君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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結衣後ろ!後ろ!

結衣後ろ!後ろ!③

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シャワーを浴びると、結衣は気持ちがスッキリした気がする。
用意してあったバスローブを羽織って、外に出る。

携帯を触っていた蓮根が顔を上げた。
「僕も浴びてきますよ」
引っ掛けていただけのシャツをその場で脱ぐので、結衣はどきっとして、つい見てしまった。

ものすごく筋肉質というわけではないけれど、薄らと綺麗についている筋肉は適度に鍛えているからだろう。先ほどは軽々と結衣を抱き上げたくらいだ。
無駄な肉はない引き締まった腹部も、どきんとするくらい綺麗だ。

この人、体まで綺麗な人なの?
「……? どうしたんです?」
「なんでも……」

「少しはどきっとした? 結衣さんのエッチ」
え、ええーっ? 私―!?
嬉しそうな顔の蓮根に、額にちゅとキスをされる。

「飲み物が冷蔵庫にありますから、好きなものを飲んでいて。そこで、待ってて下さいね」
「はい」
蓮根がバスルームに入ると、結衣は冷蔵庫から水を出し口に含む。
すっごく喉、カラカラだった……。
いろんなことがありすぎて、とても喉が渇いていたらしいのだが、それに全然気づかなかったのだ。

こくこくっと飲むと、結衣はベッドにころんと横になった。
おやすみ3秒と結衣が言われていることを蓮根は知らない。

パタパタパタパタ……というキーボードを叩く音で、結衣は目が覚めた。

「……ん?」
結衣の身体には薄い布団がかけられている。
見覚えのない天井。

ベッドの横にあるテーブルで、蓮根がノートパソコンを叩いているのが見えた。
結衣が目が覚めたことに気付いて微笑みかける。
「起きましたか?」

「ご、ごめんなさい! 寝込んでしまうなんて!」
「いえ? とても可愛くて、良かったですよ」

「涼真さん、お仕事ですか?」
「ええ。少しだけ。大丈夫、もう終わり」

蓮根が眼鏡を外して、それをことりとデスクの上に置いた。
ふーと軽くため息をつき、結衣に柔らかな笑顔を向ける。

本当に忙しい人なのだな、と思う。

「食事の準備、出来ていますよ」
「え?」

リビングを通り抜けてダイニングに入ると、テーブルには色とりどりの料理が並んでいた。

「メインはローストビーフなので、冷めても大丈夫だそうです」
どうぞ、と椅子を引かれる。
「ありがとうございます」

カトラリーまで綺麗に置かれているので、結衣はそれを手に取った。
食事はどれも、とても美味しい。

「こちらにはよく来るんですか?」
柔らかくて美味しいローストビーフをナイフで切って、口に入れつつ結衣はそう尋ねる。
「いや、ゆっくりすべきだと思って買ったんですけどね。実は一度も来たことはなかったんですよ。だから今日は来られて良かった」
そう言って蓮根はテーブル越しに結衣に向かって微笑んだ。

「私がベッド占領してしまってごめんなさい」
「いえ。本当は、一緒に休もうか、とも思ったんですけどね。何もしないでいられる自信はなかったし、あなたも疲れているんだろうなと思ったので」

蓮根は強引なだけではなくて、結衣のことを思いやってくれている。
「結衣さん……」

「はい?」
「今誰か、お付き合いしている人はいますか?」
切なそうで、真っ直ぐな瞳に見られて結衣はどきん、とする。

「い……まはいません」
「僕と正式にお付き合いして頂けませんか? 今日、一緒にいて、あなたとそうなりたいって思ったんです」

「でも涼真さん……私でいいんですか?」
「まだ言わせる気ですか? あなたしかいらないんですよ」

きらきらと煌めいた目でそんな事を言うので、その目に結衣は吸い込まれそうだ。

あなたしかいらない……。
情熱的で甘くて時折強引で、けれど思いやりのある優しい人。こんな人に何度も求愛されるのは、結衣だって悪い気はしない。
むしろ、喜ぶことではないんだろうか。

結衣は覚悟を決めた。
「よろしく、お願いします………」
「本当⁉︎ うわ! すごく嬉しいです。結衣さん可愛い! 大好きですよ」

大人の男性のくせして、子供のように喜ぶから。
「今日からあなたは僕だけのものだから……」

ん……? なんか……早まってないよね!? 大丈夫だよねっ!?
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