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3.や……やられるっ!
や……やられるっ!④
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「じゃあ、契約婚って、槙野さんにもメリットがあるってこと?」
「あるな」
「じゃあウィンウィンですね! シナジー効果もバッチリ! ん? これって政略結婚?」
美冬がそう言うと槙野にもうすっごくバカにされたような目で見られた。
その顔、止めて欲しい!書いてあるのよ。顔に!お前はバカか!?って!
「いいか? 政略結婚というのは結婚当事者の家長や親権者が家の利益のために、当人たちの意向を無視してさせる結婚のことなんだよ」
確かに別に家長に家の利益のために意向を無視された、ということはない。
「そっか……」
実際にこの契約婚の話を進めるとしたら、これは美冬と槙野がお互いにメリットがあると判断してお互いに決めたことだ。
「契約結婚は結婚に際し結婚生活に関する事項について、あらかじめ夫婦になる者達の間で取り決め、つまり婚前契約をした上で結婚をすることだ」
──夫婦……。
槙野にそう言われてそんな場合ではないのに、ついそんな言葉を心の中で噛み締めてしまった美冬だ。
「やっだー! 夫婦とかー!」
そんな言葉に思わず照れてしまって美冬は目の前の槙野の肩をバシッと叩く。
「痛いんだが……」
「分かったわ。契約結婚、ね」
「気のせいか、お前はしゃいでないか?」
槙野から呆れ気味の声が聞こえた。けれど、美冬はそんなことは気にしない。
「えー、はしゃぎますよー。したかったもん結婚。おじいちゃんは安心してミルヴェイユを任せてくれると思うし、契約ってあらかじめいろいろ決められたら、あとで聞いてなかったー! とかないのでしょ?」
美冬の明るさに反して槙野の首が折れてゆく。
「お前……恋愛とかしたいとか思わねーのかよ……」
俯いた槙野からそんな低い声が漏れてきた。
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「好きな奴とか付き合ってるやつは、いないのか?」
「それ、最初に確認して欲しかったけど、先ほどもお伝えした通りでおじいちゃんが心配するレベルでいないんですよね」
美冬のそんな言葉を聞いて、槙野はふ……っと笑った。
「ふうん? じゃあ、お互いに利害は一致しているんだな。では今度詳細なお互いの条件について詰めよう」
「分かりました」
「おい、結婚するならミルヴェイユの社長は降りなくていいわけだが、この案件については俺の預かりで構わないか? 悪いことはしない」
そう言って槙野は美冬と一緒に手にしていた書類を振って見せた。
確かに、結婚するのなら美冬の社長問題は回避される。
でも経営状態はせっかくなので改善はしていきたいし、その件について槙野が案件にしてくれるのなら言うことはなかった。
「お願いします」
美冬は槙野の膝の上で頭を下げたのだった。
その週の金曜日だ。美冬の会社のメールボックスに槙野からのメールが入った。
題名は【契約の件について】
契約について詳細な内容を詰めたいので、今日の夜に時間を作って欲しいということだった。
(あれ、ちゃんと本気だったんだわ)
その後は特に連絡もなかったので、夢でも見ていたのかと美冬は疑いだした時期でもあったから。
美冬は手帳を確認する。
今日は夜も特にアポイントメントは入っていない。
「あるな」
「じゃあウィンウィンですね! シナジー効果もバッチリ! ん? これって政略結婚?」
美冬がそう言うと槙野にもうすっごくバカにされたような目で見られた。
その顔、止めて欲しい!書いてあるのよ。顔に!お前はバカか!?って!
「いいか? 政略結婚というのは結婚当事者の家長や親権者が家の利益のために、当人たちの意向を無視してさせる結婚のことなんだよ」
確かに別に家長に家の利益のために意向を無視された、ということはない。
「そっか……」
実際にこの契約婚の話を進めるとしたら、これは美冬と槙野がお互いにメリットがあると判断してお互いに決めたことだ。
「契約結婚は結婚に際し結婚生活に関する事項について、あらかじめ夫婦になる者達の間で取り決め、つまり婚前契約をした上で結婚をすることだ」
──夫婦……。
槙野にそう言われてそんな場合ではないのに、ついそんな言葉を心の中で噛み締めてしまった美冬だ。
「やっだー! 夫婦とかー!」
そんな言葉に思わず照れてしまって美冬は目の前の槙野の肩をバシッと叩く。
「痛いんだが……」
「分かったわ。契約結婚、ね」
「気のせいか、お前はしゃいでないか?」
槙野から呆れ気味の声が聞こえた。けれど、美冬はそんなことは気にしない。
「えー、はしゃぎますよー。したかったもん結婚。おじいちゃんは安心してミルヴェイユを任せてくれると思うし、契約ってあらかじめいろいろ決められたら、あとで聞いてなかったー! とかないのでしょ?」
美冬の明るさに反して槙野の首が折れてゆく。
「お前……恋愛とかしたいとか思わねーのかよ……」
俯いた槙野からそんな低い声が漏れてきた。
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「好きな奴とか付き合ってるやつは、いないのか?」
「それ、最初に確認して欲しかったけど、先ほどもお伝えした通りでおじいちゃんが心配するレベルでいないんですよね」
美冬のそんな言葉を聞いて、槙野はふ……っと笑った。
「ふうん? じゃあ、お互いに利害は一致しているんだな。では今度詳細なお互いの条件について詰めよう」
「分かりました」
「おい、結婚するならミルヴェイユの社長は降りなくていいわけだが、この案件については俺の預かりで構わないか? 悪いことはしない」
そう言って槙野は美冬と一緒に手にしていた書類を振って見せた。
確かに、結婚するのなら美冬の社長問題は回避される。
でも経営状態はせっかくなので改善はしていきたいし、その件について槙野が案件にしてくれるのなら言うことはなかった。
「お願いします」
美冬は槙野の膝の上で頭を下げたのだった。
その週の金曜日だ。美冬の会社のメールボックスに槙野からのメールが入った。
題名は【契約の件について】
契約について詳細な内容を詰めたいので、今日の夜に時間を作って欲しいということだった。
(あれ、ちゃんと本気だったんだわ)
その後は特に連絡もなかったので、夢でも見ていたのかと美冬は疑いだした時期でもあったから。
美冬は手帳を確認する。
今日は夜も特にアポイントメントは入っていない。
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