52 / 70
やると言ったらやる
やると言ったらやる①
しおりを挟む
そして迎えた研修最終日。
結衣が研修室に入ると、髪をスッキリと切った藤川が緊張した面持ちで座っていた。
「おはよーございまーす。あ、藤川さん、髪切ったんですね。すごく似合ってる」
「ホントですか?」
照れた様子の藤川だ。
研修生のみんなは、口々にでしょー!と言っていた。
それを聞いて、藤川はさらに照れている。
一人の離脱者も出さずに研修を終われた結衣は、心から安心した。
今日はセンターの上席や、今回の研修生を含め、打ち上げが行われる。
研修期間中は土日休みではあったものの、レポートの作成や研修の準備、報告書の作成などがある。
そのため結衣と涼真は相変わらず、会うことが出来なかったのだが、研修が終わったら会おうと約束をしていた。
それも結衣は励みにして、頑張っていたのだ。
打ち上げに入る前に研修が無事終わったことと、今日は打ち上げがあることを、涼真に連絡すると、終わった頃に迎えに行きますと返事が帰ってきた。
打ち上げはこじんまりしたイタリアンの店を貸し切って行われた。
この打ち上げには、顔合わせの意味もあるので、リーダークラスも参加するし、コントローラーも参加する。
和気あいあいと話をしつつ、今後仕事をスムーズにするためだ。
部署としてはストレスも多い部署なので、せめて社内では言いたいことを言ったり、お互い愚痴も言い合えるようにしましょうねというのが、センター長の方針なのだ。
会の適度なところでセンター長が帰り、続いてコントローラーの一部と、リーダークラスの一部が帰る。
結衣は今回の研修講師なので、今日は佐野と結衣は居残り組だ。
「結衣先生はー、結婚とかしてないんですか?」
お酒が進んできて、聞かれる内容もだんだんディープになってくる。
「してないよー」
「でも、彼氏はいるでしょ?」
(いますね。変な人ですけど……)
うふふ、と笑顔だけを返す結衣だ。
いるー!その顔はいる、いるー!しかも絶対イケメンだー!とか皆が騒ぎ出す。
「結衣先生、写メとかないんですか!?」
いえ、ホントそこは……今ちょっと触れたくないと言うか……。
「あははー……」
もう、笑うしかない結衣だ。
「結衣先生いつの間に……俺を置いていくつもりなのっ!?」
佐野がふざけると、皆が笑って何となく話が逸れた。
「佐野さんはー?」
「俺、独身。いい人いたら、紹介してよ」
佐野は自分を指さしてにこにこしている。
「どーゆー人が好みなんですかぁ?」
「えー?顔の可愛い巨乳の子かなー」
佐野さん、さいてー!とか言ってゲラゲラ笑われている。
結衣から上手く話が逸れるようにもっていってくれたんだろうな……。
いい人だなーと思う。
「藤川くんはー?」
「俺は……付き合ってる人はいないです。好きな人はいますけど」
「なーんかさー、イケメンなっちゃったもんねぇ。いい恋してんだねー」
そう言われて、藤川は照れている。
今までは照れる様子も素直に見せなかったりしたのだが、本当の藤川はとてもシャイなようだ。
その様子も可愛いっ!と散々弄られて、最初の頃の馴染めなかった様子が嘘のようで、結衣は微笑ましく感じた。
「高槻」
佐野が、結衣を呼ぶ。
「はい」
結衣は返事をして、佐野の横に座った。
「あいつは大丈夫だって。あとは俺が面倒見るし」
佐野がそう言ってくれるのなら、安心だ。
チーム分けの発表は、まだされていないが、藤川は佐野の下に付く、ということなのだろう。
「はい。よろしくお願いします」
結衣は、ぺこりと頭を下げる。
「先生というよりお母さん化してるぞ、お前」
「莉奈ちゃんに自分の子は可愛いって言われましたけど、その気持ち分かります」
結衣は、真顔で答えたのだった。
結衣が研修室に入ると、髪をスッキリと切った藤川が緊張した面持ちで座っていた。
