君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

文字の大きさ
上 下
28 / 70
結衣後ろ!後ろ!

結衣後ろ!後ろ!①

しおりを挟む
白いそのマンションのエントランスに車を停め、後部座席のシートベルトを外した蓮根は結衣の手を繋いで中に入る。

入口にはコンシェルジュが微笑んでいて、蓮根は車の鍵を預けて、代わりに部屋の鍵を受け取っていた。

「車、動かしておいてください」
「かしこまりました」
「結衣さん、行きましょう」

景色いいですよ。とエレベーターに連れていかれる。
20階建ての最上階。
そのいちばん奥が、蓮根の所有する部屋のようだ。

リビングはほとんどが窓で、高層ビルのないこの辺りでは、かなり遠くまで見通すことが出来る。
もちろん海も見える。
角部屋なので、窓が大きく取られているから尚更だ。

「……まあ確かに、いい景色ですよね……」
「時間によっては海に沈む夕日とか見れますよ。食事はお願いすれば、ケータリングサービスを部屋まで持って来てくれます。6時くらいでいいですよね?」

疑問形ではあるけれど、その口調は完全に決定事項ではないのか。

夕食もここで食べることが決まりなんですね……。
つい、窓の外を見ながら黄昏たそがれてしまう結衣だ。

半分……というか大半拉致するような形で連れてこられて、万一に備えるとか何とか言って、準備万端て……。

「いつまで、外を見ているんです?」
シャッとカーテンを引かれてしまい、外が見えなくなると、蓮根と向かい合う事しか出来ない。

「あ……の……」
結衣の目の前に蓮根が立っている。
つい後ろに後ずさってしまった結衣は窓に背中をぶつけてしまった。

──これ以上は、後ろに行けない……。
「どうしたんです?」
「いえ……」
思わず顔を逸らすのに、結衣は俯いてしまった。

「結衣さん、こっちを見てください」
言葉は丁寧なくせに、蓮根に強引に顔を両手で仰けられる。

「っあ……」
「いい声……もっと聞かせて。ん?」
蓮根の端正な顔が近づいてきて、唇が重なった。

「可愛い……」
「……っ……ん」
「なんで、カーテン掴んでいるんですか?」
「なんででしょう?」
「僕の身体に手を回して?」
「あ……」

低くて甘い声。そして優しい表情。
つい、言われたまま腕を身体に回してしまう。

胸の鼓動が激しい。
どきどきしている音が自分の耳に響いて、こんなに近くにいたら、蓮根にまで聴こえそうだ。

「ん……いい子」
身体が密着した分、キスも深くなったような気がして。

口の中を探られる感覚。
先ほどよりももっと奥深く、強く探られているような気がする。
結衣はぞくんとする。

ダメになりそう……。
結衣もさほど経験豊富な方ではないけれど、多分、蓮根はキスがとっても上手い。
気持ち良過ぎるのだ。

「どうしたの? 立ってられない?」
くすくすと笑った蓮根は、からかうように結衣の頬を撫でた。

「すごく可愛い。結衣さん、好きなんです本当に。あなたの全てが欲しい」

物凄く熱を孕んだその声に先程から浮かされたようになっている結衣は、逆らうことが出来ない。
「おいで」

ふわりと抱き上げられて、ベッドにそっと降ろされる。

蓮根は指で結衣の頬を撫でた。
「んっ……」
そのまま、顎の下をくすぐる。

結衣は軽く身を捩った。少し笑い声も漏れてしまう。
蓮根からは笑みを含んだ楽しそうな声が聞こえる。
「くすぐったい?」
「はい」
「笑っている顔が、すごく可愛い」

目元を笑ませた蓮根の指はさらに、首へと降りる。
指先は首を撫でているのに、親指は唇を辿っていて、蓮根はひどく熱心にその結衣の様子を見ていた。

唇を辿られている様子をそんな風に熱心に見られて、結衣はどきんとする。
「口、開けてください……」
「っ……あ……はっ」

薄らと開けた口の中に蓮根の指が入ってきた。
その指は結衣の舌を捉えると、撫でるように触れる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には "恋"も"愛"も存在しない。 高校の同級生が上司となって 私の前に現れただけの話。 .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ Иatural+ 企画開発部部長 日下部 郁弥(30) × 転職したてのエリアマネージャー 佐藤 琴葉(30) .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ 偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の 貴方を見つけて… 高校時代の面影がない私は… 弱っていそうな貴方を誘惑した。 : : ♡o。+..:* : 「本当は大好きだった……」 ───そんな気持ちを隠したままに 欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。 【誘惑の延長線上、君を囲う。】

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

Perverse

伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない ただ一人の女として愛してほしいだけなの… あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる 触れ合う身体は熱いのに あなたの心がわからない… あなたは私に何を求めてるの? 私の気持ちはあなたに届いているの? 周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女 三崎結菜 × 口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男 柴垣義人 大人オフィスラブ

処理中です...