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おまけのお話
分からなかったので聞いてみました③
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紬希は普段着の上に白いひらっとした可愛らしいエプロンをしていたからだ。
一方の紬希も貴堂が手にしていたものに釘付けになっていた。透明なセロファンで包まれ、リボンを掛けられたテディベアだ。
「……っ可愛……っ」
思わずハモってしまった二人である。
◇ ◇ ◇
ミーティングスペースでエプロン姿の可愛い紬希を膝に乗せた貴堂はとてつもなくご機嫌だった。
また、貴堂にもらったテディベアを膝に乗せている紬希もご機嫌だった。
そのテディベアはもふもふもふではなくてさらっとした素材なのだ。しかもいろんな布の素材でパッチワークされて作られている。
「コットンシルク……オックスフォード……これって?」
「そう。シャツの端切れで作ったものなんだ。オーダーで時間かかってしまったけど以前イギリスに行ったときにオーダーしていて、時間がかかるお土産があるって言ってたの覚えてる?」
素材や柄の違いが可愛らしい風合いを生み出しているテディベアを紬希はぎゅっと抱きしめる。
「すごく可愛い!」
これなら端切れがあれば作れるかもしれないし、布が無駄にならないのはいい、と紬希は嬉しくなる。
「紬希もすごく可愛いんだけど、どうしたのこれ?」
「作りました! ほら、前にエプロンのお話をされていたから」
「僕のために?」
貴堂は紬希の頬を撫でる。
「はい」
──可愛いすぎる。
清楚な雰囲気の紬希と白いエプロンの組み合わせはたまらない。
「お兄ちゃんが笑顔の出迎えと一緒に、添えてあったら喜ぶ、と言うので」
(お兄ちゃんが……?)
貴堂の笑顔が固まった。
「えーと、透さんにお話ししたの?」
「はい! 男のロマンが私には分からなかったので聞いてみました!」
紬希から元気な返事が来る。
貴堂は背中がひやりとした。
いつもなら判断に迷うようなことはないのだが、この対応についてどうしたらいいのか一瞬わからなくなり頭が真っ白になった。
ここ数年でこんなことはない。
「透さん、なにか言ってた?」
かろうじて口を開いて言えたのがそれだ。
「んー? 結局よく分からなかったんですけど、なんとなく納得していたような気もします」
その回答を聞いて安心した貴堂である。
しかし、その帰り道のことだ。
「貴堂さん……」
「……!!」
駐車場に向かう途中暗闇で声を掛けられて、貴堂は無言で驚いた。
「と……透さん、こんばんは」
「俺に言えないこと、してないですよね?」
「してないです。今日もお土産を持って来たところですから」
貴堂は微笑んで首を横に振る。
透からの圧がすごい。
「ふぅん……明日は、乗務ですか?」
「いえ、明日は休みです」
「では、少しいかがです?」
そう言って透は飲むような仕草を見せた。
貴堂に断れるわけもなかった。
◇ ◇ ◇
三嶋家のパーソナルスペースにお邪魔するのは初めての貴堂だったが、なにもない自分の部屋と比べるととても家庭的で安心するリビングダイニングだった。
「お邪魔します」
「散らかってますけど、どうぞ」
そのリビングにワイングラスとワインボトルを持ってくる透だ。他にも焼酎やら、日本酒やらを持ってくる。
一方の紬希も貴堂が手にしていたものに釘付けになっていた。透明なセロファンで包まれ、リボンを掛けられたテディベアだ。
「……っ可愛……っ」
思わずハモってしまった二人である。
◇ ◇ ◇
ミーティングスペースでエプロン姿の可愛い紬希を膝に乗せた貴堂はとてつもなくご機嫌だった。
また、貴堂にもらったテディベアを膝に乗せている紬希もご機嫌だった。
そのテディベアはもふもふもふではなくてさらっとした素材なのだ。しかもいろんな布の素材でパッチワークされて作られている。
「コットンシルク……オックスフォード……これって?」
「そう。シャツの端切れで作ったものなんだ。オーダーで時間かかってしまったけど以前イギリスに行ったときにオーダーしていて、時間がかかるお土産があるって言ってたの覚えてる?」
素材や柄の違いが可愛らしい風合いを生み出しているテディベアを紬希はぎゅっと抱きしめる。
「すごく可愛い!」
これなら端切れがあれば作れるかもしれないし、布が無駄にならないのはいい、と紬希は嬉しくなる。
「紬希もすごく可愛いんだけど、どうしたのこれ?」
「作りました! ほら、前にエプロンのお話をされていたから」
「僕のために?」
貴堂は紬希の頬を撫でる。
「はい」
──可愛いすぎる。
清楚な雰囲気の紬希と白いエプロンの組み合わせはたまらない。
「お兄ちゃんが笑顔の出迎えと一緒に、添えてあったら喜ぶ、と言うので」
(お兄ちゃんが……?)
貴堂の笑顔が固まった。
「えーと、透さんにお話ししたの?」
「はい! 男のロマンが私には分からなかったので聞いてみました!」
紬希から元気な返事が来る。
貴堂は背中がひやりとした。
いつもなら判断に迷うようなことはないのだが、この対応についてどうしたらいいのか一瞬わからなくなり頭が真っ白になった。
ここ数年でこんなことはない。
「透さん、なにか言ってた?」
かろうじて口を開いて言えたのがそれだ。
「んー? 結局よく分からなかったんですけど、なんとなく納得していたような気もします」
その回答を聞いて安心した貴堂である。
しかし、その帰り道のことだ。
「貴堂さん……」
「……!!」
駐車場に向かう途中暗闇で声を掛けられて、貴堂は無言で驚いた。
「と……透さん、こんばんは」
「俺に言えないこと、してないですよね?」
「してないです。今日もお土産を持って来たところですから」
貴堂は微笑んで首を横に振る。
透からの圧がすごい。
「ふぅん……明日は、乗務ですか?」
「いえ、明日は休みです」
「では、少しいかがです?」
そう言って透は飲むような仕草を見せた。
貴堂に断れるわけもなかった。
◇ ◇ ◇
三嶋家のパーソナルスペースにお邪魔するのは初めての貴堂だったが、なにもない自分の部屋と比べるととても家庭的で安心するリビングダイニングだった。
「お邪魔します」
「散らかってますけど、どうぞ」
そのリビングにワイングラスとワインボトルを持ってくる透だ。他にも焼酎やら、日本酒やらを持ってくる。
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