君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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正しい電話の使い方

正しい電話の使い方②

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「仕方ないじゃないですか。お互いお仕事だし」
『結衣さんは僕に会いたくならないんですか? ぎゅって、して欲しくない?』
「それは……」

『結衣さん、僕にぎゅうってされるの、好きでしょう? この前も僕が後ろから結衣さんを抱きしめて、一緒に映画観ましたよね? あの時の結衣さんすごく可愛いかった』
「う……」

言葉に詰まったのは、確かに最初の数十分は映画を観ていたのだ。
けれど途中から後ろから結衣を抱きしめていた涼真が、耳にキスしたりうなじを舐めたりしてくるから、それどころじゃなくなってしまったから。

ストーリーなんて全く覚えていない。
エンディングがどうなったのか。
気付いたら、エンドロールが流れていたし。

『思い出した? あの時もダメって言ってましたよね。けど、耳が赤くなってて、身体も熱くなってた。結衣さんはどこもかしこも舐めると甘い』

「や……」
『ほら、すぐそんな声になるでしょう』
電話なのに、耳元で囁かれているようだ。

『結衣さんも僕のこと、思ったりします? 僕はいつも思ってますよ。だって、オフィスでも目の前に結衣さんがすごく乱れた時の椅子があって、家に帰っても、あの時あんなに甘い声を上げていたって思ってしまうし。僕の膝に乗って足を開いて、恥ずかしそうにしていた結衣さん……すごく可愛かった。あなたのいやっていう声、もっとって言っているみたいですごくいいんですよ』

甘くただひたすらにそんなことを耳元で流し込むように言われ続けるのに、結衣はさすがに止めた。

「いや……ダメです。涼真さん……」
涼真がふっ……と、笑ったせいで受話器から、息の漏れる音がして結衣はぞくんっとする。

今、息かかった?

いやいや、そんな訳はない。
そんな機能は電話機にはない。

けれどまるで、耳元に息を吹きかけられたような。

『……は、結衣さん』
その囁きと息遣いと熱の籠った声に、結衣は思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。

「んっ……」
『結衣さん、今おうちのどこにいます? ベッド?』

「はい。ベッドです」
『風邪引くといけない。布団に入って下さい。横になって?』

「え? なんで……」
『リラックスして?』

「大丈夫です」
『結衣さん、いいから横に。目を閉じて? さっき想像したでしょう?』

このままだとダメだ。
そう思うのに、その声に逆らえなくて。
「横になりました……」

『目を閉じて、僕の声を聞いて?』
心臓のどくんどくんと言う音が耳元にまで、響いている気がする。

こんなことは、したことがない。

涼真がなにをしたいのか、なにをさせようとしているのか、何となくは分かるけれど怖くて恥ずかしいのに、逆らえない。

「涼真さんっ、私、や……」
『大丈夫。僕がいます。目を閉じてみて。声だけ聞いて』

「…っ」
『……は……だから、その息遣い、電話からでも漏れてくるあなたの声、我慢出来なくなりそうだ。ねぇ? 結衣さん僕もすごく興奮してる。だから、ね?』
「ん……」

『一緒にいる時のこと、思い出して? 僕が背中から結衣さんを抱きしめているところ。僕はいつも僕の胸に結衣さんの温かさを感じる。時に熱さも……。すっぽり僕の腕の中に収まってしまって、髪からはシャンプーの香りがする。うなじにキスすると、時々結衣さんの香水の匂いがして、それにもドキドキするんですよ』

優しい声がその時のことを思わせるように、言葉を紡いでいく。
目を閉じたら確かに温もりはないけれど、涼真の声で存在を感じる。

『それから、結衣さんの身体に手を這わせる。指先でもあなたを感じたいから。柔らかい皮膚の感触も。僕はいつでも思い出せます』
結衣だって触れられた時の感触が、まざまざと思い出されてしまうのだ。

聞いているだけで、鼓動はどんどん高くなる。
体温も上がって、身体の奥が熱い。

『結衣さん、最初は下腹部。結衣さんは痩せたいって言うけど、充分ですよ。細いウエストに柔らかいお腹、あばらをなぞって胸の下に触れますね。結衣さん、自分で触れてみて? 自分の手を僕の手だと思って?』
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