君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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あの時のこちら側

あの時のこちら側②

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蓮根自身時間のない中、週末をどのように過ごそうかを考えるのは、とても楽しいことだった。

こんな事ならもっとあのマンションを利用して、いろいろ把握しておけばよかったという気持ちもあるし、一緒に楽しむのも結衣とならいいかとも思える。

時間を作ってはスマートフォンで確認し、行けそうなところをどんどんブックマークしてゆく。
一緒にドライブに行って楽しく過ごし、自分のことを知ってもらう。

フィジカルコンタクトは深追いはしない、そう決めた。

待ち合わせに現れた結衣は、ベージュのニットにフレアスカートだった。女性らしいし、デートを意識されているようでとても嬉しい。
仕事の時はコールを受ける時、小走りしたり身体を屈めるので、パンツが多いと言っていた。

だからこそプライベートでは、ちょっとお仕事では着れないものも着たくて、とショッピングに行った時に聞いた。

服も欲しいものがあればプレゼントする、と言ったのだが、
「あ、ごめんなさい」
と返事をされてしまった。

「見たかっただけなのに付き合わせてしまって」
恐縮されるような事でもない。

いつでも側にいたいし、下着を選びたいと言われても喜んで付き合う。

声はもう間違いなく好みでいつまででも、どんな声でも聞きたくて、しかもこんなに可愛いくて、仕事はプロで優しくて。
今日はどんな姿が見れるのか。
蓮根は楽しみなその気持ちを抑えられないまま、車のエンジンをかけた。

まずはお寺にお薄の体験に行った。
お茶の体験は初めてだ、と結衣は素直に住職に打ち明けていて、そんな素直な態度は先方にも好感触だったようだ。

レクチャーを受けながら、楽しんでいる雰囲気がとても伝わってきた。

それにしても、
「初めてなんです」
と少しハニカミ気味に言うその姿に、胸を掴まれるような気持ちになる。

(ワードに破壊力がありすぎるな)

蓮根は気持ちを落ち着けつつ、隣でお茶を頂いている結衣を見た。

すっと伸ばした背筋の、首の後ろからウエストにかけてのラインがきれいなカーブになっていた。
    
お茶を飲むために、少しだけ仰のいている顎から首へのラインにも、想像を駆り立てられる。

仰のいて嚥下する様に、今すぐそこに唇をつけたいという気持ちになったから。

押し倒して、あの白い首に思う様キスしたらどんな声を出すんだろう。
とても、聞いてみたい。

次に海へと移動する。

こんな時期に海もないものだろうかと思いはしたのだが、結衣は素直に喜んでくれた。

結衣があまりにはしゃぐので、本当に可愛くなって手をきゅっと繋ぐ。
「転ぶといけませんから」
そう言うと、
「転びませんよ」
と笑顔が帰ってくる。

それでも結衣はふりほどくことはしないで、繋いだままにしてくれた。

結衣の手は、小さくて少し温かい。
その温かさに生命力のようなものを感じて、とてもいいなと思う。

結衣がきゅっと身体を縮めたので寒いのかと思い、車に戻ろうかと言ったら、もう少しここにいたいと言われた。

いるのは構わないが……。
防波堤で座るか。

しかしコンクリートの防波堤は下が冷たい気がして、そこに結衣を直接座らせることなど出来ない。

結衣を膝に乗せると、最初じたばたしていたけれど子供をあやすように抱きしめて、しーと囁いたら大人しくなった。

どうやら大人にも有効なようだ。
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