極上エリートとお見合いしたら、激しい独占欲で娶られました 俺様上司と性癖が一致しています

如月 そら

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【番外編:雅人くんには分からない】

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「あ、麻倉羽純あさくら  はすみです」
「麻倉さん。こちらこそ申し訳なかった」
 雅人はその場で深く頭を下げる。その時、ピンポンピンポンと呼び鈴が鳴った。

 麻倉が立とうとするのを雅人は手で止め、スマートフォンを手にする。
「はい。今、開ける入ってくれ」
 不思議そうに麻倉は雅人を見ていた。

「スマートハウスなんだ。スマホ一つでいろいろ、連携できるようになってる」
「すごいですね」
 素直に雅人を見る瞳は真っすぐで、雅人が戸惑うほどだった。

「佐伯ーっ! お前さぁ、何年振りかに呼び出したかと思えば……ん?」
 ソファにちまっと座っている麻倉を見て、部屋に入ってきた友人は驚いた顔をしている。

「麻倉さん、紹介する。友人の香坂。医師なんだ。香坂、そういう顔をするな。家事代行の人だ。急に呼び出して悪かったな。お前しか思いつかなくて。彼女が足にフライパンを落としてしまった。水で流したが診てやってほしい」

「あ、ああ、そういうことなら。ちょっといいかな? 佐伯、処置が必要ならここでは無理だぞ」
「その時は病院に連れていく」

 香坂は麻倉の足をそっと手に取った。
「痛みはない?」
 などと聞いている。

「軽い火傷だな」
 香坂が診ている横から気になって雅人は覗き込んでいた。

「スリッパを履いていて、患部は水ですぐに流したが」
「うん。それが良かったんだな。軟膏を塗っておけば治るだろう。病院で処方してもいいがこれくらいなら市販のものでも構わない。雅人、持っていないか?」

「ん、軟膏くらいならある。香坂、完治にはどれくらいかかる?」
「まあ、一、二週間だろう」

「もし、診断書を書くとするなら?」
「全治二週間と書くな」
「分かった」

 そう言って雅人は寝室に軟膏を取りに行く。
 イギリスにいた時、処方してもらった塗り薬を見つける。確か、軽く手を切った時に使った気がした。

「香坂、これでいいか? 確認してくれ」
「ステロイド軟膏か、いいものを持ってるな。君はアレルギーとかはないかな?」
「はい」
 香坂は手際よく処置して、立ち上がった。

「患部は清潔に。靴とか履く時は気をつけて。佐伯、また飲みに行こう」
「ああ、急に呼び出して悪かったな」

「今日は泊めてあげたら? 何なら治るまで」
「はぁ!?」
「えっ!」

 突然飛び出した香坂の言葉に雅人も驚いたし、麻倉は大きな目を見開いて固まってしまっていた。

 当の香坂はにこにこしている。
「だって、その足だったら靴を履くのも大変でしょ? 二週間くらいは責任持ってあげたら? 佐伯」
「馬鹿なことを言うな」

 どうしてそんなことを思いつくのか分からない。
 さっさと帰ってもらおうと香坂を玄関に送り出すと声を潜めて囁かれた。

「適当に言ったんじゃないぞ。珍しく佐伯が彼女を人として認識していたから言ったんだ」
「人としてってどういうことだよ」

「女性は置物みたいにスルーするじゃないかよ」
 全く、谷川も香坂も雅人のことをどう思っているのか。

 一瞬憤然としかけたが、もしかして自分の今までの行動がそう思わせているのかと雅人は気持ちを落ち着かせた。
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