君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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折り返し致します

折り返し致します②

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蓮根はすね様、大変お待たせしております。今、係の者から伺いました。代車をご希望とのことですね」
『至急、同等のものを用意して欲しい』

「お急ぎのところ申し訳ございません。今お探ししておりますが、同等の車種が難しく、今すぐのご用意ですと……」

ドイツ車の高級車か、国産高級車の二択でしか用意はない。

「お車、ないと困りますよね? こちらにつきましては、今すぐお手配させて頂きます。明日以降で弊社で対応出来る車種から、いくつかご用意致しますので、明日以降、再度ご連絡させて頂いてよろしいでしょうか?」

ふう……という蓮根のため息が耳元のイヤフォンから漏れ聞こえてくる。
『仕方ないな。急いでいるし。君、名前は?』
高槻たかつきと申します」
『フルネームは?』

──うわ! 面倒くさ!
高槻結衣たかつきゆいです」

フルネームなんて聞いてくる人物にろくな奴はいない、と結衣は勝手に思っているし、そんなことで怯むとでも思ったら大間違いだから!という訳の分からない負けず嫌いでキリッと結衣はフルネームを名乗ったのだ。

『では、高槻結衣さん、お電話お待ちします』
──いけ好かない!!
結衣の可愛い部下を理屈で困らせて、イタリア車なんか乗ってて、結衣にフルネームを尋ねてくるなど、いけ好かない以外の何ものでもなかった。

いけすかないからこそ、逆に完璧に仕事をこなしてぎゃふんと言わせてやる!
少し考えて、そのまま結衣は知り合いの代理店に連絡を入れる。

「高槻ですー」
『あ、結衣ちゃん! どーしたの?』
「今、困っていて。お知恵を貸して下さい」

代理店の担当者はひととおり話を聞くと、ふーん……と唸った。

『イタ車はこだわり持って乗ってる人が多いからね。マセラティではレンタカーもないだろうし、ディーラーか外車専門で貸してるところか、外車修理を得意にしてるとこに聞いてみてあげるよ』

今日は何時まで?と聞かれ、上がり時間を伝える。

『分かった。では、また連絡するよ』
実はこのコールセンターに来てから、以前の部署である査定の時の人材が非常に役立っているのだ。
今電話で対応してくれた代理店も査定時代に仲良くなった人で、結衣の判断力を評価してくれている人でもある。

今結衣は、あちこちの知り合いに助けてもらいながら仕事をしているような状況なのだ。
それでも助けてくれる人がいるのは、ひとえに結衣の人柄なのである。

その後は大きなトラブルもなかった。結衣は日報の作成のため、リーディングルームに入る。

そこはリーダークラスの使用する部屋で、今受けている全てのコールの回線をつなぐことも、聞くこともできる。

データを取り出すこともでき、リーダーがコールの内容をチェックする部屋だ。

そこでその日に、30分以上になっていたコールの内容を確認する。
アドバイスが必要であれば、上席に確認してからフィードバックする。

そのためスタッフにはお仕置き部屋、とあまり名誉ではない名前をつけられているのだが。
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