59 / 61
番外:幸せな鳥籠
鳥は夢見る①
しおりを挟む
その日の帰り、圭一郎は車の前で待っている春岡を見つけて、口元に笑みを浮かべる。
「春岡室長。どうかしましたか?」
「……分かっているのではないんですか?」
圭一郎は冷たい笑みを返した。
「さあ……何のことでしょうか?」
「仮眠室でのことです。」
「まさか覗いていた?趣味が悪いですよ」
くすくすとからかうように、圭一郎は笑う。
「わざとですよね」
「まさか。可愛い珠月のみだらな姿を他の人に見せたいわけがないでしょう。仮にロックが外れていたとしても俺と珠月は婚約者なのだし、放っておくのがマナーではないんですか?」
「彼女はあんな人ではないのに……」
苦々しそうな顔をする春岡が、圭一郎には気に入らなかった。
「何だか、よく知っているような口ぶりですね」
「よく知っています。彼女のおばあさんの転院の手続きの際、お手伝いをしましたから」
「へえ……。けれど、珠月は覚えている風ではないけれど?」
「そのようですね。あの時はだいぶ大変な思いをされていましたから」
「珠月が知らないのなら一方的にあなたが知っているというだけの関係か。なおさら、あなたに何か言われる筋合いはないな」
圭一郎はふ……と鼻で笑う。
「どこから見ていたんです?」
そんな圭一郎の質問に春岡の頬がカッと赤くなったのが見えた。
「珠月がおねだりしていたところ? それとも俺のを咥えて、自分のを慰めていたところかな? あれは……とってもよかった……」
「あなたは……」
「あれを俺が無理やりしていたように見えた? 触ってってお願いする珠月、ものすごく可愛いんだ」
「あなたが彼女をそんな風にしたんじゃないんですか?」
「そうかな? 珠月にその意思がなかったとでも? そんなの君の方が勝手な理想を珠月に押し付けているだけだろう」
ひどく冷淡に淡々と圭一郎は、春岡に告げる。
「言っておくけれど、珠月は自分から俺と一緒になると決めているんだ。それは自分の意思だよ。その中で俺たちがどんな関係を築こうと君には関係がない」
「無垢な人にあなたがそう仕向けたのではないんですか?」
「そう思うか?」
「思いますね」
「だとしたら何だ? 鳥籠の中が不幸せだと誰が決めた? 一旦はね、逃げたんだよ。鳥は。けれど、自ら籠に戻ったんだ。それは不幸なことか?」
「彼女があなたに対して引け目を感じて苦しんでいたとしてもですか⁉︎」
「そんなもの」
ふ……と鼻で圭一郎は笑う。
「勤めなんかしているからそんなことを感じて苦しむ。それが嫌なら仕事なんてやめればいい」
「あなたって人は……」
「むしろ、俺は珠月には仕事なんて早く辞めてほしいって思っているよ。勤務なんてしているからそんなことを考える。それに君のような輩にも目をつけられるんだ。珠月は可愛いから、ドクターにも患者の中にも彼女に横恋慕するものが出てくるかもしれないしな。非常に不快だよ。誰にも見せたくないのに」
春岡はその圭一郎の言い方にゾッとしたような表情になった。
「あなたのその執着……、珠月さんは知っているんですか?」
圭一郎は夢を見るような顔で、綺麗に笑った。
「もちろん。一旦は鳥籠に捕らえたからね。籠の中の珠月はあり得ないくらいに綺麗だったよ。君にも見せてあげたかったな」
ああ……そんなことはできないか、そう言って圭一郎はくすくす笑う。
「あなたは……異常です……」
「だとしても、君には関係ない。これは珠月と俺だけに理解できていればいいことだからな」
「春岡室長。どうかしましたか?」
「……分かっているのではないんですか?」
圭一郎は冷たい笑みを返した。
「さあ……何のことでしょうか?」
「仮眠室でのことです。」
「まさか覗いていた?趣味が悪いですよ」
くすくすとからかうように、圭一郎は笑う。
「わざとですよね」
「まさか。可愛い珠月のみだらな姿を他の人に見せたいわけがないでしょう。仮にロックが外れていたとしても俺と珠月は婚約者なのだし、放っておくのがマナーではないんですか?」
「彼女はあんな人ではないのに……」
苦々しそうな顔をする春岡が、圭一郎には気に入らなかった。
「何だか、よく知っているような口ぶりですね」
「よく知っています。彼女のおばあさんの転院の手続きの際、お手伝いをしましたから」
「へえ……。けれど、珠月は覚えている風ではないけれど?」
「そのようですね。あの時はだいぶ大変な思いをされていましたから」
「珠月が知らないのなら一方的にあなたが知っているというだけの関係か。なおさら、あなたに何か言われる筋合いはないな」
圭一郎はふ……と鼻で笑う。
「どこから見ていたんです?」
そんな圭一郎の質問に春岡の頬がカッと赤くなったのが見えた。
