ……跡ついてる」
「うん。キスマーク。美冬の肌はすごく白いから赤い跡がすごく映える。興奮する」
「興奮するの?」
「すげー、する。美冬は綺麗だし、スタイルもいい。着痩せするんだな」
「それ、服を脱いだら実際はもっと太ってる……とか」
「ばぁか、違うよ。思ったより胸が大っきいなってこと」
くすくす笑って槙野は美冬の胸元にもキスをして、その痕跡をつけてゆく。
エッチするのってこんなに生々しくて、いやらしいというか、隠微な雰囲気になるものなのだろうか?
美冬には経験がなさすぎて、戸惑うばかりだ。
「ね、恥ずかしい……よ」
「まだなんもしてないのに、感じすぎ」
「してるよ、いっぱい触ってるじゃない。そっ……それに、跡までつけてる」
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