43 / 70
ご趣味は……?
ご趣味は……?③
しおりを挟む「うん。これでいいですよ」
カシャ、とシャッター音。
「何してるんです?」
「シャツ姿の結衣さんを撮っています」
シャワーを浴びたあと、出されたのは部屋着用の蓮根のシャツで。
ワンピース程ではないけれど、袖も、裾も長くて、かろうじて下着がかくれる丈なのだ。
「シャツって……」
「結衣さん用のフォルダにパスコードをダブルロックして入れていますから、誰にも見ることは出来ません」
「え……」
結衣さん用のフォルダとか今聞こえたけど、どういうことかな?
「他にも、入ってるんですか?」
「おや……?」
おや、じゃなーいっ!
「趣味です」
「聞いてもいいですか? 蓮根先生の趣味ってどうなっているんでしょう?」
蓮根は少し考えるように、顎に手をおいている。
「仕事が忙しくて……。今は結衣さんですね」
「趣味が……ですか?」
「はい」
真っ直ぐな瞳で、にっこり微笑まれる。
なるほどー、趣味なんだ……。
てか、ん!?どういうことかな?
「フォルダって……」
「僕の結衣さんコレクション、ですかね」
こ、怖い、怖いよー。
「何が入っているんでしょう?」
「画像とか声とか」
画像!?声っ!?
「い、いつの間に!?」
「結構最初のほうから……。結衣さん、話している声もいいんですけど、ため息のような少し吐く息もすごくいいんですよね」
褒められてんの?それ?
すごく、すごーく複雑な気持ちなんですけど!
「蓮根先生、それって大丈夫ですか?」
「個人でしか使用しませんし、そもそも結衣さんの姿や声を他人と分け合うつもりは全くありません」
キッパリ、言い切る蓮根だ。
確かに蓮根ならば、拡散や流出はしないのだろうが……。
……にしても、だ。
「いや……?」
ふわっと抱きしめられて、柔らかく微笑みかけられ、すうっと頬を撫でられる。
今更?
変な人なのは充分承知だ。
「今後は言って下さい」
結衣は、蓮根の目を見つめて、そう言った。
蓮根が少し目を見開く。
「どうしました?」
「あ……いや、あなたって人は……」
ん?
この人がこの整った顔立ちを押して余りあるほど、変な人なのは本当に分かっている。
今までの数々の発言で!
けれど蓮根はそれを隠し立てすることは今までしていない。
結衣がこの人いいな、と思うのはその蓮根の裏表のないところだ。
そして結衣を趣味と言い切ってしまうくらい、とんでもなく気持ちを傾けている。
今だって黙ってソファに座っていれば、イケメンだしスタイルは良いし、見た目だけなら、とても素敵だ。
「結衣さん?」
「はい」
「来てください。写真は今日は我慢しますから。今度、撮らせて下さいね。その代わり……」
覚悟してくださいね?
そう囁かれて膝裏を持ち上げられ、お姫様抱っこされた結衣は、そのままベッドに降ろされた。
か、覚悟ってなんでしょうか……?
カチャカチャと鍵を回す音と、ガチャっとドアの開く音。
ん……。
結衣はうっすら目を開ける。
ここは……。
見慣れない天井に昨日夜のあれこれを思い出し、あわあわしてしまう。
結局あのままベッドで散々されて、半分気を失うようにして眠りについたのだ。
蓮根は結衣の身体に腕も足も絡ませ、結衣を抱き枕状態にして寝ている。
(今ドア、ガチャって言わなかった?)
パタパタとスリッパの足音が近づいてくる。
結衣はかろうじて、シャツは羽織っているようだが、下着は付けていない。
「ちょ、涼真さんっ……」
「ん?あ、結衣さん、今日も可愛……」
そうではなく……。
ガチャっとベッドルームのドアが開いて、顔を覗かせたのは、なかなかに顔の整った若い男性。
「涼真兄、データ出来たから確認を……」
遠慮なくドアを開けたものの、ベッドに結衣がいると知ってベッドルームの真ん中で、男性は固まっている。
はわわわ……。だ、誰っ!?兄?弟さん?
涼真は結衣にしっかり布団を被せて、自分は布団から出る。
「早いな、上で見る」
涼真は上半身は裸で下はジャージのまま、2人で部屋を出ていった。
だ……誰?
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる