君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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あの時のこちら側

あの時のこちら側④

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本当にこんな子がほとんど無垢な状態で、今ここにいるなんて、考えただけでもぞくぞくするのだ。
蓮根自身も観察力に長けていることには実は自信がある。

それならば、少し試してみたい。

恐らく結衣ならば、言葉だけで想像させるだけで、官能を呼び覚ませることが出来るはずだ。

だから、それを確認したくて、敢えて微に入り細を穿って、キスをせずにその感覚だけを説明し何度もキスをしていいか聞いた。

結衣は蓮根が思ったよりももっと、想像力豊かだった。

車の中で潤んだ目をして、ふっ……と声を漏らした時には思わず笑みが浮かんでしまったほどだ。
堪らない。

そんな顔で「どうして、聞くのっ?」と聞いてくる。

それはあなたが僕の声でどこまで感じられるのか確認するためですよ、とは言えない。
間違いなく引かれる。

だから「秘密です」と笑った。
「そうですね。あなたが嫌がることはしたくない、と言いますか」

そう、まずはそこだ。

男はそのイヤが本気なのか、ポーズなのかを見極めなくてはいけないのだ。
さらに、どこまでなら押せるのか、引き際はどこなのかその判断も必要になってくる。

恋愛には高度な観察力と判断力も必要だと、蓮根は思っていた。

正直、今まではそんなことに頭脳を使いたくなかった訳だが、結衣の為ならば全力を尽くしてもいいと思っている。

結衣とのキスは……とても良かった。
気持ちがあるからはもちろんだが、ふんわりと柔らかいその感触と、それだけでも気持ちよさそうな感度の良さと。

反応や感度の良さはこちらを昂らせる。

そして、それに対する素直さはもういっそ感動する程だ。

舌を出して?と言うと素直に口を開ける。
可愛らしい唇と無防備に開かれた口元の相反する艶めかしさ、白い歯の間から、ふるりと震えて差し出されるピンクの舌。

とても官能的な光景。
それがどれほどこちらを煽るか。
「気持ちよく、してあげる」
    

そう言うと結衣の身体がぴくんと反応した。
くまなく探る、そのキスに素晴らしい反応を返してくる。

ああ、もう最高だ。
結衣は恥じらって顔を俯こうとするけれど、そんなのは許さない。

恥ずかしがる顔も全部堪能したいのだから。

両手でしっかり顔を包み込んで、
「僕を見てて」と言った。

熱に浮かされ、何かを堪えるような顔。
本当に堪らない。

目が潤んで、息をするのもいっぱい、いっぱいという感じで。
浅い呼吸を繰り返す様は、喘いでいるかのようで。

こんなに、感じて……。

これならば、良いのではないかと思った。
だからマンションまで連れていったのだし、シャワーから上がったら、めくるめく時間を……と思ったのに、まさか寝ているとは!!

本当はシャワーなんて浴びなくてもいいと思ったのだが、こんなところで無理強いしても仕方ない。

けれど交代でシャワーを浴びて、蓮根が上がってきたら、無防備にベッドですよすよと眠ってしまっているとは思わない。

しかし、あまりに可愛すぎたその寝顔に蓮根は苦笑して、頬をつついた。
結衣は全く起きる気配はない。寝付きはとても良いようだ。

「今度は容赦しませんよ」
とこめかみにキスを落とし、少し考えてから寝顔を写メで撮る。

ロックを掛けている結衣の専用のフォルダに入れ、今度は仕事用のパソコンを開いたのだった。


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