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ちょっとだけ番外:その2
ちょっとだけ番外:その2①
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「はぅあっ!」
気をつけてと言われたにも関わらず、足を滑らせた部下を佐野は胸に抱きとめる。
少し前に配属された部下はしっかり者で明るくてハキハキしていて可愛いけれど、時折抜けている。
いつも一生懸命でスタッフに対しては落ち着いた対応なので、見ていて安心感もある。
積極的にフロアに出て、目配りをするところは好感の持てるところだ。
時折、抜けているくらいはご愛嬌だろうと、佐野は思っている。
「び、びっくりした」
「段差あるって言われたろ」
その高槻の転倒しそうになった身体を抱き止めると、腕の中から高槻が見上げてきて、特別な思いはないけれど可愛いなとは思う。
「佐野さん、すみません」
「気をつけろよ」
そう言うと、
「はい……」
と素直な返事だ。
うん、よし。
その時、佐野は刺すような視線を感じて顔を上げた。
目の前にいたのはひどく整った顔立ちの男で、見た感じとても仕立ての良さげなスーツを着ている。
そのくせ青ざめた顔色で。
「……結衣さん?」
あ、高槻の知り合いか?
「え、涼真さん?」
「大丈夫ですか?」
その男はさり気なく、佐野の腕の中の高槻を奪っていった。
……そういうことか?
後ろから来た女子がきゃーと黄色い声を上げている。
俺とさほど歳は変わらないと思うんだが。
いかにもエリートっぽいスマートな雰囲気の持ち主で、同性でも、おっと思うような顔立ちなのだ。確かに女子がきゃーきゃー騒ぐのも納得だ。
しかし、当の高槻はぶっ倒れそうな顔をしているが、大丈夫か?
「高槻、彼氏? 超絶いい男だな。どうも、高槻の上司の佐野といいます」
とりあえず、この場が収まるよう、佐野は高槻の彼、と思しきその男性に挨拶をする。
相手も場に慣れているようで、初対面向けの柔らかい笑顔を向けてきた。
「初めまして。蓮根と申します」
端的に名前のみ。
わざとだろうな、これは。
確かに現状、佐野にもその場にいる他の社員達にも情報を与える必要はない。
けれど全く名乗りもしないのも無礼だし。
そのぎりぎりのところでの、笑顔と名乗りの組み合わせ。
なかなかこれは……。
佐野がそう思うと、蓮根は緩く口元を引き上げた。
「こんばんは」
と蓮根は女子にも笑顔を向け、結衣に向き直る。
女子がざわついていた。
計算され尽くした立ち居振る舞い。
しかも相手には計算していることを見透かされないように振舞っている。
佐野はどちらかというと、人をよく見て深読みするタイプなのだが、それが外れたことはないと自負している。
だから、恐らく今の分析も間違いはないはずだ。
そして、もう一つふと、思ったこと。
高槻、コレは大変なお相手だな……。
その高槻は蓮根に心配気な、憂いを帯びた表情を向けてられていた。
「車から降りたところで転びそうになっているのが見えたので。大丈夫ですか? 結衣さん」
「だ、大丈夫です」
ホントかよ。出待ちじゃねーのか……ん?車?
「え? 車ってあれ?」
勤務先とは関係なく、佐野は車がそこそこ好きだ。
自分でもそれなりにこだわった車を所有している。
気をつけてと言われたにも関わらず、足を滑らせた部下を佐野は胸に抱きとめる。
少し前に配属された部下はしっかり者で明るくてハキハキしていて可愛いけれど、時折抜けている。
いつも一生懸命でスタッフに対しては落ち着いた対応なので、見ていて安心感もある。
積極的にフロアに出て、目配りをするところは好感の持てるところだ。
時折、抜けているくらいはご愛嬌だろうと、佐野は思っている。
「び、びっくりした」
「段差あるって言われたろ」
その高槻の転倒しそうになった身体を抱き止めると、腕の中から高槻が見上げてきて、特別な思いはないけれど可愛いなとは思う。
「佐野さん、すみません」
「気をつけろよ」
そう言うと、
「はい……」
と素直な返事だ。
うん、よし。
その時、佐野は刺すような視線を感じて顔を上げた。
目の前にいたのはひどく整った顔立ちの男で、見た感じとても仕立ての良さげなスーツを着ている。
そのくせ青ざめた顔色で。
「……結衣さん?」
あ、高槻の知り合いか?
「え、涼真さん?」
「大丈夫ですか?」
その男はさり気なく、佐野の腕の中の高槻を奪っていった。
……そういうことか?
後ろから来た女子がきゃーと黄色い声を上げている。
俺とさほど歳は変わらないと思うんだが。
いかにもエリートっぽいスマートな雰囲気の持ち主で、同性でも、おっと思うような顔立ちなのだ。確かに女子がきゃーきゃー騒ぐのも納得だ。
しかし、当の高槻はぶっ倒れそうな顔をしているが、大丈夫か?
「高槻、彼氏? 超絶いい男だな。どうも、高槻の上司の佐野といいます」
とりあえず、この場が収まるよう、佐野は高槻の彼、と思しきその男性に挨拶をする。
相手も場に慣れているようで、初対面向けの柔らかい笑顔を向けてきた。
「初めまして。蓮根と申します」
端的に名前のみ。
わざとだろうな、これは。
確かに現状、佐野にもその場にいる他の社員達にも情報を与える必要はない。
けれど全く名乗りもしないのも無礼だし。
そのぎりぎりのところでの、笑顔と名乗りの組み合わせ。
なかなかこれは……。
佐野がそう思うと、蓮根は緩く口元を引き上げた。
「こんばんは」
と蓮根は女子にも笑顔を向け、結衣に向き直る。
女子がざわついていた。
計算され尽くした立ち居振る舞い。
しかも相手には計算していることを見透かされないように振舞っている。
佐野はどちらかというと、人をよく見て深読みするタイプなのだが、それが外れたことはないと自負している。
だから、恐らく今の分析も間違いはないはずだ。
そして、もう一つふと、思ったこと。
高槻、コレは大変なお相手だな……。
その高槻は蓮根に心配気な、憂いを帯びた表情を向けてられていた。
「車から降りたところで転びそうになっているのが見えたので。大丈夫ですか? 結衣さん」
「だ、大丈夫です」
ホントかよ。出待ちじゃねーのか……ん?車?
「え? 車ってあれ?」
勤務先とは関係なく、佐野は車がそこそこ好きだ。
自分でもそれなりにこだわった車を所有している。
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