「おはよーございまーす。あ、藤川さん、髪切ったんですね。すごく似合ってる」
「ホントですか?」
照れた様子の藤川だ。
研修生のみんなは、口々にでしょー!と言っていた。
それを聞いて、藤川はさらに照れている。
一人の離脱者も出さずに研修を終われた結衣は、心から安心した。
今日はセンターの上席や、今回の研修生を含め、打ち上げが行われる。
研修期間中は土日休みではあったものの、レポートの作成や研修の準備、報告書の作成などがある。
そのため結衣と涼真は相変わらず、会うことが出来なかったのだが、研修が終わったら会おうと約束をしていた。
それも結衣は励みにして、頑張っていたのだ。
打ち上げに入る前に研修が無事終わったことと、今日は打ち上げがあることを、涼真に連絡すると、終わった頃に迎えに行きますと返事が帰ってきた。
打ち上げはこじんまりしたイタリアンの店を貸し切って行われた。
この打ち上げには、顔合わせの意味もあるので、リーダークラスも参加するし、コントローラーも参加する。
和気あいあいと話をしつつ、今後仕事をスムーズにするためだ。
部署としてはストレスも多い部署なので、せめて社内では言いたいことを言ったり、お互い愚痴も言い合えるようにしましょうねというのが、センター長の方針なのだ。
会の適度なところでセンター長が帰り、続いてコントローラーの一部と、リーダークラスの一部が帰る。
結衣は今回の研修講師なので、今日は佐野と結衣は居残り組だ。
「結衣先生はー、結婚とかしてないんですか?」
お酒が進んできて、聞かれる内容もだんだんディープになってくる。
「してないよー」
「でも、彼氏はいるでしょ?」
(いますね。変な人ですけど……)
うふふ、と笑顔だけを返す結衣だ。
いるー!その顔はいる、いるー!しかも絶対イケメンだー!とか皆が騒ぎ出す。
「結衣先生、写メとかないんですか!?」
いえ、ホントそこは……今ちょっと触れたくないと言うか……。
「あははー……」
もう、笑うしかない結衣だ。
「結衣先生いつの間に……俺を置いていくつもりなのっ!?」
佐野がふざけると、皆が笑って何となく話が逸れた。
「佐野さんはー?」
「俺、独身。いい人いたら、紹介してよ」
佐野は自分を指さしてにこにこしている。
「どーゆー人が好みなんですかぁ?」
「えー?顔の可愛い巨乳の子かなー」
佐野さん、さいてー!とか言ってゲラゲラ笑われている。
結衣から上手く話が逸れるようにもっていってくれたんだろうな……。
いい人だなーと思う。
「藤川くんはー?」
「俺は……付き合ってる人はいないです。好きな人はいますけど」
「なーんかさー、イケメンなっちゃったもんねぇ。いい恋してんだねー」
そう言われて、藤川は照れている。
今までは照れる様子も素直に見せなかったりしたのだが、本当の藤川はとてもシャイなようだ。
その様子も可愛いっ!と散々弄られて、最初の頃の馴染めなかった様子が嘘のようで、結衣は微笑ましく感じた。
「高槻」
佐野が、結衣を呼ぶ。
「はい」
結衣は返事をして、佐野の横に座った。
「あいつは大丈夫だって。あとは俺が面倒見るし」
佐野がそう言ってくれるのなら、安心だ。
チーム分けの発表は、まだされていないが、藤川は佐野の下に付く、ということなのだろう。
「はい。よろしくお願いします」
結衣は、ぺこりと頭を下げる。
「先生というよりお母さん化してるぞ、お前」
「莉奈ちゃんに自分の子は可愛いって言われましたけど、その気持ち分かります」
結衣は、真顔で答えたのだった。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】

Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる