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それは通常対応です
それは通常対応です②
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営業らしく、笑顔で気軽にそんなことを言ってくる。
「結衣ちゃんは社員になったので、栄転です!」
向かいにいた、後輩がにこにこと北条に伝える。
「おめでとうございます! 査定に電話しても、高槻さんの声が聞けないのは寂しいですよ」
「またまたー!」
北条の笑顔と媚びのない堂々とした態度は、あからさまなお世辞でも嫌味を感じさせない。
さすがの営業スキルなのだった。
「本当ですって。うちの支店でも、みんなそう言ってますから。どこにいるんですか?」
北条は結衣が渡した名刺を見直していた。
「コルセンでーす」
「本当だ。コールセンターですね。直接は接点なくなるのかなぁ……」
「でも結衣ちゃん、あちこちに電話かけまくっているよね」
「はい。先日も代理店さんに助けて頂きました。また助けてーってお電話するかもです。知らないとか言わないでくださいね」
にこにこして結衣もそう返す。
「コルセン? コールセンター? コールセンターの高槻さんって、その高槻さん?」
そうですけど、そんなに何回も言う必要ある?
結衣の配属先を知って、急に顔色が変わる北条だ。
ん……?
「あ、ちょっと待ってて。高槻さん、ちょっと」
北条に手を引っ張られ、結衣は個室の外に出された。
──え?いやーん、告白とかぁ?
しかし、真剣な北条の表情からそれはないな、と結衣は冷静に判断する。
「今、うちの支店の重要客先と飯なんだけど、高槻さんがその高槻さんって僕知らなくて」
なんのこと?
「まあ、分かれば納得だけど。その人、この前高槻さんに対応してもらってすごく感謝されているそうなんだ。よかったら、少し顔出してくれると非常に助かるんだけど」
『えーー!? どちらかと言うと嫌』という結衣の気持ちは思いっきり顔に出ていたと思う。
本来なら、査定も、コールセンターも裏方だ。
お客様との信頼関係や営業の最前線はあくまで営業さんや代理店で、自分が顔を出すようなものではない、が結衣の考えである。
北条をふと見ると『お願い!』と顔に大きく書いてある。
「支店の重要先なんですよね。私でいいんですか?」
「つか、高槻さんの大ファン」
「そんなことしてないと思うけど。顔くらいなんてことないですけど、いいんですかねー、顔出しなんかしちゃって」
「大丈夫。僕も今まで高槻さんの声しか知らなかったけど、今日お会いしてますます大好きになりました。お願い!」
そんな、適当な……。
ほんっと、営業さんは口がうまいよ。
「分かりました。いいですよ」
と結衣は苦笑する。
北条達のいた部屋は、その割烹の中でもお得意さまをお連れする用の、高級なお部屋だった。
畳のその部屋の奥に座っていたのは歳の頃は、北条より少し歳上くらいの男性。
その人はネクタイも緩めず、日本酒に口をつけていた。
少し長めの前髪をオールバックにあげていて、整った端正な顔にメタルフレームの角ばった眼鏡を掛けていてそれがまた、良く似合う。
眼鏡の奥の奥二重の切れ長な目元にとんでもない色気が滲んでいて、すうっと通った鼻梁に、日本酒を飲むためか、うっすらと開いている薄い唇がなんとも艶めかしい人なのだ。
うわっ!なんつー綺麗な……!
が結衣の第一印象だった。
しかし、整いすぎて冷たくも見える。
その人は急に入ってきた、二人に驚いた様子だ。
「蓮根先生! なんと、高槻さんですよ! 研修があって本社に来ていたようで、偶然飲んでいたところを捕獲してきました」
捕獲て……アナタ……。
──ん?
「結衣ちゃんは社員になったので、栄転です!」
向かいにいた、後輩がにこにこと北条に伝える。
「おめでとうございます! 査定に電話しても、高槻さんの声が聞けないのは寂しいですよ」
「またまたー!」
北条の笑顔と媚びのない堂々とした態度は、あからさまなお世辞でも嫌味を感じさせない。
さすがの営業スキルなのだった。
「本当ですって。うちの支店でも、みんなそう言ってますから。どこにいるんですか?」
北条は結衣が渡した名刺を見直していた。
「コルセンでーす」
「本当だ。コールセンターですね。直接は接点なくなるのかなぁ……」
「でも結衣ちゃん、あちこちに電話かけまくっているよね」
「はい。先日も代理店さんに助けて頂きました。また助けてーってお電話するかもです。知らないとか言わないでくださいね」
にこにこして結衣もそう返す。
「コルセン? コールセンター? コールセンターの高槻さんって、その高槻さん?」
そうですけど、そんなに何回も言う必要ある?
結衣の配属先を知って、急に顔色が変わる北条だ。
ん……?
「あ、ちょっと待ってて。高槻さん、ちょっと」
北条に手を引っ張られ、結衣は個室の外に出された。
──え?いやーん、告白とかぁ?
しかし、真剣な北条の表情からそれはないな、と結衣は冷静に判断する。
「今、うちの支店の重要客先と飯なんだけど、高槻さんがその高槻さんって僕知らなくて」
なんのこと?
「まあ、分かれば納得だけど。その人、この前高槻さんに対応してもらってすごく感謝されているそうなんだ。よかったら、少し顔出してくれると非常に助かるんだけど」
『えーー!? どちらかと言うと嫌』という結衣の気持ちは思いっきり顔に出ていたと思う。
本来なら、査定も、コールセンターも裏方だ。
お客様との信頼関係や営業の最前線はあくまで営業さんや代理店で、自分が顔を出すようなものではない、が結衣の考えである。
北条をふと見ると『お願い!』と顔に大きく書いてある。
「支店の重要先なんですよね。私でいいんですか?」
「つか、高槻さんの大ファン」
「そんなことしてないと思うけど。顔くらいなんてことないですけど、いいんですかねー、顔出しなんかしちゃって」
「大丈夫。僕も今まで高槻さんの声しか知らなかったけど、今日お会いしてますます大好きになりました。お願い!」
そんな、適当な……。
ほんっと、営業さんは口がうまいよ。
「分かりました。いいですよ」
と結衣は苦笑する。
北条達のいた部屋は、その割烹の中でもお得意さまをお連れする用の、高級なお部屋だった。
畳のその部屋の奥に座っていたのは歳の頃は、北条より少し歳上くらいの男性。
その人はネクタイも緩めず、日本酒に口をつけていた。
少し長めの前髪をオールバックにあげていて、整った端正な顔にメタルフレームの角ばった眼鏡を掛けていてそれがまた、良く似合う。
眼鏡の奥の奥二重の切れ長な目元にとんでもない色気が滲んでいて、すうっと通った鼻梁に、日本酒を飲むためか、うっすらと開いている薄い唇がなんとも艶めかしい人なのだ。
うわっ!なんつー綺麗な……!
が結衣の第一印象だった。
しかし、整いすぎて冷たくも見える。
その人は急に入ってきた、二人に驚いた様子だ。
「蓮根先生! なんと、高槻さんですよ! 研修があって本社に来ていたようで、偶然飲んでいたところを捕獲してきました」
捕獲て……アナタ……。
──ん?
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