君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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マウント噛み噛み

マウント噛み噛み②

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この表情、反則ではないのだろうか。
それに腰にくるっ!声‼︎

「何がお気に召したんでしょうか?」
結衣はやっとの思いで声を出す。

「声です」
迷いなく、蓮根はそう言った。
なんか、そんな気はしたけども。

「声フェチなんですか?」
「はい」
きっぱりした回答。爽やかな笑顔。

質問の内容と回答の内容の全く合っていないその爽やかさ。

「最初はあなたの声が……けれどその後の対応のテキパキした感じや、納得のいく説明を聞いていて、どんな方なんだろうと思っていました。まあ、もともと若干声フェチ気味だったんですけどね」

若干?若干って⁉︎
声だけじゃないですよ、とはにかまれても……。

この際、約款でもいいとか言っていたよね!
さっき!

もう、声さえ聞ければ中身はなんでもいいって思ったよね⁉︎
ガチのフェチじゃん!

「仮にステキな人がいても、声がイマイチだと萎えてしまって。その点あなたは完璧です。確かに最初に声に惹かれたのは、間違いないですけど、こうしてお会いしたら……」
ふわりと頬を撫でられる。

「綺麗です。きめ細かくてさらりとした肌、大きな瞳、ゆるりとした髪、時折、耳にかける仕草も。顔立ちも好みです。子供っぽくもなく、色気がありすぎもしない。逆にその曖昧なバランスに色っぽさを感じられる。あと背筋が伸びていて姿勢がとてもいい」

蓮根は結衣を見つめたまま背中にふっと触れて、そのまま髪を指で掬って髪にキスをする。

「声しか知らなくて、がっかりしたかもしれないですよ」
「いいえ。現実のあなたは想像以上でした」

気付いたら蓮根は片肘をカウンターに乗せ、身体を完全に結衣に向けている。
近いなぁ。

「蓮根先生、聞いてほしいことって……」
「はい」

蓮根は眉を寄せ、キュッと唇を噛みしめた。
端正な顔立ちなので、少しだけ表情が動くだけでも印象がガラッと変わるのだ。

そんな表情には、さすがに結衣もくらりと来る。
顔が綺麗って万能なのね……。

「最初は声に惹かれました。そして今日お会いしてぜひとも、もっとお話をしたいと思った。また会ってもらえませんか?」
「あの、私地方にいるので」
    
結衣はコールセンターが地方にあることを残念に思っていたが、この際それを考え出したのは誰かは知らないが心から感謝したい。

ありがとう!知らない人だけど!

「では、会いに行きます」
誰にっ⁉︎
「先生! お忙しいですよね!」

「あなたに会えるなら、どこにでも行きます。」
手をキュッと繋がれる。そして、真っ直ぐな瞳。

「あの、お会いしたの、今日が初めてですよね。」

「でも、お互い存在は知っていた。ロマンティックじゃないでしょうか」
うっとりしないで……。

「それに、あなたは僕が嫌いではないですよね? 何が気になったんです? 顔?」
「違います!」

うっ、このタイミングでそれを聞かれるとは!
「じゃあ、何なんですか?」
「嫌いではないです。でも、私は蓮根さんのことをよく存じあげないですし」

「これから、お互い知っていけばいい」
お願い。もっと知りたいんです……と息を吹きかけるように耳元に囁かれる。

またっ……!
さすがに直接耳元で囁かれると、ビクッとしてしまう。

「ね、何でそんな顔してるんです……?」
蓮根はとても妖艶な瞳で結衣を見つめてくる。

絶対、絶対、言いたくない!
このガチな声フェチの人の声に、腰が砕けそう、とか言いたくない!
なんだか!!

「じゃあ、最初は話すだけ。会ってもいい、と思ったら会ってください」
にこりと蓮根笑顔を向けられる。
先程のようになぜか逆らえなくて、つい、こくっと頷いてしまった結衣だ。

そして、その場で電話番号とかメルアドとか、果てはメールアプリのIDまで交換して、また連絡しますとホテルまで送ってもらったのである。

部屋に着くと、結衣はベッドにヘタリ込んでしまった。

何!?何!?何が起きたの?
うっ……変態にマウント取られてるんじゃ……。

結衣は首元を噛まれて咥えられている仔猫を想像してしまった。

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