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◇おまけの話◇
結衣ちゃんの日常①
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某保険会社本社のフロアである。
「結衣ちゃーんっ!」
研修講師をするため、今日は本社を訪れている結衣だ。
久々に前の職場を訪れると、歓迎した同僚にハグされる。
「よしよし。お久しぶり。これ、差し入れ」
途中駅の有名洋菓子店で買った、焼き菓子詰め合わせを同僚に渡す。
後輩も同僚も大喜びだ。
「今日、研修だっけ?」
「うん! 今日は研修講師なのよ」
「だからワンピにジャケット、ヒールなんだー。高槻先生! カッコイイ!」
「ふふふー」
その場で結衣は、くるっと回って見せた。
少しタイトなラインのワンピースとジャケットと高めのヒールはかなり大人っぽい雰囲気だと自分でも思う。
「えー、講義見たいですぅ」
「何を講義すんの?」
「まあフツーに事故受けの流れとか、センターの現状とか……」
社内の色んな環境を理解してもらうことはスムーズな仕事に繋がると結衣は思っているので、このような講師も引き受けたのだ。
「興味あるなあ」
すると課長が「支店担当の数人なら、高槻の講義の間だけなら抜けていいけど」と言ったのである。
数人がきゃーと喜んだ。
「結衣ちゃん、どこでやるの?」
「あ、上の会議室大」
本社の大会議室はかなり大きな部屋で階段状の会議室になっていて、たくさんの人数を収容出来るようになっている。
そのため大規模な会議や研修でしか使われない。
結衣も今回は全国規模で営業が集まる研修、と聞いている。
古巣の端の方を借りて、結衣は資料を整理し、会議室に入った。
研修の司会者から紹介されて、結衣が中に足を踏み入れた瞬間、振り返って帰りたくなったのである。
てか、なんで?
1番前のセンターの席を陣取っているのは、もちろんのこと蓮根涼真、その人だった。
相変わらず見て分かるほどの高級スーツに身を包み、優雅に腕を組んでにこにこしている。
その迫力に周りの席が空いてしまっているのだが、そんなことにはお構いなしだ。
た、確かに、代理店かも知んないけど、どこで!?
一体どこでその情報を入手して、しかもその席に……。
しかもアナタ、忙しいでしょ⁉︎
結衣は一瞬、目眩を起こしそうになったが、そんなことで倒れている場合ではない。
何とか踏みとどまって、笑顔で演壇に向かう。
「皆さん、お世話になっています。コールセンターでスーパーバイザーをしております、高槻結衣と申します」
マイクに向かって、挨拶をする。
「結衣ちゃーんっ!」
そう声を上げたのは多分知り合いの営業さんだろう。
会場からは、あははと笑い声が漏れ和やかな雰囲気に……かと思ったら、
その瞬間、最前列からキンっとしたオーラを感じて結衣は泣きそうになる。
なんなの!?
なんなの、この状況っっ!!
結衣は、時折最前列の恋人から壮絶な流し目を送られながら、鉄の意思で研修を進めた。
動揺しないよう、訓練してきたつもりだが。
これで動揺しない人がいたら、むしろ教えて欲しいよっ!
スライドとレジュメを駆使して、何とか研修室を後にした結衣だ。
「高槻さん」
と、結衣を後ろから呼ぶその声は……。普段聞いているその声で結衣が間違えるはずもない。
「蓮根先生」
なんでもないように、結衣は笑顔を浮かべる。
平常心、平常心……。
「少し質問なんですけど、いいですか?」
「はい」
結衣はそのまま腕を取られて、階段に連れて行かれた。
ビルの高層階なだけにほとんど使用されていない階段だ。
階段を少し上がった踊り場で壁に身体を押し付けられ、そのまま唇を重ねられた。
「ん……っ、涼真、さん……だめ……」
「こんなに興奮するシチュエーションあります?」
「結衣ちゃーんっ!」
研修講師をするため、今日は本社を訪れている結衣だ。
久々に前の職場を訪れると、歓迎した同僚にハグされる。
「よしよし。お久しぶり。これ、差し入れ」
途中駅の有名洋菓子店で買った、焼き菓子詰め合わせを同僚に渡す。
後輩も同僚も大喜びだ。
「今日、研修だっけ?」
「うん! 今日は研修講師なのよ」
「だからワンピにジャケット、ヒールなんだー。高槻先生! カッコイイ!」
「ふふふー」
その場で結衣は、くるっと回って見せた。
少しタイトなラインのワンピースとジャケットと高めのヒールはかなり大人っぽい雰囲気だと自分でも思う。
「えー、講義見たいですぅ」
「何を講義すんの?」
「まあフツーに事故受けの流れとか、センターの現状とか……」
社内の色んな環境を理解してもらうことはスムーズな仕事に繋がると結衣は思っているので、このような講師も引き受けたのだ。
「興味あるなあ」
すると課長が「支店担当の数人なら、高槻の講義の間だけなら抜けていいけど」と言ったのである。
数人がきゃーと喜んだ。
「結衣ちゃん、どこでやるの?」
「あ、上の会議室大」
本社の大会議室はかなり大きな部屋で階段状の会議室になっていて、たくさんの人数を収容出来るようになっている。
そのため大規模な会議や研修でしか使われない。
結衣も今回は全国規模で営業が集まる研修、と聞いている。
古巣の端の方を借りて、結衣は資料を整理し、会議室に入った。
研修の司会者から紹介されて、結衣が中に足を踏み入れた瞬間、振り返って帰りたくなったのである。
てか、なんで?
1番前のセンターの席を陣取っているのは、もちろんのこと蓮根涼真、その人だった。
相変わらず見て分かるほどの高級スーツに身を包み、優雅に腕を組んでにこにこしている。
その迫力に周りの席が空いてしまっているのだが、そんなことにはお構いなしだ。
た、確かに、代理店かも知んないけど、どこで!?
一体どこでその情報を入手して、しかもその席に……。
しかもアナタ、忙しいでしょ⁉︎
結衣は一瞬、目眩を起こしそうになったが、そんなことで倒れている場合ではない。
何とか踏みとどまって、笑顔で演壇に向かう。
「皆さん、お世話になっています。コールセンターでスーパーバイザーをしております、高槻結衣と申します」
マイクに向かって、挨拶をする。
「結衣ちゃーんっ!」
そう声を上げたのは多分知り合いの営業さんだろう。
会場からは、あははと笑い声が漏れ和やかな雰囲気に……かと思ったら、
その瞬間、最前列からキンっとしたオーラを感じて結衣は泣きそうになる。
なんなの!?
なんなの、この状況っっ!!
結衣は、時折最前列の恋人から壮絶な流し目を送られながら、鉄の意思で研修を進めた。
動揺しないよう、訓練してきたつもりだが。
これで動揺しない人がいたら、むしろ教えて欲しいよっ!
スライドとレジュメを駆使して、何とか研修室を後にした結衣だ。
「高槻さん」
と、結衣を後ろから呼ぶその声は……。普段聞いているその声で結衣が間違えるはずもない。
「蓮根先生」
なんでもないように、結衣は笑顔を浮かべる。
平常心、平常心……。
「少し質問なんですけど、いいですか?」
「はい」
結衣はそのまま腕を取られて、階段に連れて行かれた。
ビルの高層階なだけにほとんど使用されていない階段だ。
階段を少し上がった踊り場で壁に身体を押し付けられ、そのまま唇を重ねられた。
「ん……っ、涼真、さん……だめ……」
「こんなに興奮するシチュエーションあります?」
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