「珠月がおねだりしていたところ? それとも俺のを咥えて、自分のを慰めていたところかな? あれは……とってもよかった……」
「あなたは……」
「あれを俺が無理やりしていたように見えた? 触ってってお願いする珠月、ものすごく可愛いんだ」
「あなたが彼女をそんな風にしたんじゃないんですか?」
「そうかな? 珠月にその意思がなかったとでも? そんなの君の方が勝手な理想を珠月に押し付けているだけだろう」
ひどく冷淡に淡々と圭一郎は、春岡に告げる。
「言っておくけれど、珠月は自分から俺と一緒になると決めているんだ。それは自分の意思だよ。その中で俺たちがどんな関係を築こうと君には関係がない」
「無垢な人にあなたがそう仕向けたのではないんですか?」
「そう思うか?」
「思いますね」
「だとしたら何だ? 鳥籠の中が不幸せだと誰が決めた? 一旦はね、逃げたんだよ。鳥は。けれど、自ら籠に戻ったんだ。それは不幸なことか?」
「彼女があなたに対して引け目を感じて苦しんでいたとしてもですか⁉︎」
「そんなもの」
ふ……と鼻で圭一郎は笑う。
「勤めなんかしているからそんなことを感じて苦しむ。それが嫌なら仕事なんてやめればいい」
「あなたって人は……」
「むしろ、俺は珠月には仕事なんて早く辞めてほしいって思っているよ。勤務なんてしているからそんなことを考える。それに君のような輩にも目をつけられるんだ。珠月は可愛いから、ドクターにも患者の中にも彼女に横恋慕するものが出てくるかもしれないしな。非常に不快だよ。誰にも見せたくないのに」
春岡はその圭一郎の言い方にゾッとしたような表情になった。
「あなたのその執着……、珠月さんは知っているんですか?」
圭一郎は夢を見るような顔で、綺麗に笑った。
「もちろん。一旦は鳥籠に捕らえたからね。籠の中の珠月はあり得ないくらいに綺麗だったよ。君にも見せてあげたかったな」
ああ……そんなことはできないか、そう言って圭一郎はくすくす笑う。
「あなたは……異常です……」
「だとしても、君には関係ない。これは珠月と俺だけに理解できていればいいことだからな」
1
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。
汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。
書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
―――――――――――――――――――
ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。
傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。
―――なのに!
その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!?
恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆
「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」
*・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・*
▶Attention
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
家族愛しか向けてくれない初恋の人と同棲します
佐倉響
恋愛
住んでいるアパートが取り壊されることになるが、なかなか次のアパートが見つからない琴子。
何気なく高校まで住んでいた場所に足を運ぶと、初恋の樹にばったりと出会ってしまう。
十年ぶりに会話することになりアパートのことを話すと「私の家に住まないか」と言われる。
未だ妹のように思われていることにチクチクと苦しみつつも、身内が一人もいない上にやつれている樹を放っておけない琴子は同棲することになった。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。
真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。
地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。
ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。
イラスト提供 千里さま
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる