30 / 70
結衣後ろ!後ろ!
結衣後ろ!後ろ!③
しおりを挟む
シャワーを浴びると、結衣は気持ちがスッキリした気がする。
用意してあったバスローブを羽織って、外に出る。
携帯を触っていた蓮根が顔を上げた。
「僕も浴びてきますよ」
引っ掛けていただけのシャツをその場で脱ぐので、結衣はどきっとして、つい見てしまった。
ものすごく筋肉質というわけではないけれど、薄らと綺麗についている筋肉は適度に鍛えているからだろう。先ほどは軽々と結衣を抱き上げたくらいだ。
無駄な肉はない引き締まった腹部も、どきんとするくらい綺麗だ。
この人、体まで綺麗な人なの?
「……? どうしたんです?」
「なんでも……」
「少しはどきっとした? 結衣さんのエッチ」
え、ええーっ? 私―!?
嬉しそうな顔の蓮根に、額にちゅとキスをされる。
「飲み物が冷蔵庫にありますから、好きなものを飲んでいて。そこで、待ってて下さいね」
「はい」
蓮根がバスルームに入ると、結衣は冷蔵庫から水を出し口に含む。
すっごく喉、カラカラだった……。
いろんなことがありすぎて、とても喉が渇いていたらしいのだが、それに全然気づかなかったのだ。
こくこくっと飲むと、結衣はベッドにころんと横になった。
おやすみ3秒と結衣が言われていることを蓮根は知らない。
パタパタパタパタ……というキーボードを叩く音で、結衣は目が覚めた。
「……ん?」
結衣の身体には薄い布団がかけられている。
見覚えのない天井。
ベッドの横にあるテーブルで、蓮根がノートパソコンを叩いているのが見えた。
結衣が目が覚めたことに気付いて微笑みかける。
「起きましたか?」
「ご、ごめんなさい! 寝込んでしまうなんて!」
「いえ? とても可愛くて、良かったですよ」
「涼真さん、お仕事ですか?」
「ええ。少しだけ。大丈夫、もう終わり」
蓮根が眼鏡を外して、それをことりとデスクの上に置いた。
ふーと軽くため息をつき、結衣に柔らかな笑顔を向ける。
本当に忙しい人なのだな、と思う。
「食事の準備、出来ていますよ」
「え?」
リビングを通り抜けてダイニングに入ると、テーブルには色とりどりの料理が並んでいた。
「メインはローストビーフなので、冷めても大丈夫だそうです」
どうぞ、と椅子を引かれる。
「ありがとうございます」
カトラリーまで綺麗に置かれているので、結衣はそれを手に取った。
食事はどれも、とても美味しい。
「こちらにはよく来るんですか?」
柔らかくて美味しいローストビーフをナイフで切って、口に入れつつ結衣はそう尋ねる。
「いや、ゆっくりすべきだと思って買ったんですけどね。実は一度も来たことはなかったんですよ。だから今日は来られて良かった」
そう言って蓮根はテーブル越しに結衣に向かって微笑んだ。
「私がベッド占領してしまってごめんなさい」
「いえ。本当は、一緒に休もうか、とも思ったんですけどね。何もしないでいられる自信はなかったし、あなたも疲れているんだろうなと思ったので」
蓮根は強引なだけではなくて、結衣のことを思いやってくれている。
「結衣さん……」
「はい?」
「今誰か、お付き合いしている人はいますか?」
切なそうで、真っ直ぐな瞳に見られて結衣はどきん、とする。
「い……まはいません」
「僕と正式にお付き合いして頂けませんか? 今日、一緒にいて、あなたとそうなりたいって思ったんです」
「でも涼真さん……私でいいんですか?」
「まだ言わせる気ですか? あなたしかいらないんですよ」
きらきらと煌めいた目でそんな事を言うので、その目に結衣は吸い込まれそうだ。
あなたしかいらない……。
情熱的で甘くて時折強引で、けれど思いやりのある優しい人。こんな人に何度も求愛されるのは、結衣だって悪い気はしない。
むしろ、喜ぶことではないんだろうか。
結衣は覚悟を決めた。
「よろしく、お願いします………」
「本当⁉︎ うわ! すごく嬉しいです。結衣さん可愛い! 大好きですよ」
大人の男性のくせして、子供のように喜ぶから。
「今日からあなたは僕だけのものだから……」
ん……? なんか……早まってないよね!? 大丈夫だよねっ!?
用意してあったバスローブを羽織って、外に出る。
携帯を触っていた蓮根が顔を上げた。
「僕も浴びてきますよ」
引っ掛けていただけのシャツをその場で脱ぐので、結衣はどきっとして、つい見てしまった。
ものすごく筋肉質というわけではないけれど、薄らと綺麗についている筋肉は適度に鍛えているからだろう。先ほどは軽々と結衣を抱き上げたくらいだ。
無駄な肉はない引き締まった腹部も、どきんとするくらい綺麗だ。
この人、体まで綺麗な人なの?
「……? どうしたんです?」
「なんでも……」
「少しはどきっとした? 結衣さんのエッチ」
え、ええーっ? 私―!?
嬉しそうな顔の蓮根に、額にちゅとキスをされる。
「飲み物が冷蔵庫にありますから、好きなものを飲んでいて。そこで、待ってて下さいね」
「はい」
蓮根がバスルームに入ると、結衣は冷蔵庫から水を出し口に含む。
すっごく喉、カラカラだった……。
いろんなことがありすぎて、とても喉が渇いていたらしいのだが、それに全然気づかなかったのだ。
こくこくっと飲むと、結衣はベッドにころんと横になった。
おやすみ3秒と結衣が言われていることを蓮根は知らない。
パタパタパタパタ……というキーボードを叩く音で、結衣は目が覚めた。
「……ん?」
結衣の身体には薄い布団がかけられている。
見覚えのない天井。
ベッドの横にあるテーブルで、蓮根がノートパソコンを叩いているのが見えた。
結衣が目が覚めたことに気付いて微笑みかける。
「起きましたか?」
「ご、ごめんなさい! 寝込んでしまうなんて!」
「いえ? とても可愛くて、良かったですよ」
「涼真さん、お仕事ですか?」
「ええ。少しだけ。大丈夫、もう終わり」
蓮根が眼鏡を外して、それをことりとデスクの上に置いた。
ふーと軽くため息をつき、結衣に柔らかな笑顔を向ける。
本当に忙しい人なのだな、と思う。
「食事の準備、出来ていますよ」
「え?」
リビングを通り抜けてダイニングに入ると、テーブルには色とりどりの料理が並んでいた。
「メインはローストビーフなので、冷めても大丈夫だそうです」
どうぞ、と椅子を引かれる。
「ありがとうございます」
カトラリーまで綺麗に置かれているので、結衣はそれを手に取った。
食事はどれも、とても美味しい。
「こちらにはよく来るんですか?」
柔らかくて美味しいローストビーフをナイフで切って、口に入れつつ結衣はそう尋ねる。
「いや、ゆっくりすべきだと思って買ったんですけどね。実は一度も来たことはなかったんですよ。だから今日は来られて良かった」
そう言って蓮根はテーブル越しに結衣に向かって微笑んだ。
「私がベッド占領してしまってごめんなさい」
「いえ。本当は、一緒に休もうか、とも思ったんですけどね。何もしないでいられる自信はなかったし、あなたも疲れているんだろうなと思ったので」
蓮根は強引なだけではなくて、結衣のことを思いやってくれている。
「結衣さん……」
「はい?」
「今誰か、お付き合いしている人はいますか?」
切なそうで、真っ直ぐな瞳に見られて結衣はどきん、とする。
「い……まはいません」
「僕と正式にお付き合いして頂けませんか? 今日、一緒にいて、あなたとそうなりたいって思ったんです」
「でも涼真さん……私でいいんですか?」
「まだ言わせる気ですか? あなたしかいらないんですよ」
きらきらと煌めいた目でそんな事を言うので、その目に結衣は吸い込まれそうだ。
あなたしかいらない……。
情熱的で甘くて時折強引で、けれど思いやりのある優しい人。こんな人に何度も求愛されるのは、結衣だって悪い気はしない。
むしろ、喜ぶことではないんだろうか。
結衣は覚悟を決めた。
「よろしく、お願いします………」
「本当⁉︎ うわ! すごく嬉しいです。結衣さん可愛い! 大好きですよ」
大人の男性のくせして、子供のように喜ぶから。
「今日からあなたは僕だけのものだから……」
ん……? なんか……早まってないよね!? 大丈夫だよねっ!?
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる