48 / 70
研修講師は未経験
研修講師は未経験④
しおりを挟む
このセンターでは、5人ほどのリーダーの上に一人のコントローラーが付く。
とは言えリーダーはシフトでもあるので、全員が毎日顔を合わせる訳ではない。
佐野は夜勤を中心に見ている男性社員で、厳しいけれど裏表はない人だ。
普段はふざけてばかりの明るい人だが、一旦インカムを付けると、その低くてよく響く声で、動揺しているお客様を落ち着かせる天才だとも言われていた。
180センチを超える長身と体格が良いので、何か運動でもやっていたのかと思うが、本人曰くにスポーツとはほとんどご縁がないと言っていた。
ただ体調を整えるために、身体は鍛えてはいるらしい。
「高槻! お疲れ! ん? 誰かな?」
「佐野さんお疲れ様です。今、研修中の研修生さんです。夜勤の契約社員さんになる予定なんですよ」
「おー! ようこそ! 今日の夜勤の当番の佐野です」
「藤川です」
藤川は緊張した様子ながらも、一生懸命顔を上げ挨拶している。
結衣はその様子を見ていて、ついにこにこしてしまった。
「見学?」
「はい。少し見せてください。比較的落ち着いてるみたいですし」
「まあな。今のところは」
そう言って佐野はセンターの中を振り返った。
「男性……多いですね」
センター全体を見渡して、藤川がそう感想を言う。
「うん。夜勤は7割8割男性かな。手、空いてるから俺が案内してやるよ。大丈夫だよ、取って食わねーから」
来なと佐野は藤川を連れていこうとする。
佐野は結衣の上席になるので預けても問題はない。
が、一瞬心細そうな顔で、藤川は結衣をちらっと見た。
そんな子犬のような目で……。
「15分くらいだよ。それくらいは結衣先生がいなくても、大丈夫だろ? ほら、高槻はメールチェックとかしてこい」
「お願いしまーす」
「藤川くん? 下の名前は?」
そんな風に聞きながら、佐野は藤川を案内し始めるそうして、結衣に大丈夫と言いたげに笑顔を向けた。
結衣も頭を下げる。
佐野らしい気づかいで、フリーになった結衣は、15分で今日の報告書の作成を終える。
リーディングルームには残業中の莉奈もいた。
「ご相談? どうだった?」
「佐野さんが案内してくれてる」
結衣のその言葉を聞いて、莉奈はリーディングルームの自分の席から立ち上がりガラス張りの外を見る。
「じゃあ、大丈夫かな。お、可愛い系男子だ」
藤川は佐野と手隙のセンター員と話をしていた。佐野は時間の空いている時は、センター員のサポートなどもしているから、その対応もしながら藤川に説明をしているようだ。
離れたところから見ていると、藤川は熱心に佐野の話を聞いているように見える。
そうこうしている内、一回りした佐野がリーディングルームをひょいっと覗いた。
「高槻どう? 終わりそう?」
「あと5分、10分です」
「了解。そうしたら屋上を案内してくるから。10分で戻る。莉奈、10分頼めるか?」
「はい! お任せください」
会社の最上階は社員用の休憩室だ。
最上階の3分の2は食堂兼用の休憩室で、残りは屋上庭園なのだ。
屋上庭園の一部は喫煙所が準備されている。
休憩室とは言うものの、中にコンビニがあるし食堂がないので、その施設がない分かなりの広さがある。
藤川もお昼休憩は取っているとは思うが、男性なりの別の視点での案内が、佐野ならば出来るかもしれない。
報告書を仕上げて、結衣は屋上に向かった。
屋上庭園で、2人でコーヒーを飲んでいるのが見える。
藤川の表情が先程よりも落ち着いて見えて、結衣は安心した。
とは言えリーダーはシフトでもあるので、全員が毎日顔を合わせる訳ではない。
佐野は夜勤を中心に見ている男性社員で、厳しいけれど裏表はない人だ。
普段はふざけてばかりの明るい人だが、一旦インカムを付けると、その低くてよく響く声で、動揺しているお客様を落ち着かせる天才だとも言われていた。
180センチを超える長身と体格が良いので、何か運動でもやっていたのかと思うが、本人曰くにスポーツとはほとんどご縁がないと言っていた。
ただ体調を整えるために、身体は鍛えてはいるらしい。
「高槻! お疲れ! ん? 誰かな?」
「佐野さんお疲れ様です。今、研修中の研修生さんです。夜勤の契約社員さんになる予定なんですよ」
「おー! ようこそ! 今日の夜勤の当番の佐野です」
「藤川です」
藤川は緊張した様子ながらも、一生懸命顔を上げ挨拶している。
結衣はその様子を見ていて、ついにこにこしてしまった。
「見学?」
「はい。少し見せてください。比較的落ち着いてるみたいですし」
「まあな。今のところは」
そう言って佐野はセンターの中を振り返った。
「男性……多いですね」
センター全体を見渡して、藤川がそう感想を言う。
「うん。夜勤は7割8割男性かな。手、空いてるから俺が案内してやるよ。大丈夫だよ、取って食わねーから」
来なと佐野は藤川を連れていこうとする。
佐野は結衣の上席になるので預けても問題はない。
が、一瞬心細そうな顔で、藤川は結衣をちらっと見た。
そんな子犬のような目で……。
「15分くらいだよ。それくらいは結衣先生がいなくても、大丈夫だろ? ほら、高槻はメールチェックとかしてこい」
「お願いしまーす」
「藤川くん? 下の名前は?」
そんな風に聞きながら、佐野は藤川を案内し始めるそうして、結衣に大丈夫と言いたげに笑顔を向けた。
結衣も頭を下げる。
佐野らしい気づかいで、フリーになった結衣は、15分で今日の報告書の作成を終える。
リーディングルームには残業中の莉奈もいた。
「ご相談? どうだった?」
「佐野さんが案内してくれてる」
結衣のその言葉を聞いて、莉奈はリーディングルームの自分の席から立ち上がりガラス張りの外を見る。
「じゃあ、大丈夫かな。お、可愛い系男子だ」
藤川は佐野と手隙のセンター員と話をしていた。佐野は時間の空いている時は、センター員のサポートなどもしているから、その対応もしながら藤川に説明をしているようだ。
離れたところから見ていると、藤川は熱心に佐野の話を聞いているように見える。
そうこうしている内、一回りした佐野がリーディングルームをひょいっと覗いた。
「高槻どう? 終わりそう?」
「あと5分、10分です」
「了解。そうしたら屋上を案内してくるから。10分で戻る。莉奈、10分頼めるか?」
「はい! お任せください」
会社の最上階は社員用の休憩室だ。
最上階の3分の2は食堂兼用の休憩室で、残りは屋上庭園なのだ。
屋上庭園の一部は喫煙所が準備されている。
休憩室とは言うものの、中にコンビニがあるし食堂がないので、その施設がない分かなりの広さがある。
藤川もお昼休憩は取っているとは思うが、男性なりの別の視点での案内が、佐野ならば出来るかもしれない。
報告書を仕上げて、結衣は屋上に向かった。
屋上庭園で、2人でコーヒーを飲んでいるのが見える。
藤川の表情が先程よりも落ち着いて見えて、結衣は安心した。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる