45 / 70
研修講師は未経験
研修講師は未経験①
しおりを挟む
「新人研修ですか?」
「うん。新人研修もリーダーの役目だし、そろそろ慣れてきたでしょう?」
結衣が日勤で出勤したところ、センター長に呼び出され言われたのがそのセリフだ。
確かに研修講師も今後やってもらうからとは聞いていた。
それ、今なのかぁ……。
センター長に資料をもらい、席に座っていつでも対応できるようにしながら、結衣は資料に目を通す。
ん……ここの言い回しは、専門的になりすぎるとわかりにくいかな。
書き込みをしたり、ラインを引いたりしながらチェックする。
驚きはしても、いざやると決めたら真っ直ぐに向き合う結衣なのだ。
「結衣先生!」
「にゃー?」
「何、その返事ー」
「ダレが結衣先生なのよ」
「そうやって呼ばれるし、生徒は可愛いんだよー。リーダーとは別に悩みとか相談されたりするんだから」
同僚の名塚莉奈だった。
名塚莉奈が前回の講師で、今回は結衣なのだ。
研修講師も時間を取られるので、持ち回りで実施することになっている。
支払査定の部署でも結衣はOJTを行ってはいたけれど、数人を同時に教える講師は初めてだ。
センター長である野坂からは、今回はさほど人数は多くないとは聞いてはいるが、それでも緊張する。
会社から提供されている資料を人数分用意し、結衣は研修室へと向かった。
今回は8名の研修を結衣が行うのだ。
多い時で20名程と聞いているので、確かに少ないが、結衣としては自分で把握出来るギリギリの人数のように思った。
研修室のドアを開け、結衣が中に入ると、研修を受ける側も緊張している様子がひしひしと伝わってくる。
コールセンターには、経験者、未経験者、年齢も幅広く入ってくるのだ。
今回も下は24歳の深夜勤専門の未経験の契約社員で、上は40代の経験者のパートさんだ。
この幅広い生徒さん達を2週間で、当社のコール対応出来るまで育てるのが結衣の仕事である。
「では、資料をお配りしますね。いちばん上に今回の研修の日程と資料の内訳がありますので揃っているかご確認下さい」
今日は念の為にと研修室の後ろには、センター長の野坂が控えてくれている。
野坂はこの道10年以上の大ベテランで、この会社の各コールセンターを転々としながら現在の位置にいるという人だ。
コールセンターが大好きでお客様対応が好きで、これで食べていくと決意した時に、アナウンサーの専門学校まで通ったという経歴の持ち主で、結衣も今までの上司の中で指折りの尊敬できる上司である。
立ち姿も声も美しいその人は結衣に笑いかけて、サムアップしそっと部屋を出ていった。
良かった、まずは合格点らしい。
結衣は資料に沿って、研修を進める。
比較的頭の冴えている午前中を座学に充てていて、午後は発声や機器に慣れてもらうよう、実際の機械と同じものを使用して研修する。
「皆様、午前中の座学は一日終わったらペーパーテストを実施しますので、こちらも真面目に受けて下さいね」
研修生からは、ええーっという声が上がる。
「大丈夫、大丈夫。真面目に受けてたらチョロいから」
結衣は手をひらひらさせて笑って見せた。
「高槻さん、見た目に反して厳しいですぅ」
「みんな、やってるので頑張りましょうね。ちなみに合格点に達しない方はお残りです」
結衣がにっこり笑うと、オニだぁぁ……と声が上がる。
ふふふー!楽しいなぁ。
「うん。新人研修もリーダーの役目だし、そろそろ慣れてきたでしょう?」
結衣が日勤で出勤したところ、センター長に呼び出され言われたのがそのセリフだ。
確かに研修講師も今後やってもらうからとは聞いていた。
それ、今なのかぁ……。
センター長に資料をもらい、席に座っていつでも対応できるようにしながら、結衣は資料に目を通す。
ん……ここの言い回しは、専門的になりすぎるとわかりにくいかな。
書き込みをしたり、ラインを引いたりしながらチェックする。
驚きはしても、いざやると決めたら真っ直ぐに向き合う結衣なのだ。
「結衣先生!」
「にゃー?」
「何、その返事ー」
「ダレが結衣先生なのよ」
「そうやって呼ばれるし、生徒は可愛いんだよー。リーダーとは別に悩みとか相談されたりするんだから」
同僚の名塚莉奈だった。
名塚莉奈が前回の講師で、今回は結衣なのだ。
研修講師も時間を取られるので、持ち回りで実施することになっている。
支払査定の部署でも結衣はOJTを行ってはいたけれど、数人を同時に教える講師は初めてだ。
センター長である野坂からは、今回はさほど人数は多くないとは聞いてはいるが、それでも緊張する。
会社から提供されている資料を人数分用意し、結衣は研修室へと向かった。
今回は8名の研修を結衣が行うのだ。
多い時で20名程と聞いているので、確かに少ないが、結衣としては自分で把握出来るギリギリの人数のように思った。
研修室のドアを開け、結衣が中に入ると、研修を受ける側も緊張している様子がひしひしと伝わってくる。
コールセンターには、経験者、未経験者、年齢も幅広く入ってくるのだ。
今回も下は24歳の深夜勤専門の未経験の契約社員で、上は40代の経験者のパートさんだ。
この幅広い生徒さん達を2週間で、当社のコール対応出来るまで育てるのが結衣の仕事である。
「では、資料をお配りしますね。いちばん上に今回の研修の日程と資料の内訳がありますので揃っているかご確認下さい」
今日は念の為にと研修室の後ろには、センター長の野坂が控えてくれている。
野坂はこの道10年以上の大ベテランで、この会社の各コールセンターを転々としながら現在の位置にいるという人だ。
コールセンターが大好きでお客様対応が好きで、これで食べていくと決意した時に、アナウンサーの専門学校まで通ったという経歴の持ち主で、結衣も今までの上司の中で指折りの尊敬できる上司である。
立ち姿も声も美しいその人は結衣に笑いかけて、サムアップしそっと部屋を出ていった。
良かった、まずは合格点らしい。
結衣は資料に沿って、研修を進める。
比較的頭の冴えている午前中を座学に充てていて、午後は発声や機器に慣れてもらうよう、実際の機械と同じものを使用して研修する。
「皆様、午前中の座学は一日終わったらペーパーテストを実施しますので、こちらも真面目に受けて下さいね」
研修生からは、ええーっという声が上がる。
「大丈夫、大丈夫。真面目に受けてたらチョロいから」
結衣は手をひらひらさせて笑って見せた。
「高槻さん、見た目に反して厳しいですぅ」
「みんな、やってるので頑張りましょうね。ちなみに合格点に達しない方はお残りです」
結衣がにっこり笑うと、オニだぁぁ……と声が上がる。
ふふふー!楽しいなぁ。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる