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したいからする
したいからする②
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それに蓮根が自然に手を繋いできたから、雰囲気を荒らげたり、この空気を壊すようなことはしたくない。
さらりとそんな事が出来てしまう蓮根は大人なんだと結衣は思う。
二人は波打ち際に並行するようにゆっくりと歩き出した。
「寒くないですか?」
甘く優しく蓮根に聞かれる。
「ん、少しだけ」
「車に戻りますか?」
「もう少しだけ、ここにいたいです。ダメですか?」
「もちろん、いいですよ」
座りましょうか?と防波堤の方を指さされる。こくりと結衣は頷く。
蓮根の横に座ろうとしたら、繋いでいた手を強く引かれた。
「あなたはこっち」
それは蓮根の膝の上である。
「え?」
「コンクリートに直接座ったら冷たいでしょう。だからあなたはここ、です」
「あのっ!」
少しじたばたしてはみたものの、しーと耳元で囁かれて思わず結衣の動きが止まる。
「ち、近いです! それにそれは申し訳ないですし……」
「じゃあ、大人しくして。音を聞いて景色を見たいんですよね?」
かと言って膝の上に乗るのはどうなんだろうか。
「でも……」
そんな風に言う結衣の有無を言わさず、蓮根はさっさと結衣を自分の膝に載せてしまった。
「いいから、あなたがしたいことをしましょう」
なんだか逆に落ち着かないけど。
あなたがしたいこと。もしやそれは逆なのでは……。
「結衣さん、いい匂いしますね。何かつけてます?」
「なにも?」
なんだろう。
そう言えば蓮根は先程もそんなことを言っていた。
けれど、結衣は今日は特にパフュームなどは付けていない。
自分でくんくんしてみても、よく分からなかった。
「髪かな?」
「シャンプーでしょうか」
「そうかも知れませんね。肌も綺麗ですよね。今日はタートルだから見えないけど、先日のニットの時は少し首が見えていて、ドキドキしました」
聞いているこっちが、ドキドキしますけど。
今の今まで、さほど感じなかった蓮根との距離の近さを急に感じて結衣はそれにも鼓動が高くなってしまう。
(本当に顔はとてもいいんだよね……)
本当にとても甘い、とろけそうな表情で、こちらを見つつ、頬を撫でるのは止めてほしい。
「あと、僕はあなたの表情が好きですよ。普段あまり目線が合わないけれど、時折真っ直ぐ見つめて下さいますよね。それでそのまま笑ったりすると口元にきゅっとエクボが出来るんです。知ってました?」
「あまり意識したことはない……です」
どうやら蓮根は結衣のことをよく見ているらしい。好きなものを語る時の幸せな口調だ。
それが自分のことなのは、結衣にとっては本当に複雑と言うか、微妙なんだけども。
「目もネコみたいな表情する時があって……」
「蓮根先生、褒めすぎです」
「じゃ、ご褒美下さい」
「なんですか、それ」
素直なその言い方に笑ってしまう。
「よく褒めても何も出ませんとか言うでしょう。だからなにも、じゃなくてご褒美下さい」
「もう! 出来ないようなことはダメですよ?」
「大丈夫。簡単です」
耳を貸して?と言われて、うー……と思いながら結衣は頭を傾ける。
「名前で呼んで?」
低くて、甘い声。
「……っ」
ん?と顔を覗き込まれる。
蓮根の造作は完璧だ。切れ長の綺麗な形の目元に耳から顎へのシャープなライン。通った鼻筋とすこし薄めの唇はとてもセクシーでそこから紡ぎ出される声もいい。
だから、どうしても近いとドキドキしてしまう。
それに、本当にダメらしいと改めて分かった。
蓮根の声。
さらりとそんな事が出来てしまう蓮根は大人なんだと結衣は思う。
二人は波打ち際に並行するようにゆっくりと歩き出した。
「寒くないですか?」
甘く優しく蓮根に聞かれる。
「ん、少しだけ」
「車に戻りますか?」
「もう少しだけ、ここにいたいです。ダメですか?」
「もちろん、いいですよ」
座りましょうか?と防波堤の方を指さされる。こくりと結衣は頷く。
蓮根の横に座ろうとしたら、繋いでいた手を強く引かれた。
「あなたはこっち」
それは蓮根の膝の上である。
「え?」
「コンクリートに直接座ったら冷たいでしょう。だからあなたはここ、です」
「あのっ!」
少しじたばたしてはみたものの、しーと耳元で囁かれて思わず結衣の動きが止まる。
「ち、近いです! それにそれは申し訳ないですし……」
「じゃあ、大人しくして。音を聞いて景色を見たいんですよね?」
かと言って膝の上に乗るのはどうなんだろうか。
「でも……」
そんな風に言う結衣の有無を言わさず、蓮根はさっさと結衣を自分の膝に載せてしまった。
「いいから、あなたがしたいことをしましょう」
なんだか逆に落ち着かないけど。
あなたがしたいこと。もしやそれは逆なのでは……。
「結衣さん、いい匂いしますね。何かつけてます?」
「なにも?」
なんだろう。
そう言えば蓮根は先程もそんなことを言っていた。
けれど、結衣は今日は特にパフュームなどは付けていない。
自分でくんくんしてみても、よく分からなかった。
「髪かな?」
「シャンプーでしょうか」
「そうかも知れませんね。肌も綺麗ですよね。今日はタートルだから見えないけど、先日のニットの時は少し首が見えていて、ドキドキしました」
聞いているこっちが、ドキドキしますけど。
今の今まで、さほど感じなかった蓮根との距離の近さを急に感じて結衣はそれにも鼓動が高くなってしまう。
(本当に顔はとてもいいんだよね……)
本当にとても甘い、とろけそうな表情で、こちらを見つつ、頬を撫でるのは止めてほしい。
「あと、僕はあなたの表情が好きですよ。普段あまり目線が合わないけれど、時折真っ直ぐ見つめて下さいますよね。それでそのまま笑ったりすると口元にきゅっとエクボが出来るんです。知ってました?」
「あまり意識したことはない……です」
どうやら蓮根は結衣のことをよく見ているらしい。好きなものを語る時の幸せな口調だ。
それが自分のことなのは、結衣にとっては本当に複雑と言うか、微妙なんだけども。
「目もネコみたいな表情する時があって……」
「蓮根先生、褒めすぎです」
「じゃ、ご褒美下さい」
「なんですか、それ」
素直なその言い方に笑ってしまう。
「よく褒めても何も出ませんとか言うでしょう。だからなにも、じゃなくてご褒美下さい」
「もう! 出来ないようなことはダメですよ?」
「大丈夫。簡単です」
耳を貸して?と言われて、うー……と思いながら結衣は頭を傾ける。
「名前で呼んで?」
低くて、甘い声。
「……っ」
ん?と顔を覗き込まれる。
蓮根の造作は完璧だ。切れ長の綺麗な形の目元に耳から顎へのシャープなライン。通った鼻筋とすこし薄めの唇はとてもセクシーでそこから紡ぎ出される声もいい。
だから、どうしても近いとドキドキしてしまう。
それに、本当にダメらしいと改めて分かった。
蓮根の声。
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