上 下
76 / 83
19.カ、カチコミ…?

カ、カチコミ…?③

しおりを挟む
 亜由美の様子を見て、奥村は微笑む。
「旦那さんになる人を紹介してくれるの?」
「はいっ!」

「じゃあ、喜んでご一緒します。でも、ごちそうとかしなくていいからね」
「それは鷹條さんと相談します」

 ふふっと笑った奥村に笑顔を向けられる。
「亜由美ちゃんて、本当に可愛い」

 亜由美の外見から『キツそう。澄ましてる。冷たそう』と言われることはあっても、可愛いと言われることの少ない亜由美は照れてしまう。

「そんな風に言われたことないです」

「外見だけじゃない、本当の亜由美ちゃんはとても可愛い。きっと、鷹條さんもそういうところに惹かれたんでしょうね」
 本当にどうやって返事したらいいのか分からない。

 そんな亜由美に奥村は笑顔を向けた。
「じゃあ、お仕事しよっか」
「はい!」

 その日の夜、亜由美は鷹條と動画通話をしていた。リビングに座って、パソコン画面で通話する。鷹條も通常勤務に戻っているので、国会の会期中の今はシフト勤務で忙しいようだった。

「奥村さんは来てくださるってことでした。ごちそうしなくていいって言うんですけど、困るわ……」

『まぁ、それはこっちでなんとかしよう。久木さんもオッケーだ。あらかじめお互い上司が来るってことは店を決める前に打ち合わせておいたほうがいいな』

「分かった」
 その時割り込みで着信の通知が入る。
「千智さん! お父さんから連絡だわ」

『ん、分かった。出てあげて。こっちはまた改めて』
「ありがとう」
 亜由美は通話を切り替える。

『亜由美!』
 両親の元気な姿には亜由美も嬉しくなった。両親には事件が解決したのちにすべてのことを話してある。

『どう? 大丈夫?』
 画面の向こうには両親とも揃っていた。画面に向かって亜由美は微笑む。
「うん。千智さんもいるし大丈夫」

 心配をかけて申し訳ないと思うけれど、鷹條との経緯を説明するのにもそこを端折るわけにはいかなかった。

『そこのマンションはそのまま二人で住んでもいいからね』
「ありがとう。千智さんのお仕事のこともあるし、相談してみるね。お父さんの気持ちは伝えておく」

 婚約のことを説明したら、両親はとても喜んでくれた。
 亜由美がずっと住み続けているマンションは元々家族で住んでいたものだ。そこに亜由美は一人でそのまま住んでいた。

 結婚するのであれば二人で住んでも構わないと言われている。鷹條の官舎も同じ駅にあるので、引っ越しについては上司と相談して、というところのようだった。

 申請は必要であるものの現在地から大きく離れるわけではないし問題はないだろうとのことだ。
『こちらでの仕事が落ち着いたら帰国してご挨拶もしないとな』

「顔合わせ? そうね、千智さんのご両親もお忙しいからあらかじめ日にちを決めておいた方がいいでしょうね」
『分かった。検討しよう』

 近況報告では鷹條の家族のことを話した。
 鷹條の母がいろんな覚悟を持って、父の側にいることを聞いた両親は微妙な顔をする。

『それでも、亜由美ちゃんはその人と一緒にいたいのよね?』
「うん。護られるだけじゃなくて、私も支えたいの」

『じゃあ、もう言うことはないだろう。今後は二人で決めていきなさい』
 両親にもきっと不安はあるだろうと思うのだが、認めてくれたのは、とても嬉しいことだった。

『日本のニュースを見ながらね、たまにSPさんが映ると、亜由美ちゃんの彼かなってすごく探しちゃうの。お会いするのが楽しみだわ。おめでとう、亜由美ちゃん』
「ありがとう」

 両親におめでとうと言ってもらえたことが、亜由美には本当に心から嬉しいことだった。
 周りの人達の温かい気持ちにいつも支えられていると、亜由美は幸せな気持ちでベッドに入ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。 若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。 40歳までには結婚したい! 婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。 今更あいつに口説かれても……

My HERO

饕餮
恋愛
脱線事故をきっかけに恋が始まる……かも知れない。 ハイパーレスキューとの恋を改稿し、纏めたものです。 ★この物語はフィクションです。実在の人物及び団体とは一切関係ありません。

政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。

如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。 父からの遺言書を持って。 そこに書かれてあったのは、 『会社は片倉に託すこと』 そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。 政略結婚、そう思っていたけれど……。 浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。 けれど、片倉は……? 宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) ※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。 素敵なイラストをありがとうございます。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

身代わりお見合い婚~溺愛社長と子作りミッション~

及川 桜
恋愛
親友に頼まれて身代わりでお見合いしたら…… なんと相手は自社の社長!? 末端平社員だったので社長にバレなかったけれど、 なぜか一夜を共に過ごすことに! いけないとは分かっているのに、どんどん社長に惹かれていって……

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

処理中です...