君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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備えよ常に

備えよ常に②

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「あなたって人は、どこまで僕を夢中にさせるつもりですか」
蓮根だってとろけそうな表情で、こちらを見てくるクセに。

「ねぇ? 口を開けて? 舌を出して?」
言われるままに結衣は口を開け、震える舌を蓮根に差し出す。

「いい子だね。すごく色っぽい」
そう言って蓮根はにこりと笑う。とても魅力的な笑顔だ。
「気持ちよくしてあげる」

耳朶をくすぐる声に結衣は全身がぞくんとした。
ベルベットのように柔らかくて触りのよい舌で、絡め取られて吐息まで啜りとられる。

先程までのキスはキスではなかったのではないかと思うくらい、官能的。

気持ちよくしてあげるはその言葉通り口の中で、蓮根が触れていないところはないのではないかと思うくらい、くまなく探られる。

「も……無理……」
「気持ちい?」
こくこく、と結衣は必死で頷く。

「結衣、可愛い。初めはね、あなたの声に惹かれたんですよ」
蓮根の唇が頬から、耳へと移っていく。

「声が好みで」
「っ……!」

「つまり……この声すげーエロいなって思ったんですよ。仕事モードのこの声、上品で澄ましているこの声を乱れさせたいって」

そんな風に思われていたのかと思うと、カッと結衣の頬に朱がのぼる。

「現実のあなたは想像以上でしたけど。それが僕にとってどれほどの喜びだったか、あなたには分からないでしょう」

今も……と背中を抱いていた手をするすると、身体のラインに沿って撫で降ろしていく。

触れるか触れないかの柔らかい感触は、かえって感覚を鋭くさせてしまって、触れられるとびくっと身体が揺れるのを結衣は止めることが出来ない。

「……ね? こんなに感じやすくて身体までエッチなんて、ずるいのはあなたの方ですよ。こんなの見たら、絶対誰にも渡したくない」
「そんなの……」

「声が理想で見た目も好みで、しかもこんなに反応してくれて。手放せる訳ないですよ」
甘い言葉をこんなに囁かれて、結衣もどうしていいのか分からない。

ただ必死で蓮根の服を掴んでしまう。そうしていないと溺れそうだ。
「っあ、もう、や……」
「何が?」

熱を孕んだ目で、嬉しそうに顔を覗き込まれる。
すいっと、顎を掬われた。
「もう我慢出来ないのは、こちらですよ」

反射的に俯こうとしても、しっかりと顎を抑えられているので、蓮根はそれを許してくれない。    

「ダメです。僕を見てて。ああ、そんな顔をして」

もう訳が分からない、ただ自分の鼓動がどくどくと音を立てていて、息をするので必死で、呼吸が荒くなっているのを感じるだけだ。

「結衣さん、僕はね、万が一に備えるタイプなんですよ」

──???
この雰囲気から、なんの話?

「我慢、出来ます?」
結衣は今ほどまでの自分の乱れた姿を思い出し、真っ赤になる。

「あ、あのっ! お構いなく。大丈夫です! 本当に気にしないでください!」
「遠慮、しなくていいんですよ」
ふふっと笑顔を向けられる。

いえ、本当にお構いなく……マジで……。
キスだけで死んじゃうかもってくらい、感じさせられたとかありえないし、我慢とかしてないんで!!
てかむしろ、いっぱいいっぱいだったんで!
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