君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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備えよ常に

備えよ常に①

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「ねぇ? この前言いましたよね? 『この唇に唇を重ねて。そうだな、舌でも味わってみたい。それから中に舌を入れて、あなたを思う存分味わったら……』って」
そう言いながら、蓮根の指が結衣の唇の横を撫でる。

そんなふうに蓮根に囁き掛けられると結衣は、やはり先日のように言われたまま頭にその感覚が蘇り、思わず声が漏れてしまった。

頭の中で、まるで舌をなめられたようなその感覚をつぶさに感じる。

「っ……ふっ……」
「何もしてませんよ。触れてもいないし、キスをしてもいない。ただ説明しただけです」
けど、と耳元に口を近付けられた。

「想像したんですよね? 僕があなたの唇に、唇を重ねるところ。それを舌で味わって中にも舌を入れて、舌を絡めてあなたの口の中を蹂躙するところ」
わざと細かく描写する、蓮根だ。
蓮根の結衣を見る瞳が情欲に濡れていて、昏く光っていて怖いのに目が逸らせない。妖艶すぎるのだ。

「っあ……や……」
「可愛い。有り得ないくらい、可愛いです。結衣さん、キスしていいですか?」

結衣はもう呼吸困難寸前だし、頭はぼうっと霞がかかったようで、なんだか判断出来ない。

とにかく、蓮根を見ることしか。
「どうして聞くのっ?」

霞がかった頭で何とか、疑問に思ったことを尋ねた。    

そうなのだ。
強引にしてしまうことも出来るはずなのに、前から際どいことを言っても蓮根は強引にしてしまうことはない。

「秘密です。そうですね。あなたが嫌がることはしたくない、と言いますか」

そんなん言ったら最初から、最初から……? ん?
まさか本当に、嫌だと思ったことはない⁉︎

「どうかしました?」
「いえ……」
嫌って思ったことなかった! 1度も!

「何か考えたんでしょう?」
「いえ、なんでもないですっ」
「じゃあ、キスしましょうか」
なんか、わざと意地悪されてる気がしてきた。

キスしましょうかと言われる度に、すでにされているように思えてしまう。
「嫌なら本気で抵抗して。でないとしますよ」

「ずるいですっ……」
「ずるくていい。そうですよ。僕はずるいから、あなたはそれに流されただけなんですよ」

蓮根はにっこり笑って、両手で結衣の顔を挟んでその端正な顔を近づけてくる。

「んっ……!」
最初は柔らかく重なった唇。
何度も角度を変えて柔らかく触れるだけ。

時折、ちゅ……という音が車に響く。
結衣は動くことも出来ない。

ひたすらに優しいキスが、気持ちいい。
柔らかくて、優しいバードキスを何度も繰り返している。

良かった、大丈夫そう……と少し安心したところで、その気持ちを読んだかのように唇を舐められて、上唇を甘噛みされる。

それは言葉で想像されるものよりも、当然ながら生々しい感触だ。
    

唇をなぞる舌の感触。
緊張で結衣が歯を食いしばり気味に力が入っているので、蓮根は無理に舌を差し入れてくるようなこともせず、唇を重ねたり舐めたり、吸ったりする。

けれど時折きこえる、ちゅ、という水音だけでも結衣はドキンとしてしまうくらいだ。

「……は……っ」
「ん?」
「い、き……できない」
「まだ、そんなにしてないのに?」

「そうじゃなくて、どきどきし過ぎて酸欠になりそう……」
蓮根は一瞬目を見開く。

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