契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

文字の大きさ
上 下
10 / 109
3.や……やられるっ!

や……やられるっ!④

しおりを挟む
「じゃあ、契約婚って、槙野さんにもメリットがあるってこと?」
「あるな」

「じゃあウィンウィンですね! シナジー効果もバッチリ! ん? これって政略結婚?」
 美冬がそう言うと槙野にもうすっごくバカにされたような目で見られた。

 その顔、止めて欲しい!書いてあるのよ。顔に!お前はバカか!?って!


「いいか? 政略結婚というのは結婚当事者の家長や親権者が家の利益のために、当人たちの意向を無視してさせる結婚のことなんだよ」
 確かに別に家長に家の利益のために意向を無視された、ということはない。

「そっか……」
 実際にこの契約婚の話を進めるとしたら、これは美冬と槙野がお互いにメリットがあると判断してお互いに決めたことだ。

「契約結婚は結婚に際し結婚生活に関する事項について、あらかじめ夫婦になる者達の間で取り決め、つまり婚前契約をした上で結婚をすることだ」

 ──夫婦……。
 槙野にそう言われてそんな場合ではないのに、ついそんな言葉を心の中で噛み締めてしまった美冬だ。

「やっだー! 夫婦とかー!」
 そんな言葉に思わず照れてしまって美冬は目の前の槙野の肩をバシッと叩く。

「痛いんだが……」
「分かったわ。契約結婚、ね」
「気のせいか、お前はしゃいでないか?」

 槙野から呆れ気味の声が聞こえた。けれど、美冬はそんなことは気にしない。

「えー、はしゃぎますよー。したかったもん結婚。おじいちゃんは安心してミルヴェイユを任せてくれると思うし、契約ってあらかじめいろいろ決められたら、あとで聞いてなかったー! とかないのでしょ?」

 美冬の明るさに反して槙野の首が折れてゆく。
「お前……恋愛とかしたいとか思わねーのかよ……」
 俯いた槙野からそんな低い声が漏れてきた。

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「好きな奴とか付き合ってるやつは、いないのか?」

「それ、最初に確認して欲しかったけど、先ほどもお伝えした通りでおじいちゃんが心配するレベルでいないんですよね」
 美冬のそんな言葉を聞いて、槙野はふ……っと笑った。

「ふうん? じゃあ、お互いに利害は一致しているんだな。では今度詳細なお互いの条件について詰めよう」
「分かりました」

「おい、結婚するならミルヴェイユの社長は降りなくていいわけだが、この案件については俺の預かりで構わないか? 悪いことはしない」
 そう言って槙野は美冬と一緒に手にしていた書類を振って見せた。

 確かに、結婚するのなら美冬の社長問題は回避される。
 でも経営状態はせっかくなので改善はしていきたいし、その件について槙野が案件にしてくれるのなら言うことはなかった。

「お願いします」
 美冬は槙野の膝の上で頭を下げたのだった。



 その週の金曜日だ。美冬の会社のメールボックスに槙野からのメールが入った。
 題名は【契約の件について】
 契約について詳細な内容を詰めたいので、今日の夜に時間を作って欲しいということだった。

(あれ、ちゃんと本気だったんだわ)
 その後は特に連絡もなかったので、夢でも見ていたのかと美冬は疑いだした時期でもあったから。

 美冬は手帳を確認する。
 今日は夜も特にアポイントメントは入っていない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」  祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。  こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。  あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。   ※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。

海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。 総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。 日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。

処理中です...