君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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ご趣味は……?

ご趣味は……?③

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「うん。これでいいですよ」
カシャ、とシャッター音。
「何してるんです?」

「シャツ姿の結衣さんを撮っています」
シャワーを浴びたあと、出されたのは部屋着用の蓮根のシャツで。

ワンピース程ではないけれど、袖も、裾も長くて、かろうじて下着がかくれる丈なのだ。
「シャツって……」

「結衣さん用のフォルダにパスコードをダブルロックして入れていますから、誰にも見ることは出来ません」
「え……」

結衣さん用のフォルダとか今聞こえたけど、どういうことかな?

「他にも、入ってるんですか?」
「おや……?」

おや、じゃなーいっ!

「趣味です」
「聞いてもいいですか? 蓮根先生の趣味ってどうなっているんでしょう?」

蓮根は少し考えるように、顎に手をおいている。
「仕事が忙しくて……。今は結衣さんですね」
「趣味が……ですか?」

「はい」
真っ直ぐな瞳で、にっこり微笑まれる。

なるほどー、趣味なんだ……。
てか、ん!?どういうことかな?

「フォルダって……」
「僕の結衣さんコレクション、ですかね」

こ、怖い、怖いよー。
「何が入っているんでしょう?」
「画像とか声とか」

画像!?声っ!?
「い、いつの間に!?」

「結構最初のほうから……。結衣さん、話している声もいいんですけど、ため息のような少し吐く息もすごくいいんですよね」

褒められてんの?それ?
すごく、すごーく複雑な気持ちなんですけど!

「蓮根先生、それって大丈夫ですか?」
「個人でしか使用しませんし、そもそも結衣さんの姿や声を他人と分け合うつもりは全くありません」
キッパリ、言い切る蓮根だ。

確かに蓮根ならば、拡散や流出はしないのだろうが……。
……にしても、だ。

「いや……?」
ふわっと抱きしめられて、柔らかく微笑みかけられ、すうっと頬を撫でられる。

今更?
変な人なのは充分承知だ。

「今後は言って下さい」
    
結衣は、蓮根の目を見つめて、そう言った。
蓮根が少し目を見開く。
「どうしました?」

「あ……いや、あなたって人は……」
ん?

この人がこの整った顔立ちを押して余りあるほど、変な人なのは本当に分かっている。

今までの数々の発言で!

けれど蓮根はそれを隠し立てすることは今までしていない。
結衣がこの人いいな、と思うのはその蓮根の裏表のないところだ。

そして結衣を趣味と言い切ってしまうくらい、とんでもなく気持ちを傾けている。

今だって黙ってソファに座っていれば、イケメンだしスタイルは良いし、見た目だけなら、とても素敵だ。

「結衣さん?」
「はい」

「来てください。写真は今日は我慢しますから。今度、撮らせて下さいね。その代わり……」
覚悟してくださいね?

そう囁かれて膝裏を持ち上げられ、お姫様抱っこされた結衣は、そのままベッドに降ろされた。

か、覚悟ってなんでしょうか……?




カチャカチャと鍵を回す音と、ガチャっとドアの開く音。

ん……。
結衣はうっすら目を開ける。

ここは……。

見慣れない天井に昨日夜のあれこれを思い出し、あわあわしてしまう。

結局あのままベッドで散々されて、半分気を失うようにして眠りについたのだ。

蓮根は結衣の身体に腕も足も絡ませ、結衣を抱き枕状態にして寝ている。

(今ドア、ガチャって言わなかった?)

パタパタとスリッパの足音が近づいてくる。
結衣はかろうじて、シャツは羽織っているようだが、下着は付けていない。

「ちょ、涼真さんっ……」
「ん?あ、結衣さん、今日も可愛……」

そうではなく……。

ガチャっとベッドルームのドアが開いて、顔を覗かせたのは、なかなかに顔の整った若い男性。
「涼真兄、データ出来たから確認を……」

遠慮なくドアを開けたものの、ベッドに結衣がいると知ってベッドルームの真ん中で、男性は固まっている。

はわわわ……。だ、誰っ!?兄?弟さん?

涼真は結衣にしっかり布団を被せて、自分は布団から出る。

「早いな、上で見る」
涼真は上半身は裸で下はジャージのまま、2人で部屋を出ていった。

だ……誰?
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