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ダメって燃えるの?
ダメって燃えるの?③
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ビーフストロガノフが美味しかったのは涼真が買ってきた食材が良かったからだし、今朝も残り物で仕上げただけである。
だから結衣としては褒め過ぎの感があり、困ってしまう。
「で、お仕事も出来ると。なるほどねー。涼真兄が警戒して俺のだ俺のだって、なるわけだね」
涼真は表情を変えず、黙々と食事を続けていた。
「楓真はマンションの対応あるだろ。僕と結衣さんは今日、休みなんだ」
「はいはい。食べたら、さっさと帰るよ。そうだ、結衣さん、困ったことがあったら、本当に相談させてくださいね」
「はい!」
そう、結衣が返すと、
「結衣さんを困らすなよ」
と一言、涼真に釘を刺される。
若干、名残惜しげな雰囲気を残しつつ、楓真は自宅マンションに帰って行った。
「全くあいつは……」
涼真が苦笑している。
結衣はある決心を秘めて涼真に向き直った。
「涼真さん、お願いがあります」
「ん? どうしたんですか?」
「秘密のファイルを見せてもらえますか?」
「いいですよ」
「ふぇ?」
そんなにあっさり良いと言われるとは思っていなかったので、結衣は驚く。
どうぞ、とパソコンの前まで連れていかれる。涼真がデスクの前の椅子に座った。
「僕はこのために別途、指紋認証を取付ました」
いや、なんぼほど厳重なのよ…。
パスワードロックを解除し指紋認証し、さらにファイルを開くのにもパスワードを要求される。
相当なセキュリティだ。
すると画面には結衣の笑顔や、寝ているところだったり歩いているところや、こんなところまで撮っていたんだと思うような、食べ物を美味しそうに食べていたりの表情がたくさんあふれていた。
結衣が驚いたのは、どれもとても表情が活き活きしていて楽しそうなことだ。
寝ている時ですら幸せそうに見える。
涼真さんにはこんな風に見えているんだ……。
「可愛いでしょう?」
愛おしげに画面を見る涼真だ。
「そ……うですね。思ったより……」
「結衣さん、ありがとう。認めてくれて嬉しいです。けれど、この趣味については美化するつもりはありません。気持ち悪いとかありえないとか、散々言われてきましたし、事実不快に思われたこともある。結衣さんも不快に思ったなら言って下さって構いません」
いつも、あんなに熱に浮かされたような熱い目をする癖に、今日に限っては覚悟が決まっているのかとても凪いでいる。
「本当は結衣さんも腕の中に閉じ込めてどこにも出さないで誰にも接触させないで、僕だけのものにしたいくらいなんだ。
けどそんなことしたら、あなたはきっとダメになってしまうだろうから、それはしません」
時折、涼真はこんな風になる。
独りでいることに覚悟を決めて、きっと誰にも理解は得られないと距離を置き、独りで立とうとする。
きっと何度も何度もそうしてきたんだろうと思う。
結衣は涼真の頭をきゅっと抱きしめた。
「涼真さんは頭が良くて繊細な人です。だから人が気付かないところに気付いてしまう。五感が鋭いから、声や匂いに反応してしまうんだと思います。不思議かなぁ。私、不快に思ったことないですよ」
「結衣さん……?」
「覚えてます? 涼真さん、私に約款を読むのでも構わないって言ったんです」
くすくす結衣は笑う。
「会話は噛み合わないし。でも会うと、いつもどきどきさせられてしまうんです」
だから結衣としては褒め過ぎの感があり、困ってしまう。
「で、お仕事も出来ると。なるほどねー。涼真兄が警戒して俺のだ俺のだって、なるわけだね」
涼真は表情を変えず、黙々と食事を続けていた。
「楓真はマンションの対応あるだろ。僕と結衣さんは今日、休みなんだ」
「はいはい。食べたら、さっさと帰るよ。そうだ、結衣さん、困ったことがあったら、本当に相談させてくださいね」
「はい!」
そう、結衣が返すと、
「結衣さんを困らすなよ」
と一言、涼真に釘を刺される。
若干、名残惜しげな雰囲気を残しつつ、楓真は自宅マンションに帰って行った。
「全くあいつは……」
涼真が苦笑している。
結衣はある決心を秘めて涼真に向き直った。
「涼真さん、お願いがあります」
「ん? どうしたんですか?」
「秘密のファイルを見せてもらえますか?」
「いいですよ」
「ふぇ?」
そんなにあっさり良いと言われるとは思っていなかったので、結衣は驚く。
どうぞ、とパソコンの前まで連れていかれる。涼真がデスクの前の椅子に座った。
「僕はこのために別途、指紋認証を取付ました」
いや、なんぼほど厳重なのよ…。
パスワードロックを解除し指紋認証し、さらにファイルを開くのにもパスワードを要求される。
相当なセキュリティだ。
すると画面には結衣の笑顔や、寝ているところだったり歩いているところや、こんなところまで撮っていたんだと思うような、食べ物を美味しそうに食べていたりの表情がたくさんあふれていた。
結衣が驚いたのは、どれもとても表情が活き活きしていて楽しそうなことだ。
寝ている時ですら幸せそうに見える。
涼真さんにはこんな風に見えているんだ……。
「可愛いでしょう?」
愛おしげに画面を見る涼真だ。
「そ……うですね。思ったより……」
「結衣さん、ありがとう。認めてくれて嬉しいです。けれど、この趣味については美化するつもりはありません。気持ち悪いとかありえないとか、散々言われてきましたし、事実不快に思われたこともある。結衣さんも不快に思ったなら言って下さって構いません」
いつも、あんなに熱に浮かされたような熱い目をする癖に、今日に限っては覚悟が決まっているのかとても凪いでいる。
「本当は結衣さんも腕の中に閉じ込めてどこにも出さないで誰にも接触させないで、僕だけのものにしたいくらいなんだ。
けどそんなことしたら、あなたはきっとダメになってしまうだろうから、それはしません」
時折、涼真はこんな風になる。
独りでいることに覚悟を決めて、きっと誰にも理解は得られないと距離を置き、独りで立とうとする。
きっと何度も何度もそうしてきたんだろうと思う。
結衣は涼真の頭をきゅっと抱きしめた。
「涼真さんは頭が良くて繊細な人です。だから人が気付かないところに気付いてしまう。五感が鋭いから、声や匂いに反応してしまうんだと思います。不思議かなぁ。私、不快に思ったことないですよ」
「結衣さん……?」
「覚えてます? 涼真さん、私に約款を読むのでも構わないって言ったんです」
くすくす結衣は笑う。
「会話は噛み合わないし。でも会うと、いつもどきどきさせられてしまうんです」
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